本文へ移動
保利国際法務事務所 外国人採用・就労ビザ相談室
保利国際法務事務所の外国人採用・就労ビザLPへ 電話で無料相談 050-5526-5506 いますぐ無料相談フォームへ
保利国際法務事務所 外国人採用・就労ビザ相談室

技人国から経営管理ビザへの変更|独立・起業するときの要件とタイミング

技人国(技術・人文知識・国際業務)で働く外国人が独立して自分の会社を経営するには、在留資格を「経営・管理」に変更する許可が必要です。求められる基準は、海外から新たに起業する人と同じで、技人国で日本に長く勤めたことで緩和されるものはありません。2025年10月16日施行の改正後は、次の要件を満たす必要があります。資本金等3,000万円以上、日本人など常勤職員1人以上の雇用、日本語能力、経歴(関連分野の修士等の学位または経営・管理の経験3年以上)、専門家が確認した事業計画書です。

多くの技人国の人にとって、日本語の要件は日本の大学を卒業していれば満たせる一方、経歴の要件が最も高い壁になります。会社員として働いた年数が、そのまま経営・管理の経験と認められるとは限りません。タイミングの面では、変更の許可を受ける前に自分の会社で事業を始めないこと、そして審査に時間がかかることを前提に申請の時期を決めることが要点です。

ここでは、入国・在留審査要領 第12編(開示版)10-2〜10-3と、出入国在留管理庁の公表資料をもとに、独立・起業するときの要件とタイミングを整理します。

この記事でわかること

  • 社内での昇進と、独立・起業で扱いが違う理由
  • 技人国から経営・管理への変更で満たすべき改正後の基準
  • 技人国の勤務経験が経営経験3年に数えられるか
  • 退職・会社設立・変更申請の順序と、審査期間の実績

昇進による変更と、独立による変更は別物

審査要領は、技人国と経営・管理の関係を次のように整理しています。企業の経営活動や管理活動は、自然科学や人文科学の知識を使う業務でもあることが多く、技人国の活動と一部重なります。重なる場合は「経営・管理」を決定し、業務に経営・管理の活動が含まれていても経営・管理に当たらない場合は、技人国への該当性に留意します(10-2〜10-3)。そのうえで、社内で昇進した場合について、次の取扱いを置いています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-3)

「企業の職員として「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で在留していた外国人が、昇進等により当該企業の経営者や管理者となったときは、直ちに「経営・管理」の在留資格に変更することまでは要しないこととし、現に有する「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の在留期限の満了に併せて「経営・管理」の在留資格を決定しても差し支えない。」

この取扱いは、「当該企業の」経営者や管理者になった場合、つまり勤めている会社の中で役員や部長に昇進した場合のものです。会社を辞めて自分の会社をつくる場合は、事業の経営を新たに開始する活動になり、この猶予の対象ではありません。昇進した場合の扱いは技人国の社員が役員・管理職に昇進したら|経営・管理への変更は期限満了時でよいで詳しく扱っています。

新たに事業を始める場合、審査要領は、申請の時点ではまだ経営に参画していないことを踏まえ、事業開始に至る経緯全体を見るとしています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-2)

「開始するとする事業の内容の具体性や、申請人が取得した株式や事業に投下している資金の出所等の事業の開始に至る経緯全般から、申請人が単に名ばかりの経営者ではなく、実質的に当該事業の経営を行う者であるかどうかを判断する。」

技人国で働いてきた人の場合、3,000万円の出所として、給与を貯めた預金の履歴が中心になるはずです。筆者は、給与の入金から出資までの流れを通帳でたどれるようにし、親族からの援助や借入れがあればその契約書と送金記録を添えることをおすすめしています。

変更許可の審査の枠組み

在留資格の変更は、入管法上「在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があること」が審査基準です(出入国在留管理庁の在留資格変更許可申請の手続ページ)。出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」は、考慮事項を挙げています。在留資格該当性、上陸許可基準への適合、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと、素行、独立生計、雇用・労働条件の適正、納税義務等の履行、入管法上の届出義務の履行です。

ここでいう在留資格該当性とは、これから行う活動が経営・管理の活動に当たるかどうかを指し、上陸許可基準への適合とは、上陸基準省令の第1号〜第5号を満たすかどうかを指します。技人国から変更する人に特有なのは3つ目の点で、技人国として届け出た業務に実際に従事してきたか、住民税を納め、転職のたびに所属機関の届出をしてきたかも、変更の審査で見られます。

なお、変更の不許可に対して行政不服審査法の審査請求はできません(同法第7条第1項第10号。手続ページの表示も「不服申立方法:なし」)。争う場合は取消訴訟になり、実務では理由を確認したうえでの再申請が中心です。

改正後の基準と、技人国出身者がつまずきやすい点

出入国在留管理庁の改正ページとガイドラインが示す新基準を、技人国から独立する人の視点で並べると次のとおりです。

基準 内容 技人国から独立する人の注意点
事業所(第1号) 事業所が本邦に存在すること(開始前なら確保されていること) 自宅兼事業所は原則不可(問20、10-17)。賃貸借契約は事業用・法人名義で(公表資料「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」も同旨)
常勤職員(第2号イ) 本邦に居住する常勤職員1人以上。日本人、特別永住者、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者に限る 技人国などの就労資格の元同僚を雇っても数えられない
資本金等(第2号ロ) 3,000万円以上。資本準備金等は含めない(問7) 資金の出所を通帳の履歴で説明する(10-2)
日本語能力(第3号) 申請者か常勤職員のいずれかがB2相当 日本の大学卒業・専修学校専門課程修了なら試験は不要(外国語課程・通信課程を除く)
経歴(第4号) 関連分野の博士・修士・専門職学位、または経営・管理の経験3年以上 技人国での勤務年数が数えられるかは明示がない【要確認】
事業計画書 中小企業診断士・公認会計士・税理士(日本の資格に限る)の確認 申請する会社の役員・従業員は確認者になれない(問18)

改正前は、資本金500万円以上または常勤職員2人以上のいずれかで規模の基準を満たせました(10-28)。改正後は常勤職員と3,000万円の両方が必要です。経過措置は、施行の前日までに受け付けた申請と、既に経営・管理で在留している人の更新のためのものです(改正ページQ&A 問1)。これから技人国から変更する人には適用されません。改正全体は【2025年10月16日施行】経営管理ビザ厳格化の新基準と経過措置|資本金3,000万円・常勤職員・日本語要件で扱っています。3,000万円の数え方については、経営管理ビザの資本金3,000万円はどう数える?出資金・借入金・新株予約権の扱い【2025年10月改正】で解説しています。

日本語の要件は、技人国の人には比較的満たしやすい基準です。審査要領は、本邦の大学を卒業した人や、本邦の高等専門学校・専修学校の専門課程を修了した人を、試験による証明が不要な人として挙げています(10-6)。留学から技人国に進んだ人であれば、卒業証明書で足りる場合が多くなります。

経歴の要件:技人国の勤務年数は数えられるか

第4号は、経営管理に関する分野または事業に必要な技術・知識の分野の博士・修士・専門職学位を持つか、事業の経営又は管理について3年以上の経験を持つことを求めています(10-7)。審査要領は、経験年数に含まれるものを次のように書いています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-10)

「事業の経営又は管理の経歴については、本邦外での経歴及び本邦での「経営・管理」の活動期間のほか、「特定活動」の在留資格のうち、本邦において貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動を含む活動を指定された期間がある場合には、当該期間が含まれる」

この直後の数行は黒塗りで、開示版からは読めません。

本邦での期間として明記されているのは、経営・管理の活動期間と起業準備の特定活動の期間です。技人国で在留していた期間に部長などの管理職を務めていた場合、その期間が「事業の管理」の経験として数えられるかについては、審査要領にも公表資料にも明示がありません【要確認】。技人国の期間を経験に数えたい場合は、職務内容を示す資料を厚めに用意し、事前に入管へ確認するのが確実です。

学士だけで経営経験がない場合は、第4号を満たしません。事業の分野に関連する修士の学位であれば、MBAに限らず足ります。独立を考え始めた段階で、自分がどちらの道で第4号を満たすのかを最初に確かめてください。

経歴は、履歴書と在職証明書で審査されます。当事務所では、次のような案件を扱ったことがあります。

経歴に誤りがあった事案
経歴の記載に、詐称と受け取られてもおかしくない誤りがあった案件です。事情を隠さず正直に説明したところ、許可が出ました。後から発覚した場合の方が、心証への影響ははるかに大きくなります。

※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。

独立のタイミング:何をどの順で進めるか

技人国から独立するときの手続の順序は、在留資格の規制と審査期間の2つから決まります。

1つ目は資格外活動の規制です。技人国などの別表第一の在留資格を持つ人は、許可された活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動を、資格外活動の許可なく行えません(入管法第19条第1項)。自分の会社で売上を立てる営業を始めるのは、経営・管理への変更許可を受けてからです。

2つ目は審査期間です。出入国在留管理庁が公表した2026年7月許可分の実績では、経営・管理への変更は許可までの平均が194.5日でした(在留審査処理期間)。技人国の更新の平均40.8日と比べると、準備の段階から長期戦を見込む必要があります。在留期間の満了日までに申請していれば、処分が出るか満了日から2か月を経過するまでのいずれか早い時まで在留を続けられますが、それを超える審査期間には対応できません。

段階 やること 注意点
在職中 経歴の要件の確認、資金の準備と出所の整理、事業計画の作成、事業所候補の選定 会社の準備行為を超えて営業を始めない
退職前後 退職、所属機関の届出(14日以内) 無職の期間が長引くと在留資格の取消しの問題が生じる
会社設立 定款作成、資本金3,000万円の払込み、登記、事業所の契約、常勤職員の採用 登記前に申請する方法もある(在留期間4月)
変更申請 専門家の確認を受けた事業計画書を添えて申請 在留期限まで十分な期間を残して申請する

退職した後は、所属機関に関する届出を14日以内に出す義務があります(入管法第19条の16)。また、技人国の活動を継続して3か月以上行っていない場合は、正当な理由がある場合を除き、在留資格の取消しの対象になります(入管法第22条の4第1項)。出入国在留管理庁のQ&Aは、正当な理由の例として、退職後に会社訪問など具体的な就職活動をしている場合を挙げていますが、起業の準備をしている場合が正当な理由に当たるかは明記していません【要確認】。筆者は、退職から変更申請までの期間をできるだけ短くし、在職中に準備を進める順序をおすすめしています。

会社の登記を済ませる前に変更を申請することもできます。定款などで設立予定を示せば審査を受けられ、その場合は在留期間4月が決定されます(10-14)。4か月の間に登記、事業所の契約、常勤職員の採用を終える必要があるため、準備が整わないうちに選ぶ方法ではありません。詳しくは在留期間4月の経営管理ビザとは|会社設立前の申請と許認可で扱っています。

永住を考えている人が知っておくこと

技人国で在留を重ね、将来の永住を考えている人は、経営・管理に変えることの影響も確認しておく必要があります。改正ページは、新基準に適合しない場合、経営・管理からの永住許可を認めないとしています。独立後の会社が新基準を満たし続けることが、永住への道を残す条件になります。

よくある質問

Q. 技人国のまま自分の会社を経営できますか?

できません。技人国は本邦の公私の機関との契約に基づく専門業務のための在留資格で、自分の会社で収入を伴う事業を運営するには、経営・管理への変更許可が必要です。許可を受ける前に自分の会社で営業を始めると、資格外活動の問題が生じます。

Q. 技人国で5年働いた経験は、経営管理ビザの経歴3年に数えられますか?

審査要領が本邦での期間として明記しているのは、経営・管理の活動期間と起業準備の特定活動の期間です。技人国の期間に管理職を務めていた場合に経験として数えられるかは明示がないため、職務内容を示す資料を用意したうえで事前に確認するのが確実です。関連分野の修士等の学位があれば、経験年数によらず第4号を満たせます。

Q. 日本の大学を卒業していれば日本語の要件は満たせますか?

満たせます。本邦の大学を卒業した人や、本邦の高等専門学校・専修学校の専門課程を修了した人は、試験による証明が不要とされています。ただし恒常的に外国語で授業を行う課程や通信による課程を卒業・修了した場合は除かれます。

Q. 変更申請の審査にはどのくらいかかりますか?

出入国在留管理庁が公表した2026年7月許可分の実績では、経営・管理への変更は許可までの平均が194.5日でした。手続ページの標準処理期間は1〜2か月とされていますが、実績の平均はこれを大きく上回っています。在留期限まで十分な期間を残して申請してください。

独立を決めたら最初に確認すること

技人国からの独立で最初に確かめるべきは、資金よりも経歴です。関連分野の修士等の学位があるか、3年以上の経営・管理の経験を示せるか。どちらもなければ、3,000万円を用意しても変更の許可は受けられません。経歴の見通しが立ったら、資金の出所の整理、常勤職員の採用計画、専門家の確認を受ける事業計画書の順に準備を進め、在職中のうちに申請の時期を決めてください。変更申請書の記載は在留資格変更許可申請書の書き方|記入例と企業が記載する欄の注意点を解説で解説しています。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第10節「経営・管理」10-2〜10-3(実質的な経営者の判断、技人国との関係、昇進時の扱い)、10-5〜10-7(第2号〜第4号)、10-10(経歴の審査)、10-14(在留期間4月)、10-17(自宅兼事業所)、10-28(旧基準)
  • 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A 令和8年6月26日更新)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
  • 出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について」(ガイドライン)https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf、改正概要 https://www.moj.go.jp/isa/content/001448231.pdf
  • 出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html
  • 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html
  • 出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」手続ページ https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-2.html
  • 出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」https://www.moj.go.jp/isa/immigration/faq/kanri_qa.html
  • 出入国在留管理庁「在留審査処理期間(令和8年7月許可分)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00140.html
  • 出入国管理及び難民認定法 第19条第1項、第19条の16、第22条の4第1項/行政不服審査法 第7条第1項第10号