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経営管理ビザの資本金3,000万円はどう数える?出資金・借入金・新株予約権の扱い【2025年10月改正】

会社を設立して経営管理ビザを取る場合、3,000万円は、登記された資本金の額(株式会社の払込済資本の額、合同会社などの出資の総額)で数えます。資本準備金や剰余金、役員報酬や事務所の家賃、別の会社の資本金を足すことはできません。足せるのは、返還義務のない払込みを受けた新株予約権のうち将来資本金に計上する額と、地方公共団体の起業支援で自治体が負担している事業所経費(年間200万円まで)の2つに限られます。

返済義務のある借入金を資本金にすることについて、入国・在留審査要領は「違法とされている」と明記しています。資本金の額が足りていても、その資金をどこから用意したかは別に審査されます。

以下では、2025年10月16日施行の上陸基準省令の改正を反映した審査要領 第12編(開示版)第10節(10-4〜10-5、10-8〜10-9ほか)を根拠にします。出入国在留管理庁の改正ページのQ&A(令和8年6月26日更新)もあわせて参照し、数え方の線を一つずつ引いていきます。

この記事でわかること

  • 3,000万円に数えるもの・数えないものの一覧
  • 払込金の一部を資本準備金にすると基準を下回る理由
  • 借入金・資金の出所・共同出資の審査
  • 新株予約権(J-KISS型)を算入するための立証資料
  • 地方公共団体の起業支援で補える額と、既存の在留者の経過措置

3,000万円の要件は条文のどこにあるか

経営・管理の上陸基準省令は、事業の規模を第2号で定めています。ここでいう上陸基準省令とは、在留資格ごとに入国・在留の基準を定めた法務省令を指します。2025年10月の改正で、第2号は「イ 常勤職員が従事していること」と「ロ 財産の総額が3,000万円以上であること」の両方を求める形になりました。

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-4)

「申請に係る事業の用に供される財産の総額(資本金の額及び出資の総額を含む。)が三千万円以上であること。」

第2号ロの条文。審査要領は、この要件を「事業主体が法人か個人かにかかわらず、申請に係る事業に投下された財産が3,000万円以上であることを要件とするもの」と説明しています。

改正前の第2号ロは「資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること」で、ハとして「イ又はロに準ずる規模」という受け皿もありました(10-28)。新基準には「準ずる規模」の規定がありません。3,000万円に届かない分を、事業の実績や売上の見込みで補うことはできない仕組みです。

条文の文言は「財産の総額」ですが、審査要領は法人と個人で物差しを分けています。法人は資本金(出資の総額)で、個人は事業に投下した総額で判断します。この記事は主に法人の数え方を扱い、個人事業は最後に要点だけ触れます。

法人は貸借対照表の「資本金」の行だけで数える

法人の場合、株式会社は払込済資本の額(資本金の額)、合名会社・合資会社・合同会社は出資の総額が3,000万円以上であることが必要です(10-4)。審査の段階では、法人の場合「「貸借対照表」の「資本金」の額で判断し」、登記事項証明書で実際に事業へ投下されたことを確認します(10-8)。

改正ページのQ&Aは、数えないものを具体的に挙げています。整理すると次のとおりです。

項目 3,000万円に数えるか 根拠
株式会社の資本金(払込済資本の額) 数える 10-4、10-8
合名・合資・合同会社の出資の総額 数える 10-4
新株予約権の払込金のうち、将来資本金に計上する額(返還義務のない確定額) 数える(立証資料が必要) 10-4、10-8〜10-9
地方公共団体が申請人に代わって負担する事業所経費等 年間200万円まで考慮 10-23〜10-24
資本準備金・資本剰余金・利益剰余金 数えない Q&A 問7
役員報酬・職員の給与・事務所費 数えない(法人の場合) Q&A 問8
グループ会社など複数社の資本金の合算 数えない(どれか1社で3,000万円以上) Q&A 問11
返済義務のある借入金 資本金にすること自体が違法 10-4

この表でいちばん見落とされやすいのが、資本準備金です。会社法は、株式の払込金のうち2分の1を超えない額を資本金に計上せず、資本準備金にできるとしています(会社法第445条第2項・第3項)。この仕組みは経営管理ビザの審査では不利に働きます。3,000万円を払い込んでも、半額を資本準備金にすれば資本金は1,500万円と扱われ、基準を満たしません。定款と設立時の払込みを設計する段階で、資本金として計上する額を3,000万円以上にしておく必要があります。

同じ貸借対照表でも、更新の審査では別の行が見られます。事業の継続性を判断するときの「剰余金」は「法定準備金を含むすべての資本剰余金及び利益剰余金」(10-19)と定義され、欠損金や債務超過の有無で段階的に評価されます。3,000万円の判定は資本金の行、継続性の判定は純資産の部の剰余金・欠損金と、読む場所が分かれていると理解してください。

合同会社の「出資の総額」

合同会社・合名会社・合資会社には、株式会社と同じ意味での「払込済資本」がないため、条文は「出資の総額」で基準を示しています(10-4)。金額の基準は株式会社と同じ3,000万円で、会社の種類によって有利・不利はありません。社員が複数いる場合は、次に述べる共同出資の審査がかかります。

借入金は資本金にできない

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-4)

「なお、返済義務のある借入金を資本金とすることは違法とされている。」

審査要領はこの直後に、発起人が払込みを仮装した場合の責任を定めた会社法第52条の2を参考として掲げています。

銀行や知人から会社が借りた3,000万円を、資本金の払込みとして計上する形が、この記述の対象です。審査要領が参考として会社法の仮装払込みの規定を掲げているのは、返す約束のある資金を資本金の行に載せる形を想定したものと筆者は読んでいます。

では、申請人個人が借りたお金を会社に出資した場合はどうなるか。この場合、会社から見れば返済義務のない出資ですが、申請人個人には返済義務が残ります。この形の扱いを明示した記述は、審査要領にも公表資料にも見当たりません【要確認】。確実にいえるのは、次の記述により資金の出所が審査の対象になるという点です。

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-2)

「開始するとする事業の内容の具体性や、申請人が取得した株式や事業に投下している資金の出所等の事業の開始に至る経緯全般から、申請人が単に名ばかりの経営者ではなく、実質的に当該事業の経営を行う者であるかどうかを判断する。」

ここで重要なのは、3,000万円の審査が「資本金の額」と「その資金の出所」の二段構えになっているという論点です。額は登記と貸借対照表で確認できますが、出所は申請人が説明しなければ伝わりません。筆者が最低限の準備と考えるのは、資金の性質に応じた資料で経緯をたどれるようにしておくことです。自己資金であれば貯蓄の形成過程を示す通帳の履歴、親族からの贈与であれば贈与契約書と送金記録、個人の借入れであれば返済計画と返済原資が、その資料に当たります。名ばかりの経営者と判断される場面は名ばかり経営者と資金の出所|経営管理ビザで「実質的に経営に従事」と認められる条件で詳しく扱っています。

共同出資で3,000万円を集める場合

複数人で出資して会社をつくり、それぞれが経営・管理の在留資格を申請する場合について、審査要領は確認の手順を示しています(10-16)。まず、事業規模から見て各人が経営を主たる活動とする合理的な理由があること、各人の業務内容が明確であること、各人が相当の報酬を受けることを確認します。そのうえで、財産の総額が「基準と乖離しているものでないこと」を確認するとしています。小規模な事業で申請人以外にも経営者がいる場合は、投資の割合や業務内容を比べることも必要とされています(10-2)。1社で3,000万円を満たしていても、出資者の人数で割ったときの実質的な規模は見られると考えておくべきです。

新株予約権:J-KISS型なら定型的に審査される

スタートアップの資金調達では、株式を発行する前に新株予約権で投資を受けることがあります。審査要領は、新株予約権の発行により「返還義務のない確定した金額が既に払い込まれている場合」、払い込まれた金額のうち将来資本金に計上する額を3,000万円に算入できるとしています(10-4)。公表資料(外国人経営者の在留資格基準の明確化について)も、権利が行使された場合と失効した場合のいずれでも資本金に計上するものであれば算入できると説明しています。

算入するには、次の3種類の立証資料が必要です(10-8〜10-9)。

  • 新株予約権の発行に当たり締結された投資契約書(発行要項を含む)
  • 実際に払い込まれた額を証明する資料(通帳の写しまたは取引明細書の写し)
  • 3,000万円に計上しようとする額を、将来、新株予約権が行使された際に資本金として計上することの誓約書等

審査の方法は、投資契約書の様式で分かれます。J-KISS型の投資契約書が提出され、雛形の空白や括弧書きの箇所以外が変更されていない場合の扱いは、次のとおりです。発行要綱の「新株予約権の数」に「新株予約権1個あたり」の金額を掛けた額が、通帳等で確認した払込額と一致すれば、そのまま算入を認めます(10-9)。雛形以外の様式の場合は、払い込まれた額が返還義務のない確定したものかどうかを、地方局から本庁(在留管理課就労審査係)へ照会します。

このため、J-KISS型の雛形を独自に書き換えた契約書は、照会の分だけ審査に時間がかかると見込んでおく必要があります。筆者は、返還条項や条件付きの払込みを付けた契約は、「返還義務のない確定した金額」という前提そのものを満たさないおそれがあると考えています。

地方公共団体の起業支援で補える額

地方公共団体の起業支援の対象として認定され、自治体が指定するインキュベーション施設に入居している場合には、特例があります。自治体が申請人に代わって負担している事業所の経費やコンサルタントの利用料を、最大で年間200万円まで考慮します。申請人が投下した額と合わせて3,000万円以上であれば、第2号ロに適合するものとして扱います(10-23〜10-24)。負担額は、同等の民間施設を使った場合の金額と申請人の負担額との差額で計算します。

項目 審査要領の計算例(10-24)
同等の民間施設の賃料 月額8万円
申請人の負担額 月額1万円
自治体の負担と認める額 月額7万円(年間84万円)
必要な資本金の額又は出資の総額 2,916万円以上

この取扱いは、起業支援の内容にインキュベーション施設への入居が含まれない場合は対象外です。在留期間は1年で、支援が終わった後の更新では基準への適合を改めて審査します。補えるのは多くても年200万円なので、3,000万円の大部分は自己資金等で用意する必要がある点は変わりません。福岡市の制度との関係は福岡市スタートアップビザとは?経営管理ビザへの切替えと2025年改正後の資本金要件で扱っています。

なお、ジェトロが支援する外国企業の代表者には、コワーキングスペースを事業所として使える特例があります。ただし審査要領は、この特例は事業所の要件(第1号)の緩和だけで、「上陸基準省令第二号(事業の規模)については通常の「経営・管理」と同様の審査を行う」(10-27)としています。3,000万円の要件は緩和されません。

会社の登記前に申請する場合

法人の登記が完了していないため登記事項証明書を出せない場合は、「定款その他当該法人を設立しようとしていることを明らかにする書類の写し」で、設立に際して出資される金額を確認します(10-11)。この場合は在留期間「4月」が決定されます(10-14)。4月の人の更新では登記事項証明書の提出を求め、提出がない場合は、認定申請のときに出した事業計画書や設立予定を示す資料との整合性などを慎重に審査するとされています(10-13)。定款に書いた出資額どおりに登記を済ませておくことが前提です。

個人事業主の場合は「投下総額」で数える

個人事業には資本金がないため、3,000万円は事業を営むために投下した総額で判断します。対象は、事業所の確保にかかる経費、役員報酬と職員(常勤・非常勤を問わない)に1年間に支払う報酬、事務機器の購入費と事業所の維持費です(10-5)。法人では給与や事務所費を3,000万円に足せないのに対し(問8)、個人事業ではこれらが投資額そのものになります。ただし「単なる預貯金については事業に投下される財産とは取り扱わず」(10-8)とされ、口座残高だけでは足りません。詳しくは個人事業主で経営管理ビザは取れる?3,000万円の「投資額」の判断で扱っています。

既に経営管理ビザを持つ人は、いつまでに増資が必要か

施行日の前日(2025年10月15日)までに受け付けて審査中だった申請には旧基準が適用され、資本金500万円のままでも審査されます(Q&A)。既に経営・管理で在留している人は、令和10年(2028年)10月16日までの更新であれば、新基準を満たさないことだけを理由に不許可にはならないとされています(問1)。

その後の最初の更新からは、原則として新基準への適合が求められます。満たしていなくても、経営状況が良好で法人税等を納め、次回更新までに新基準を満たす見込みがあれば総合的に判断し、「一律に不許可処分となるものではありません」(問3)とされています。ただし新基準に適合しない場合は、経営・管理からの永住許可は認められません。増資の時期は、永住を考えるかどうかで大きく変わります。経過措置全体は【2025年10月16日施行】経営管理ビザ厳格化の新基準と経過措置|資本金3,000万円・常勤職員・日本語要件で整理しています。経営・管理ビザの経過措置とは?2028年10月までに企業が備えるべきことを解説もあわせて参照してください。

よくある質問

Q. 3,000万円を払い込めば、その一部を資本準備金にしてもよいですか?

経営管理ビザの審査では、資本準備金・資本剰余金・利益剰余金は3,000万円に含めません。法人の場合は貸借対照表の「資本金」の額で判断するため、3,000万円を払い込んでも半額を資本準備金にすれば、資本金は1,500万円として扱われ基準を満たしません。資本金として計上する額を3,000万円以上にしておく必要があります。

Q. 知人や銀行から借りたお金を資本金にできますか?

会社が返済義務のある借入金を資本金とすることは違法とされていると、審査要領に明記されています。申請人個人が借りた資金を会社に出資する形の扱いは、審査要領にも公表資料にも明示がありません。いずれの場合も資金の出所は審査の対象になるため、借入れの契約内容や返済計画を含めて説明できるようにしておく必要があります。

Q. グループ会社2社の資本金を合わせて3,000万円にできますか?

できません。複数の会社の資本金を合算することは認められず、経営・管理の申請に係る会社1社で3,000万円以上が必要です。

Q. J-KISS型の新株予約権で集めた資金は3,000万円に数えられますか?

返還義務のない確定した金額が払い込まれていれば、将来資本金に計上する額を算入できます。投資契約書、払込額を示す通帳等の写し、将来資本金に計上する旨の誓約書等が必要です。J-KISS型の雛形を空白や括弧書き以外変更せずに使っている場合は定型的に審査され、雛形以外の様式の場合は本庁への照会が行われます。

Q. 役員報酬や事務所の家賃を3,000万円に足せますか?

法人の場合は足せません。給与や事務所費を資本金に合算することはできないとされています。個人事業の場合は、事業所の確保にかかる経費、1年間の役員報酬・職員の給与、事務機器の購入費・事業所の維持費が投資額として数えられます。

資本金を決める前に確認しておくこと

3,000万円は、経営管理ビザの要件の一つにすぎません。同じ第2号イで常勤職員1人以上の雇用が必要で、第3号の日本語能力、第4号の経歴(修士等の学位または3年以上の経営・管理経験)、独立した事業所、専門家の確認を受けた事業計画書もそろえる必要があります。資本金を用意できても、経歴の要件を満たしていなければ申請はできません。

法人を設立する前に、次の3点を確認してください。資本金に計上する額が3,000万円以上になっているか(資本準備金に回していないか)。払込みの資金の出所を、通帳の履歴や契約書で最初からたどれるか。新株予約権を使う場合は、J-KISS型の雛形を変えずに使っているか。登記した後で資本金の額を直すには増資の手続が必要になるため、定款を作る段階でご相談いただくのが確実です。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第10節「経営・管理」10-2(資金の出所)、10-4〜10-5(第2号ロ、新株予約権、借入金、個人事業の投資)、10-8〜10-9(規模の確認、新株予約権の立証資料と審査)、10-11、10-13〜10-14(登記前の申請、在留期間4月)、10-16(共同出資)、10-19(剰余金の定義)、10-23〜10-24(地方公共団体の起業支援)、10-27(ジェトロ特例)、10-28(旧基準)
  • 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A 令和8年6月26日更新)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
  • 出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html
  • 会社法第445条第2項・第3項(資本金の額に計上しない額)、第52条の2(払込みを仮装した場合の責任)