海外に住む親や兄弟を日本に呼ぶときは、「短期滞在」の査証(いわゆる親族訪問ビザ)を、本人が住む国の日本大使館・総領事館に申請します。書類は本人が現地で用意するものと、日本側の家族(招へい人)が用意して送るものに分かれ、審査の中心は「本当に親族か」と「滞在後に確実に帰国するか」の2点です。招へい人が日本人か外国人かで日本側の書類が変わり、外国人の場合は住民票に加えて在留カードの写し、在職証明書などで日本での在留の安定性を示すことになります。
親族訪問ビザとは|短期滞在の中の「親族訪問」目的
ここでいう親族訪問ビザとは、在留資格「短期滞在」で入国するための査証のうち、日本に住む親族を訪問する目的で発給されるものを指します。独立した在留資格があるわけではなく、観光・知人訪問・短期商用と同じ「短期滞在」の一類型です。
短期滞在で許可される在留期間は、90日、30日、15日のいずれかです。親の出産の手伝いや、孫の顔を見に来る、冠婚葬祭に出席するといった訪問が典型で、報酬を受ける活動はできません。短期滞在の全体像は短期滞在ビザとは?90日・30日・15日の違いと2026年9月からの日単位指定、目的別の書類の比較は短期滞在ビザの必要書類|観光・親族訪問・知人訪問・商用の目的別で扱います。
査証免除国・地域の国籍の人は、この査証を取らずに来日できます。査証が必要なのは、中国、フィリピン、ベトナム、インドネシア、ネパール、ミャンマーなど、査証免除の対象外の国籍の人です。
必要書類|申請人(呼ばれる家族)が用意するもの
外務省が示す標準的な書類(中国・フィリピン・ロシア等を除く国籍向け)は、次のとおりです。国ごとに大使館が独自の書類を追加しているため、最終的には申請する大使館・総領事館のページで確認してください。
- 旅券
- 査証申請書1通
- 写真1葉
- 航空便の予約確認書
- 公的機関が発給する所得証明書、または預金残高証明書
- 親族関係を証する書類(出生証明書、婚姻証明書、戸籍謄本等)
このうち、審査で最も重く見られるのが親族関係の証明です。
親族関係の証明は「つながり」を1本の線で示す
親を呼ぶ場合、日本に住む子(招へい人)の出生証明書に、父母として申請人の氏名が記載されていれば、それで親子関係が示せます。兄弟姉妹を呼ぶ場合は、兄弟それぞれの出生証明書を並べ、父母が共通していることを示します。叔父・叔母、いとこなど関係が遠くなるほど、つながりを示す書類の枚数が増えます。
招へい人が日本人(または配偶者が日本人)の場合は、戸籍謄本で関係を示せます。外務省の書類一覧も、戸籍謄本は「親族訪問目的で招へい人又は配偶者が日本人の場合のみ」と定めています。日本人と結婚した外国人配偶者が自分の親を呼ぶ場合は、戸籍謄本で婚姻の事実を示し、本国の出生証明書で配偶者と親の関係を示す、という組み合わせになります。
注意したいのは、氏名の表記の揺れです。出生証明書、旅券、在留カードで氏名の綴りや順序が違っていると、同一人物かどうかの確認に時間がかかります。表記が違う場合は、同一人物であることを説明する文書を添えておくと審査が滞りにくくなります。
中国籍の場合、在中国日本国大使館は親族関係の証明として「親族関係公証書、出生医学証明書等」を挙げ、あわせて戸口簿の写しを求めています(2026年7月1日更新)。中国の書類の詳細は中国人の親族訪問ビザ|必要書類・代理申請機関・身元保証人の要件で扱います。
必要書類|日本側(招へい人・身元保証人)が用意するもの
日本側の書類は、招へい人が申請人の渡航費用を負担するかどうかで範囲が変わります。外務省の標準的な書類一覧では、次のように整理されています。
| 区分 | 書類 |
|---|---|
| 常に必要 | 招へい理由書、滞在予定表、(複数で来日する場合)申請人名簿、(招へい人又は配偶者が日本人の場合)戸籍謄本 |
| 日本側が渡航費用を負担する場合 | 身元保証書、身元保証人の所得証明書(課税証明書)・預金残高証明書・確定申告書控の写し・納税証明書(その2)のいずれか1点、住民票(家族全員の続柄が記載されたもの) |
| 身元保証人が外国人の場合 | 上記に加え、在留カード表裏の写し、住民票(住民票コード以外の記載事項が省略されていないもの)、旅券の写し |
書類は、発行後3か月以内のもの(有効期間の記載があるものは有効期間内のもの)を提出します。招へい理由書と身元保証書の様式は外務省のウェブサイトからダウンロードできます。書き方と例文は招へい理由書の書き方と例文|家族・友人・恋人を呼ぶときの記入例、身元保証書は短期滞在ビザの身元保証書の書き方|保証人の条件・責任と記入例で解説しています。
招へい人が外国人の場合に揃えるもの
招へい人が日本に住む外国人である場合、入管や大使館が確認したいのは、招へい人自身が日本に安定して在留していて、訪問期間中に家族を受け入れられるかという点です。外務省の一覧は、外国人の身元保証人について在留カードの写し、省略のない住民票、旅券の写しを求めています。
在中国日本国大使館の書類一覧は、これをさらに具体化しており、招へい人には招へい理由書、滞在予定表、住民票、在職証明書または在学証明書、在留カード表裏の写し(外国人のみ)を、身元保証人には身元保証書、住民票(世帯全員・続柄記載)、在職証明書、課税証明書または納税証明書、在留カード表裏の写し(外国人のみ)を求めています。
実務上、揃え方で差が出るのは次の3点です。
1つ目は住民票です。外国人住民の住民票には、国籍、在留資格、在留期間、在留期間の満了日などが記載されます。「省略のないもの」を市区町村の窓口で指定して取得しないと、在留資格や続柄の欄が省略された住民票が出てくることがあるため、請求の際に「在留資格・続柄を省略しない」と伝えてください。
2つ目は在職証明書です。会社員の招へい人であれば、勤務先の人事担当に発行を依頼します。記載してほしいのは、会社名・所在地・代表者、入社日、役職・職務内容、雇用形態、そして発行日です。外国人社員から「親を呼ぶので在職証明書がほしい」と頼まれることは、人事担当者にとって珍しくない場面の1つです。会社の様式で構いませんが、発行日から3か月以内に大使館に提出されることを前提に、申請の直前に発行するのが適切です。
3つ目は、招へい人の在留期限です。訪問予定期間の途中で招へい人の在留期限が切れる場合、滞在予定表と整合しなくなります。在留期間の更新申請中であれば、更新申請の受付票の写しを添えるなど、日本に在留を続けることを示しておくと説明がつきます。
留学生が招へい人になる場合は、在職証明書の代わりに在学証明書を提出し、渡航費用は親族側が負担する形が多くなります。この場合、日本側の資力は問われにくくなる一方、申請人側の所得証明書や預金残高証明書で帰国の確実性と滞在費の負担能力を示す必要があります。
申請の流れと期間の目安
親族訪問ビザの申請は、次の順番で進みます。
- 招へい人が日本側の書類(招へい理由書、滞在予定表、住民票、在職証明書など)を揃え、原本を申請人に国際郵便で送る
- 申請人が現地の書類(旅券、申請書、写真、親族関係の証明、所得証明など)と合わせて、日本大使館・総領事館に申請する
- 大使館・総領事館が審査し、査証を発給する
- 申請人が来日し、空港で上陸審査を受けて短期滞在の上陸許可を受ける
中国、ベトナムなどでは、大使館に直接申請できず、大使館が指定する代理申請機関を通して申請します。フィリピンは、在フィリピン日本国大使館の告知(2025年3月19日)により、2025年4月7日から日本ビザ申請センター(パラニャーケ・マカティ・ケソン・セブ・ダバオ)での受付に切り替わり、認定旅行会社での受付は2025年4月6日で終了しました。大使館の審査期間は、書類に不備がなければ受理の翌日から起算して5業務日程度が目安とされていますが、追加書類の求めや本国照会があれば長くなります。郵送の日数も含め、来日予定日の1〜2か月前には日本側の書類の準備を始めることをお勧めします。
査証手数料は、2026年7月1日から一次有効査証が約15,000円、数次有効査証が約30,000円に改定されました(外務省、2026年6月24日掲載)。現地通貨での金額は国ごとに定められ、代理申請機関やビザ申請センターを使う場合は別途その手数料がかかります。なお、在フィリピン日本国大使館の査証案内(2026年6月24日更新)は、フィリピン国籍者の短期滞在査証を無料としています。
査証が発給されても、上陸の許可は空港での上陸審査で決まります。滞在予定表と違う説明をしたり、帰りの航空券を持っていなかったりすると、上陸審査で質問を受けることがあります。
よくある質問
親族訪問ビザは何日滞在できますか?
短期滞在の在留期間は90日、30日、15日のいずれかで、申請時の滞在予定に応じて決まります。親の出産の手伝いなどで長めの滞在を予定する場合は、その理由を招へい理由書に具体的に書きます。来日後にやむを得ない事情が生じた場合は、地方出入国在留管理局で在留期間の更新を申請できることがありますが、認められる事情は限られます。
親族訪問ビザは年間180日滞在できますか?
短期滞在について、年間の上限日数を定めた法律の規定はありません。ただし、短期滞在で入国を繰り返し、日本での滞在日数が長くなると、上陸審査で実質的に日本に住んでいるのではないかと判断され、上陸を認められないことがあります。一般に「1年で180日」が目安として語られますが、これは公式の基準ではありません。
親族訪問ビザで仕事はできますか?
できません。短期滞在は報酬を受ける活動を認めておらず、家族が経営する店を手伝ってお小遣いを受け取る、といった形でも資格外の就労と評価されるおそれがあります。受け入れた側が雇った場合は不法就労助長罪の対象にもなります(不法就労助長罪とは)。家族を日本で働かせたい場合は、就労できる在留資格を別に検討する必要があります(外国人を採用できる在留資格の種類一覧)。
親族訪問ビザの費用はいくらですか?
査証手数料は、2026年7月1日から一次有効査証が約15,000円、数次有効査証が約30,000円です。フィリピン国籍者の短期滞在査証は無料です。これに、代理申請機関やビザ申請センターの手数料、書類の取得費用、国際郵便の送料がかかります。行政書士に書類作成を依頼する場合は、その報酬が加わります。
親族訪問ビザで呼び寄せられる親族の範囲は?
法令上、親族の範囲を限定した規定はなく、親、子、兄弟姉妹、祖父母、配偶者の親などが典型です。関係が遠くなるほど、親族関係を示す書類が増え、訪問の必要性の説明も求められやすくなります。親族関係が書類で示せない場合は、「知人訪問」として申請することも検討します。
呼ぶ前に決めておきたいこと
親族訪問ビザの審査は、提出書類だけで判断されます。面接が行われない国も多く、書類の間に矛盾があれば、それを説明する機会はほとんどありません。不許可になった場合、同じ目的での再申請は原則として6か月後まで受け付けられない運用があるため、最初の申請で書類を揃え切ることが重要になります。
書類を集め始める前に、招へい人と申請人の間で次の3点を決めておくと、書類の整合がとりやすくなります。誰が渡航費用と滞在費を負担するか(身元保証書の要否が決まります)。どこに泊まり、何日滞在するか(滞在予定表と在留期間の根拠になります)。親族関係を何の書類で示すか(出生証明書か、戸籍謄本か、公証書か)。この3点が決まれば、日本側で揃える住民票・在職証明書の種類と、現地で揃える書類が自然に決まります。査証の発給は個別の事情で判断が変わるため、過去に不許可歴がある場合や、親族関係の証明が難しい場合は、申請前に専門家に相談してください。
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根拠資料
- 日本入国ビザ手続の概要(中国、ロシア・CIS諸国、グルジア、フィリピン以外の国籍の方)(外務省)
- ビザ(査証)(外務省)
- 身元保証書 様式(外務省)
- 領事官の徴収する手数料に関する政令(e-Gov法令検索)
- en/00000035.html”>Visa/Consular Services(在フィリピン日本国大使館・2026年6月24日更新)
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