日本に戻るのが出国から1年以内で、しかも在留期限より前なら、空港で再入国の意思を示すだけの「みなし再入国許可」で足ります。ここでいうみなし再入国許可とは、再入国許可の簡易版として入管法26条の2が用意した仕組みで、事前の申請なしに再入国許可を受けたものとみなされる許可を指します。1年を超える可能性が少しでもあるなら、出国前に地方出入国在留管理官署で「再入国許可」を取っておく。この二つの使い分けを誤ると、帰国した時点で在留資格そのものが消えています。
もう一つ、手続きとは別の問題があります。どちらの許可で出国しても、海外にいる期間が長く、しかも正当な理由がなければ、次の更新や変更の審査で「在留資格に応じた活動を行っていなかった」と扱われます。入国・在留審査要領(入管の内部基準。情報公開請求で開示された版)の1-28にそう書かれています。何日から「長期間」なのかは黒塗りで読めませんが、経営・管理のQ&Aには「在留期間の過半」という目安が公表されています。
外国人社員を長期出張に出す会社、一時帰国を予定している外国人本人の双方にとって、確認すべきは「戻れるか」と「戻った後に更新できるか」の二段階です。
この記事でわかること
- 再入国許可とみなし再入国許可の有効期間・手数料・延長の違い
- 更新申請中や在留期限の直前に出国するときの注意点
- 審査要領1-28が定める「長期間の出国」の扱いと、黒塗りで読めない部分
- 経営・管理Q&Aの「在留期間の過半」という目安の読み方
- 森川キャサリーン事件が示す、再入国の位置づけ
二つの制度の違いを一枚の表で
在留資格は、日本を出国すると原則として消滅します。それを防いで、戻ったときに同じ在留資格・在留期間のまま活動を続けられるようにする許可を、再入国許可と呼びます(入管法26条)。みなし再入国許可は、その簡易版として法律が用意したもので(同法26条の2)、事前の申請なしに再入国許可を受けたものとみなされます。
| 項目 | みなし再入国許可 | 再入国許可 |
|---|---|---|
| 事前の手続き | 不要。出国時に再入国の意図を示す | 出国前に地方出入国在留管理官署へ申請 |
| 有効期間 | 出国の日から1年以内。在留期限がそれより前に来る場合は在留期限まで | 在留期限の範囲内で最長5年(入管法26条3項) |
| 回数 | 1回の出国ごと | 1回限り/数次(期間内なら何度でも) |
| 手数料 | 不要 | 窓口4,000円(1回)・7,000円(数次)、オンライン3,500円・6,500円 |
| 海外での期間延長 | できない | 在外公館で延長を申請できる(同条5項) |
| 使えない人 | 在留期間3月以下の人、短期滞在の人など | ― |
手数料は出入国在留管理庁の再入国許可申請ページの記載によります。令和8年10月1日から在留許可の手数料が在留期間に応じて大きく引き上げられますが、再入国許可の手数料は据え置かれています(「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」)。オンライン申請では、別に決済手数料がかかります。
表のうち、実務でいちばん効いてくるのは「海外での期間延長」の行です。みなし再入国許可で出国した人は、現地で病気になっても、家族の事情で帰れなくなっても、1年を延ばす手段がありません。
みなし再入国許可:空港での一言で済むが、延長がきかない
みなし再入国許可を使えるのは、有効な旅券と在留カードを持って出国する中長期在留者です。出国手続きの際に再入国の意図を示せば、それで手続きは終わります。費用もかかりません。一時帰国や数週間の海外出張なら、ほとんどの人がこちらで足ります。
注意すべき点は二つあります。一つは有効期間の上限で、出国の日から1年、または在留期限のどちらか早いほうになります。在留期限まで残り4か月の人がみなし再入国許可で出国すれば、使える期間は4か月です。もう一つは、先ほど触れた延長不可の点です。期限内に戻れなかった瞬間に在留資格は失われ、日本の会社で働き続けるには、在留資格認定証明書の交付申請からやり直すことになります。
有効期間の数え方を、よくある3つの場面で整理しておきます。
| 場面 | 在留期限までの残り | みなし再入国許可で戻れる期限 | 判断 |
|---|---|---|---|
| 2週間の一時帰国 | 2年 | 出国の日から1年 | みなし再入国許可で足りる |
| 8か月の海外プロジェクト | 5か月 | 在留期限(出国から5か月) | 期限内に戻れないため、出国前に更新を済ませるか、日程を組み直す |
| 赴任期間が未定の海外駐在 | 3年 | 出国の日から1年 | 延長がきかないため、再入国許可(数次)を取っておく |
2番目の場面は見落とされがちです。出国から1年という数字だけを覚えていると、在留期限のほうが先に来ることに気づきません。
筆者は、出国時点で「1年以内に戻れる」と言い切れない予定であれば、迷わず再入国許可を取るよう勧めています。数千円の手数料は、在留資格を失ったときの再取得の手間と比べれば小さな先行投資です。
再入国許可の申請方法と手数料
再入国許可は、出国前に地方出入国在留管理官署で申請します。出国後に海外から申請することはできないので、出張や帰国の日程が決まった段階で動く必要があります。オンライン申請も利用でき、その場合の手数料はコンビニ決済か銀行決済で支払います。案内メールは「@service-dgft.com」からだけ届き、それ以外のアドレスからの支払い請求は詐欺だと入管庁が注意喚起しています。
1回限りと数次のどちらを選ぶかは、在留期間中の渡航回数で決まります。有効期間中に何度も海外出張がある社員なら、数次の再入国許可を取っておけば出国のたびに手続きをする必要がありません。有効期間は在留期限を超えられないため、在留期間を更新したら、改めて再入国許可を取り直すことになる点も押さえておいてください。
再入国許可で出国した後、やむを得ない事情で有効期間内に戻れなくなった場合は、在外公館で有効期間の延長を申請する道があります(入管法26条5項)。みなし再入国許可にはこの道がないことが、両者の決定的な違いです。
更新申請中・在留期限の直前に出国するとき
在留期間の更新申請をした後でも、再入国許可(みなし再入国許可を含む)で出国することはできます。ただし条件があります。更新申請の後に出国した場合は、在留期限から2か月を経過する日までに再入国し、更新の処分を受けなければなりません(出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」Q23・Q61)。
在留期限の直前に申請して、結果を待たずに一時帰国する予定を組む人は珍しくありません。その場合、現地での滞在が延びて期限後2か月を過ぎると、更新の結果を受け取れないまま在留資格を失うことになります。申請の時期そのものについては在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?申請期限と標準処理期間を解説で整理しています。
長期間の出国は、更新・変更の審査でどう扱われるか
ここまでは「日本に戻れるか」の話でした。ここで重要なのは、戻れたとしても、その後の更新・変更で海外にいた期間がどう評価されるか、という論点です。審査要領は、第12編第2章第1節の第12「長期間の出国」でこれを正面から扱っています。
審査要領ではこう書かれている(入国・在留審査要領 第12編(開示版) 1-28)
中長期在留者が再入国許可による出国(みなし再入国許可による出国を含む。)をした場合において、「その期間が長期間にわたり、かつ、正当な理由がないときは、在留資格に応じた活動を行っていたとは認めないこととして取り扱う」。そのうえで、変更・更新の審査の際は「再入国許可による出国(みなし再入国許可による出国を含む。)の期間を確認し、」と続く。
引用の最後の読点の後は、開示版では黒塗りになっています。何日を超えたら「長期間」とするのか、どう計算するのかという具体的な基準は、内部基準としては存在するものの、外からは読めません。
この取扱いは更新だけでなく、在留資格の変更にもかかります。たとえば技人国から経営・管理へ切り替える場面でも、それまでの在留期間中に日本でどれだけ活動していたかが確認されます。変更は新しい活動の審査だと考えて過去の出国歴を気にしない人がいますが、審査要領は変更と更新を並べて書いています。
公表資料のほうはどうか。「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(令和8年6月最終改正)は、考慮事項の3番目に「現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと」を挙げています。その中で、長期間にわたる再入国許可による出国(みなし再入国許可による出国を含む)がある場合は、正当な理由があるときを除き、消極的な要素として評価すると書いています。ここでも日数は示されていません。
唯一、数字が公表されているのが、在留資格「経営・管理」の上陸基準省令改正に関するQ&Aです。問22は、決定された在留期間のうち、再入国許可(みなし再入国許可を含む)による出国が累計で過半を超える場合は、正当な理由があるときを除き、更新審査で消極要素とする、としています。
| 資料 | 書かれていること | 日数・割合 |
|---|---|---|
| 審査要領 1-28 | 長期間・正当な理由なしの出国は「在留資格に応じた活動を行っていたとは認めない」 | 黒塗りで読めない |
| 変更・更新ガイドライン | 長期間の出国は、正当な理由がない限り消極的な要素 | 示されていない |
| 経営・管理 Q&A 問22 | 出国が累計で在留期間の過半を超えれば、正当な理由がない限り更新審査の消極要素 | 在留期間の過半 |
たとえば在留期間3年の経営・管理の人なら、その3年のうち出国の合計が1年6か月を超えると、この目安に触れます。一回ごとの出国が短くても「累計」で見られる点に注意が必要です。
この「過半」は経営・管理のQ&Aに書かれた目安で、技術・人文知識・国際業務(技人国)など他の就労資格にそのまま当てはまるとは公表資料のどこにも書かれていません。筆者は、他の在留資格でも同じ考え方が内部で使われている可能性はあると見ていますが、確認できる資料はありません【要確認】。少なくとも、過半に届かなければ安全という読み方はできないと考えておくべきです。
「正当な理由」はどう示すか
審査要領もガイドラインも、「正当な理由」の中身を例示していません【要確認】。したがって、会社の業務命令による海外赴任、本人や家族の病気、出国中の事故といった事情がどこまで斟酌されるかは、個別の説明と資料次第になります。
筆者は、正当な理由がありそうな出国ほど、その時点で証拠を残しておくよう勧めています。業務命令なら出張命令書や業務報告、病気なら現地の診断書や入院記録です。更新申請のときに数年前の事情を思い出して資料を集め直すのは困難ですし、説明のない長期出国は、審査の側から見れば「日本での活動が途切れていた」と読むほかありません。
更新申請で出国歴をどう説明するか
すでに長く海外にいた期間がある人の更新では、審査官が出国の期間を確認することが審査要領上予定されている以上、こちらから先に説明しておくほうが得策です。筆者は、次のような一覧表を説明書に添えるよう勧めています。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 出国・帰国の日付 | 出入国の記録と一致させる。在留期間全体での累計日数も示す |
| 出国の目的 | 業務出張、会社命令の海外赴任、一時帰国、本人や家族の病気など |
| 裏付け資料 | 出張命令書、業務報告、現地の診断書など(添付資料の番号を対応させる) |
| 出国中の日本での活動との関係 | 日本の所属機関の業務として行った出張か、休職・休暇か |
| 帰国後の状況 | 帰国後に日本で活動を再開していることを示す勤務記録など |
出入国の日付は、本人の記憶や旅券のスタンプに頼ると誤りが出ます。出入国記録の開示請求で正確な日付を確認できることは、特定技能の通算在留期間の計算について入管庁も案内しています。
外国人社員を長期出張に出す会社が確認すること
就労系の在留資格は、日本の所属機関のもとで一定の活動をすることを前提に許可されています。海外出張の期間が長くなるほど、その前提が日本国内で満たされていた期間は短くなります。更新の審査は、許可した在留期間の中で申請どおりの活動が続いていたかを確認する場面でもあります。更新の審査全体の組み立ては在留期間更新の「相当の理由」とは|ガイドラインと審査要領で見る素行・納税・社会保険で扱っています。
在留資格の取消しとの関係も押さえておく必要があります。技人国や技能などの就労資格で、在留資格に応じた活動を3か月以上行っていない場合は取消しの対象になり得ますが、「正当な理由」があれば対象になりません。入管庁のQ&A(Q77)は、その例として退職後に会社訪問など具体的な就職活動をしている場合を挙げています。海外出張の扱いについてはQ&Aに記載がないため、取消しとの関係は在留資格の取消しとは?取消事由と外国人を雇用する企業への影響を解説もあわせて確認してください。
特定技能1号の社員には、別の数え方も絡みます。通算5年の在留期間には、再入国許可(みなし再入国許可を含む)で出国していた期間も含まれます(出入国在留管理庁「通算在留期間(特定技能1号)」)。一時帰国を長く取れば、それだけ日本で働ける残り期間が減る仕組みです。詳しくは特定技能1号の5年後はどうなる?通算5年の数え方(一時帰国・失業・産休育休)と在留を続ける方法を参照してください。
会社として最低限そろえておきたい管理項目は、次のとおりです。
- 社員ごとの在留期限と、出国・帰国予定日の一覧(みなし再入国許可の1年と在留期限のどちらが先に来るか)
- 出国が1年近くに及ぶ可能性がある社員について、出国前に再入国許可を取らせる運用
- 海外出張・赴任の命令書、業務内容の記録(更新時に「正当な理由」を説明する材料)
- 在留期間のうち出国していた日数の累計(とくに経営・管理の役員)
森川キャサリーン事件:再入国は権利として保障されていない
再入国許可の性格を考えるうえで外せない判例が、森川キャサリーン事件です。最高裁平成4年11月16日判決は、日本に在留する外国人に再入国の自由は憲法上保障されていない、と判断しました。
この判決から読み取れるのは、再入国許可が「申請すれば当然に出るもの」として位置づけられていないという点です。マクリーン事件(最高裁大法廷昭和53年10月4日判決、民集32巻7号1223頁)は、在留期間の更新について法務大臣の広い裁量を認めました。出入国の場面でもこれと同じく行政の判断の幅が大きく、外国人の側に権利として主張できる部分は狭い。筆者は、この構造があるからこそ、出国前の段階で手続きと説明資料を整えておく価値が大きいと考えています。
実務で日常的に再入国許可が不許可になる場面は多くありません。それでも、判例上の位置づけを知っておくと、「長く海外にいても在留資格は守られるはずだ」という思い込みの危うさがよく分かります。
よくある質問
Q. みなし再入国許可で出国して、1年を過ぎてしまったらどうなりますか?
みなし再入国許可は海外で有効期間を延ばせないため、出国の日から1年(在留期限がそれより前ならその期限)を過ぎた時点で効力を失い、それまでの在留資格もなくなります。日本に戻って同じ仕事を続けるには、在留資格認定証明書の交付申請からやり直すことになります。
Q. 在留期限が出国の半年後に来る場合でも、みなし再入国許可で出国できますか?
出国はできますが、みなし再入国許可の有効期間は在留期限までに縮みます。更新申請を済ませてから出国した場合は、在留期限から2か月を経過する日までに再入国して処分を受ける必要があります(出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」)。
Q. 何日以上の出国が「長期間の出国」として更新で不利になりますか?
審査要領の具体的な基準は黒塗りで開示されておらず、変更・更新のガイドラインも日数を示していません。公表資料で数字があるのは経営・管理のQ&Aだけで、決定された在留期間のうち再入国許可による出国が累計で過半を超える場合を、正当な理由がない限り更新審査の消極要素としています。
Q. 再入国許可を取っておけば、長く海外にいても更新に影響しませんか?
影響します。再入国許可は在留資格を失わずに出国するための手続きで、海外にいた期間を在留資格に応じた活動の期間として扱ってもらう効果はありません。長期間かつ正当な理由のない出国は、更新・変更の審査で消極的に評価されます。
出国の前にやっておくこと
まず、出国予定の社員について、帰国予定日が出国から1年以内か、在留期限より前かを確認してください。どちらか一方でも怪しければ、出国前に再入国許可を申請します。更新申請中に出国する場合は、在留期限から2か月以内に戻れる日程かどうかを確かめます。
そのうえで、長期の出張や帰国が予定されているなら、出国の理由を示す書面を今の段階で作っておくことです。更新の審査で問われるのは、数か月後、数年後の申請の時点で「その出国には正当な理由があった」と説明できるかどうかです。判断に迷う場合や、すでに長期間出国していた社員の更新を控えている場合は、申請前にご相談ください。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版) 第2章第1節第12「長期間の出国」1-28(具体的基準は黒塗り)
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html
- 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」Q&A 問22 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
- 出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」Q23・Q61・Q77 https://www.moj.go.jp/isa/immigration/faq/kanri_qa.html
- 出入国在留管理庁「再入国許可申請」https://www.moj.go.jp/isa/immigration/procedures/16-5.html
- 出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」https://www.moj.go.jp/isa/01_00644.html
- 出入国在留管理庁「通算在留期間(特定技能1号)」https://www.moj.go.jp/isa/10_00233.html
- 最高裁平成4年11月16日判決(森川キャサリーン事件)/最高裁大法廷昭和53年10月4日判決(マクリーン事件、民集32巻7号1223頁)