ここでいう特定技能とは、人手不足が深刻な分野において、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を即戦力として受け入れるための在留資格を指します。介護、外食、建設、農業など、現場の人手が足りずに事業運営そのものが立ち行かなくなっている業種を支えるためにできた制度です。
「特定技能さえ取得すれば、誰でもすぐに働かせられる」という理解で採用計画を立てる経営者は少なくありません。実際には分野ごとに技能試験が設けられ、受入れ機関側にも遵守すべき基準があり、支援計画の策定まで求められます。技能実習と比べればはるかにシンプルな制度設計ではありますが、簡便さだけを頼りに進めると、どこかの工程で必ずつまずくことになります。
ここでは、特定技能制度の全体像、1号と2号の違い、対象分野、受入れ機関の要件、登録支援機関の役割について、外国人採用を検討する企業が最初に押さえておくべき論点を順番に整理します。
この記事でわかること
- 特定技能制度の全体像と対象16分野の概要
- 特定技能1号・2号の違いと移行のイメージ
- 受入れ機関(特定技能所属機関)に求められる要件
- 登録支援機関の位置づけと委託の判断基準
- 技能実習との違い、外食業の新規受入れ停止の現状
特定技能とは何か
特定技能は2019年4月に創設された在留資格です。技人国のように専攻と業務の関連性を厳しく問われる制度ではなく、分野ごとに定められた技能試験と日本語試験に合格していれば、現場の実務、いわゆる単純労働に近い業務を含めて従事できる点が最大の特徴です。
制度創設の背景には、少子高齢化による深刻な人手不足があります。技能実習制度だけでは現場の人手を賄いきれない業種が増える一方、専門的・技術的分野の在留資格ではその需要に対応できません。この隙間を埋めるために設計されたのが特定技能です。技能実習が「国際貢献としての技能移転」を建前とするのに対し、特定技能は「労働力の確保」を制度目的として正面から掲げています。この点で、両者は根本的に性格の異なる制度だと理解しておく必要があります。
技人国との違いを整理すると、次のとおりです。
| 特定技能 | 技術・人文知識・国際業務 | |
|---|---|---|
| 対象 | 人手不足16分野の現場業務 | ホワイトカラーの専門業務 |
| 要件 | 技能試験・日本語試験の合格 | 学歴・専攻と業務の関連性 |
| 単純労働 | 分野内であれば可 | 不可 |
「専門職を雇うなら技人国、それ以外は特定技能」という大まかな振り分けで判断している企業も見かけますが、本来は業務内容から逆算して選ぶべきものです。技人国の詳しい要件は技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国)とはで解説しているので、自社の採用がどちらに当たるか判断に迷う場合はあわせて確認してください。企業が選べる在留資格全体の整理は外国人を採用できる在留資格の種類一覧にまとめています。
特定技能1号と2号の違い
特定技能には1号と2号があります。1号は在留期間に上限がある入口の資格、2号は更新に事実上の期限がない上位の資格、という整理です。
| 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
|---|---|---|
| 在留期間 | 通算5年が上限 | 更新に上限なし |
| 家族帯同 | 原則不可 | 要件を満たせば可 |
| 支援計画 | 受入れ機関または登録支援機関による支援が必須 | 支援の対象外 |
| 対象分野 | 16分野すべて | 介護分野を除く分野 |
家族帯同の可否は、企業にとっても軽視できない論点です。1号のままでは配偶者や子を日本に呼び寄せられないため、本人が家族と離れて働き続けることに負担を感じ、帰国や転職を選ぶケースがあります。2号への移行を見据えた育成計画は、単なる制度対応にとどまらず、優秀な人材をつなぎとめる定着策としての意味を持ちます。
2号にはより高度な技能試験の合格と実務経験が求められるため、最初から2号を目指すことはできません。1号で実務経験を積んだうえで2号試験に挑戦する、という順序になります。長期的な定着を前提に考えている企業ほど、この移行ルートを採用計画の初期段階から視野に入れておくべきです。1号・2号の細かい在留期間や移行条件は特定技能1号と2号の違い、2号の対象分野や試験の詳細は特定技能2号の条件で、より踏み込んで解説しています。
特定技能人材を探すルート
特定技能で人材を採用する場合、大きく3つのルートがあります。海外現地の送出し機関や登録支援機関を通じて、技能試験の合格者・合格予定者を紹介してもらうルート。すでに国内に在留している留学生や技能実習修了者から採用するルート。そして、特定技能で働いている人材の転職希望を、人材紹介会社経由で受け入れるルートです。
「海外から一から呼び寄せたほうが早い」という判断も一定の合理性はありますが、実際には国内にすでに試験合格済みの人材が一定数存在するため、まずは国内在留者からのルートを検討したほうが、入国手続きの手間がない分だけ採用までの期間を短縮できることが多いです。技能実習からの移行を狙う場合は、実習先の企業や監理団体との調整が不可欠なので、円満な移行に向けて早めに関係者との話し合いを進めておくべきです。
特定技能の対象分野一覧
特定技能の対象分野は、2024年の追加で16分野に拡大しました。分野ごとに試験内容も受入れ実務も大きく異なります。主な分野を整理すると、次のとおりです。
| 分野 | 主な業務内容 |
|---|---|
| 介護 | 身体介護・生活援助等(施設・訪問系サービスの一部を除く) |
| 外食業 | 飲食物調理・接客・店舗管理 |
| 宿泊 | フロント・企画・広報・接客 |
| 建設 | 型枠施工・鉄筋施工・土工等の専門工事 |
| 農業 | 耕種農業・畜産農業全般 |
| 工業製品製造業 | 機械金属加工・電気電子情報関連製造等 |
介護は特定技能「介護」とは、宿泊は特定技能「宿泊」とは、建設は特定技能「建設」とは、農業は特定技能「農業」とはで、それぞれの分野固有の要件を詳しく解説しています。16分野すべての一覧と受入れ見込数は特定技能の分野・職種一覧にまとめてあります。
残る分野についても、名称だけは押さえておくと判断が早くなります。ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業(工業製品製造業に統合)、造船・舶用工業、自動車整備、航空、漁業、飲食料品製造業、林業、木材産業も特定技能の対象です。自社の業種がこの中に含まれているかどうかで、特定技能という選択肢そのものが使えるかが決まります。まずはここで確認し、含まれていない場合は技人国や他の在留資格を検討することになります。
工業製品製造業については、2026年6月に区分の拡大が予定されています。従来の3分野が統合された経緯もあって制度が複雑なため、この記事では詳細に触れません。この分野での受入れを検討している企業は特定技能「工業製品製造業」とはを必ず確認してください。
技能試験と日本語試験について
特定技能1号で外国人を受け入れるには、原則として本人が2つの試験に合格している必要があります。分野ごとに実施される技能試験と、日本語能力を測る試験です。
| 試験 | 内容 |
|---|---|
| 技能試験 | 分野ごとの業務に必要な技能・知識を問う試験。国内外で実施されている |
| 日本語能力試験 | 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)N4以上のいずれか |
ここで押さえておきたいのは、技能実習2号を良好に修了している場合、これらの試験が免除されて特定技能1号に移行できる分野が多いという点です。試験免除ルートを使えるかどうかは採用したい人材の経歴によって変わるため、面接段階で技能実習の修了状況、試験の合否を必ず確認してください。ここを確認しないまま採用を進めると、後になって要件を満たしていなかったという事態にもなりかねません。合格証明書や在留カードの原本を面接の場で確認し、コピーを保管しておくこと。手間としては小さいものですが、後々の「言った・言わない」を避けるためには徹底しておくべき手順です。
技能試験は分野によって実施頻度や実施国が異なります。国内で受験できる分野もあれば、特定の国でしか実施していない分野もあるため、採用したい人材がどの国にいて、どのタイミングで受験機会があるかによって、採用スケジュール全体が左右されます。急ぎで人材を確保したい場合は、既に試験に合格して国内外で就業先を探している人材を優先的に探すほうが現実的です。
本人確認の観点では、在留カードの記載事項もあわせて確認する必要があります。特定技能の在留資格を持っているという事実だけでなく、就労が制限される分野や条件が付されていないか、裏面の記載も含めて確認するのが基本の手順です。
派遣形態での受入れは可能か
特定技能は、原則として受入れ機関が外国人本人と直接雇用契約を結ぶ形が基本です。例外として、農業分野と漁業分野については派遣形態での受入れが認められています。季節によって作業量が大きく変動する業種の実情に合わせた措置です。
農業・漁業以外の分野で派遣による受入れを希望する相談もよく寄せられますが、それ以外の分野では直接雇用が原則である点に注意してください。派遣が認められる分野であっても、派遣元・派遣先それぞれに満たすべき基準があるため、派遣なら手続きが簡単になるという理解は誤りです。
受入れ機関(特定技能所属機関)の要件
特定技能で外国人を受け入れる企業のことを「特定技能所属機関」と呼びます。受入れ機関には、次のような基準が課されています。
- 労働、社会保険、租税に関する法令を遵守していること
- 1年以内に非自発的離職者を出していないこと(受け入れる分野の従事者について)
- 外国人と結ぶ雇用契約が、報酬額を含めて適切であること(日本人と同等以上の報酬)
- 支援計画を適正に実施できる体制があること
- 分野別協議会に加入するなど、分野固有の基準を満たしていること
特に見落とされがちなのが「非自発的離職者を出していないこと」です。過去に人員整理をした事業所は、その事実だけで一定期間受入れができなくなることがあります。コロナ禍で人員を減らさざるを得なかった経緯があり、今から特定技能を利用できるかという相談も一定数寄せられますが、離職の時期や事情によって判断が分かれるため、早い段階で確認することをおすすめします。
もう一点、企業側が見落としやすいのが「分野別協議会」への加入です。介護、外食業、建設など多くの分野で、受入れ機関が分野別協議会の構成員になることが義務づけられています。協議会は、その分野での適正な受入れを図るための情報共有や指導を行う組織で、加入していなければ受入れそのものが認められません。分野によって加入のタイミング(受入れ開始前か、開始後一定期間内か)が異なるため、これも事前に確認しておくべき項目です。
報酬水準についても、「同等以上」の考え方を誤解している企業が目立ちます。単に最低賃金を上回っていればよいわけではなく、同じ職務を行う日本人従業員がいる場合はその賃金水準と、いない場合は同種の業務に従事する標準的な賃金水準と比較して判断されます。経験年数や職務内容を無視して一律の金額で契約すると、報酬の妥当性を説明できずに審査でつまずくことがあります。
支援計画と登録支援機関の役割
特定技能1号の受入れには、生活オリエンテーション、日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応など、定められた10項目の支援を実施する義務があります。これを自社で担うか、登録支援機関に委託するかの二択になります。
| 自社支援 | 登録支援機関に委託 | |
|---|---|---|
| コスト | 委託費用はかからないが人員・体制が必要 | 月額の委託費用が発生 |
| 負担 | 多言語対応・生活支援まで自社で対応 | 支援業務全般を任せられる |
| 向いている企業 | 人事体制が整い、外国人雇用の実績がある企業 | 初めて外国人を受け入れる企業・小規模企業 |
初めて特定技能を活用する企業の大半は、登録支援機関に委託しています。生活面のサポートを自社で担うとなると、想像以上に手間がかかるからです。役所での住民登録の同行、銀行口座の開設サポート、携帯電話契約の補助、病院受診時の通訳手配。一つひとつは小さな作業でも、積み重なると担当者の業務時間を大きく圧迫します。登録支援機関の選び方・費用相場は登録支援機関とはで詳しく解説しているので、委託を検討している企業は目を通しておいてください。
2027年4月に施行される育成就労制度にあわせて、登録支援機関の要件そのものが見直される見込みです。現行の登録要件との違い、今のうちに確認しておくべき項目は登録支援機関の要件はどう変わるかにまとめています。制度変更を前提に登録支援機関を選ぶかどうかで、数年後の負担は大きく変わってきます。
技能実習との違い
特定技能と技能実習は、制度の目的そのものが異なります。技能実習は開発途上国への「技能移転」という国際貢献が制度上の建前で、特定技能は日本国内の人手不足を補うことを目的としています。現場担当者からすると「どちらも現場で働く外国人」に見えますが、転籍のしやすさ、受入れ機関の負担、費用の構造がまったく異なります。
技能実習2号を良好に修了していれば試験免除で特定技能に移行できる分野が多いため、両者は無関係ではありません。ただし「技能実習で慣れているから特定技能も同じ感覚で運用できる」という前提を持つと、支援計画の内容や本人の権利関係で認識のズレが生じることがあります。制度・受入れ方法・費用の違いを一つずつ比較した記事を技能実習と特定技能の違いに用意しているので、両方の制度を検討している企業はあわせて読んでください。
実務でもっとも誤解されやすいのが「転籍のしやすさ」です。技能実習は原則として同一の実習実施者のもとで実習を続けることが前提で、転籍は限定的にしか認められません。特定技能は同じ分野内であれば転職が可能です。この違いを理解しないまま「技能実習と同じように、うちに来たらずっと働いてもらえる」と考えていると、採用した人材が他社への転職を選ぶ可能性があります。待遇や職場環境を技能実習時代より整え、選ばれる企業になる努力が必要になります。
もう一つの違いは、監理団体の関与の有無です。技能実習では監理団体が実習実施者を定期的に監査し、実習生の相談対応も担いますが、特定技能では監理団体という仕組みそのものが存在しません。その代わりを担うのが登録支援機関であり、自社支援であれば企業自身がその役割を負うことになります。誰が実習生・人材を見守るのかという枠組みが、根本的に異なる制度だと理解しておいてください。
外食業の新規受入れ停止について
特定技能を検討している飲食業の経営者にとって重要な点をまず整理します。外食業分野は、2026年4月13日以降、新規受入れが停止されています。海外の人材を新しく呼び寄せる、あるいは他分野から外食業に切り替える、といった動きは現時点ではできません。
既に受入れ済みの企業にとっても無関係ではなく、既存の在留者の更新や、同じ外食業内での転職受入れの扱いは別問題として整理されています。飲食店を経営していて特定技能の活用を考えているなら、現状の運用と今後取るべき対応を特定技能「外食業」の新規受入れ停止で必ず確認しておいてください。
受入れの流れと必要な手続き
特定技能1号の受入れは、おおまかに次の流れで進みます。
- 雇用契約の締結:分野別の基準に沿った雇用条件で契約を結ぶ
- 事前ガイダンス・健康診断:本人に対する制度説明と健康状態の確認
- 支援計画の作成:自社支援か登録支援機関への委託かを決めて計画を策定
- 在留資格の申請:海外からの呼び寄せは認定証明書交付申請、国内切替は変更許可申請
- 受入れ後の定期届出:受入れ状況・支援実施状況の届出を継続的に提出
この流れの中で企業がもっとも時間を見誤りやすいのが④の在留資格申請です。海外から呼び寄せる場合、審査期間は1〜3ヶ月程度が目安ですが、これは書類に不備がなかった場合の話です。技能試験の合格証明書や日本語試験の結果通知書など、本人が海外にいる間にしか取得できない書類も多く、取り寄せに時間がかかることも珍しくありません。入社希望日から逆算して、余裕を持ったスケジュールを組んでおく必要があります。
受入れ後の定期届出も忘れられがちなポイントです。2026年からは年1回化・新様式への切替えが進んでいるため、これまでのやり方をそのまま続けると様式の不備で差し戻されることがあります。詳しい書き方と提出期限は特定技能の定期届出とはにまとめました。実務の細かい判断に迷ったときは出入国在留管理庁が公表している運用要領を確認する必要がありますが、分量が多く読み解きにくいという声もよく聞きます。運用要領の読み方のポイントは特定技能の運用要領とはで整理しています。
受入れにかかる費用の考え方
特定技能の受入れコストは、大きく「在留資格の申請費用」「登録支援機関への委託費用(委託する場合)」「分野別協議会への加入費用等」の3つで構成されます。具体的な金額は分野や委託先によって幅があるため本記事では踏み込んだ数字は挙げませんが、初めて受入れを行う企業は、採用コストとは別にこれらの費用が継続的に発生することを見込んでおく必要があります。
特に登録支援機関への委託費用は、受入れ人数分だけ毎月発生するランニングコストになります。1人採用すればそれで終わりではなく、支援が続く限り継続する費用だという前提で、採用計画全体のコストを見積もるべきです。複数の登録支援機関から見積もりを取り、支援内容とのバランスで選ぶことをおすすめします。
企業が注意すべきポイント
特定技能の受入れで実際にトラブルになりやすいのは、次のようなケースです。
- 分野別の業務範囲を超えた仕事をさせてしまう(例:外食業の人材に厨房外の清掃業務ばかりをさせる)
- 支援計画に定めた相談対応の記録を残していない
- 報酬額が日本人従業員と比較して不自然に低い
- 分野別協議会への加入手続きを後回しにしてしまう
いずれも、悪意なく発生しているケースがほとんどです。忙しさを理由に業務範囲を多少超えても構わないという感覚が、後の更新や定期届出のタイミングで表面化します。受入れ初日から業務内容と支援記録を管理する体制を整えておくべきです。
複数の企業から相談を受けていて感じるのは、支援担当者を明確に決めていない企業ほどトラブルが起きやすいということです。「みんなで見守る」体制は聞こえはよいものの、実際には誰も本人の相談に気づかないまま時間が過ぎていく原因になります。自社支援であれ委託であれ、誰が本人の窓口になるのかを明確に決めておく必要があります。
在留期間と更新の考え方
特定技能1号は、在留期間が1年・6ヶ月・4ヶ月のいずれかで付与され、更新を繰り返しながら通算5年まで在留できます。5年でそこまでという前提で採用計画を立てる企業が多いですが、2号への移行が実現できればその先も継続して雇用できるため、5年間でどう育成し、どう2号試験に橋渡しするかを最初から考えておくべきです。
更新のたびに、支援計画の実施状況、報酬の支払い状況、在籍状況などが確認されます。1回目の更新が問題なく通っても、2回目以降で支援記録の不備を指摘されるケースがあるため、最初だけしっかりやってあとは流れで、という運用は避けたほうがいいでしょう。継続的に同じ水準で支援を行い、記録を残す。この積み重ねが更新のたびの安心材料になります。記録さえきちんと残していれば、更新審査そのものを過度に恐れる必要はありません。日々の支援業務をルーティン化し、誰が担当しても同じ水準で記録が残る仕組みを作っておくことをおすすめします。担当者が異動や退職で入れ替わっても、記録が引き継がれていれば審査対応で困ることはありません。属人化させないことが、長く安定して受入れを続けるための基本です。
地方企業が特定技能を活用する際の注意点
福岡をはじめとした地方では、都市部以上に人手不足が深刻な業種が多く、特定技能への関心は年々高まっています。ただし地方企業ならではの注意点もあります。ひとつは、生活支援の負担が都市部より重くなりやすいことです。公共交通機関が乏しい地域では、通勤手段の確保や日常生活のサポートまで踏み込んで支援計画を組む必要が出てきます。
もうひとつは、地域に外国人材の受入れ実績がある登録支援機関が限られている場合があることです。都市部の登録支援機関に委託すると、緊急時の対応や巡回訪問が物理的に難しいことがあるため、委託先を選ぶ際は実際にその地域で支援できるかを必ず確認してください。地元の実情に詳しい支援機関や専門家に相談したほうが、結果的にスムーズに受入れが進むことが多いです。
受入れ前に社内で整備しておくべき体制
特定技能の受入れを成功させている企業には共通点があります。在留資格の申請手続きだけでなく、受入れ後の職場環境まで含めて事前に準備している、という点です。具体的には次のような項目です。
- 多言語対応のマニュアルや掲示物の整備(安全教育・就業規則等)
- 相談窓口の明確化(誰が、いつ、どの言語で対応するか)
- 既存の日本人従業員への事前説明(受入れの背景・役割分担)
- 住居・生活インフラの手配(賃貸契約の連帯保証、口座開設支援等)
特に見落とされがちなのが、既存の日本人従業員への説明です。突然「来月から外国人スタッフが入ります」とだけ伝えると、現場に不要な混乱や摩擦が生まれます。受入れの目的や役割分担を事前に共有しておくだけで、職場への定着度合いは大きく変わります。制度面の準備はできていても、この社内コミュニケーションを後回しにして、受入れ後に苦労するケースは一定数見られます。
宗教や食文化への配慮も、職場定着を左右する要素です。礼拝の時間を確保できるスペースがあるか、食事のルールに配慮した対応ができるか。すべてを完璧に用意する必要はありませんが、事前に本人の希望をヒアリングして、できる範囲で調整する姿勢を見せるだけで、信頼関係の作られ方は大きく変わります。
人材紹介会社を利用する際の注意点
特定技能人材の紹介を行う会社は年々増えていますが、玉石混交というのが実情です。職業紹介の許可を持たずに紹介料を取っている業者や、送出し国側で外国人本人から不当に高額な手数料を徴収している業者も存在します。受入れ企業側は「紹介してもらっただけ」のつもりでも、そうした不適正な紹介ルートを使ったことが後から問題視され、受入れ機関としての適格性そのものを疑われるリスクがあります。
紹介会社を選ぶときは、職業紹介事業の許可番号を持っているか、送出し国側の手数料の取り扱いについて説明できるか、契約内容や返金規定が明文化されているか、この3点は最低限確認してください。「安く早く紹介してくれる」という条件だけで飛びつく前に、その紹介ルートが適正かどうかを見極める視点を持つべきです。それが結果的に、本人にとっても企業にとっても安全な受入れにつながります。契約を結ぶ前に、紹介会社の実績や評判、可能であれば既にその会社経由で受入れを行っている他企業の声も確認しておくと安心です。複数社を比較検討する余裕がないほど急いでいる状況こそ、判断を誤りやすいタイミングです。
よくある質問
Q. 特定技能1号と2号、どちらを取得すべきですか?
入口は1号です。2号は対象分野が限られたうえ、1号での実務経験と技能試験の合格が前提になるため、最初から2号を選ぶことはできません。長期的に同じ人材の定着を見込むのであれば、1号の段階から2号への移行を計画に組み込んでおくことが合理的です。
Q. 特定技能で外食業の人材を採用できますか?
2026年4月13日以降、外食業分野は新規受入れが停止されています。既に在留している人材の更新や、同分野内での転職受入れは可能なケースがありますが、新規で海外から呼び寄せることは現時点ではできません。最新の運用は個別に確認する必要があります。
Q. 登録支援機関には必ず委託しなければなりませんか?
義務ではありません。自社で支援体制を組める企業は自社支援も選べます。ただし支援計画に定められた項目は多岐にわたるため、体制が整っていない企業にとっては登録支援機関への委託のほうが現実的な選択になります。
Q. 技能実習生をそのまま特定技能に移行できますか?
技能実習2号を良好に修了していれば、技能試験・日本語試験が免除されて特定技能1号に移行できる分野が多くあります。ただし技能実習の職種と特定技能の分野に関連性があることが前提になるため、事前確認が必須です。
Q. 特定技能1号の在留期間中に転職はできますか?
同じ分野内であれば転職は可能です。ただし転職先が受入れ機関としての基準を満たしているか、支援計画が適切に引き継がれるかを確認する必要があります。転職に伴って在留資格の変更手続きが必要になる場合もあるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
特定技能が向いている企業・向いていない企業
ここまでの内容を踏まえると、特定技能の受入れに向いている企業とそうでない企業の傾向が見えてきます。向いているのは、対象分野に該当する事業を行っていて、支援体制を整える意欲があり、長期的に外国人材を戦力として育てていく方針を持っている企業です。逆に、一時的な人手の穴埋めとしてしか考えておらず、支援計画も形だけ整えて終わりにしようとする企業は、途中で更新が通らなくなったり離職が相次いだりして、結局コストばかりかかる結果になりがちです。
目の前の人手不足を解消したいという事情自体は理解できます。ただし制度の枠組みを理解しないまま採用を進めると、受入れ後にかえって手間が増える点は認識しておく必要があります。特定技能は、正しく運用すれば長期的な戦力になる制度です。目先の人手不足だけでなく数年先の事業計画まで見据えて導入を検討したほうが、結果的に投資対効果は高くなります。
まとめ
特定技能は、人手不足に悩む企業にとって有力な選択肢です。ただし分野ごとの基準、受入れ機関の要件、支援計画、届出義務と、押さえるべきポイントが多岐にわたる制度でもあります。試験に合格した人を雇えば終わりではなく、受入れ後の運用まで見据えて準備しておく必要があります。
自社の業種がどの分野に当てはまるか、技人国と特定技能のどちらが適しているか、登録支援機関に委託すべきか自社支援でいけるか。判断が分かれるポイントは一社ごとに異なります。判断を誤ってから立て直すほうが時間もコストもかかるため、迷ったら申請の前段階で一度相談することをおすすめします。制度の全体像さえつかんでおけば、あとは自社の状況に当てはめて一つずつ判断していくだけです。
依頼するかどうかで迷っている方は在留資格の申請は行政書士に依頼すべきかと行政書士に依頼する費用の相場も参考にしてください。