外国人雇用の注意点は、時期ごとに分けると整理できます。採用前は「任せる業務がその人の在留資格で認められるか」「在留カードが有効か」「待遇が日本人と同等以上か」の3点、入社時は雇用契約書、ハローワークへの外国人雇用状況の届出、社会保険の加入、在籍中は在留期限の管理と業務変更時の確認、退職時は届出と税・年金の手続です。この10項目のうち、企業に最も重い刑事責任が及ぶのは在留資格の範囲外で働かせた場合で、不法就労助長罪の法定刑は2027年4月1日から拘禁刑5年以下・罰金500万円以下に引き上げられます。
外国人雇用の注意点を時系列で整理する理由
外国人雇用の注意点を扱う記事の多くは、「在留資格を確認する」「日本語能力を確認する」「文化の違いを理解する」といった項目を並列に並べています。どれも正しいのですが、人事担当者が実務で困るのは、それぞれを「いつ」確認すればよいかが分からないことです。在留資格の確認は採用前だけでなく、更新のたび、配置転換のたびに必要になります。届出は入社時と退職時の両方にあります。
ここでいう外国人雇用とは、日本国籍を持たない人を、正社員・契約社員・アルバイトなどの雇用契約で雇うことを指します。永住者、日本人の配偶者等、定住者などの身分系の在留資格の人は就労に制限がありませんが、届出や在留期限の管理の対象であることは変わりません。特別永住者は外国人雇用状況の届出の対象外です。
以下、採用前(1〜3)、入社時(4〜6)、在籍中(7〜9)、退職時(10)の順に、根拠と確認の方法を示します。
| 時期 | 確認事項 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 採用前 | 1 業務と在留資格の一致 | 入管法19条・別表、審査要領 |
| 採用前 | 2 在留カードの有効性と就労制限 | 入管法73条の2 |
| 採用前 | 3 日本人と同等以上の待遇 | 労基法3条、上陸基準省令 |
| 入社時 | 4 雇用契約書と在留資格の停止条件 | 労基法15条 |
| 入社時 | 5 外国人雇用状況の届出 | 労働施策総合推進法28条 |
| 入社時 | 6 社会保険・労働保険の加入 | 健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法 |
| 在籍中 | 7 在留期限の管理と更新 | 入管法20条6項・21条 |
| 在籍中 | 8 配置転換・業務変更・副業の確認 | 入管法19条、19条の16 |
| 在籍中 | 9 雇用管理指針に沿った体制 | 外国人雇用管理指針 |
| 退職時 | 10 離職の届出と税・年金の手続 | 労働施策総合推進法28条、入管法19条の16 |
採用前に確認すること
1 任せる業務がその在留資格で認められるか
最初に確認するのは、採用候補者の在留資格と、自社で任せる業務が一致するかです。入管法は、就労系の在留資格ごとに認められる活動を別表で定め、その範囲外で報酬を受ける活動を禁じています(19条1項)。技術・人文知識・国際業務(技人国)であれば、大学などで学んだ知識を使う専門的な業務や、外国の文化に基盤を持つ思考・感受性を必要とする業務が対象で、工場のライン作業や飲食店のホール業務を主な仕事にすることは認められません。
ここで重要なのは、判断の単位が「職種名」でなく「実際の業務内容」である点です。職種名が「総合職」でも、実際には倉庫での仕分けが中心なら、技人国の活動には当たりません。最高裁判所も平成14年10月17日の判決で、在留資格は名目でなく活動の実体で判断されるという立場をとっています。
採用前に業務を文章で書き出しておくと、在留資格の選択を誤りにくくなります。現場作業が中心なら特定技能、専門的な業務なら技人国、というように、業務の中身から在留資格を選ぶ順序が基本です。2026年4月15日以降は、技人国で通訳・翻訳・接客などの業務に就く場合にCEFR B2相当の日本語能力の立証が必要になるなど、同じ在留資格の中でも業務ごとの要件が増えています。
2 在留カードの有効性と就労制限を確かめる
国内にいる外国人を採用するときは、在留カードの原本を確認します。確認する箇所は、表面の在留資格・在留期間(満了日)・就労制限の有無、裏面の資格外活動許可欄と在留期間更新等許可申請欄です。「就労不可」の在留カードでも、裏面に資格外活動許可があれば週28時間以内のアルバイトはできます。在留資格が「特定活動」の人は、パスポートに貼られた指定書で就労の可否を確認します。確認の手順は在留カードの確認方法|採用時に見るべき表面・裏面の5か所と写しの保管で詳しく扱っています。
在留カードそのものが偽造されている例もあるため、出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」でカード番号が有効かを確かめ、可能であれば「在留カード等読取アプリケーション」でICチップの情報と券面を照合します。確認した日付と方法を記録し、在留カードの写しを保管しておくことが、後で説明を求められたときの材料になります。
この確認を怠った場合の責任が、不法就労助長罪です。事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた者は、入管法73条の2により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)に処せられ、2027年4月1日からは5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に引き上げられます。同条2項は、在留資格の範囲外の活動であることなどを「知らないことを理由として」処罰を免れることはできず、過失がないときに限って免れると定めています。確認の記録は、過失がないことを示す手段になります。詳しくは不法就労助長罪とは?で解説しています。
3 待遇は日本人と同等以上にする
労働基準法3条は、国籍を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをすることを禁じています。最低賃金法も国籍を問わず適用されます。
在留資格の側でも、同じ方向の要件があります。技人国などの上陸基準省令は、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」を求めています。これは最低賃金を上回ればよいという基準より厳しく、同じ会社で同じ業務に就く日本人社員の給与と比べて判断されます。比べ方は就労ビザの「日本人と同等額以上の報酬」とはで扱っています。
求人の段階で「外国人歓迎」とすることは差し支えありませんが、「日本人のみ」「外国人は時給を低く設定」といった条件は、国籍による差別的取扱いに当たるおそれがあります。
入社時に行うこと
4 雇用契約書は在留資格の許可を前提に作る
労働基準法15条は、労働契約を結ぶときに賃金や労働時間などの労働条件を書面で明示することを求めています。外国人社員の場合は、本人が理解できる言語での説明や、厚生労働省が公開している多言語の労働条件通知書のモデルを使う方法があります。
外国人特有の論点は、在留資格の許可が下りる前に契約を結ぶ場合です。海外から呼ぶ場合や留学生を新卒で採る場合、入管の審査は雇用契約の成立を前提に行われる一方、許可が出なければ就労できません。そこで、契約書に「在留資格の許可を受けることを条件として効力を生じる」といった停止条件を入れ、入社日も許可の時期に合わせて調整できるようにしておくのが一般的です。契約書に書いた職務内容と報酬は申請書類にもそのまま使われるため、1で書き出した業務内容と一致させます。
5 ハローワークへの外国人雇用状況の届出
外国人を雇い入れたとき、事業主は労働施策総合推進法28条に基づき、氏名、在留資格、在留期間などをハローワークに届け出なければなりません。対象は、在留資格「外交」「公用」と特別永住者を除くすべての外国人労働者で、アルバイトも含まれます。
届出の期限と方法は、雇用保険の被保険者かどうかで分かれます。被保険者であれば、雇用保険被保険者資格取得届に在留資格などを記載して、雇入れの翌月10日までに出します。被保険者でない人(週20時間未満のアルバイトなど)は、外国人雇用状況届出書を雇入れの翌月末日までに出します。届出を怠ったり、虚偽の届出をしたりした場合は、30万円以下の罰金の対象です。届出の情報は入管にも提供され、在留審査で使われます。
6 社会保険・労働保険は国籍で免除されない
健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の加入要件は、日本人と同じです。国籍を理由に加入を免除することはできず、本人が「帰国するから年金はいらない」と言っても、要件を満たせば加入させる必要があります。社会保険料の滞納は、社員本人の更新や、特定技能・経営管理などの在留審査で消極的に評価されます。
本国の年金制度との二重加入については、社会保障協定を結んでいる国(2026年6月2日現在で24か国が発効)から一時的に派遣される社員は、本国の制度に加入していることの証明書を出せば、日本の年金制度への加入が免除される場合があります。協定国以外の人が帰国する場合は、脱退一時金の請求が可能です。支給の上限は現在60か月で、これを8年に延ばす改正は2025年6月20日の公布から4年以内に政令で定める日に施行されます。
在籍中に管理すること
7 在留期限を管理し、更新を早めに進める
在籍中の管理で最も事故が起きやすいのが、在留期限です。在留期間の更新は満了日のおおむね3か月前から申請でき、満了日までに申請していれば、審査中に期限を過ぎても、処分がされる時か満了日から2か月を経過する日のいずれか早い時まで、同じ在留資格で働き続けられます(入管法20条6項・21条4項)。反対に、満了日を1日でも過ぎてから申請すると、この特例期間は生じません。特例期間の計算と確認方法は在留期間の特例期間とは?更新中に期限が過ぎても働ける期間と注意点で扱っています。
管理の方法としては、社員ごとに在留資格、満了日、更新申請の予定日(満了日の3か月前)、申請日、許可日を台帳にまとめ、満了日の4か月前に本人と人事の双方に通知が届くようにしておくと確実です。
更新にかかる費用も変わります。2026年10月1日から、在留資格の変更と在留期間の更新の手数料は、許可される在留期間の長さで決まる額に改定されます。窓口申請の場合、在留期間1年で33,000円、3年以上5年未満で64,000円、5年以上で75,000円で、オンライン申請はそれぞれ27,000円、56,000円、65,000円(別途決済手数料)です。2026年9月30日までに受け付けた申請は改定前の額です。手数料を会社と本人のどちらが負担するかを就業規則や社内規程で決めておくと、更新のたびの調整が不要になります。改定の詳細は在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?で解説しています。
8 配置転換・業務変更・副業の前に在留資格を確認する
採用時に在留資格と業務が一致していても、入社後の配置転換で一致しなくなることがあります。技人国で採用した社員を、人手不足の店舗で接客とレジ中心に働かせる、工場の製造ラインに回す、といった変更は、在留資格の範囲外の活動になるおそれがあります。異動の前に、新しい業務が現在の在留資格で認められるかを確認し、認められない場合は在留資格の変更を検討します。
副業も同じです。技人国の社員が別の会社でアルバイトをする場合、その業務が技人国の範囲内であれば在留資格の範囲で行えますが、範囲外の業務であれば資格外活動許可が必要です。
届出の義務もあります。技人国などの就労資格の社員が所属機関との契約を終了したり、新たな契約を結んだりした場合、本人は14日以内に出入国在留管理庁長官に所属機関に関する届出をしなければなりません(入管法19条の16)。企業側については、中長期在留者の受入れの開始・終了などを届け出る努力義務の規定(19条の17)がありますが、ハローワークへの外国人雇用状況の届出をしなければならない事業主と特定技能所属機関は、この規定の対象から除かれています。一般の雇用主は5の届出を確実に行うことで足り、特定技能の受入れ機関は19条の18の届出義務を別に負います。
9 外国人雇用管理指針に沿った体制を作る
厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(外国人雇用管理指針)は、募集・採用時の在留資格の確認、労働条件の明示、安全衛生教育、社会保険の適用、職場への適応を助ける措置、解雇や雇止めの防止と再就職の援助などを事業主に求めています。外国人労働者を常時10人以上雇用する事業所では、外国人労働者の雇用管理に関する責任者(外国人労働者雇用労務責任者)を選任することも求められています。
指針は罰則を伴うものではありませんが、安全衛生教育を本人が理解できる言語で行わずに労災が起きた場合などは、安全配慮義務の問題として企業の責任が問われる可能性があります。作業手順書や安全教育の資料を母国語ややさしい日本語で用意し、理解したことを確認した記録を残しておくのが実務的な対応です。
退職時に行うこと
10 離職の届出と税・年金の手続
外国人社員が退職したときは、入社時と同じく、ハローワークへの外国人雇用状況の届出が必要です。雇用保険の被保険者であれば、雇用保険被保険者資格喪失届を離職の翌日から10日以内に出します。被保険者でなければ、外国人雇用状況届出書を離職の翌月末日までに出します。本人は所属機関に関する届出(契約の終了)を14日以内に行います。企業側は、特定技能の受入れ機関であれば入管への届出も必要です。
税と年金では、住民税と脱退一時金が論点になります。帰国する社員の住民税は、退職時に残りの税額を一括で徴収するか、本人が納税管理人を定めて納めることになります。年金については、6で触れた脱退一時金の請求を、本人が日本を出国した後に行えます。
会社都合で解雇する場合は、本人の在留資格への影響にも配慮が必要です。就労資格の人は、解雇されても直ちに在留資格を失うわけではありませんが、就労資格の活動を3か月以上行わないで在留していると在留資格の取消しの対象になり得ます(入管法22条の4第1項6号)。特定技能の受入れ機関が非自発的離職者を出すと、その後の受入れに影響することもあります。退職時の届出の全体像は外国人社員が退職・解雇したら?で解説しています。
よくある質問
外国人を雇用するときに、まず確認すべきことは何ですか?
任せる予定の業務と、採用候補者の在留資格が一致しているかです。国内にいる人であれば在留カードで在留資格と就労制限を確認し、海外から呼ぶ場合は業務内容から取得すべき在留資格を選びます。業務と在留資格が合っていなければ、それ以外の手続をいくら整えても雇用できません。
外国人を雇用するのに必要な「資格」は何ですか?
企業側に特別な資格や許可は必要ありません。必要なのは、外国人本人が、その業務を行える在留資格を持っていることです。永住者や日本人の配偶者等は業務の制限がなく、技人国や特定技能などは在留資格ごとに認められる業務が決まっています。特定技能の外国人を受け入れる場合は、受入れ機関としての基準を満たし、支援計画を作るなどの義務があります。
外国人の雇用契約書を作成する際の注意点は?
労働条件を本人が理解できる言語で明示することと、在留資格の許可を受けることを契約の効力発生の条件にしておくことの2点です。契約書の職務内容と報酬は在留資格の申請書類と一致させ、日本人社員と同等以上の報酬にします。
外国人雇用状況の届出を忘れるとどうなりますか?
届出を怠ったり虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金の対象になります。また、届出の情報は入管の在留審査でも使われるため、届出がないと本人の更新や転職の審査で所属の確認に時間がかかることがあります。気付いた時点で速やかに届け出てください。個別の事情で対応が変わる場合は、ハローワークに相談するのが確実です。
外国人雇用の注意点は「業務・期限・届出」の3本の線で管理する
10項目を並べると多く見えますが、中身は3本の線に集約されます。1本目は業務の線で、採用前の確認(1)と在籍中の配置転換・副業の確認(8)がつながっています。2本目は期限の線で、在留カードの確認(2)と在留期限の管理(7)が同じ台帳で管理できます。3本目は届出の線で、入社時の届出(5)と退職時の届出(10)が対になっています。待遇(3)、契約(4)、社会保険(6)、体制(9)は、日本人社員の労務管理と同じ土台の上に乗っています。
筆者は、初めて外国人を雇う企業には、この3本の線ごとに担当者と確認の時期を決めることを勧めています。2026年10月の手数料改定で更新のたびの費用が増え、2027年4月には不法就労助長罪の法定刑が引き上げられます。確認を担当者の記憶に頼らず、台帳と記録に落としておくことが、コストとリスクの両方を抑える方法です。
根拠資料
- 外国人の雇用(厚生労働省)
- 外国人雇用状況の届出について(厚生労働省)
- 出入国管理及び難民認定法(e-Gov法令検索)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 在留カード等番号失効情報照会(出入国在留管理庁)
- 2026年10月1日から外国人の在留手続に関する手数料が改定されます(出入国在留管理庁リーフレット)
在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。