配偶者ビザ(在留資格「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」)には就労制限がありません。職種、業種、労働時間、正社員かアルバイトかを問わず、日本人と同じように働くことができ、資格外活動許可も要りません。企業にとって注意すべきなのは採用の時点よりも採用した後で、配偶者ビザは「配偶者であること」が在留の前提になっているため、離婚や長期の別居によって在留資格の基礎が揺らぐことがあります。この記事では、就労制限がない法律上の理由と、雇う企業が在留カードで何を確認し、在籍中の変化にどう気づくかを整理します。
配偶者ビザに就労制限がない理由
入管法は在留資格を2つの表に分けています。別表第一は「日本で行う活動」で決まる在留資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能、留学など)で、許された活動の範囲を超えて働くことはできません。別表第二は「日本での身分や地位」で決まる在留資格で、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4つがあります。
別表第二の在留資格は、身分や地位に基づいて在留が認められているので、日本での活動の内容に制限がかかりません。入管法19条1項が就労を制限しているのは別表第一の在留資格を持つ人に限られ、別表第二の人は対象外です。配偶者ビザの人がコンビニで週40時間働いても、自分で会社を経営しても、入管法上の問題は生じません。
ここでいう「就労制限なし」とは、入管法が活動の範囲を縛っていないという意味です。職業ごとに必要な資格(医師免許、運転免許など)や、風俗営業に関する法律の規制は、日本人と同じように適用されます。
在留カードの表示は「就労制限なし」
在留カード表面の中央には「就労制限の有無」欄があり、配偶者ビザの人は「就労制限なし」と記載されています。裏面の資格外活動許可欄は空欄のままで問題ありません。資格外活動許可は、就労が制限された在留資格の人が例外的に働くための許可なので、制限のない人には関係がないからです。
採用面接で「資格外活動許可はありますか」と尋ねて、本人が戸惑うケースがあります。配偶者ビザの人に必要なのは、表面の在留資格欄と就労制限の欄を確認することだけです。
配偶者ビザと家族滞在・就労ビザの違い
名前が似ていて混同されやすいのが、家族滞在ビザです。技人国などで働く外国人の配偶者が持つ在留資格で、別表第一に属します。家族滞在の人は原則として働けず、資格外活動許可を受けても週28時間以内に限られます。
| 在留資格 | 表 | 就労 | 企業が確認すること |
|---|---|---|---|
| 日本人の配偶者等 | 別表第二 | 制限なし | 在留期限、在留資格欄の変化 |
| 永住者の配偶者等 | 別表第二 | 制限なし | 在留期限、在留資格欄の変化 |
| 家族滞在 | 別表第一 | 原則不可(許可を受けて週28時間以内) | 資格外活動許可、労働時間 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 別表第一 | 許された業務の範囲のみ | 業務内容と在留資格の一致 |
同じ「外国人の配偶者」でも、夫や妻が日本人か永住者なら配偶者ビザ、就労ビザで働く外国人なら家族滞在、という違いがあります。家族滞在の人を週28時間を超えて働かせると、本人は資格外活動違反、企業は不法就労助長罪に問われます。
就労ビザとの比較で言えば、配偶者ビザは業務内容の制約がないぶん、企業の採用の自由度は高くなります。現場作業、接客、夜勤、短時間のパートなど、技人国では認められない仕事にも就けます。一方で、就労ビザが「その会社で働くこと」を前提に審査されるのに対し、配偶者ビザは家族関係を前提に審査されるため、企業の側から在留の継続を支える手段はほとんどありません。
採用時に確認すること
配偶者ビザの人を採用するときの確認は、他の在留資格より少なくて済みます。ただし次の3点は省けません。
1つ目は、在留カードの原本の確認です。表面の在留資格欄が「日本人の配偶者等」または「永住者の配偶者等」、就労制限欄が「就労制限なし」、在留期間の満了日が過ぎていないことを見ます。写しを受け取るだけでは偽造を見抜けないため、出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリケーションでICチップの情報を読み取るか、在留カード等番号失効情報照会で番号の有効性を確かめます。
2つ目は、外国人雇用状況の届出です。配偶者ビザの人も届出の対象で、雇用保険の被保険者になる人は雇用保険被保険者資格取得届で、ならない人は外国人雇用状況届出書で、ハローワークに届け出ます。在留資格の欄には「日本人の配偶者等」などと記載します。届出の仕組みは外国人雇用状況の届出とは?で解説しています。
3つ目は、在留期間の把握です。日本人の配偶者等の在留期間は5年、3年、1年、6月のいずれかで、結婚して間もない人は1年が多く出ます。在留期限を社内の台帳に記録し、期限の3か月前から本人に更新を促せるようにしておきます。
入管法上、配偶者ビザの人について企業が入管に届け出る義務(所属機関による届出)はありません。所属機関による届出は、別表第一の就労系在留資格などを持つ人を受け入れた企業に向けた仕組みだからです。
採用後に起きること|離婚・別居と在留資格の取消し
配偶者ビザで働く社員の在留に影響するのは、仕事の内容ではなく家族関係の変化です。企業が知っておくべきルールは3つあります。
まず、離婚や死別をした本人は、その日から14日以内に出入国在留管理庁へ「配偶者に関する届出」を出さなければなりません(入管法19条の16第3号)。届け出なかった場合は20万円以下の罰金の対象です(71条の5第3号)。これは本人の義務で、企業に届出義務はありません。
次に、配偶者としての活動を正当な理由なく継続して6か月以上行わないで在留していることは、在留資格の取消事由です(22条の4第1項7号)。起算点は離婚届の日に限らず、別居して婚姻関係が実質的に破綻していれば、その時点から数えられる可能性があります。取消しには意見聴取の手続があり、在留資格変更の申請の機会を与える配慮も定められているため(22条の5)、6か月が過ぎた翌日に突然働けなくなるわけではありません。
最後に、配偶者ビザの更新は、配偶者としての実態が続いていることが前提です。離婚した人が「日本人の配偶者等」のまま更新することは原則としてできず、定住者や就労ビザなど別の在留資格への変更が必要になります。離婚後の手続と選択肢は配偶者ビザで離婚したらどうなる?14日以内の届出と6か月以内の変更の目安で詳しく扱っています。
企業は離婚をどう知るか
ここで重要なのは、企業には社員の婚姻状況を調べる権限も義務もないという点です。離婚は極めて私的な事柄で、本人が申し出ない限り会社は知りようがありません。結婚・離婚の有無を必要以上に聞き出すことは、プライバシーの観点からも慎むべきです。
一方で、社員の在留資格が変わったり、取り消されたりしたことを見落とせば、働けない人を雇い続けることになりかねません。在留資格が取り消されると、本人には出国準備のための期間が指定されることがあり、その間は原則として就労できなくなります。取消しの流れと企業への影響は在留資格の取消しとは?取消事由と外国人を雇用する企業への影響にまとめています。
企業が取れる現実的な方法は、婚姻状況そのものを追うことではなく、在留カードの記載の変化で気づく仕組みを作ることです。具体的には次の運用が考えられます。
- 在留期間の更新のたびに新しい在留カードを提示してもらい、在留資格欄と在留期限を台帳に更新する
- 在留資格欄が「定住者」「技術・人文知識・国際業務」などに変わっていたら、就労制限欄と業務内容の関係を確認し直す
- 扶養の届出(健康保険の被扶養者の削除、扶養控除等申告書の変更)が出たときに、在留カードの提示も合わせてお願いする
- 年に1回程度、在留カード等番号失効情報照会で番号の有効性を確認する
3つ目は、離婚を詮索するためのものではありません。扶養の変更は社会保険や税の手続で本人から自然に届く情報なので、そのタイミングで在留の状況も確認しておくと、本人が次の在留資格の手続を忘れていないか気づくきっかけになります。
就労ビザへの変更で業務が縛られるケース
離婚後に日本人の実子を育てている人などは、定住者への変更が認められることがあり、その場合は引き続き就労制限はありません。問題になりやすいのは、本人が技人国などの就労ビザに変更したケースです。
配偶者ビザの時代に現場作業や接客を担当していた社員が技人国に変更した場合、変更後はその業務を続けられなくなります。技人国で認められるのは、学歴や職歴と関連する専門的な業務に限られるからです。会社が社員の在留資格の変化に気づかず、同じ現場作業を続けさせれば、資格外活動となり、企業には不法就労助長罪(入管法73条の2。現行は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、2027年4月1日からは5年以下・500万円以下)のリスクが生じます。在留資格の変更を知った時点で、配置の見直しを検討してください。不法就労助長罪の成立要件は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則で解説しています。
永住者・永住者の配偶者等との関係
配偶者ビザの人は、婚姻の実体が3年以上続き、日本に1年以上在留していれば、永住許可の申請ができます(永住許可に関するガイドライン)。永住者になれば婚姻関係の変化に在留が左右されなくなるため、社員にとっても企業にとっても安定します。永住申請には在職証明書など会社側で用意する書類もあるので、社員から相談があったときは協力できる体制を整えておくとよいでしょう。
永住者の配偶者等も、日本人の配偶者等と同じく就労制限はありません。夫や妻が永住者で、本人が永住者の配偶者等を持っているケースです。こちらも離婚や別居で同じ取消事由の対象になります。一方、日本人の子として生まれたことで「日本人の配偶者等」を持っている人(日系2世など)は、婚姻とは関係がないため、離婚の問題は生じません。在留資格名だけで判断せず、配偶者としての在留か、子としての在留かを本人に確認しておくと、その後の管理の必要度がわかります。
よくある質問
配偶者ビザで就労はできますか?
できます。日本人の配偶者等と永住者の配偶者等は入管法別表第二の在留資格で、活動の制限がありません。職種、業種、雇用形態、労働時間の上限もなく、資格外活動許可も必要ありません。
配偶者ビザで就労できる時間は?
入管法上の上限はありません。週28時間の制限があるのは、資格外活動許可を受けて働く留学生や家族滞在の人です。配偶者ビザの人の労働時間を縛るのは、日本人と同じ労働基準法の規制だけです。
就労ビザと配偶者ビザの違いは何ですか?
就労ビザは日本で行う仕事の内容に基づいて許可され、認められた業務の範囲でしか働けません。配偶者ビザは日本人や永住者との婚姻に基づいて許可され、仕事の内容に制限がありません。その代わり、配偶者ビザは離婚や別居によって在留の前提が失われることがあります。
配偶者ビザから就労ビザに切り替えるには?
在留資格変更許可申請をします。技人国であれば大学卒業などの学歴か10年以上の実務経験と、それに関連する業務に就くことが必要です。配偶者ビザのときの業務が単純作業中心だった場合、同じ仕事のままでは変更が認められません。変更の可否は学歴や職務内容など個別の事情で判断が変わるため、早めに専門家に相談してください。
配偶者ビザの社員が離婚したら、会社は届出が必要ですか?
会社に届出の義務はありません。離婚の日から14日以内に配偶者に関する届出を出すのは本人です。会社としては、本人の在留期限と次の在留資格の手続が間に合うかを確認し、在留資格が変わった場合は業務内容との関係を見直すことになります。
就労制限がないからこそ、見るべきは在留カードの「変化」
配偶者ビザの社員は、採用のハードルが低く、業務の割り当ても日本人と同じように考えられます。その自由さの裏側で、在留の根拠は職場の外にある家族関係に置かれています。企業が管理すべき対象は、仕事の内容より、在留カードの在留資格欄と在留期限の変化です。
筆者が企業の人事担当者にすすめているのは、在留期限の台帳管理と、更新のたびの在留カード提示を就業規則や入社時の誓約書に書いておくことです。本人の私生活に踏み込まずに、在留の変化に気づける仕組みを作る。これが配偶者ビザの社員を安心して雇い続けるための現実的な方法だと筆者は考えます。配偶者ビザの制度全体は配偶者ビザ(日本人の配偶者等)とは?要件・審査の見方と取得までの流れで整理しています。
根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第19条・第19条の16・第22条の4・第22条の5・第71条の5・第73条の2・別表第二(e-Gov法令検索)
- 在留資格「日本人の配偶者等」(出入国在留管理庁)
- 永住許可に関するガイドライン(出入国在留管理庁、2026年2月24日改訂)
- 外国人雇用状況の届出(厚生労働省)
- 在留カード等読取アプリケーション(出入国在留管理庁)
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