在留カードは、16歳以上の中長期在留者が常に持ち歩かなければならないカードです(入管法23条2項・5項)。携帯していなければ20万円以下の罰金、警察官などに提示を求められて拒めば1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金の対象になります。会社が「なくすといけないから」と在留カードを預かると、その間ずっと本人を携帯義務違反の状態に置くことになり、技能実習生や特定技能外国人については、保管や取上げそのものが法令で禁止されています。
在留カードの携帯義務は入管法23条2項が定める
在留カードの携帯義務の根拠は、入管法23条です。条文の構造を先に押さえておくと、誰に何の義務があるかが整理しやすくなります。
- 23条1項:日本に在留する外国人は、常に旅券(パスポート)を携帯しなければならない。ただし、2項により在留カードを携帯する場合はこの限りでない
- 23条2項:中長期在留者は、在留カードを受領し、常にこれを携帯していなければならない
- 23条3項:入国審査官、入国警備官、警察官、海上保安官などが職務の執行にあたって提示を求めたときは、これに応じなければならない。在留カードの場合は、ICチップの内容を確認するための措置を受けることも含む
- 23条4項:提示を求める職員は、身分を示す証票を携帯し、請求があれば示さなければならない
- 23条5項:16歳に満たない外国人は、旅券・在留カードを携帯しなくてよい
ここでいう中長期在留者とは、3か月を超える在留期間で在留する外国人のうち、短期滞在や外交・公用などを除いた人を指します(入管法19条の3)。技術・人文知識・国際業務、特定技能、留学、家族滞在、日本人の配偶者等、永住者など、会社で雇用する外国人のほとんどが該当します。永住者も中長期在留者なので、携帯義務があります。
在留カードを持っていれば、パスポートを持ち歩く必要はありません。逆に、パスポートを持っていても在留カードを持っていなければ携帯義務違反です。出入国在留管理庁のQ&A(Q35)も、パスポートの携帯の有無にかかわらず在留カードは常時携帯が必要だと答えています。
不携帯・提示拒否の罰則と退去強制との関係
罰則は、携帯しなかった場合と、提示を拒んだ場合で重さが違います。
| 違反 | 条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 在留カードを携帯しなかった | 75条の3 | 20万円以下の罰金 |
| 在留カードを受領しなかった | 75条の2第1号 | 1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金 |
| 在留カードの提示やICチップ確認を拒んだ | 75条の2第2号 | 1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金 |
| 旅券を携帯しなかった(在留カードのない外国人) | 76条1号 | 10万円以下の罰金 |
| 旅券の提示を拒んだ | 76条2号 | 10万円以下の罰金 |
刑法改正により、2025年6月1日から懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されています。そのため古い解説で「1年以下の懲役」とある部分は、現行法では「1年以下の拘禁刑」です。
提示拒否は、罰金で終わらないことがあります。入管法24条4号の4は、中長期在留者で75条の2の罪により拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としています。つまり、在留カードを受け取らなかったり、提示を拒んだりして拘禁刑の判決を受けると(執行猶予が付いた場合も含むと解されています)、退去強制の対象になり得ます。単なる不携帯(75条の3)は罰金刑だけなので、この退去強制事由には当たりません。
では、うっかり家に置き忘れた場合はどうなるか。条文上は、置き忘れでも携帯していなかったことに変わりはありません。在留カード制度の前身である外国人登録証明書の不携帯について、過失による場合も処罰の対象になるとした最高裁判決(昭和28年3月5日)があり、現行の在留カードにも同じ考え方が及ぶかは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。実際にすべての置き忘れが起訴されるわけではありませんが、職務質問の場で在留カードを示せないと、本人確認に時間がかかり、在留資格の有無を確認するために警察署や入管に同行を求められることがあります。罰金を科されなかったとしても、交通違反や職務質問の記録は残り、在留期間の更新や永住申請の素行の審査で説明を求められることがあります。
常時携帯の例外|16歳未満・代理人に預けている間・申請中
携帯義務には、法律上または運用上、いくつかの例外があります。
16歳未満の子ども
16歳に満たない外国人は、在留カードを携帯しなくてよいとされています(23条5項)。入管庁Q&A(Q36)も同じ扱いです。16歳の誕生日を迎えた日から携帯義務が生じます。16歳未満の人の在留カードは16歳の誕生日が有効期間の上限になるため、更新の手続と合わせて本人に携帯を習慣づけてください。
行政書士・会社の職員などが法定の範囲で預かる場合
入管庁Q&A(Q38)は、法令で定められた人が本人に代わって在留カードを提出・受領する場合は、「法定のそれぞれの行為の範囲内において」本人の携帯義務違反にはならないとしています。在留期間更新の申請を取り次ぐ行政書士や、申請等取次者として承認された会社・登録支援機関の職員が、申請や新しいカードの受領のために一時的に預かる場面がこれに当たります。
裏を返せば、申請や受領という法定の行為と関係なく、会社がカードを預かり続ける場合は例外に入りません。
更新申請中・紛失中
在留期間の更新や変更を申請している間も、手元の在留カードをそのまま携帯します。窓口で申請した場合はカードの裏面に申請中である旨が記載され、オンラインで申請した場合は「申請受付番号のお知らせ」のメールかその印刷物を一緒に持ち歩くと、特例期間中であることを示せます。
在留カードを紛失した場合は、紛失を知った日から14日以内に再交付を申請する必要があります(入管法19条の12)。再交付を受けるまでの間は携帯できない状態になるため、警察に遺失届を出した際の受理番号や、再交付申請の控えを持ち歩くのが現実的な対応です。紛失時の手続は在留カードを紛失したら?14日以内の再交付申請と遺失届・会社の対応にまとめています。
コピーやスマートフォンの写真は代わりにならない
23条2項が携帯を求めているのは在留カードそのものです。コピーやスマートフォンで撮った画像では、携帯義務を果たしたことになりません。提示を求められた場合、職員はカードの券面を見るだけでなく、ICチップの内容を読み取って偽造でないかを確かめることがあり、コピーではこの確認ができないからです。在留カードとマイナンバーカードを一体化した特定在留カードを持っている人は、そのカードを携帯します。
特別永住者は携帯義務がない(提示義務はある)
特別永住者は、在留カードではなく特別永住者証明書の交付を受けます。入管特例法17条は、特別永住者証明書の受領と、職員から求められたときの提示を義務づけていますが、常時携帯は求めていません。同条4項は、旅券の携帯義務を定めた入管法23条1項も特別永住者には適用しないとしています。
ただし、提示義務は残ります。警察官などから提示を求められたときに拒むと、1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金の対象です(入管特例法31条4号)。常に持ち歩く義務はないものの、その場で示せなければ後日の提示を求められることになります。
会社が在留カードを預かってはいけない理由
採用の現場では、在留カードを紛失されると困る、退職時に返してもらえないと困る、といった理由で会社が在留カードやパスポートを預かる例が今も見られます。本人の同意を得ていても、次の3つの理由で避けるべきです。
理由1|本人を常に携帯義務違反の状態にする
在留カードの携帯義務を負うのは本人で、会社ではありません。会社がカードを保管している間、本人は通勤中も休日も、23条2項に違反した状態で生活することになります。職務質問でカードを示せなければ、本人が罰則の対象になるほか、会社に預けていたことを説明する過程で、会社が本人の自由を制限していたと受け取られるおそれがあります。
理由2|技能実習・特定技能では保管・取上げそのものが禁止されている
技能実習法48条1項は、実習実施者、監理団体とその役員・職員が、技能実習生の旅券や在留カードを保管することを禁止しています。技能実習生の意思に反して保管した場合は、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です(同法111条5号)。
特定技能では、「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」2条1項4号リが、受入れ機関の欠格事由として、5年以内に出入国または労働に関する法令に関して不正または著しく不当な行為をした者を挙げ、その例として「外国人の旅券又は在留カードを取り上げる行為」を明記しています。取上げが認定されると、以後5年間は特定技能外国人を受け入れられなくなります。欠格事由の全体は特定技能の受入れ機関の欠格事由|刑罰歴・不正行為5年・役員の確認で解説しています。
技術・人文知識・国際業務など、他の就労資格で雇う外国人について、会社の保管を直接禁じる条文はありません。それでも理由1の問題は同じで、技能実習や特定技能で禁止されている行為と同じことを他の社員に行う合理性は見当たりません。
理由3|「確認」と「保管」は目的が違う
会社に求められているのは、在留カードの確認です。採用時に在留カードの原本で在留資格・在留期間・就労制限の有無を確かめ、写しを保管することは、不法就労助長罪(入管法73条の2)を避けるために必要な手続です。外国人雇用状況の届出でも在留カード番号を記載します。確認のために原本をその場で見せてもらい、写しを取ったら原本はすぐに本人に返す、という流れで会社の目的は果たせます。原本を預かり続ける必要はどこにもありません。採用時の確認の手順は在留カードの確認方法|採用時に見るべき表面・裏面の5か所と写しの保管、不法就労助長罪の責任の範囲は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法で扱っています。
会社が預かってもよい場面と、その守り方
申請や受領のために一時的に預かる場面はあります。会社の職員が申請等取次者として在留期間更新の申請を取り次ぐ場合や、新しい在留カードを代わりに受け取る場合です。この場合も、次の点を守ると本人の不利益を最小限にできます。
- 預かる目的と期間を本人に説明し、預かり証を渡す
- 申請や受領が終わったら、その日のうちに本人に返す
- 預かっている間に本人が外出する場合に備え、申請受付票の写しなど、申請中であることを示す書類を本人に持たせる
- 退職時の未返却を理由に預かることはしない(退職時の手続は別に整える)
退職者との精算が心配で在留カードを預かりたくなる場合は、在留カードとは関係のない方法、たとえば貸与品の返却ルールや最終給与の支払い手続を就業規則で整えることで対応すべきです。在留カードを担保のように扱うと、本人の意思に反する保管と受け取られるリスクが高まります。
よくある質問
在留カードを携帯していないとどうなりますか?
携帯義務違反として20万円以下の罰金の対象になります(入管法75条の3)。職務質問の場でカードを示せないと、在留資格の確認のために警察署や入管への同行を求められることもあります。提示を拒んだ場合はより重く、1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金です。
在留カードを携帯していないと罰せられるのは何条違反ですか?
携帯義務は入管法23条2項、提示義務は同条3項に定められています。罰則は、不携帯が75条の3、受領しなかった場合と提示拒否が75条の2です。
永住者も在留カードを携帯する義務がありますか?
あります。永住者は中長期在留者なので、在留カードの常時携帯義務があります。携帯義務がないのは特別永住者で、特別永住者証明書は提示を求められたときに応じる義務だけがあります。
在留カードのコピーを携帯するのは違法ですか?
コピーを持ち歩くこと自体は違法ではありませんが、コピーでは携帯義務を果たしたことになりません。携帯しなければならないのは在留カードの原本です。
在留カードの携帯義務は何歳からですか?
16歳からです。16歳に満たない外国人は、在留カードもパスポートも携帯しなくてよいとされています(入管法23条5項)。
在留カードは「本人が持つもの」として社内ルールを組み直す
在留カードの携帯義務は、本人に課された義務です。会社がそこに関わるのは、採用時と更新時に原本を確認し写しを取ること、申請や受領のために一時的に預かること、この2つだけだと考えると社内ルールを作りやすくなります。
現在、社員の在留カードやパスポートを会社で預かっている場合は、すぐに本人に返し、預かりの慣行をやめてください。そのうえで、在留期限の管理は写しと台帳で行い、更新の時期が近づいたら本人に原本を持参してもらって確認する運用に切り替えます。技能実習生や特定技能外国人を受け入れている会社では、保管の事実そのものが監理団体の監査や入管の調査で問題になるため、優先して見直す必要があります。個別の事情で判断が変わるため、過去に預かっていた期間がある場合の対応に迷うときは、専門家に相談してください。
根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第23条・第24条・第75条の2・第75条の3・第76条(e-Gov法令検索)
- 旅券等の携帯(入管法第23条)(出入国在留管理庁)
- 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法 第17条・第31条(e-Gov法令検索)
- 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 第48条・第111条(e-Gov法令検索)
- 特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令 第2条(e-Gov法令検索)
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