経営管理ビザの事務所(上陸基準省令第1号の「事業所」)は、独立した一区画を占め、人と設備を備えて継続的に事業を行う場所でなければなりません。2025年10月の改正後、自宅兼事務所は原則として認められず、バーチャルオフィスは事業所として認められません。月単位のレンタルスペースも、特別の事情がない限り要件を満たしません。
シェアオフィスやコワーキングスペースは独立性がないため原則として難しい一方、インキュベーション施設の一時的なオフィスと、ジェトロ支援認定企業のコワーキング特例という2つの例外があります。ただし例外で緩むのは事務所の要件だけで、資本金等3,000万円と常勤職員の要件はそのまま残ります。
この記事でわかること
- 事業所の定義(日本標準産業分類の2つの要件)
- 賃貸借契約の名義・使用目的と、契約前に申請する場合
- 自宅兼事務所が改正で原則不可になった理由と、既に在留している人の注意点
- バーチャルオフィス・月単位のレンタルスペース・シェアオフィスの扱い
- インキュベーションオフィスとジェトロ支援企業の特例
事業所の定義:「一区画」と「人と設備」
上陸基準省令第1号は、「事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること」と定めています(入国・在留審査要領 第12編(開示版)10-3)。審査要領は情報公開請求で開示された入管の内部基準で、事業所の意味を総務省の日本標準産業分類の一般原則に沿って説明しています。
審査要領ではこう書かれている(第12編 10-4)
「経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること」
もう1つの要件は、財貨・サービスの生産または提供が、人と設備を有して継続的に行われていることです。第1号に適合するには、この2つの両方が必要です。
ここでいう一区画とは、他の事業者の空間から区切られ、その事業のために使われている場所を指すと筆者は理解しています。人と設備の要件は、職員が勤務し、事業に必要な机や機器が置かれていることで示すことになります。改正後は常勤職員1人以上の雇用が必須になったので、その職員が実際に働ける場所であることも、事業所の実態として見られます。
既存事業は「存在」、新規事業は「確保」
既に営まれている事業に投資・参画して経営する場合は、事業所が存在していることが要件です。これから事業を始める場合は、事業所として使う施設が確保されていることで足ります(10-8)。所属機関の規模や実績で提出書類を分ける区分をカテゴリーと呼び、カテゴリー3・4では、事業所の存在を不動産登記事項証明書と賃貸借契約書などで確認されます。
賃貸借契約をまだ結んでいない段階でも申請はできます。その場合は、賃貸を検討している物件の場所・広さ・予算などを記載した資料で審査されます(10-11)。ただし許可の後は、実際に契約した事業所で事業を営んでいることが前提になり、更新でもそれが問われます。物件資料で申請するなら、その物件で契約する見通しまで示しておくべきです。
賃貸借契約は、使用目的を事業用に、名義を法人に
事業所は賃貸物件が一般的です。その場合、審査要領は、賃貸借契約で使用目的を事業用・店舗・事務所など事業目的であると明らかにするよう求めています。契約者も法人等の名義として、法人等による使用であることを明確にする必要があるとしています(10-16〜10-17)。出入国在留管理庁の公表資料「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」も、同じ内容を示しています。
実務でつまずきやすいのは2つの場面です。1つは、会社設立前に代表者個人の名義で物件を借り、そのまま申請するケースです。もう1つは、住居用の契約書で借りた部屋を事務所として使うケースです。どちらも審査要領の求める形から外れているので、法人名義への切替えや、用途を事業用とする契約への変更が必要になります。
広さについて、改正Q&A 問21は一律の基準を示さず、「必要かつ十分な広さ」としています。何平方メートル以上という数字はないので、業種と職員数に見合う面積があるかどうかを、写真や平面図とあわせて説明できるようにしておくことになります。
自宅兼事務所は原則不可
2025年10月の改正で、自宅兼事務所の扱いは明確に厳しくなりました。審査要領は理由とあわせて次のように書いています。
審査要領ではこう書かれている(第12編 10-17)
「令和7年10月の上陸基準省令の改正によって、事業規模要件が見直されるとともに、常勤職員の雇用が必須となったこともあり、自宅兼事業所とするような形態は基本的に想定されず、独立して事業を営む事業所であることが客観的に見て明らかであることを必要とする。」
公表資料の改正Q&A 問20も、自宅を事業所と兼ねることは「原則として認められません」と明記しています。審査要領が挙げる理由は、事業規模要件の見直し(資本金等3,000万円以上)と常勤職員の必須化です。職員を雇って3,000万円規模の事業を営むなら、住居と切り離された事業所があるのが通常だ、という考え方と読めます。
「原則として」「基本的に」という表現から、例外がまったくないとまでは書かれていません。しかし、どのような場合が例外になるのかは、公表資料にも審査要領の判読できる範囲にも示されていません。新規に申請する人が自宅兼事務所を選ぶ合理性は、ほぼないと筆者は考えます。
既に自宅兼事務所で在留している人
既に経営・管理で在留している人には経過措置があり、令和10年(2028年)10月16日までの更新であれば、新基準に適合しないことだけを理由に不許可にはしないとされています(改正Q&A 問1)。3年を過ぎた後も、経営状況が良好で法人税等を納め、次回更新までに新基準を満たす見込みがあれば総合判断とされます(問3)。
ただし第1号(事業所)の条文そのものは旧基準と同じ文言で、自宅兼事業所の扱いは運用の変更として審査要領に書かれています。このため、経過措置の「新基準に適合しないことだけを理由に不許可にしない」という扱いが、自宅兼事務所の点にどこまで及ぶのかは、公表資料から読み取れません【要確認】。次の更新までに独立した事業所へ移る計画を立てておくのが安全です。更新審査の全体は経営管理ビザの更新|審査のポイントと必要書類、経過措置中(2028年10月まで)の注意点で扱っています。経過措置の実務については、経営・管理ビザの経過措置とは?2028年10月までに企業が備えるべきことを解説で解説しています。
バーチャルオフィスは認められない
審査要領ではこう書かれている(第12編 10-17)
「住所及び電話番号等を借り受け、電話にはオペレーターが対応し、郵便物を転送するなど実際に経営又は管理を行う場所は存在しない「バーチャル・オフィス」等と称する形態は、事業所とは認めない。」
審査要領は、事業所を「実際に事業が営まれている所」としています(10-17)。登記上の本店所在地として使える住所であることと、在留資格の事業所に当たることは別の問題です。バーチャルオフィスの住所で法人登記ができても、経営・管理の事業所にはなりません。
月単位のレンタルスペースと屋台
審査要領は、「月単位の短期間賃貸スペース等を利用したり、容易に処分可能な屋台等の施設を利用したりする場合には、それを合理的とする特別の事情がない限り」、事業所の確保(存在)の要件に適合しないとしています(10-17)。公表資料も、月単位の短期賃貸スペースや屋台は適合しないとしています。
ここで重要なのは、事業所が「継続的に運営される」ことを前提にしているという論点です(10-16)。月極めのレンタルオフィスで申請を考えている場合は、契約期間と更新の条件、区画が専用かどうかを確認してください。「特別の事情」が何を指すかの具体例は示されていないので、これに頼る申請は避けるべきです。
シェアオフィス・コワーキングスペースはどうか
他の利用者と空間を共有するシェアオフィスやコワーキングスペースは、一区画を占めるという要件を満たしにくい形態です。審査要領も、後述するジェトロ特例の説明の中で、コワーキングスペースやシェアオフィスを独立性のない区画として扱っています(10-25)。通常の申請では、個室として区切られ、専用で使える契約になっているかが分かれ目になると筆者は考えます。
例外として、次の2つの扱いが審査要領に定められています。
インキュベーションオフィス
インキュベーター(経営アドバイスや、企業運営に必要なビジネスサービスへの橋渡しを行う団体・組織)が支援している場合の扱いもあります。申請人から事業所の使用承諾書等が提出されれば、ジェトロが運営する対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)のオフィスなど、起業支援を目的に一時的に貸与される事業用オフィスの確保で足ります。その場合は第1号に適合するものとして扱われます(10-17)。公表資料も、使用承諾書があれば適合として扱うとしています。
ジェトロ支援認定企業のコワーキング特例
ジェトロの支援対象として認定された外国企業の代表者(原則1企業1名)には、別の特例があります。日本での起業から3年を経過するまでの申請に限り、コワーキングスペースやシェアオフィスでも第1号に適合するものとして扱われます(10-25〜10-27)。条件は次のとおりです。
- 法人登記ができること
- 一定の場所(座席)の利用が保証されていること
- 契約の更新などで継続して利用できること
- その所在地に法人が登記されていること
- ジェトロへ定期的に報告すること
- 起業から3年未満であること
この特例で決定される在留期間は1年です。起業から3年を経過する日が1年以内に来る申請では、新しい事業所を確保する予定を説明する文書を求められます。同じコワーキングスペースで働く技人国などの従業員についても、利用が保証されたスペースが必要とされています。
注意したいのは、この特例が緩めるのは第1号だけだという点です。審査要領は「上陸基準省令第二号(事業の規模)については通常の「経営・管理」と同様の審査を行う」と明記しています(10-27)。資本金等3,000万円と常勤職員1人以上の要件は、通常の申請と同じようにかかります。
地方公共団体の起業支援施設
地方公共団体の起業支援の対象として認定され、そのインキュベーション施設に入居し、自治体が事業所経費などを負担していると認められる場合は、その負担額を最大で年間200万円まで考慮します。申請人の投下額と合わせて3,000万円以上であれば、第2号ロ(資本金等)に適合するものとして扱われます(10-23〜10-25)。審査要領の計算例では、同等の民間施設の賃料が月8万円で本人負担が月1万円なら、年84万円を算入でき、資本金等は2,916万円以上でよいとされています。在留期間は1年で、支援が終わった後の更新では、基準への適合を改めて審査されます。自治体の制度の例は福岡市スタートアップビザとは?経営管理ビザへの切替えと2025年改正後の資本金要件で扱っています。
更新と許認可でも、事業所は見られる
事業所は、申請の時点だけの要件ではありません。経営・管理の活動は事業が継続的に運営されることが前提で(10-16)、更新では登記事項証明書などの提出が求められます(10-12)。移転した場合も、移転先が第1号の要件を満たしていることが必要です。
許認可が必要な業種では、事業所の選び方がさらに重要になります。審査要領には、許認可の例が一覧で載っています(10-21〜10-22)。宅地建物取引業、古物営業、風俗営業、飲食業、食料品製造業、建設業、労働者派遣事業、有料職業紹介事業、運送業、産業廃棄物処理業などです。審査では、その取得状況が確認されます。在留許可を受けてからでないと許認可が取れない合理的な事情がある場合は、在留期間「4月」を決定して次回の更新で取得状況を確認する扱いです(10-21、改正Q&A 問28)。物件を決める段階で、許認可に必要な設備を備えられるかも確認しておいてください。在留期間4月の経営管理ビザとは|会社設立前の申請と許認可もあわせて参照してください。
よくある質問
Q. 自宅の一室を事務所にして経営管理ビザを申請できますか?
原則としてできません。2025年10月の改正後、審査要領は自宅兼事業所を「基本的に想定されず」とし、改正Q&Aも「原則として認められません」としています。住居と切り離された、独立した事業所を確保してください。
Q. バーチャルオフィスの住所で会社を登記しました。この住所で申請できますか?
できません。住所と電話番号を借り、郵便物を転送するだけで、実際に経営を行う場所がないバーチャルオフィスは、事業所とは認められません。
Q. シェアオフィスやコワーキングスペースで申請できますか?
独立性のない区画は、原則として事業所の要件を満たしにくい形態です。例外として、インキュベーターの支援を受けて使用承諾書がある場合や、ジェトロの支援認定企業の代表者が起業から3年以内に申請する場合は、事業所の要件に適合するものとして扱われます。
Q. 事務所の賃貸借契約を結ぶ前に申請できますか?
できます。契約前であれば、検討している物件の場所・広さ・予算などを記載した資料で審査されます。契約するときは、使用目的を事業用とし、名義を法人にする必要があります。
物件の契約前に確かめる3点
事務所の賃貸借契約にサインする前に、用途が事業用になっていること、契約者を法人の名義にできること、区画が独立していて常勤職員が働ける広さと設備があることの3点を確認してください。許認可が必要な業種なら、その許認可の設備基準を満たせるかも同時に確認します。
シェアオフィスやインキュベーション施設を使う場合は、使用承諾書を出してもらえるか、ジェトロや自治体の支援の対象になるかを、申込みの段階で運営者に確かめておくことが先決です。いずれの場合も、事務所の要件だけでなく、資本金等3,000万円・常勤職員・日本語・経歴の要件を並行して満たす必要があります。要件の全体像は【2025年改正対応】経営管理ビザの要件とは?資本金・常勤職員・日本語・経歴・事業計画の確認で整理しています。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第10節「経営・管理」 10-3〜10-4(第1号・事業所の定義)、10-8、10-11(事業所の確認)、10-12(更新時)、10-16〜10-17(事業所の留意事項)、10-21〜10-22(許認可)、10-23〜10-27(地方公共団体の起業支援・ジェトロ特例)
- 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A 令和8年6月26日更新)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
- 出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」(令和8年6月一部改訂)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html