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技能実習生が妊娠したら|企業が禁止されていることと実習継続・中断の手続き

技能実習生が妊娠したとき、実習実施者や監理団体が妊娠を理由に実習を打ち切ったり、帰国させたりすることは法律で禁止されています。技能実習生にも日本人と同じ労働関係法令が適用されるため、男女雇用機会均等法9条の不利益取扱いの禁止、労働基準法65条の産前産後休業、育児・介護休業法の育児休業がそのまま及びます。本人が望めば、日本で出産して休業後に実習を再開することも、いったん帰国して出産し、戻ってから再開することもできます。この記事では、会社がしてはいけないことを先に整理し、そのうえで「日本で出産して継続」「帰国して出産し再開」「実習を終える」の3つの場合の手続きを、出入国在留管理庁と外国人技能実習機構(以下、機構)の資料に沿って説明します。

技能実習生の妊娠で会社が禁止されていること

出入国在留管理庁は「技能実習生の妊娠・出産について」のページで、次のように示しています。

婚姻、妊娠、出産等を理由として技能実習生を解雇その他不利益な取扱いをすることや、技能実習生の私生活の自由を不当に制限することは、法に基づき認められません。

根拠になる法律は、主に次の3つです。

  • 男女雇用機会均等法9条:婚姻を理由とする解雇の禁止(2項)、妊娠・出産・産前産後休業の取得などを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(3項)、妊娠中と出産後1年以内の解雇は、事業主が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明しない限り無効(4項)
  • 労働基準法:産前6週間(多胎妊娠は14週間)・産後8週間の休業(65条)、産前産後休業中とその後30日間の解雇制限(19条)
  • 技能実習法48条2項:技能実習生の外出その他の私生活の自由を不当に制限することの禁止

具体的に何が「不利益な取扱い」に当たるか

入管庁が監理団体・実習実施者向けに出している資料(2026年7月24日更新)は、妊娠を理由として一方的に技能実習を終了させること、帰国を強制すること、送出機関が帰国の約束をさせることを、禁止される取扱いの例として挙げています。実務で問題になるのは、次のような場面です。

  • 妊娠がわかった時点で「実習は続けられない」と説明し、帰国の手続きを進める
  • 本人が「自分で帰国を決めた」形の書類に署名させる
  • 雇用契約や誓約書に「妊娠したら帰国する」「恋愛・結婚を禁止する」といった条項を入れる
  • 妊娠を理由に、本人の同意なく軽い業務に配置転換し、賃金を下げる

最後の点は注意が必要です。妊娠中の女性が請求した場合、軽易な業務への転換(労基法65条3項)は会社の義務ですが、本人の意思によらない一方的な降格・減給は不利益取扱いに当たり得ます。

違反した場合の会社への影響

入管庁のページは、実習実施者が労働関係法令などについて不正または著しく不当な行為をした場合や、監理団体が適切な実習監理を行わない場合、技能実習計画の認定取消しや監理許可の取消しなどの行政処分の対象になり得るとしています。処分を受けると欠格事由に当たり、5年間は新しい技能実習生の受入れや監理事業ができません。

実態調査で見えた「送出機関」の問題

入管庁が2022年12月に公表した「技能実習生の妊娠・出産に係る不適正な取扱いに関する実態調査」の概要によると、機構の実地検査の機会に技能実習生から直接聞き取った結果、「妊娠したら仕事を辞めてもらう」等の不適正な発言を受けたことがある実習生は26.5%でした。発言の主体は送出機関が73.8%、監理団体が14.9%、実習実施者が11.3%です。「妊娠したら仕事を辞める」等の内容の不適正な契約を結んでいた実習生も5.2%おり、契約の相手は送出機関が70.3%を占めました。

妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止について説明を受けたことがある実習生は約60%、機構に相談できることを知っている実習生は約45%にとどまっています。受入れ企業が日本の法律を守っていても、本人が来日前に送出機関から「妊娠したら帰国」と言われていれば、妊娠を隠そうとします。会社が自分から制度を説明する必要があるのは、このためです。

妊娠がわかったときに会社・監理団体がすること

入管庁の資料は、妊娠がわかったときの対応として次のことを求めています。

  1. 入管庁の技能実習生向けリーフレット「妊娠中の技能実習生のみなさんへ」(日本語・やさしい日本語、中国語、ベトナム語、タガログ語、インドネシア語、タイ語、英語、カンボジア語、ミャンマー語、モンゴル語)を渡し、使える制度を説明する
  2. 病院の受診や、市区町村での妊娠届・母子健康手帳の交付などの手続きを支援する
  3. 重量物を扱う業務や有害ガスが発生する業務から外す
  4. 本人が請求した場合、時間外労働・休日労働・深夜業をさせない
  5. 妊婦健康診査を受ける時間を確保する

そのうえで、本人が今後どうしたいかを聞きます。ここでいう意向確認とは、会社が選択肢を示して選ばせることではなく、本人が制度を理解したうえで自分で決めることを指します。入管庁は、そのための書類として「妊娠等に関連した技能実習期間満了前の帰国についての申告書」を用意しています。

パターン1:日本で出産し、休業後に実習を続ける

本人が日本での出産を希望し、実習実施者との雇用契約を続けたまま、産前産後休業や育児休業を取って、その後に実習を再開する見込みがある場合です。

入管庁の「技能実習生が妊娠等した場合の基本フロー及び各種手続について」によると、この場合は在留期間の更新が可能です。在留期限が休業中に来る場合は、復職の見込み時期がわかる資料を付けて更新を申請します。

技能実習計画との関係では、休業によって実習を行わせることが困難になるため、実習実施者が監理団体に通知し、監理団体が機構に技能実習実施困難時届出書を出します(技能実習法19条・33条)。再開の時期によって、手続きが分かれます。

再開の時期 手続き 実習期間の扱い
事由の発生から1か月以内に再開 理由書を提出して再開 中断期間は実習期間に含まれる
1か月を超えて再開 再開前に技能実習計画の変更認定 中断期間は実習期間に含まれない(計画の終期が延びる)

変更認定を申請するとき、「妊娠等に関連した技能実習期間満了前の帰国についての申告書」の写しを理由書に代えて使うことができます。再開時には人数枠の基準を満たしている必要があり、人数枠の特例は使えません。休業中に新しい実習生を受け入れる計画がある会社は、再開時に枠を超えないか確認しておく必要があります。

休業中の生活を支える給付として、健康保険の出産育児一時金と出産手当金、雇用保険の育児休業給付があります。技能実習生は健康保険・雇用保険の被保険者なので、日本人と同じ要件で受給できます。

生まれた子どもの在留資格

日本で生まれた子どもが出生から60日を超えて日本に滞在する場合、出生の日から30日以内に在留資格取得許可を申請する必要があります(入管法22条の2)。技能実習には家族を帯同する在留資格(家族滞在)が用意されていないため、子どもの在留資格は、父親の在留資格なども含めた個別の事情で判断されることになります(公式資料では未確認)。実務では、出生後早めに地方出入国在留管理局に相談することをお勧めします。

パターン2:帰国して出産し、戻って実習を再開する

本人が母国での出産を希望する場合です。基本フローは、次の手続きを示しています。

  1. 技能実習実施困難時届出書を機構に提出する
  2. 必要に応じて在留期間更新許可を申請する(地方出入国在留管理局)
  3. 帰国期間が1年を超える場合は再入国許可を取る(1年以内ならみなし再入国許可で足りる)
  4. 再開時に、技能実習計画の変更認定を申請する(実習実施者が変わる場合は新規の計画認定)
  5. 帰国中に在留期間が過ぎた場合は、在留資格認定証明書交付申請をし直す

帰国する前に、本人が「妊娠等に関連した技能実習期間満了前の帰国についての申告書」(参考様式第1-42号)を作成し、監理団体などが保管します。この申告書は、帰国が本人の意思によるもので、再開を希望するかどうかを記録しておく書類です。再開の時期と連絡先を帰国前に共有しておくことが望ましいとされています。

再入国許可の要否は、出産と育児の期間を見込んで判断します。みなし再入国許可の期限は出国から1年(在留期限が先に来る場合はその期限まで)で、延長できません。出産後に子どもを預けられる時期まで考えると1年を超えることは珍しくないため、長くなる可能性があれば出国前に再入国許可を取っておくのが安全です。違いは再入国許可とみなし再入国許可の違いで解説しています。

一時帰国に伴う中断全般の扱いは技能実習生の一時帰国|3号移行前の1か月以上の義務的帰国と自己都合帰国の手続きで扱っています。

パターン3:本人の意思で実習を終える

本人が再開を希望せず、帰国して実習を終える場合も、技能実習実施困難時届出書の提出が必要です。このときも申告書を作り、帰国が本人の意思によることを記録しておきます。

ここで大切なのは、「本人の意思」が本当に本人のものかです。会社や監理団体が帰国を勧めたうえで署名させた申告書は、後に本人が不利益取扱いを主張したとき、会社を守る書類になりません。リーフレットで制度を説明し、日本で出産して続ける選択肢があることを伝えたうえで、本人が決めたという経過を残しておくことが、結果として会社のリスクを下げます。

帰国の旅費は、実習途中の帰国でも監理団体(企業単独型は実習実施者)が負担するのが原則です。途中帰国の手続きと費用は技能実習生の途中帰国(途中退職)|手続き・帰国費用の負担と申告書の書き方で扱う予定です。

技能実習生の結婚はどう扱われるか

技能実習生の結婚も、妊娠と同じく禁止されていません。男女雇用機会均等法9条2項は婚姻を理由とする解雇を禁じており、恋愛や結婚を禁止する規則や誓約書は、技能実習法48条2項の私生活の自由の不当な制限にも当たり得ます。

結婚相手が日本人や永住者の場合、技能実習から日本人の配偶者等や永住者の配偶者等への在留資格の変更を申請する余地があります。技能実習は原則として他の在留資格への変更が想定されていない在留資格ですが、身分に基づく在留資格への変更は、婚姻の実態などを個別に審査して判断されます。変更が認められると技能実習は終了することになるため、監理団体を通じて機構への届出も必要です。

特定技能の外国人が妊娠した場合

検索では「特定技能実習生が妊娠したら」という言葉も多く使われていますが、特定技能は技能実習とは別の在留資格です。妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止は同じく適用されます。

特定技能1号には通算5年の上限がありますが、特定技能運用要領(2026年8月版)は、産前産後休業と育児休業(原則として子が1歳まで、保育所に入れない場合は最長2歳まで)で活動できなかった期間を、疎明資料で確認できる場合に限り、5年の通算在留期間に含めないとしています。この取扱いを受けるには、5年が満了する前(おおむね3か月前)に、休業期間に関する申立書(参考様式第1-30号)、母子健康手帳の写し、休業の取得を示す資料などを付けて在留諸申請を行い、休業の原因が生じたときに遅滞なく受入れ困難に係る届出をしておく必要があります。数え方の詳細は特定技能1号の5年後はどうなる?で解説しています。

よくある質問

技能実習生が妊娠したら、強制帰国させられますか?

いいえ。妊娠を理由に解雇したり帰国させたりすることは、男女雇用機会均等法9条で禁止されています。会社や監理団体、送出機関から帰国を迫られた場合、本人は外国人技能実習機構(電話03-3453-8000)の母国語相談や、都道府県労働局に相談できます。

技能実習生が妊娠した場合、ビザはどうなりますか?

在留資格「技能実習」のまま、産前産後休業や育児休業を取ることができます。休業後に実習を再開する見込みがあれば、在留期間の更新も可能です。帰国して出産する場合は、帰国期間が1年を超えるなら再入国許可を取っておき、在留期限を過ぎたときは在留資格認定証明書から取り直します。

技能実習生が妊娠して一時帰国することはできますか?

できます。実習実施者・監理団体は技能実習実施困難時届出書を機構に出し、本人は「妊娠等に関連した技能実習期間満了前の帰国についての申告書」を作成します。再開するときは、技能実習計画の変更認定を受けてから実習を再開します。

技能実習生は妊娠してはいけないのですか?

妊娠を禁止する法律や制度はありません。技能実習生にも日本人と同じ労働関係法令が適用されます。「妊娠したら辞める」という内容の契約や誓約書を送出機関などと結んでいても、日本の法令上の保護が優先されます。

妊娠の相談を「言い出せる職場」かどうかが分かれ目になる

技能実習生の妊娠をめぐる問題は、手続きが複雑だから起きるわけではありません。制度上の手続きは、困難時届出、申告書、変更認定という流れで整理されています。問題が起きるのは、本人が妊娠を隠し、周囲が気づいたときには選択肢が狭まっている場合です。実態調査で、不適正な発言の7割以上が送出機関からのものだったという結果は、本人が来日前から「妊娠したら帰国」と信じ込まされている可能性を示しています。

筆者は、受入れ企業が入国時の説明の段階で、入管庁のリーフレットを母国語で渡し、「妊娠しても実習を続けられる」ことを会社として伝えておくことをお勧めします。そのうえで、妊娠がわかったときの窓口(生活指導員や監理団体の担当者)を決めておけば、届出の期限を守り、本人の意思を確認した記録を残すことができます。個別の在留手続きや子どもの在留資格は事情によって判断が変わるため、早い段階で監理団体と専門家に相談してください。技能実習と特定技能の制度の違いは技能実習と特定技能の違いとは?で整理しています。

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