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特定技能の費用で本人負担にできないもの|支援費用・保証金・送出手数料の線引き

特定技能で本人に負担させてはいけない費用は、法令上2種類です。一つは義務的支援にかかる費用で、登録支援機関への支援委託料もこれに含まれ、直接にも間接にも本人に負担させられません(特定技能基準省令2条1項8号)。もう一つは保証金・違約金・財産の管理で、名目を問わず禁止され、これを知りながら雇用すると受入れ機関は5年間受け入れられなくなります。一方、渡航費、住居費、在留申請の手数料などは、本人が内容を理解して合意し、額が適正であれば本人負担にできます。

この記事では、特定技能基準省令と上陸基準省令の条文、出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(2026年8月一部改正版)の記載をもとに、費用ごとの線引きを整理します。費用の総額の計算は特定技能の費用はいくら?受入れ費用の内訳・毎月の費用と5年間の計算例で扱っています。

本人負担の可否は3つに分かれる

特定技能の費用を本人負担にできるかどうかは、次の3区分で考えると整理しやすくなります。

区分 主な費用 根拠
本人に負担させてはいけない 義務的支援の費用(登録支援機関への委託料、支援の通訳費、出入国時の送迎の交通費など)/保証金・違約金・財産の管理 特定技能基準省令2条1項6号〜8号、上陸基準省令(特定技能1号)2号
条件付きで本人負担にできる 食費・居住費・水道光熱費など定期に負担する費用/外国の送出機関に払う費用 上陸基準省令(特定技能1号)3号・5号
法令の定めがなく合意で決める 入国時の渡航費、在留申請の手数料、帰国旅費(本人が払えない場合は会社負担) 特定技能基準省令1条2項1号ほか

真ん中の区分は「本人が内容を十分に理解して合意していること」と「額が実費相当などの適正な額であること」が条件です。右の区分も、合意がなければ本人に請求できない点では同じです。

本人に負担させてはいけない費用①|義務的支援の費用

条文と運用要領が示す範囲

特定技能基準省令2条1項8号は、1号特定技能外国人と雇用契約を結ぶ機関は「一号特定技能外国人支援に要する費用について、直接又は間接に当該外国人に負担させないこととしていること」を求めています。運用要領は、ここでいう支援の費用は運用要領別冊(支援)が定める義務的支援に係るものに限るとしたうえで、次のものを含むと明記しています。

  • 登録支援機関への委託費用
  • 事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談・苦情対応、定期的な面談の通訳人の通訳費など
  • 出入国時の送迎に要する交通費など

同じ箇所で運用要領は、住宅の賃貸料などの実費を必要な限度で本人に負担させることは妨げないとしています。支援の一環として住居の確保を手伝うことと、その住居の家賃を本人が払うことは別の問題、という整理です。

「間接に」負担させる典型例

条文が「直接又は間接に」と書いているのは、名目を変えて本人に回す形を防ぐためです。運用要領に個別の例示はありませんが、条文の趣旨から、次のような形は間接的な負担に当たるおそれが高いと筆者は考えています。

  • 給与から「管理費」「サポート費」などの名目で毎月差し引く
  • 寮費に支援委託料相当額を上乗せして徴収する
  • 登録支援機関が本人から直接「会費」「登録料」を受け取る
  • 支援委託料を差し引いた額を基準に給与額を決める

最後の例は見落とされがちです。給与は日本人と同等以上であることが別に求められていますが(特定技能外国人の給料はどう決める?)、支援委託料の分だけ給与を低く設定すれば、実質は本人の負担です。

運用要領は、事前ガイダンスと生活オリエンテーションで、支援の費用を直接・間接に負担させないことを本人に説明するよう求めています。1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)は本人が理解できる言語で作り、本人が理解したうえで署名していることが必要です。

本人に負担させてはいけない費用②|保証金・違約金・財産の管理

2つの省令が二重に禁じている

保証金や違約金は、本人側の基準と受入れ機関側の基準の両方で禁じられています。

上陸基準省令(特定技能1号)2号は、本人やその配偶者・親族などが、特定技能の活動に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産を管理されず、雇用契約の不履行について違約金を定める契約などが結ばれていないことを求めます。運用要領は、この規定に主語がないのは、受入れ機関、登録支援機関、職業紹介事業者だけでなく、海外の仲介事業者(ブローカー)も含めて広く規制するためだと説明しています。

特定技能基準省令2条1項は、受入れ機関の側に、本人が保証金を取られていることなどを知りながら雇用契約を結ばないこと(6号)、自らも違約金などの契約を結ばないこと(7号)を求めています。

運用要領が挙げる「不当に財産の移転を予定する契約」

運用要領は、「不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」の例として、次のものを挙げています。

  • 受入れ機関から失踪することなど、労働契約の不履行について違約金を定める契約
  • 入管や労働基準監督署への法令違反の相談、休日の無許可の外出、作業時間中のトイレなどでの離席を禁じ、その違約金を定める契約
  • 一定期間勤務することを条件に、貸付金の返済を免除する契約
  • 返済の途中で退職したら、貸付金の残額を一括で返済させる契約
  • 商品やサービスの対価として不当に高額な料金を取る契約

実務で問題になりやすいのは3つ目と4つ目です。渡航費や初期費用を会社が「立て替え」、一定期間働けば返済不要、途中で辞めたら一括返済、という契約は、日本人の採用でも見られる形ですが、特定技能では運用要領が名指しで禁止の例に挙げています。立替えをするなら、退職の有無にかかわらず同じ条件で分割返済する契約にとどめる必要があります。

帰国旅費の積立ても同じ扱いです。運用要領は、帰国旅費を確保するために報酬から控除して積み立て、受入れ機関が管理することは「金銭その他の財産の管理」に当たり得るため認められないとしています。

違反したときの効果|5年間の受入れ停止

運用要領は、保証金の徴収や違約金契約を知りながら雇用契約を結んで受け入れた場合、出入国または労働に関する法令に関し不正または著しく不当な行為を行ったものとして欠格事由に当たり、5年間受け入れができなくなるとしています。受入れ機関が自ら違約金契約を結んだ場合も、同じく不正行為の類型に挙げられています。欠格事由の全体は特定技能の受入れ機関の欠格事由で解説しています。

受入れ機関には、事前ガイダンスで保証金・違約金契約が違法であることを説明し、保証金の徴収などがないことを確認する役割も課されています。確認の結果、保証金の徴収などが分かった場合は、地方出入国在留管理局に速やかに情報提供するよう運用要領は求めています。

条件付きで本人負担にできる費用|送出機関の費用と定期に負担する費用

送出機関に払う費用は「額と内訳の理解と合意」が要件

海外の送出機関に本人が費用を払うこと自体は禁じられていません。上陸基準省令(特定技能1号)3号は、本人が雇用契約の取次ぎや活動の準備に関して外国の機関に費用を払っている場合、その額と内訳を十分に理解して機関との間で合意していることを求めています。

運用要領はこの規定の目的を、不当に高額な費用を払い、多額の借金を抱えて来日することを防ぐためと説明しています。そのうえで、旅券の取得費用など社会通念上本人が負担することに合理的な理由があるものについては、このルールに沿って外国の機関が費用を徴収することが求められるとし、受入れ機関には、本人が外国の機関から徴収された費用の額と内訳を理解し合意していることを確認するよう求めています。確認は「雇用の経緯に係る説明書」(参考様式第1-16号)で行います。

育成就労では、送出機関に本人が払う費用に上限(月給の2か月分)が設けられましたが、特定技能にはこうした金額の上限はありません。その分、額と内訳の書面での確認が審査の中心になります。本人の国で送出しの手続が決まっている場合は、その手続を経ていることも要件です(上陸基準省令(特定技能1号)4号)。

なお、国内で職業紹介事業者が特定技能外国人を紹介する場合、職業安定法32条の3により、求職者である本人から手数料を取ることは原則としてできません。国内の紹介料は会社が払うものと考えてください。

食費・居住費・水道光熱費は「実費相当」まで

上陸基準省令(特定技能1号)5号は、食費、居住費など名目を問わず本人が定期に負担する費用について、本人が内容を理解して合意し、額が実費に相当する額など適正な額で、明細書などの書面が示されることを求めています。運用要領が示す上限の考え方は次のとおりです。

費用 本人から徴収できる額の上限
食費(食材・弁当の現物支給) 購入に要した額以内
食費(社員食堂) 他の従業員から徴収する額以内
食費(調理して提供) 材料費・水道光熱費・人件費などを提供を受ける人数で割った額以内
居住費(借上物件) 借上げ費用(管理費・共益費を含む)を入居者数で割った額以内
居住費(自己所有物件) 建設・改築費、耐用年数、入居人数などから算出した合理的な額
水道・光熱費 実際にかかった費用を同居者数で割った額以内

借上物件で注意すべきなのは、敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新手数料・途中解約金は借上げ費用に含まれず、本人に負担させることはできないと運用要領が明記している点です。入居時の初期費用は会社負担になります。家賃相場で徴収する運用が認められない理由は特定技能の寮費・家賃の決め方で詳しく扱っています。

給与から控除する場合は、雇用条件書(参考様式第1-6号)に控除する費用の名目と額を明記し、労働基準法24条1項ただし書の労使協定を結んでおく必要があります。

合意で決める費用|渡航費・申請手数料・帰国旅費

入国時の渡航費

来日時の航空券代は、義務的支援の費用には含まれません。空港からの送迎は支援ですが、航空券そのものは支援ではないためです。本人と合意すれば本人負担にでき、会社が負担してもかまいません。会社が立て替えて分割で返してもらう場合は、前述のとおり、途中退職で一括返済・一定期間勤務で免除という条件を付けないことが前提です。

在留申請の手数料と書類作成の報酬

在留資格変更許可や在留期間更新許可の手数料を誰が負担するかは、法令に定めがありません。2026年10月1日から手数料が許可期間別になり、1年の許可で窓口33,000円、3年で64,000円と、従来の6,000円から大きく上がりました(特定技能1号の更新は特定技能更新の手続き|1号の在留期間3年化・必要書類と2026年10月の手数料)。本人負担にする場合は合意と労使協定が必要ですが、手数料の上昇幅を考えると、会社負担に切り替える例が増えると筆者はみています。

行政書士に書類作成を頼む報酬も、法令上の定めはありません。ただ、特定技能の申請書類には所属機関が作る書類が多く含まれ、会社の受入れのための手続という性格が強い費用です。筆者は、会社が負担するのが自然だと考えています。

帰国旅費は「本人が払えないとき」は会社負担

特定技能基準省令1条2項1号は、本人が雇用契約終了後の帰国旅費を負担できないときは、受入れ機関が旅費を負担し、出国が円滑にできるよう必要な措置を取ることを求めています。運用要領は、帰国の原因は問わない(行方不明になった場合を除く)とし、必要な措置には航空券の予約・購入や帰国までの生活支援も含むとしています。

つまり、帰国旅費は本人負担が原則で、本人が払えない場合に会社が負担します。自己都合退職でも、本人に払う資力がなければ会社負担です。

雇入れ時の健康診断

入国前や在留申請時の健康診断とは別に、労働安全衛生法66条と同規則43条は、常時使用する労働者を雇い入れるときの健康診断を事業者に義務づけています。この雇入れ時健康診断の費用は、事業者の義務として会社が負担するものとされています。

費用負担の早見表

費用 本人負担 条件・注意点
登録支援機関への支援委託料 不可 名目を変えた控除・上乗せも不可
事前ガイダンス・生活オリエンテーション・定期面談の通訳費 不可 義務的支援の費用
出入国時の空港送迎の交通費 不可 義務的支援の費用
保証金・違約金・財産の管理 不可 知りながら雇用すると5年間受入れ不可
勤務継続で免除・退職で一括返済の貸付 不可 運用要領が禁止例に明記
帰国旅費の給与天引き積立て 不可 財産の管理に当たり得る
送出機関への費用 可 額と内訳の理解・合意、送出国の手続
国内の職業紹介の手数料 原則不可 職業安定法32条の3
寮費・食費・水道光熱費 可 実費相当以内、明細書、労使協定
借上物件の敷金・礼金・仲介手数料 不可 借上げ費用に含まれない
入国時の航空券代 可 合意が必要
在留申請の手数料 可 合意と労使協定。会社負担が一般的
帰国旅費 原則本人 本人が払えなければ会社負担
雇入れ時健康診断 不可 労働安全衛生法上の事業者の義務

よくある質問

特定技能の入国費用は本人負担ですか?

航空券代は、本人と合意すれば本人負担にできます。空港での出迎えと住居までの送迎は義務的支援なので、その交通費は会社負担です。会社が航空券代を立て替える場合、一定期間働けば返済免除・途中で辞めたら一括返済という条件は付けられません。

特定技能ビザの行政書士費用は本人負担ですか?

法令に定めはなく、合意で決まります。ただし、所属機関が作る書類が大半を占める手続であり、筆者は会社負担が自然だと考えています。本人負担にするなら、金額と内訳を本人が理解できる言語で示し、合意を書面に残してください。

特定技能の支援委託費用を本人から徴収できますか?

できません。登録支援機関への委託費用は、特定技能基準省令2条1項8号の「支援に要する費用」に含まれ、直接にも間接にも本人に負担させてはいけません。給与からの控除、寮費への上乗せ、登録支援機関による本人からの会費徴収も同じ扱いです。

送り出し機関に本人が払った費用は問題になりますか?

払うこと自体は禁じられていません。本人が額と内訳を十分に理解し、送出機関と合意していることが要件で、受入れ機関は「雇用の経緯に係る説明書」で確認します。保証金や違約金の性質を持つ費用が含まれていれば、上陸基準に適合しません。

特定技能ビザの更新費用は本人負担ですか?

法令上は合意で決まります。本人負担にする場合は、合意と、給与から控除するなら労使協定が必要です。2026年10月1日以降の受付分は1年の許可で窓口33,000円と高額になったため、事前に誰が負担するかを雇用条件書で決めておくことが大切です。

費用のルールは「採用前の書面」で決まる

本人負担の線引きで問題が起きる会社の多くは、ルールを知らなかったのではなく、採用時に費用の取決めを書面にしていなかったために、後から控除や請求の根拠を説明できなくなっています。運用要領が確認書類として挙げている雇用条件書、雇用の経緯に係る説明書、支援計画書は、いずれも本人が理解できる言語で作り、署名を得るものです。

受入れを決めた会社は、この記事の早見表を使って、会社負担・本人負担・合意事項を一枚に整理し、雇用条件書の控除欄と支援計画書に反映させてください。登録支援機関に委託する場合は、支援委託料に何が含まれ、本人から何も徴収しないことを契約で確認しておくことが、5年間の受入れ停止を避ける最も確実な方法です。登録支援機関との契約の考え方は登録支援機関とは?選び方・費用相場・自社支援との違いも参考にしてください。

根拠資料


在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。