特定技能外国人を1人受け入れる費用は、採用時の初期費用、毎月の支援委託料、1年から3年ごとの更新費用の3つを足して見積もります。このうち、入管に納める手数料や査証手数料、建設分野のJAC会費のように法令や団体の規程で額が決まっている費用は全体の一部で、大きいのは紹介料と支援委託料という市場で決まる費用です。出入国在留管理庁の調査では、登録支援機関への支援委託料は1人当たり平均月28,386円でした。
民間の記事には「総額〇〇万円」という相場が多く並んでいますが、紹介料や支援委託料は会社ごとに違い、その数字だけで予算を組むと実際の見積りと大きくずれます。この記事では、額が決まっている費用は一次資料の数字で、市場で決まる費用は入管庁の調査結果で示し、採用ルート別に5年間の費用を自分で計算できる形にしました。登録支援機関の選び方と委託料の中身は登録支援機関とは?選び方・費用相場・自社支援との違いで扱っています。
特定技能の費用は「額が決まっている費用」と「市場で決まる費用」に分けて考える
特定技能の受入れにかかる費用を、支払う時期と額の決まり方で整理すると次のようになります。
| 時期 | 額が法令・規程で決まっている費用 | 市場で決まる費用 |
|---|---|---|
| 採用時(初期費用) | 在留資格変更の手数料(国内採用)、査証手数料(海外採用)、分野別協議会の入会(多くは無料) | 人材紹介料、送出機関への費用、書類作成の報酬、渡航費、住居の初期費用、健康診断 |
| 毎月 | 建設分野の受入負担金 | 登録支援機関への支援委託料、給与・社会保険料 |
| 1年〜3年ごと | 在留期間更新の手数料 | 更新書類作成の報酬 |
| 退職・帰国時 | ― | 帰国旅費(本人が負担できない場合は会社負担) |
予算の精度を上げるには、左の列を確定させ、右の列は見積りを複数取って比べる、という順番が合理的です。特に右の列は、同じ「支援委託料」という名目でも、事前ガイダンスや空港送迎、生活オリエンテーションが月額に含まれるのか別料金なのかで、総額が大きく変わります。
額が決まっている費用|入管手数料・査証手数料・協議会
在留資格の手数料は2026年10月1日から許可期間別になった
入管に納める手数料は、2026年10月1日受付分から、入管法施行令25条の改正で許可される在留期間の長さに応じた額になりました。在留資格変更許可と在留期間更新許可に共通です。
| 許可される在留期間 | 窓口申請 | オンライン申請 |
|---|---|---|
| 3月以下 | 10,000円 | 10,000円 |
| 3月超6月以下 | 18,000円 | 15,000円 |
| 6月超1年未満 | 25,000円 | 21,000円 |
| 1年 | 33,000円 | 27,000円 |
| 1年超3年未満 | 48,000円 | 42,000円 |
| 3年以上5年未満 | 64,000円 | 56,000円 |
(出入国在留管理庁「2026年10月1日から外国人の在留手続に関する手数料が改定されます」)
2026年9月30日までに受け付けた申請は、許可が10月以降でも改定前の額(窓口6,000円・オンライン5,500円)です。特定技能1号の在留期間は2025年9月30日から「3年を超えない範囲」で指定されるようになったため、許可されるのが1年か3年かで手数料が倍近く違います。
海外から呼ぶ場合の在留資格認定証明書の交付申請には手数料がかかりません。上陸時に在留資格が決まるので、最初の1回は入管手数料なしで受け入れられます。国内にいる技能実習生や留学生を採用する場合は、在留資格変更許可の手数料が初期費用に入ります。手数料改定の全体像は【2026年10月確定】在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?をご覧ください。
査証手数料は2026年7月1日から一次約15,000円
海外採用では、本人が日本大使館・総領事館で査証(ビザ)を受けます。外務省は2026年7月1日から査証手数料を改定し、一次有効査証は約15,000円、数次有効査証は約30,000円としました(2026年6月24日発表)。現地通貨で納めるため、円換算の額は国ごとに少し違います。
分野別協議会への加入費用|建設分野だけ受入負担金がかかる
特定技能の受入れ機関は、分野ごとに設けられた協議会への加入が必要です。多くの分野では入会費・会費はかかりません。例えば飲食料品製造業の食品産業特定技能協議会は会費を当面無料としており、自動車運送業の協議会も会費はありません。
例外が建設分野です。建設分野では、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)の会員になることが受入れの要件で、JACに直接の賛助会員として加入すると年会費24万円、これに加えて受け入れる外国人1人ごとに受入負担金が月額12,500円かかります。JACの正会員である建設業者団体の構成員として加入する場合は、年会費の代わりにその団体の会費や事務手数料が必要になります(福岡県建設労働組合の案内では、組合員は年会費不要・受入負担金月額12,500円・事務手数料1申請30,000円+1人5,000円)。建設分野の受入れ計画とJACの仕組みは特定技能「建設」とは?受入れ計画の認定・JAC加入・費用で解説しています。
市場で決まる費用|入管庁の調査で分かっていること
紹介料や支援委託料は、公的な料金表がありません。ただ、出入国在留管理庁が2022年に行った調査の結果が、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第8回)の資料「特定技能制度の現状について」で公表されています。民間の相場記事よりも母数が大きい、数少ない公的な数字です。
支援委託料は平均月28,386円、9割が月3万円以下
2022年9月末に在留する特定技能外国人70,404人について、直近の許可申請で登録支援機関に有償で委託するとされた支援委託料(1人当たり月額)を集計した結果は次のとおりです。
| 月額支援委託料 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 5,000円以下 | 600人 | 0.9% |
| 5,000円超〜10,000円以下 | 4,515人 | 6.4% |
| 10,000円超〜15,000円以下 | 6,665人 | 9.5% |
| 15,000円超〜20,000円以下 | 17,781人 | 25.3% |
| 20,000円超〜25,000円以下 | 18,434人 | 26.2% |
| 25,000円超〜30,000円以下 | 14,322人 | 20.3% |
| 30,000円超 | 8,087人 | 11.5% |
平均は28,386円で、全体の約90%が月3万円以下です。最も多いのは2万円超〜2万5,000円以下の帯でした。調査は2022年時点のもので、その後の物価や人件費の上昇は反映されていません。筆者は、見積りを比べるときの基準線としてこの分布を使い、月3万円を大きく超える見積りについては、何が月額に含まれているのかを確かめることを勧めています。
登録支援機関は、支援委託契約を結ぶときに、支援に要する費用の額と内訳を受入れ機関に示さなければならず、示さない者は登録を拒否される事由に当たります。入管庁は「支援委託手数料に係る説明書」(参考様式第2-8号)で、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、定期面談などの項目ごとに月額と徴収時期を書かせる様式を用意しています。見積りを取るときはこの様式で内訳を出してもらうと、複数の機関を同じ土俵で比べられます。
人材紹介などの採用費用は「払っていない」が4割
同じ調査は、受入れ機関が採用に使ったマッチング媒体(ハローワーク、民間の職業紹介事業者、技能実習で監理をしていた監理団体、支援を委託している登録支援機関など)への1人当たりの支払額も集計しています。最も多かったのは「支払っていない」の40.9%で、支払った場合では「10万円以上30万円未満」の26.7%が最多でした。
支払っていない割合が高いのは、自社の技能実習生をそのまま特定技能に移行させるケースが多いためだと筆者はみています。採用ルートによって、紹介料はゼロにも数十万円にもなります。
送出機関への費用と書類作成の報酬
海外から採用する場合、国によっては現地の送出機関を通すことが求められます。ミャンマーは認定送出機関の利用が必須、フィリピンはDMWの許可を受けた送出機関を通すのが原則です。送出機関に受入れ機関が支払う費用は国と機関ごとに違い、公的な相場はありません。本人が送出機関に払う費用のうち、保証金や違約金の性質を持つものは禁止されており、この線引きは特定技能の費用で本人負担にできないもの|支援費用・保証金・送出手数料の線引きで整理しています。
在留資格の申請書類の作成を外部に頼む場合は、その報酬がかかります。2026年1月1日施行の改正行政書士法は、行政書士でない者が「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」官公署に出す書類を作ることを禁じる趣旨を条文で明確にしました。登録支援機関が支援委託料の中で申請書類の作成まで請け負う形は、この点から見直しが必要です。行政書士の報酬の目安は在留資格申請を行政書士に依頼する費用の相場は?で扱っています。
会社が負担しなければならない費用
費用の総額を考えるうえで、会社が必ず負担する費用と、本人と合意すれば本人に負担させてよい費用の区別も欠かせません。概要だけ示すと次のとおりです。
- 義務的支援(事前ガイダンス、出入国時の送迎、生活オリエンテーション、定期面談など)にかかる費用は、直接・間接を問わず本人に負担させてはならない
- 本人が帰国旅費を負担できないときは、受入れ機関が負担し、出国が円滑にできるよう措置する(特定技能基準省令)
- 寮費・食費などを給与から差し引く場合は、実費に相当する額など適正な額に限り、本人が内容を理解して合意していることが必要
渡航費や健康診断の費用は、法令上は本人負担にできますが、採用競争の中で会社負担にする例が多いのが実情です。寮費の決め方は特定技能の寮費・家賃の決め方で解説しています。
採用ルート別の計算例|5年間でいくらかかるか
ここからは、額が決まっている費用は一次資料の数字、支援委託料は入管庁調査の平均、採用費用は同調査の最多帯を使って、特定技能1号で5年間雇う場合の費用を計算します。給与と社会保険料は日本人を雇う場合と同じく発生するため、ここでは除きます。手数料は窓口申請、在留期間は毎回1年が付与されると仮定します。
ケース1:自社の技能実習2号修了者を特定技能1号に移行する
- 在留資格変更許可の手数料:33,000円
- 紹介料:0円
- 支援委託料:28,386円×60か月=1,703,160円
- 更新手数料:33,000円×4回=132,000円
- 合計:1,868,160円(書類作成を外部に頼む場合は、その報酬を加える)
ケース2:国内にいる他社の特定技能外国人・留学生などを採用する
- 在留資格変更許可の手数料:33,000円
- 紹介料:10万円〜30万円(調査の最多帯)
- 支援委託料:1,703,160円
- 更新手数料:132,000円
- 合計:1,968,160円〜2,168,160円(書類作成の報酬は別)
国内で特定技能から特定技能への転職者を採用する場合も、所属機関が変わるため在留資格変更許可が必要です。
ケース3:海外から採用する
- 在留資格認定証明書:0円
- 査証手数料:約15,000円(本人が納め、会社が補填する場合)
- 紹介料・送出機関への費用:10万円〜30万円(調査の最多帯。送出機関への費用は国により別途)
- 渡航費:実費(ここでは除く)
- 支援委託料:1,703,160円
- 更新手数料:初回は上陸許可のため、更新は1年ごとに4回で132,000円
- 合計:1,950,160円〜2,150,160円+渡航費・送出機関への費用
3つのケースを並べると、5年間の総額のうち支援委託料がおおむね8〜9割を占めることが分かります。紹介料の有無よりも、支援委託料の月額の差のほうが総額への影響が大きいということです。月額が5,000円違えば、5年で30万円の差になります。
建設分野の場合の上乗せ
建設分野でJACに直接の賛助会員として加入する場合は、上の各ケースに、受入負担金12,500円×60か月=750,000円と、年会費24万円×5年=120万円(会社単位で1回。複数人を受け入れても年会費は増えない)が加わります。1人だけ受け入れる会社では、年会費の負担が1人当たりの費用を大きく押し上げます。
更新手数料を下げる方法
在留期間が1年ずつではなく、1年の後に3年、最後に1年と付与されれば、更新手数料は64,000円+33,000円=97,000円になります。オンライン申請にすると、毎年1年の場合でも27,000円×4回=108,000円に下がります(特定技能1号の更新手続は特定技能更新の手続き|1号の在留期間3年化・必要書類と2026年10月の手数料で解説しています)。
費用を抑えられる余地はどこにあるか
費用のうち会社の工夫で動かせるのは、主に次の3つです。
一つ目は支援の自社実施です。受入れ機関が一定の要件を満たせば、登録支援機関に委託せず自ら支援できます。ケース1で見たとおり、支援委託料は5年で170万円を超えるため、複数人を受け入れる会社ほど自社支援の効果は大きくなります。ただし、支援責任者・支援担当者の人件費と、定期面談や届出の事務負担は社内に残ります。要件は特定技能の自社支援の要件とは?で整理しています。
二つ目は雇用契約の期間です。特定技能1号の在留期間は雇用契約の期間を踏まえて決まるため、雇用契約を1年ごとに更新している会社は、在留期間も1年になりやすく、毎年手数料を払うことになります。三つ目は、オンライン申請への切替えです。
筆者は、費用を削る順番として、まず支援委託料の内訳を確認し、次に契約期間を見直し、紹介料は最後に考えるのが合理的だと考えています。紹介料を削ろうとして定着しない人材を採れば、再採用の費用が二重にかかるためです。
よくある質問
特定技能の毎月の費用はいくらですか?
給与と社会保険料を除くと、中心は登録支援機関への支援委託料です。入管庁の調査(2022年)では1人当たり平均月28,386円で、約9割が月3万円以下でした。建設分野ではこれにJACの受入負担金月額12,500円が加わります。
特定技能外国人のJAC費用はいくらですか?
JACに直接の賛助会員として加入する場合、年会費24万円と、受入れ1人当たり月額12,500円の受入負担金がかかります。JAC正会員の建設業者団体を通じて加入する場合は、年会費の代わりにその団体の会費などが必要で、額は団体によって違います。
特定技能の更新にかかる費用はいくらですか?
2026年10月1日以降に受け付けた申請は、許可される在留期間が1年なら窓口33,000円・オンライン27,000円、3年なら窓口64,000円・オンライン56,000円です。9月30日までの受付分は窓口6,000円・オンライン5,500円です。書類作成を外部に頼む場合は、その報酬が別にかかります。
特定技能の送り出し機関にかかる費用はいくらですか?
国と機関によって違い、公的な料金表はありません。受入れ機関が支払う費用と、本人が支払う費用があり、本人に保証金や違約金を課す契約は禁止されています。見積りでは、誰が何の名目でいくら払うのかを書面で確認してください。
特定技能の事前ガイダンスにかかる費用は誰が負担しますか?
事前ガイダンスは義務的支援の一つなので、費用は会社が負担し、本人に負担させることはできません。登録支援機関に委託する場合、月額の支援委託料に含まれるのか、初期費用として別に請求されるのかを見積りで確認します。
予算を組む前に、見積りを同じ様式で並べる
特定技能の費用で総額を決めているのは、支援委託料の月額と、雇用を何年続けるかの2つです。入管手数料は改定で上がりましたが、5年間で10万円台にとどまり、支援委託料の月額差のほうが総額への影響は大きくなります。
予算を組む会社がすべきことは、登録支援機関や紹介会社の見積りを、参考様式第2-8号の項目に沿って同じ形で並べることです。そのうえで、この記事の計算式に自社の数字を入れれば、5年間の費用がおおむね見えてきます。費用の比較は、技能実習との比較も含めて技能実習と特定技能の違いとは?でも扱っています。
根拠資料
- 特定技能制度の現状について(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 第8回 参考資料4、出入国在留管理庁・PDF)
- 2026年10月1日から外国人の在留手続に関する手数料が改定されます(出入国在留管理庁・リーフレット)
- 令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について(出入国在留管理庁)
- 参考様式第2-8号 支援委託手数料に係る説明書(出入国在留管理庁・PDF)
- 1号特定技能外国人支援・登録支援機関について(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度に関するQ&A(出入国在留管理庁)
- 建設技能人材機構(JAC)(福岡県建設労働組合)
在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。