法律・会計業務ビザ(在留資格「法律・会計業務」)は、日本の法律上の資格を持ち、その資格者として法律または会計の業務を行う外国人のための在留資格です。上陸許可基準は、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、外国法事務弁護士、公認会計士、外国公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士の11資格のいずれかとして業務に従事することを求めています。言い換えると、海外の弁護士資格や会計士資格を持っているだけでは、この在留資格には当たりません。企業の法務部や会計部門で海外の有資格者を採用する場合、多くは技術・人文知識・国際業務(技人国)で申請することになります。
法律・会計業務ビザは「日本の資格者」のための在留資格
入管法別表第一の二は、法律・会計業務の活動を「外国法事務弁護士、外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る業務に従事する活動」と定めています。
ここでいう「法律上資格を有する者が行うこととされている業務」とは、日本の法律が一定の資格を持つ人に限って行うことを認めている業務を指します。弁護士の法律事務、公認会計士の監査証明、税理士の税務代理、司法書士の登記申請代理などが典型です。資格を持たない人が行えば法律違反になる業務、と考えると分かりやすいでしょう。
上陸許可基準(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令)は、この活動について次の1項目だけを定めています。
申請人が弁護士、司法書士、土地家屋調査士、外国法事務弁護士、公認会計士、外国公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士又は行政書士としての業務に従事すること。
学歴や実務経験の要件はありません。日本の資格そのものが、専門性の証明を兼ねているからです。医療の在留資格の基準が「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬」を求めているのと違い、法律・会計業務の基準には報酬の要件も書かれていません。とはいえ、在留期間の更新では生計の安定が見られるため、業務として成り立つ報酬を得ていることは前提になります。
| 区分 | 対象となる資格 |
|---|---|
| 法律系 | 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士、弁理士、海事代理士、行政書士、社会保険労務士 |
| 会計・税務系 | 公認会計士、外国公認会計士、税理士 |
在留期間は5年、3年、1年または3月です(入管法施行規則別表第二)。
外国法事務弁護士と外国公認会計士|海外の資格を日本で使うための手続
11資格のうち、海外の資格を起点にしているのが外国法事務弁護士と外国公認会計士です。どちらも、海外の資格を持っているだけでは足りず、日本の制度上の承認と登録を経て初めて「日本の資格者」になります。
外国法事務弁護士:法務大臣の承認と3年の職務経験
外国法事務弁護士とは、外国の弁護士資格を持つ人が、法務大臣の承認を受け、日本弁護士連合会の名簿に登録して、資格を取得した国(資格取得国)の法に関する法律事務を日本で取り扱う資格を指します。根拠は外弁法(昭和61年法律第66号)です。
同法9条は、外国弁護士となる資格を有する者は、法務大臣の承認を受けた場合に限り外国法事務弁護士となる資格を有すると定めています。承認の基準は12条1項に列挙されており、中心になるのが1号の職務経験です。
- 外国弁護士となる資格を取得した後、3年以上、資格取得国で外国弁護士として職務を行った経験があること(1号)
- 拘禁刑以上の刑に相当する外国の刑に処せられていないことなどの欠格事由に当たらないこと(2号)
- 誠実に職務を遂行する意思、職務遂行の計画、住居と財産的基礎、依頼者への損害賠償能力を有すること(3号)
実務で重要なのが12条2項です。資格取得後に日本国内で弁護士・弁護士法人・外国法事務弁護士などに雇用され、資格取得国の法に関する知識に基づいて労務を提供した期間は、通算2年を限度として資格取得国での職務経験とみなされます。海外で1年の経験を積んだ外国弁護士が、日本の法律事務所で2年働けば、3年の要件を満たせるということです。
この「日本の法律事務所で働く2年」の間、本人はまだ外国法事務弁護士ではありません。法律・会計業務の上陸許可基準に列挙された資格を持っていないため、この期間は法律・会計業務では在留できず、技人国(法律学の知識を要する業務)で在留するのが一般的です。承認と登録が済んだ段階で、法律・会計業務への在留資格変更を検討します。
外国公認会計士:公認会計士法の承認と登録
外国公認会計士とは、外国で公認会計士に相当する資格を持つ人が、公認会計士法16条の2に基づく承認を受け、日本公認会計士協会の外国公認会計士名簿に登録して、日本で公認会計士の業務を行う資格を指します。承認の手続や試験の範囲の詳細は(公式資料では未確認)で、金融庁と日本公認会計士協会の案内で確認してください。承認を受けていない海外の会計士資格者(米国公認会計士など)は、日本では公認会計士の業務を行えないため、法律・会計業務の対象になりません。
海外の弁護士・会計士を法務部・経理部で雇うなら技人国
企業の人事担当者から見て、最も実務的な論点がここです。ニューヨーク州の弁護士資格を持つ人を法務部で採用する、米国公認会計士の資格を持つ人を経理部で採用する、といった場合、本人は日本の資格者ではないため、法律・会計業務には当たりません。
このとき使うのが技術・人文知識・国際業務です。技人国の活動は「法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」を含んでおり、契約書のレビュー、海外子会社の法務対応、コンプライアンス体制の整備、国際会計基準による連結決算などは、この範囲に入ります。要件は、業務と関連する学歴(大学で法律学・会計学などを専攻)または10年以上の実務経験と、日本人と同等額以上の報酬です。技人国の要件の詳細は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?で解説しています。
ここで注意したいのは、技人国の法務スタッフが行える業務の範囲です。技人国で在留していても、日本の弁護士法や税理士法が資格者に限っている業務(他人の依頼を受けて報酬を得て法律事務を扱うこと、税務代理など)は行えません。社内の法務・会計業務と、資格者に独占された業務の線引きは、在留資格の問題である前に、各士業法の問題です。
自社の法務・会計業務と資格者の業務の境界
技人国と法律・会計業務の境界は、入管法の条文の組み立てにも表れています。技人国の定義にはかっこ書があり、「経営・管理の項から教育の項まで」の活動を除くとしています。法律・会計業務はこの範囲に含まれるため、日本の資格者としての業務に当たる活動は、技人国から外れて法律・会計業務で扱われます。
一方で、日本の資格を持っている人が企業に雇用され、社内の法務業務(組織内弁護士としての業務)を行う場合に、法律・会計業務と技人国のどちらで扱われるかは、業務の内容が「資格者として行う業務」に当たるかで判断が分かれ得ます。入国・在留審査要領の記載を含め、この点の扱いは(公式資料では未確認)で、申請前に管轄の地方出入国在留管理局に確認することを勧めます。筆者は、弁護士登録を維持したまま、訴訟代理や他社を相手方とする交渉など資格が必要な業務を担う場合は法律・会計業務、資格が不要な社内の契約管理が中心であれば技人国、という整理で準備するのが現実的だと考えています。
海外の本社・子会社の法務担当者を日本に転勤させる場合
海外の親会社や子会社で法務・経理を担当している社員を、日本の拠点に期間を定めて転勤させる場合は、企業内転勤の在留資格も選択肢になります。企業内転勤は、転勤の直前に海外の事業所で1年以上継続して勤務していることが要件で、学歴要件はありません。業務の内容は技人国の範囲と同じなので、日本の資格者としての業務は行えません。企業内転勤の要件は企業内転勤ビザとはで解説しています。
また、高い学歴や年収を持つ法務人材であれば、高度専門職1号ロのポイント計算で70点以上になる場合があります。在留期間5年が一律に付与され、永住申請の在留年数の特例も受けられるため、技人国と比べて検討する価値があります(高度専門職1号ロとは?)。
資格者が自分の事務所を開く場合も法律・会計業務
日本の資格を持つ外国人が、自ら法律事務所や会計事務所、行政書士事務所を開業する場合も、在留資格は法律・会計業務です。入管法別表第一の二の経営・管理の定義は、「この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く」としています。
この除外には実務上の意味があります。2025年10月の改正で経営・管理の許可基準は大きく引き上げられましたが(資本金等3,000万円以上、常勤職員の雇用など)、士業の事務所を経営する活動は法律・会計業務で扱われるため、この基準は適用されません。法律・会計業務の上陸許可基準は、資格者としての業務に従事することの1項目だけです。ただし、事務所の実体と業務の継続性は、在留期間の更新で見られます。
申請の必要書類|提出資料は「日本の資格の証明」が中心
出入国在留管理庁の案内によれば、法律・会計業務の在留資格認定証明書交付申請で求められる資料は、次のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 写真(縦4cm×横3cm)
- 返信用封筒(簡易書留用の切手を貼付したもの)
- 申請人が11資格のいずれかを有することを証明する文書(免許書、証明書等の写し)
技人国の申請で求められる会社のカテゴリーを示す資料や、雇用契約書、学歴・職歴の証明書は、基本の提出資料に含まれていません。基準が「日本の資格者としての業務に従事すること」の1項目であるため、資格の証明がそのまま中心の立証資料になるからです。ただし入管庁の案内は、提出書類がそろっていない場合は審査が大幅に遅れ、または不利益な処分になり得るとしており、業務の内容や雇用先が分かる資料を追加で求められる場合もあります。雇用される場合は雇用契約書、自ら開業する場合は事務所の登録や事業計画を示す資料を用意しておくと、審査の問い合わせに対応しやすくなります。
2026年10月1日からは、在留資格変更・期間更新の手数料が、許可される在留期間に応じた額(窓口で10,000円〜75,000円)に改定されました。在留資格認定証明書の交付申請には手数料はかかりません。
よくある質問
法律・会計業務ビザとは何ですか?
日本の法律上の資格(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、外国法事務弁護士、公認会計士、外国公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士)を持つ外国人が、その資格者として業務を行うための在留資格です。学歴や実務経験の要件はなく、日本の資格を持っていることが要件の中心になります。
海外の弁護士資格だけで法律・会計業務ビザは取れますか?
取れません。海外の弁護士資格を日本で使うには、外弁法に基づく法務大臣の承認と日本弁護士連合会への登録を受けて外国法事務弁護士になる必要があります。承認前に企業の法務部や法律事務所で働く場合は、技術・人文知識・国際業務で在留するのが一般的です。
米国公認会計士(USCPA)の資格で日本の会計事務所に就職できますか?
就職自体はできますが、在留資格は法律・会計業務ではなく技術・人文知識・国際業務になります。日本で公認会計士の業務(監査証明など)を行うには、公認会計士法の承認を受けて外国公認会計士として登録する必要があり、未登録の段階では日本の公認会計士の独占業務は行えません。
日本の行政書士試験に合格した外国人は、法律・会計業務で在留できますか?
試験に合格しただけでは足りず、行政書士会への登録を経て行政書士としての業務に従事することが必要です。登録後に行政書士として業務を行うのであれば、雇用されるか自ら開業するかを問わず、法律・会計業務の対象になります。
採用する側が最初に確認すべきは「日本の資格か、海外の資格か」
法律・会計業務で迷いやすいのは、要件の中身より入口の判定です。採用予定の人が持っているのが日本の11資格のいずれか(承認・登録を経た外国法事務弁護士・外国公認会計士を含む)であれば法律・会計業務、海外の資格だけであれば技人国か企業内転勤、学歴・年収が高ければ高度専門職も候補、という順番で判定します。
もう一つの判断軸は、担当させる業務が資格者に限られた業務かどうかです。社内の契約審査や国際税務の調査のように資格がなくても行える業務なら、技人国で足ります。訴訟代理や税務代理のように資格者に限られた業務を担わせるなら、本人が日本の資格者として登録していることが前提になります。個別の事情で判断が変わる部分があるため、組織内弁護士としての採用など境界に当たる場合は、申請前に管轄の入管に確認しておくことをお勧めします。在留資格全体の中での位置づけは外国人を採用できる在留資格の種類一覧も参照してください。
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根拠資料
- 在留資格「法律・会計業務」(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法 別表第一の二(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(e-Gov法令検索)
- 外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律 第9条・第12条(昭和61年法律第66号)(e-Gov法令検索)
- 2026年10月1日から外国人の在留手続に関する手数料が改定されます(出入国在留管理庁・リーフレット)
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