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特定技能「5年の壁」の延長措置とは?2号試験で8割以上なら6年まで

特定技能1号で在留できるのは通算5年までですが、特定技能2号の評価試験に不合格でも、2号への移行に必要な試験のすべてで合格基準点の8割以上を取っていれば、通算6年まで在留を延ばせます。本人が受験と帰国について誓約し、受入れ機関が雇用を続ける意思と合格に向けた指導体制を持っていることが条件です。手続は、通算5年に達する概ね3か月前の在留期間更新許可申請で、申立書(参考様式第1-31号)と試験の結果通知書を出します。

見落としやすいのは、対象になる試験の範囲です。入国・在留審査要領は、不合格だった試験の受験日を取扱いの施行前後で区別しないとしています。一方、入管庁の公表ページは、分野ごとに対象となる結果通知書の発行日や受験日を区切っています。申請の可否は、新しい公表ページの基準で判断してください。自動車整備士技能検定2級と航空従事者技能証明は、どちらの資料でも対象外です。

この記事でわかること

  • 通算6年の延長措置を受けるための3つの要件
  • 対象になる試験と、分野ごとの発行日・受験日の区切り
  • 申請のタイミングと必要書類(参考様式第1-31号)
  • 産休・育休などで5年から除く期間との違い
  • 延長後の1年間に受入れ機関がやるべきこと

「5年の壁」はどう数えるか

ここでいう「5年の壁」とは、特定技能1号で在留できる期間の上限を指します。上陸基準省令は、1号で在留した期間が通算して5年(5年を超えて在留することに相当の理由がある場合は6年)に達していないことを求めています。この上限は分野をまたいで数えるため、外食業から飲食料品製造業へ移った人も、前の分野の期間を引き継ぎます。

通算には、失業して働いていない期間と、再入国許可(みなし再入国許可を含む)で出国していた期間も入ります。転職のための変更申請や更新申請の特例期間も同じです(入国・在留審査要領 第12編(開示版)18の3-18〜18の3-19)。「特定活動(特定技能1号移行準備(就労可))」で在留した期間も1号の期間とみなされます(18の3-20)。一時帰国や転職活動の空白で期間が止まるわけではない点は、本人にも会社にも誤解が多いところです。

審査要領ではこう書かれている

在留中に通算在留期間が5年に達する場合は(中略)在留期間の更新を認めない(雇用契約期間が残存している場合であっても、通算在留期間が5年(当該在留資格をもって5年を超えて在留することについて相当の理由がある場合にあっては、6年)を超える在留は認めない。)。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-20

雇用契約が残っていても更新はされません。この原則の例外として、条文の「相当の理由」に当たる場面を具体化したのが、今回の延長措置です。通算期間の数え方の細部は特定技能1号の5年後はどうなる?通算5年の数え方(一時帰国・失業・産休育休)と在留を続ける方法で扱っています。

延長措置の中身:2号試験で8割以上なら通算6年

対象は、2号評価試験等に不合格となった1号特定技能外国人のうち、一定の要件を満たす者です。審査要領は、この者を当分の間「5年を超えて在留することについて相当の理由があると認められる場合」に当たるものとして、通算在留期間を6年とすると定めています(18の3-19)。ここでいう「2号評価試験等」とは、2号の業務に必要な熟練した技能を評価する試験の総称で、分野ごとの2号評価試験のほか、技能検定1級なども含みます。

要件は3つで、審査要領はこれを「全て満たすこと」で確認するとしています(18の3-21〜18の3-22)。

要件 中身 確認の方法
得点 分野別運用方針が定める2号への移行に必要なすべての試験で、合格基準点の8割以上の得点を取っていること 結果通知書(総得点と合格基準点が書かれたもの)の写し
本人の誓約 5年経過後の在留中に合格に向けて精励して受験すること、合格したら速やかに2号への変更申請をすること、不合格なら(他の在留資格へ変更できる場合を除き)速やかに帰国すること 申立書(参考様式第1-31号)
所属機関の体制 引き続き雇用する意思があること、合格に向けた指導・研修・支援等を行う体制があること 申立書(参考様式第1-31号)

「すべての試験」で8割以上とはどういうことか

分野によっては、2号への移行に複数の試験の合格が必要です。漁業と外食業は技能試験に加えて日本語能力試験N3以上、工業製品製造業は技能試験に加えてビジネス・キャリア検定3級が求められます(18の3-161)。この場合、技能試験で8割を超えていても、日本語試験の得点が合格基準点の8割に届いていなければ要件を満たしません。どれか一つだけ惜しかった、という状態では足りないということです。

得点の確認は結果通知書で行います。審査要領が求めるのは、試験実施機関が発行した、総得点と合格基準点の両方が書かれた結果通知書の写しです(18の3-23)。合否だけが分かる書面では8割の計算ができないため、受験した段階で通知書の記載を確かめておく必要があります。

本人の誓約と、会社の体制

本人の誓約は、延長の1年を「次の受験までの猶予」と位置づけるものです。入管庁の公表ページは、誓約の内容として、出国中であれば1年以内に入国することも挙げています(資料「通算在留期間(特定技能1号)」)。不合格なら帰国すると誓約するため、延長後に再び不合格となれば、他の在留資格に変更できない限り日本を離れることになります。

会社側の要件は、雇用を続ける意思と指導体制の2つです。審査要領の立証資料欄に挙がっているのは申立書と結果通知書の写しだけで、体制を示す書類の形式は決められていません。筆者は、次の受験予定日、業務時間内の学習や模擬試験の機会、指導を担当する社員を、申立書にできるだけ具体的に書くことを勧めています。延長の1年は、会社にとっては2号人材を育てるための先行投資の期間です。

対象になる試験はどれか

審査要領は、各分野の2号評価試験のほかに、次の試験も対象に含めるとしています(18の3-21)。

分野 2号評価試験のほかに対象となる試験
ビルクリーニング 技能検定1級
工業製品製造業 技能検定1級、ビジネス・キャリア検定3級
建設 技能検定1級
造船・舶用工業 技能検定1級
漁業 日本語能力試験(N3相当以上)
外食業 日本語能力試験(N3相当以上)

審査要領ではこう書かれている

各分野の特定技能2号評価試験のほか、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業の各分野においては各技能検定1級(中略)を含む。なお、自動車整備士技能検定2級及び航空従事者技能証明は対象外であることに留意する。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-21

自動車整備分野の人が自動車整備士技能検定2級に落ちた場合や、航空分野の人が航空従事者技能証明を取れなかった場合は、得点が8割を超えていても延長の対象になりません。

また、この措置は2号評価試験等に不合格となった人のためのものです。2号の対象は11分野で、介護、リネンサプライ、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、林業、木材産業、資源循環の8分野には2号がありません(特定技能外国人受入れに関する運用要領 令和8年8月)。これらの分野で働く人には、延長措置を使う前提となる試験がないことになります。

受験日・発行日の区切りは公表資料が新しい

ここで重要なのは、どの時期の試験結果が使えるかという論点です。審査要領は、不合格となった試験の受験日は取扱いの施行(令和7年9月30日)の前後を問わないとし、要件を満たすことが立証資料から明らかであればよいとしています(18の3-21)。

これに対し、入管庁の公表ページ「通算在留期間(特定技能1号)」(2026年6月17日更新)は、分野ごとに対象となる試験と、対象になる結果通知書の発行日・受験日を示しています。確認できた分野は次のとおりです。

分野 公表ページが示す対象
ビルクリーニング 技能検定1級は、2026年3月31日以降に発行された結果通知書
造船・舶用工業 2号試験は、2026年4月以降の受験分
自動車整備 2026年1月以降に発行された結果通知書、または4月以降の受験分
宿泊 2026年4月30日以降に発行された結果通知書

審査要領は2025年12月にスキャンされた開示版で、公表ページのほうが新しい情報です。上の分野で働く人は、公表ページの日付に当てはまる結果通知書でなければ使えないものとして準備してください。表にない分野の区切りについては、今回確認した資料からは読み取れないため【要確認】とし、申請前に公表ページで自分の分野の記載を確かめることを勧めます。

いつ、何を出して申請するか

延長措置は、通算在留期間が5年に達する概ね3か月前に、在留期間更新許可申請として受け付けられます(18の3-21)。通常の更新書類に加えて、次の2点を出します。

  • 通算在留期間を超える在留に関する申立書(参考様式第1-31号)
  • 分野別運用方針が定める2号への移行に必要な全ての試験の結果通知書の写し(試験実施機関が発行し、総得点と合格基準点が記載されたもの)

許可された場合の在留期間は、通算6年を上限として決まります(18の3-178)。通算の計算は本人と会社で行う必要があり、入管庁は窓口や電話では算定しないとしています。出入国記録の開示請求を、余白に「通算在留期間の確認のため」と書いて行い、その記録から自分で数える方法が案内されています(資料「通算在留期間(特定技能1号)」)。3か月前という目安から逆算すると、開示請求は少なくとも通算4年6か月の時点で始めておきたいところです。

審査にかかる日数は、令和8年7月に許可された特定技能1号の更新で平均41.0日でした(在留審査処理期間)。手数料は令和8年10月1日から在留期間に応じた額に変わり、たとえば1年の許可なら窓口33,000円・オンライン27,000円です。9月30日までに受け付けた申請は、許可が10月以降でも旧手数料(窓口6,000円・オンライン5,500円)になります。詳しくは【2026年10月確定】在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?永住20万円・企業負担を解説を確認してください。

産休・育休で「5年から除く」制度とは別物

5年を超えて在留できる仕組みは、もう一つあります。妊娠・出産・育児や、病気・けがで業務に従事できなかった期間を、通算から除く制度です。こちらは休業期間に関する申立書(参考様式第1-30号)を使い、除かれるのは実際に休業した期間に限られます(18の3-20〜18の3-22)。

5年から除く制度 6年への延長措置
対象 産前産後休業、育児休業、病気・けが(連続1か月超、原則1年以下・労災は3年以下)の期間 2号評価試験等で全試験8割以上を取った不合格者
上限 実際に休業した期間の分だけ延びる 通算6年
申立書 参考様式第1-30号 参考様式第1-31号
申請時期 通算5年に達する概ね3か月前 通算5年に達する概ね3か月前

延長後の1年で受入れ機関がやること

延長は1回限りの猶予で、通算6年を超える在留は認められません。会社がこの1年でやることは、次の試験での合格と、合格後の2号への変更の準備です。

2号への変更では、令和8年8月20日から「2号特定技能外国人の業務内容に関する誓約書」(参考様式第1-32号)が確認書類に加わりました。2号の通常業務は、技能実習生や1号と同じ業務であってはなりません。指導業務、管理業務、自らの判断で行う専門的業務を行ったうえで、分野ごとに定める人数以上を指導している必要があります(特定技能外国人受入れに関する運用要領 新旧対照表 令和8年8月20日)。別の事業所の人やフルタイムでない人は、指導人数に数えません。試験に受かっても、職場での役割が1号のままでは変更申請が通らないため、延長の段階から配置を見直しておくべきです。2号の要件の全体は特定技能2号の条件とは?対象分野・試験・1号からの移行手続きを解説で整理しています。

受入れ見込数の上限との関係も押さえておきます。入管庁は、上限を超えそうな場合に在留資格認定証明書の交付などを止める一方、更新は通常どおり審査するとしています(育成就労制度Q&A Q22・Q23)。延長措置は更新申請の形をとるため、外食業のように新規の受入れが止まっている分野でも、要件を満たせば申請できます。1号と2号の違いは特定技能1号と2号の違いとは?在留期間・家族帯同・移行条件を比較解説も参考にしてください。

よくある質問

Q. 特定技能1号の5年の延長措置は、誰でも受けられますか?

受けられません。特定技能2号評価試験等に不合格となった人のうち、2号への移行に必要なすべての試験で合格基準点の8割以上を取り、受験・合格後の変更申請・不合格時の帰国を誓約し、受入れ機関が雇用継続の意思と指導体制を持っている場合に限られます。

Q. 延長措置を受けると、何年まで在留できますか?

通算在留期間6年が上限です。延長後の在留中に2号の試験に合格すれば、速やかに特定技能2号への在留資格変更許可申請を行います。

Q. 延長措置はいつ、どのように申請しますか?

通算在留期間が5年に達する概ね3か月前に、在留期間更新許可申請として行います。申立書(参考様式第1-31号)と、総得点と合格基準点が書かれた試験結果通知書の写しを出します。

Q. 自動車整備士技能検定2級に落ちた場合も対象になりますか?

対象になりません。自動車整備士技能検定2級と航空従事者技能証明は、延長措置の対象外とされています。

Q. 介護分野で働いていても延長措置は使えますか?

使う場面がありません。延長措置は2号評価試験等に不合格となった人のためのもので、介護、リネンサプライ、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、林業、木材産業、資源循環の8分野には2号がないためです。

申請の前に確認すること

まず、本人の出入国記録の開示請求をして、通算5年に達する日を確定させてください。次に、手元の結果通知書に総得点と合格基準点が書かれているか、発行日・受験日が公表ページの区切りに当てはまるかを確認し、移行に必要な試験のすべてで8割を超えているかを計算します。そのうえで、次の受験日と社内の指導体制を決め、通算5年の3か月前には申請できるよう書類を整えます。要件を満たすか判断に迷う場合は、開示請求の段階から相談してください。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 特定技能 18の3-18〜18の3-23(通算在留期間5年・6年特例)、18の3-161(2号の日本語・ビジネス・キャリア検定)、18の3-178(通算6年を上限とする在留期間の決定)
  • 出入国在留管理庁 通算在留期間(特定技能1号)(https://www.moj.go.jp/isa/10_00233.html)
  • 出入国在留管理庁 特定技能制度トップページ(https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html)
  • 出入国在留管理庁 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年8月)(https://www.moj.go.jp/isa/content/001468647.pdf)
  • 出入国在留管理庁 同 新旧対照表(令和8年8月20日)(https://www.moj.go.jp/isa/content/001468648.pdf)
  • 出入国在留管理庁 育成就労制度Q&A(https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html)
  • 出入国在留管理庁 在留審査処理期間(令和8年7月許可分)(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00140.html)
  • 出入国在留管理庁 令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について(https://www.moj.go.jp/isa/01_00644.html)