帰化の厳格化は2026年4月1日から始まっています。法務省は国籍法を改正せず、審査の運用として、原則10年以上の在留と日本社会への融和を求め、税金・社会保険料の納付状況を確認する期間を延ばしました。東京法務局の添付書類の案内(2026年9月4日更新)では、住民税の課税・納税証明書は直近5年分、社会保険料の納付証明書は直近2年分に変わっています。国籍法5条の「引き続き5年以上」という条文は残っているため、5年で申請すること自体はできますが、10年に満たない人が許可を得るのは難しくなったと考えるべきです。
帰化の厳格化は2026年4月1日から:変わったのは3点
厳格化の内容は、2026年3月27日の法務大臣閣議後記者会見で示されました。会見の概要によれば、大臣は、帰化について「永住許可よりも安易に認められており問題ではないかとの指摘がある」ことを踏まえ、永住許可の審査との整合性の観点から見直しを行うと説明し、4月1日から次の運用にすると述べています。
- 原則として10年以上在留し、日本社会に融和していることを必要とする
- 素行の善良性・生計条件について、税金や社会保険料の納付状況を確認する期間を延ばす
大臣は、この見直しを「法務大臣の裁量の範囲内で一定の在留期間を要するとするもの」と位置づけています。帰化の許可は国籍法4条2項により法務大臣の許可に委ねられており、国籍法5条の条件はあくまで「これを備えなければ許可できない」という最低条件です。最低条件を満たした人の中から誰を許可するかは大臣の裁量で決まるため、法律を変えずに審査の基準を引き上げることができる、という理屈です。
会見から施行まで5日しかなかったこともあり、報道では「法改正せず運用で」決めた手法そのものへの批判も出ています。ただ、実務の側から見れば、4月1日以降の審査はすでに新しい運用で動いているという事実が出発点になります。
変更点1:居住は「原則10年」の運用に
国籍法5条1項1号は、帰化の住所条件を「引き続き五年以上日本に住所を有すること」と定めています。この条文は改正されていません。変わったのは、法務局の審査で「原則として10年以上在留していること」を求めるようになった点です。
ここでいう「引き続き」とは、途中で日本での住所が途切れていないことを指します。帰化の住所条件では、再入国許可を取って出国していても、1回の出国が長期にわたる場合や、年間の出国日数が多い場合は、住所が継続していないと評価されることがあります。法務省はこの日数の基準を公表していません。在留資格を維持したまま出国する手続は再入国許可とみなし再入国許可の違いで解説しています。
永住許可に関するガイドラインは、原則10年の在留のうち「就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上」を求めています。帰化についても、従来から10年未満の在留期間のうち一定期間の就労経験があることが実務上の目安とされてきましたが、新しい運用で10年のうちの就労期間の扱いがどう整理されたかは、法務省の公表資料では確認できず現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。留学期間が長い人は、法務局の事前相談で必ず確認しておくべき点です。
「原則」と書かれている以上、10年未満でも許可される例外はありえます。どのような事情が例外に当たるかも公表されていません。
変更点2:納税5年・社会保険2年の確認に
2つ目の変更は、提出書類で確認する期間です。帰化の添付書類は法務局ごとに案内されていますが、東京法務局の案内を2025年6月版の「帰化許可申請のてびき」と比べると、変化がはっきり分かります。
| 書類 | 2025年6月版てびき | 東京法務局の案内(2026年9月4日更新) |
|---|---|---|
| 住民税の課税(非課税)証明書 | 直近1年分 | 直近5年分 |
| 住民税の納税証明書 | 直近1年分 | 5年分 |
| 源泉徴収票(給与所得者) | 直近1年分 | 直近1年分 |
| 年金・健康保険の保険料の納付を証明する資料 | 直近1年分 | 直近2年分 |
確定申告をする給与所得者の所得税の納税証明書、個人事業主の消費税・事業税、法人役員の法人税・消費税・事業税の納税証明書も、案内上は直近3年分となっています。
住民税5年分・社会保険料2年分という期間は、就労ビザから永住申請する場合の提出書類とほぼ同じ水準です。 会見で示された「永住許可の審査との整合性」は、年数だけでなく、この書類の期間でも具体化されたことになります。
注意したいのは、確認期間が延びたことで、過去の納付の遅れが審査の対象に入ってくる点です。従来は直近1年分だけを確認していたため、数年前に国民年金の未納期間があっても、申請の直前1年が問題なければ書類上は表に出にくい面がありました。5年分の住民税、2年分の年金・健康保険の記録を出すとなると、転職の合間の未加入期間や、住民税の普通徴収で納付が遅れた期間も確認されます。
永住許可に関するガイドラインは、当初の納付期限内に納めていない場合は原則として消極的に評価すると明記しています。帰化について同じ扱いをするという公式の記載はありませんが、整合性を図るという見直しの趣旨からすれば、期限内に納めていたかどうかが見られると想定して準備するのが安全だと筆者は考えます。
提出書類の期間は法務局によって運用が異なる場合があります。福岡法務局など他の法務局に申請する場合は、事前相談の際に最新の書類一覧を確認してください。
変更点3:日本社会への「融和」
会見では、10年以上の在留に加えて「日本社会に融和していること」を必要とすると述べられています。融和の中身を具体的に定義した公式資料は、2026年9月29日時点で確認できません。
帰化の審査では従来から、面接や書類を通じて、日本語の読み書きの能力、地域での生活の状況、家族との関係などが確認されてきました。国籍法に日本語能力の条件は書かれていませんが、実務では小学校低学年程度の読み書きが目安とされてきたと言われます。融和の要件が新たに明示されたことで、こうした確認がより重く扱われる可能性があります。日本語の確認の方法は帰化申請の日本語テストとは?レベルの目安とサンプル問題の傾向で扱います。
簡易帰化(日本人の配偶者・日本生まれ等)はどうなるか
国籍法は、一定の身分関係がある人について、5条の条件を緩める規定を置いています。
- 6条:日本国民であった者の子で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する者、日本で生まれた者で引き続き3年以上住所又は居所を有する者(または父母が日本生まれの者)、引き続き10年以上日本に居所を有する者は、5年の住所条件を満たさなくても帰化を許可できる
- 7条:日本国民の配偶者で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する者、または婚姻から3年を経過し引き続き1年以上日本に住所を有する者は、住所条件と年齢の条件を満たさなくても帰化を許可できる
- 8条:日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有する者などは、住所・年齢・生計の条件を満たさなくても帰化を許可できる
これらの年数は法律の条文に書かれています。会見で示された「原則10年」の運用が、簡易帰化の対象者にもそのまま及ぶのかについて、法務省の公表資料には記載がありません。条文が特に短い年数を定めている以上、運用で10年を一律に求めるのは条文の趣旨と整合しにくいと筆者は考えますが、公式の扱いは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
一方、書類で確認する期間の延長は、東京法務局の添付書類の案内が申請者の類型を分けずに記載している以上、簡易帰化の申請者にも及ぶと考えておくべきです。日本人の配偶者の帰化については日本人の配偶者の帰化条件|居住3年・婚姻3年で認められる簡易帰化で取り上げます。
申請中・4月1日前に受け付けた申請の扱い
最も問い合わせが多いのが、2026年3月31日までに申請を受け付けてもらった人に、新しい運用が適用されるかどうかです。
一部の報道では、4月1日時点で審査中の申請にも新しい基準を適用すると伝えられています。しかし、3月27日の会見の概要にはこの点の記載がなく、法務省・法務局の公式の案内でも確認できていないため、現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
仮に新しい運用が審査中の申請にも及ぶ場合、影響が大きいのは、在留期間が5年以上10年未満の段階で申請した人と、提出済みの書類が直近1年分だけの人です。後者については、法務局から追加で住民税や年金の資料を求められる可能性があります。審査中に法務局から連絡があった場合は、求められた期間の書類を速やかに用意できるよう、市区町村の証明書と年金の記録を先に確認しておくと対応が早くなります。
帰化の審査中も、在留資格の期限は進みます。帰化申請をしていることを理由に在留期限が延びることはないため、就労ビザや配偶者ビザの更新は別に行う必要があります。更新の申請時期は在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?で解説しています。
なぜ厳格化されたのか:永住許可との逆転
見直しの理由として会見で挙げられたのは、帰化が永住許可より安易に認められているという指摘です。
制度の上では、帰化は日本国籍を与える手続で、永住許可より重い効果を持ちます。それにもかかわらず、永住許可に関するガイドラインが原則10年の在留を求めていたのに対し、帰化の住所条件は5年でした。年数だけを比べると、在留資格の一つである永住より、国籍の取得のほうが早く手に入るという逆転が生じていたわけです。
法務省民事局の統計によれば、帰化許可申請者数は2023年の9,836人から、2024年に12,248人、2025年に14,103人へと増えています。同じ期間の帰化許可者数は8,800人、8,863人、9,258人でした。申請の年と処分の年がずれるため許可率は計算できませんが、申請者数の増加に審査体制が追いつかない状況が続いていることは読み取れます。
永住許可の側でも、2026年8月4日に公表されたガイドライン改定案で、収入の水準や日本語能力(CEFR・B1相当)の考慮が打ち出されています。帰化の厳格化は単独の動きではなく、永住と帰化の両方の審査を引き上げる一連の見直しの一部です。永住の改定の内容は【2026年10月改定】永住許可の要件厳格化で何が変わる?で扱っています。
「5年で帰化」「条件の緩和」は今も可能か
「帰化 条件 5年」「帰化 条件 緩和」という検索は、厳格化の前の情報を探している人が多いと推測されます。整理すると、次のとおりです。
国籍法の条文上は、今も5年で帰化の申請ができます。法務局が申請の受付を拒むわけではありません。ただし審査の運用では原則10年が求められるため、在留5年から9年の段階で申請して許可を得るのは、何らかの例外的な事情がない限り難しくなったと考えるべきです。
「緩和」に当たるのは、国籍法6条から8条の簡易帰化です。日本人の配偶者、日本生まれの人、日本国民の子などは、法律上、住所条件などが緩和されています。前の節で触れたとおり、これらの人に新しい運用がどう及ぶかは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
よくある質問
帰化の厳格化はいつからですか?
2026年4月1日からです。法務大臣が2026年3月27日の閣議後記者会見で、4月1日から原則10年以上の在留と日本社会への融和を求め、税金・社会保険料の納付状況を確認する期間を延ばすと明らかにしました。国籍法の改正ではなく、法務大臣の裁量の範囲内での運用の見直しとされています。
帰化の要件は5年から10年に変わったのですか?
国籍法5条1項1号の「引き続き5年以上」という条文は変わっていません。変わったのは審査の運用で、原則として10年以上の在留が求められるようになりました。5年で申請することはできますが、10年に満たない場合は許可されにくくなっています。
帰化要件が厳格化された理由は何ですか?
会見では、帰化が永住許可よりも安易に認められているという指摘を踏まえ、永住許可の審査との整合性を図るためと説明されています。永住は原則10年の在留を求めるのに、国籍を取得する帰化が5年で済むという逆転を解消する趣旨です。
すでに帰化申請中ですが、新しい基準が適用されますか?
報道では審査中の申請にも適用されると伝えられていますが、法務省の公式の案内では確認できておらず現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。申請先の法務局から追加書類を求められる可能性に備え、住民税5年分と年金・健康保険2年分の記録を確認しておくことをお勧めします。個別の事情で判断が変わるため、担当官への確認が確実です。
日本人の配偶者の帰化も厳しくなりましたか?
国籍法7条が定める居住3年(または婚姻3年・居住1年)の年数は法律の条文なので、変わっていません。ただし、税金・社会保険料の確認期間の延長は、配偶者の帰化申請にも及ぶと考えて準備するのが安全です。原則10年の運用が及ぶかどうかは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
帰化を考えている人がいま確認すべきこと
帰化の厳格化は、年数の引上げとして報じられることが多いものの、実務への影響がより広いのは書類の確認期間の延長のほうです。10年の在留は数えれば分かりますが、5年分の住民税と2年分の年金・健康保険の記録は、過去にさかのぼって直すことができません。
在留10年を超えている人は、まず自分の住民税の納付状況と、ねんきんネットの記録を確認するところから始めてください。転職の合間の未加入期間や、普通徴収の住民税の納付の遅れがあれば、その説明を用意します。在留10年に満たない人は、帰化を待つ間に永住を先に取るという選択肢も含めて検討する価値があります。帰化と永住の違いは永住権と帰化の違い|国籍・選挙権・取消しリスクで比べるどちらを選ぶべきかで比較しています。
外国人社員から帰化の相談を受けた企業の人事担当者にとっては、在勤及び給与証明書の発行が主な協力になります。加えて、社員が過去に住民税を普通徴収で納めていた期間があるかどうかを、給与の記録から一緒に確認することも、会社としてできる支援の一つです。
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根拠資料
- 法務大臣閣議後記者会見の概要(法務省・2026年3月27日)
- 国籍法(e-Gov法令検索)
- 帰化許可申請書に添付する書類(その他の国籍・地域の方)(東京法務局・2026年9月4日更新)
- 帰化許可申請のてびき(令和7年6月)(法務省・東京法務局)
- 帰化許可申請のてびき(令和6年6月)(甲府地方法務局掲載)
- 永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)(出入国在留管理庁)
- 法務大臣閣議後記者会見の概要(法務省・2026年8月4日)
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