技能実習生を解雇することは法律上禁止されていません。技能実習生は労働基準法・労働契約法が適用される労働者なので、日本人と同じ解雇のルールに従えば解雇はできます。ただし、技能実習生の雇用契約はほとんどが実習期間に合わせた有期契約で、期間の途中で解雇するには、期間の定めのない契約の解雇より厳しい「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項)が求められます。そのうえで、実習先は技能実習法19条に基づき監理団体へ通知し、監理団体は外国人技能実習機構へ「技能実習実施困難時届出」を出さなければなりません。この記事では、素行不良と経営悪化の2つの場面に分けて、解雇の可否、実習中止の手続、そして解雇がその後の受入れや特定技能に与える影響を整理します。
技能実習生を解雇できるかは労働法で決まる
技能実習法そのものには、実習実施者が技能実習生を解雇することを禁じる規定はありません。解雇ができるかどうかは、日本人の従業員と同じく労働法で判断されます。
技能実習生の雇用契約は、1号なら1年、2号なら2年といった実習の期間に合わせて、期間を定めて結ばれるのが通常です。労働契約法17条1項は、有期労働契約について「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と定めています。期間の定めのない契約に適用される16条(客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性)よりも、途中解雇のハードルは高いと解されています。期間を約束した以上、その期間は雇用を続けるのが原則で、それを破るには期間満了を待てないほどの事情が要る、という考え方です。
手続面でも、日本人と同じルールが適用されます。
- 少なくとも30日前の解雇予告、または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払い(労働基準法20条)
- 業務上の負傷・疾病による休業期間とその後30日間、産前産後休業期間とその後30日間は解雇できない(同法19条)
- 懲戒解雇をするには、就業規則に懲戒の種類と事由が定められ、それが本人に周知されていること(労働契約法15条の考え方)
- 妊娠・出産・産前産後休業の取得などを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(男女雇用機会均等法9条3項)。妊娠中と出産後1年以内の解雇は、事業主が妊娠等を理由とするものでないことを証明しない限り無効(同条4項)
技能実習生が妊娠した場合に解雇や帰国を迫ることは、均等法だけでなく技能実習制度の運用上も許されないとされています。技能実習生も日本人と同じく産前産後休業・育児休業を取得でき、実習を一時中断して再開する取扱いがあります。
素行不良を理由にした解雇はどこまで認められるか
「無断欠勤が続く」「寮で他の実習生とトラブルを起こした」「指示に従わない」といった素行の問題は、実習先から相談の多い場面です。ここで重要なのは、素行不良は注意・指導と段階的な懲戒を積み重ねたうえで、なお改善しない場合に初めて解雇が検討されるという順序です。1回の遅刻や口論を理由に途中解雇をすれば、「やむを得ない事由」はまず認められません。
技能実習生の場合、言葉の壁が指導の記録にも影響します。日本語で口頭注意をしただけでは、本人が内容を理解していたか後から証明できません。母国語の通訳を介した面談を行い、監理団体の職員にも同席してもらい、注意の内容と本人の説明を書面に残すことが、後に解雇の有効性が争われたときの支えになります。監理団体は技能実習生からの相談に応じる体制を持っているので、実習先が1社で抱え込まずに早い段階で監理団体に共有するのが実務の定石です。
一方で、犯罪行為(窃盗、暴行、他の実習生への重大なハラスメントなど)や長期の無断欠勤で連絡がとれない状態は、解雇がやむを得ないと認められやすい事情です。刑事事件になった場合は、在留資格の面でも退去強制事由に当たることがあるため、監理団体と協議しながら入管・機構・警察への対応を進めます。無断欠勤が失踪(行方不明)に当たる場合の手続は技能実習生が失踪したら?企業がすべき届出と新規受入れ停止などのペナルティで解説しています。
なお、寮での外出禁止、スマートフォンの取上げ、恋愛の禁止などを就業規則や誓約書で定め、その違反を理由に処分することはできません。技能実習法48条は、技能実習生の旅券・在留カードを保管することと、外出その他の私生活の自由を不当に制限することを禁じています。また同法49条2項は、技能実習生が法令違反の事実を出入国在留管理庁長官・厚生労働大臣に申告したことを理由に、実習の中止その他の不利益な取扱いをすることを禁じています。こうした「規則違反」を理由にした解雇は、それ自体が実習実施者の法令違反として扱われるおそれがあります。
経営悪化・事業縮小による解雇と実習中止
受注の減少や事業所の閉鎖で技能実習を続けられなくなった場合の解雇は、いわゆる整理解雇に当たります。有期契約の途中での整理解雇は、人員削減の必要性、解雇回避の努力、対象者選定の合理性、手続の相当性が厳しく問われます。技能実習生だけを先に解雇の対象にすることは、国籍を理由とする差別的取扱い(労働基準法3条)と評価されるおそれもあります。
経営悪化の場面では、解雇の前に休業という選択肢があります。会社都合で休業させる場合は、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります(労働基準法26条)。休業にとどめて実習の再開を待つのか、実習の継続自体が難しいのかを、監理団体と協議して判断します。
技能実習を続けられないと判断した場合でも、実習先と監理団体には、実習生が別の実習先で実習を続けられるよう手を尽くす義務があります。技能実習法51条1項は、実習の継続が困難になった場合の届出・通知をしようとするとき、引き続き技能実習を行うことを希望する技能実習生について、他の実習実施者や監理団体との連絡調整その他の必要な措置を講じなければならないと定めています。外国人技能実習機構も「実習先変更支援」のサイトを設けて、受入れ先を探す仕組みを用意しています。他の実習先で実習ができなくなった実習生を受け入れる企業は、施行規則16条4項により通常の人数枠を超えて受け入れることが認められています。
実習中止の届出|誰が・どこへ・何を出すか
技能実習を続けられなくなったときの届出は、企業単独型か団体監理型かで流れが違います。
| 区分 | 誰が | どこへ | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 団体監理型 | 実習実施者 | 監理団体へ「通知」 | 技能実習法19条2項 |
| 団体監理型 | 監理団体 | 機構の地方事務所・支所(認定課)へ「技能実習実施困難時届出」(省令様式第18号) | 同法33条1項、施行規則48条 |
| 企業単独型 | 実習実施者 | 機構の地方事務所・支所(認定課)へ「技能実習実施困難時届出」(省令様式第9号) | 同法19条1項、施行規則21条 |
期限は条文上「遅滞なく」とされ、具体的な日数は機構のページにも書かれていません。解雇を決めた段階、あるいは実習生が退職を申し出て実習を続けられないことが確定した段階で、速やかに監理団体へ伝えるのが基本です。
届出に書く事項は施行規則21条2項が定めています。技能実習計画の認定番号と区分、技能実習生の氏名・国籍などのほか、「技能実習を行わせることが困難となった事由並びにその発生時期及び原因」「技能実習生の現状」「技能実習の継続のための措置」を記載します。解雇の場合、事由と原因の欄は後から機構が実態を確認する出発点になります。「本人の素行不良」と一言で済ませず、いつ、何があり、どのような指導をしたかを簡潔に書けるよう、記録を整えておくことが重要です。
入管との関係では、実習生本人が技能実習の実施機関から離脱したことについて、14日以内に所属機関に関する届出を出す必要があります(入管法19条の16第1号)。実習を中止した実習生が別の実習先へ移る場合は、新しい実習先で技能実習計画の認定を受け、入管の在留手続を経る必要があります。帰国する場合、技能実習生の帰国旅費は監理団体(企業単独型は実習実施者)が負担するのが制度上の扱いです。
解雇が次の受入れと特定技能に与える影響
実習先が最も気にするのは、解雇したことで今後の受入れができなくなるかどうかです。ここは技能実習と特定技能で結論が違います。
技能実習の計画認定の基準(施行規則12条1項)には、「過去1年以内に責めに帰すべき事由で行方不明者を発生させていないこと」(12号の2)はありますが、実習生を解雇したこと自体を理由に新しい計画の認定を拒む規定は見当たりません。ただし、解雇が労働法令に違反していた場合は別です。技能実習法16条1項7号は「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき」を実習認定の取消事由としており、認定を取り消されると、その日から5年間は新たな認定を受けられません(同法10条)。優良な実習実施者の評価でも、法令違反や問題の発生状況は減点の対象になります。
特定技能では、影響がより直接的です。特定技能基準省令2条1項2号は、特定技能雇用契約の締結の日前1年以内またはその締結の日以後に、外国人が従事する業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させていないことを、受入れ機関の基準としています。ここでいう労働者には技能実習生も含まれます。除外されるのは、定年等による退職、「自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された者」、一定の有期契約の雇止め、自発的に離職した者の4類型だけです。
つまり、経営悪化を理由に技能実習生を解雇した場合、同じ業務で特定技能外国人を受け入れようとしても、その後1年間は基準に適合しません。すでに特定技能外国人を雇用している企業では、既存の特定技能外国人の更新や新規受入れに影響が及びます。素行不良による解雇も、「重大な理由」と言える程度でなければ除外されません。退職勧奨による合意退職も、非自発的離職として扱われる可能性がある点に注意が必要です。考え方の詳細は特定技能の非自発的離職者|1人でも出すと受入れが止まる理由と退職勧奨で解説しています。
解雇された実習生本人にとっても影響は小さくありません。技能実習2号を途中で終えた人は「良好に修了」したことにならないため、特定技能1号へ移るには技能試験と日本語試験に合格する必要があります。修了の判断については技能実習から特定技能への移行は可能?を参照してください。2027年4月1日の育成就労の施行後は、技能実習から新たに移行できる範囲に経過措置の期限がかかるため、実習の中断が本人のキャリアに与える影響はさらに大きくなります。制度の移行については育成就労制度とは?で解説しています。
解雇を検討する前に実習先が確かめること
解雇を決める前に、次の点を確かめておくと、後の紛争と受入れへの影響を小さくできます。
- 雇用契約の期間と、途中解雇に当たるかどうか(契約満了まで待てる事情か)
- 就業規則に懲戒事由があり、通訳を介して本人に周知したか
- 注意・指導の記録(日時、内容、通訳・監理団体職員の同席)があるか
- 休業、配置転換、実習先変更など、解雇以外の手段を検討したか
- 同じ業務で特定技能外国人を雇用している、または雇用する予定があるか
- 監理団体へ通知し、実習継続の措置(他の実習先の紹介)を協議したか
解雇の有効性や受入れへの影響は、個別の事情で判断が変わります。特に、特定技能への切替えや受入れを予定している企業は、解雇より前に監理団体と専門家に相談してください。
よくある質問
技能実習生は解雇できないのですか?
解雇はできます。技能実習法に解雇を禁じる規定はなく、労働基準法・労働契約法のルールに従えば解雇は可能です。ただし有期契約の途中解雇には労働契約法17条の「やむを得ない事由」が必要で、ハードルは高いと考えてください。
技能実習生を解雇するとペナルティはありますか?
解雇したこと自体で技能実習の計画認定が拒まれる規定はありません。ただし、不当解雇が労働法令違反と評価されれば実習認定の取消し(その後5年間は認定不可)につながり得ます。特定技能では、非自発的な離職者を出すと1年間は同種業務での受入れの基準を満たせなくなります。
技能実習生を素行不良で解雇したいのですが、何から始めればいいですか?
まず監理団体に相談し、通訳を介した面談で注意・指導を行い、その内容を記録に残します。就業規則の懲戒事由に当たるか、段階的な処分を経たかを確かめたうえで、それでも改善しない場合に解雇を検討します。
解雇された技能実習生はどうなりますか?
引き続き実習を希望すれば、監理団体や機構の支援で別の実習先を探します。見つかれば新しい技能実習計画の認定と入管の手続を経て実習を再開し、見つからなければ帰国することになります。帰国旅費は監理団体(企業単独型は実習実施者)が負担します。
技能実習生が妊娠したら解雇できますか?
できません。妊娠・出産を理由とする解雇は男女雇用機会均等法9条で禁止されており、妊娠中・出産後1年以内の解雇は原則無効です。技能実習生も産前産後休業・育児休業を取得でき、実習を中断した後に再開することができます。
解雇は「最後の手段」として記録と手続を先に整える
技能実習生の解雇は、法律上できるかどうかより、手続の順番を誤らないことのほうが実務では重要です。有期契約の途中解雇という高いハードル、監理団体と機構への届出、実習継続のための措置、そして特定技能の非自発的離職という4つの論点が、1つの解雇の判断に同時にかかってきます。
筆者は、解雇を検討する段階で、特定技能で同じ業務の外国人を雇っているか、今後雇う予定があるかを最初に確認すべきだと考えています。その答えによって、解雇という手段を選ぶことのコストが大きく変わるからです。監理団体への早い段階での共有と、通訳を介した指導の記録を、解雇を考える前から積み重ねておくことが、実習生と会社の双方を守ることにつながります。
関連するコラム
- 育成就労の入国後講習と日本語教育|320時間・220時間と認定日本語教育機関
- 育成就労の外部監査人とは?要件・講習・行政書士が就任するときの注意点
- 育成就労の介護分野|日本語A2.2・事業所3年・人数枠と技能実習介護との違い
根拠資料
- 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(e-Gov法令検索)
- 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)
- 技能実習実施困難時届出(外国人技能実習機構)
- やむを得ない事情がある場合の実習先変更について(外国人技能実習機構)
- 特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(e-Gov法令検索)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法(e-Gov法令検索)
在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。