フィリピン人との国際結婚は、日本で先に結婚するなら、フィリピン人婚約者が日本にいる状態で在日フィリピン大使館から婚姻要件具備証明書(LCCM)を受け、PSA(フィリピン統計庁)発行の出生証明書などとあわせて市区町村に婚姻届を出します。フィリピンで先に結婚するなら、日本人が在フィリピン日本国大使館で婚姻要件具備証明を受け、現地の市役所でマリッジライセンス(婚姻許可証)を取って挙式し、婚姻成立から3か月以内に日本側へ報告的届出をします。どちらの順番でも、その後に「日本人の配偶者等」の在留資格を申請する流れは同じです。フィリピン特有の論点は、PSA書類がすべての身分証明の基礎になることと、離婚歴のあるフィリピン人は本国の裁判所で外国離婚の承認を受けていなければ再婚できないことの2つです。
手続の全体像|どちらの国で先に結婚するか
国際結婚では、日本とフィリピンの双方で婚姻を成立させ(または一方で成立させて他方に報告し)、そのうえで入管に配偶者ビザを申請します。どちらの国の方式を先に使うかで、書類の取得先と順番が変わります。
| 項目 | 日本で先に結婚 | フィリピンで先に結婚 |
|---|---|---|
| 婚姻が成立する場所 | 日本の市区町村役場 | フィリピンの市役所・教会など(挙式) |
| 婚姻要件の証明 | フィリピン人が在日フィリピン大使館でLCCM | 日本人が在フィリピン日本国大使館で婚姻要件具備証明 |
| 相手の国への手続 | 在日フィリピン大使館に婚姻の報告(Report of Marriage) | 在フィリピン日本国大使館か本籍地に3か月以内の報告的届出 |
| 前提 | フィリピン人婚約者が日本に滞在している | 日本人がフィリピンに渡航する |
日本先行の方式は、フィリピン人婚約者が短期滞在などで来日している間に手続を進められる点で、日本人側の渡航回数が少なく済みます。一方、在日フィリピン大使館のLCCMは「現在、日本国内に住み、外国人との婚姻を希望されるフィリピン国籍の方のみに発行」されると案内されており、婚約者が日本にいることが前提です。フィリピン先行の方式は、日本人が現地に滞在して手続を進める必要があり、マリッジライセンスの取得に一定の日数がかかります。国際結婚一般の順番の考え方は国際結婚の手続きの流れ|日本で先に結婚する場合・相手国が先の場合とビザ申請で整理しています。
日本で先に結婚する場合の流れと必要書類
在日フィリピン大使館で婚姻要件具備証明書(LCCM)を受ける
ここでいう婚姻要件具備証明書とは、本国の法律上、その人が結婚できる状態にある(独身で、婚姻年齢に達しているなど)ことを本国の機関が証明する書類を指します。フィリピン人の場合は、在日フィリピン大使館(東京)が発行するLCCM(Legal Capacity to Contract Marriage)がこれに当たります。
大使館の案内によれば、申請は予約制の窓口申請か郵送申請で、両人がそろって窓口に行けない場合は郵送で申請し、その場合は日本の公証役場で申請用紙の公証を受けます。初婚のフィリピン国籍者が用意する書類は次のとおりです。
- 記入済みの申請用紙
- 有効な旅券(原本提示とデータページの写し)
- 在留カードまたは日本での在留資格がわかるもの
- フィリピン外務省のアポスティーユ認証を受けたPSA発行の出生証明書
- 同じくアポスティーユ認証を受けたPSA発行の独身証明書(CENOMAR。発行日から6か月間有効)
- 証明写真3枚
日本人婚約者は、3か月以内に発行された戸籍謄本、写真付きの身分証明書、証明写真3枚を用意します。発行までの目安は書類と手数料の受領後10業務日(追加料金で5業務日の特急あり)、LCCMの発行手数料は3,750円です。
フィリピン国籍者が18歳から25歳の初婚の場合は、両親の関与を示す書類が追加されます。18歳以上20歳以下は両親の同意書、21歳以上25歳以下は両親の承諾書で、両親がフィリピンに住んでいる場合は現地の公証役場で公証を受け、フィリピン外務省のアポスティーユ認証を受けます。両親が亡くなっている場合はPSA発行の死亡証明書を出します。
市区町村に婚姻届を出す
LCCMを受けたら、日本人の本籍地または住所地の市区町村に婚姻届を出します。一般的に求められるのは、婚姻届、フィリピン人の旅券、LCCMとその日本語訳、PSA発行の出生証明書とその日本語訳です。市区町村によって求める書類や翻訳の扱いが少しずつ違うため、提出前に窓口で確認してください。
在日フィリピン大使館に婚姻を報告する
日本で成立した婚姻をフィリピン側の記録にも反映させるため、在日フィリピン大使館に婚姻の報告(Report of Marriage)をします。大使館で受理された報告は、フィリピン本国のPSAに送られて登録されます。PSAの婚姻証明書が発行されるまでには時間がかかるため、配偶者ビザの申請で求められる「外国機関発行の結婚証明書」として何を出すかは、申請の時期に合わせて判断が必要です。報告の期限・手数料・PSA登録までの日数は、大使館の英語ページで案内されていますが、本稿執筆時点で内容を確認できていないため現時点で公式資料では確定していないため、断定できません。
フィリピンで先に結婚する場合の流れ
日本人が在フィリピン日本国大使館で婚姻要件具備証明を受ける
在フィリピン日本国大使館の「婚姻要件具備証明(独身証明)」のページ(2024年7月12日更新)によれば、必要書類は申請書、戸籍謄抄本(3か月以内)または電子戸籍パス、旅券、フィリピン人婚約者の出生証明書(Certified True Copy)です。申請と受領は本人に限られ、発給はマニラ・セブ・ダバオとも申請の翌開館日です。再婚の場合は、戸籍に離婚の事実が記載されている必要があります。
マリッジライセンスを取り、挙式する
フィリピンの方式で結婚するには、フィリピン人の住所地の市役所の民事登録官(Local Civil Registrar)にマリッジライセンスを申請し、発給を受けてから挙式します。フィリピン家族法は、18歳以上21歳未満の当事者に両親の同意を、21歳以上25歳以下の当事者に両親の助言(承諾)を求めており、この年齢層には婚姻前のカウンセリングの受講も求められます。婚姻前カウンセリングや家族計画のセミナーの受講は市役所ごとに運用があり、所要日数と受講の要否は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。「CFM」や「結婚前セミナー」と呼ばれるものは、この婚姻前カウンセリングを指す場合と、後述するCFO(在外フィリピン人委員会)のガイダンスを指す場合があり、混同されやすい論点です。
3か月以内に日本へ報告的届出をする
フィリピンの方式で婚姻が成立した場合、日本人は婚姻成立の日から3か月以内に、在フィリピン日本国大使館か日本の本籍地の市区町村に報告的届出をします(戸籍法41条)。在フィリピン日本国大使館の案内(2026年4月17日更新)が挙げる書類は、婚姻届出書2通、配偶者の旅券の写しまたは出生証明書と和訳各2通、婚姻証明書と日本語訳各2通、婚姻許可証(マリッジライセンス)と申請書・要件具備証明書の写し各1通、写真付きの身分証明書です。婚姻証明書は、PSAまたは市役所発行の「原本照合済み(CERTIFIED TRUE COPY)」のスタンプがあるものに限られます。2024年4月1日以降は戸籍謄本の提出が原則不要になりましたが、届出用紙に本籍地を書く必要があります。3か月を過ぎても届出はできますが、遅延理由書が別に必要です。
離婚歴のあるフィリピン人との結婚|外国離婚の承認が要る
フィリピンには、フィリピン人同士の離婚の制度がありません。フィリピン人が日本人など外国人と結婚し、日本で離婚した場合でも、その離婚がフィリピン本国で効力を持つには、フィリピンの裁判所で外国離婚の承認(Judicial Recognition of Foreign Divorce)を受ける必要があります。
在日フィリピン大使館のLCCMの案内は、離婚歴のあるフィリピン国籍者に、次の書類を求めています。
- フィリピン外務省のアポスティーユ認証を受けたPSA発行の結婚証明書または婚姻届(離婚承認の注釈付き)
- フィリピン外務省の認証を受けたフィリピン裁判所発行の外国離婚承認審判書と確定証明書
- PSA発行の婚姻記録証明書(発行日から6か月間有効)
- 日本での離婚の記録(前配偶者が日本人なら離婚の記載がある戸籍謄本。戸籍抄本・受理証明書は不可)
この書類が揃わない限り、LCCMは発行されません。裁判所での承認手続には相応の期間がかかるため、交際相手に日本人との離婚歴がある場合は、結婚の時期を決める前に、承認手続が済んでいるかを最初に確認してください。承認がないまま別の方法で婚姻届が受理されたとしても、フィリピン側では前婚が続いている扱いになり、配偶者ビザの審査でも婚姻の有効性が問題になり得ます。
配偶者ビザの申請|入管で見られる点
婚姻が成立したら、フィリピン人配偶者の在留資格「日本人の配偶者等」を申請します。フィリピン人が海外にいる場合は在留資格認定証明書交付申請、日本に中長期在留者として在留している場合は在留資格変更許可申請です。出入国在留管理庁の提出書類一覧は、婚姻の事実が記載された日本人の戸籍謄本(記載がなければ戸籍謄本と婚姻届受理証明書)に加えて、外国機関発行の結婚証明書を求めています。フィリピン側ではこれがPSAの婚姻証明書、または在日フィリピン大使館が受理した婚姻報告の書類に当たります。必要書類の全体は配偶者ビザの必要書類一覧|海外から呼ぶ場合と国内で変更する場合の違いで解説しています。
審査で見られるのは、婚姻が真実のものか(婚姻の信ぴょう性)と、夫婦で生活していけるか(生計の安定性)です。質問書に書く交際の経緯、出会いのきっかけ、会った回数、使っている言語は、写真、通話記録、渡航の記録と一致していることが前提になります。短期滞在の査証申請で出した招へい理由書の経緯と、質問書の経緯が食い違っていると説明を求められます。
注意したいのは、短期滞在で来日した婚約者が日本で婚姻届を出した後、そのまま配偶者ビザに変更できるとは限らない点です。入管法上、短期滞在からの在留資格変更は「やむを得ない特別の事情」がある場合に限られ、出入国在留管理庁のQ&Aは、在留中に在留資格認定証明書が交付されただけではこの事情に当たらないとしています。原則は、いったん帰国して在留資格認定証明書で呼び寄せる流れになります。認定証明書が交付された後の入国までの手順は在留資格認定証明書が交付されたら?、交付されなかった場合の考え方は在留資格認定証明書が不交付になる理由とは?で解説しています。
出国前のCFOガイダンス
フィリピン人配偶者が日本に移り住むために出国する際には、フィリピン側の手続として、CFO(Commission on Filipinos Overseas:在外フィリピン人委員会)への登録と、外国人の配偶者・婚約者向けのガイダンス・カウンセリングプログラムの受講が求められます。受講を終えた人に発行される証明がないと、フィリピンの出国審査で出国を止められることがあります。対象年齢、受講方法(オンライン・対面)、手数料、証明の形式は、CFOのウェブサイトで内容を確認できなかったため現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。日本側の在留資格認定証明書が交付された後、査証申請と並行して準備を進めておくと、入国のタイミングがずれにくくなります。
よくある質問
フィリピン人と国際結婚するにはどうすればいいですか?
日本で先に結婚するか、フィリピンで先に結婚するかを決めることから始まります。日本先行ならフィリピン人婚約者が日本にいる間に在日フィリピン大使館でLCCMを受けて市区町村に婚姻届を出し、フィリピン先行なら日本人が在フィリピン日本国大使館で婚姻要件具備証明を受けて現地で挙式し、3か月以内に日本に報告します。その後、配偶者ビザを申請します。
フィリピン人と国際結婚するにはどんな書類が必要ですか?
フィリピン人側はPSA発行の出生証明書と独身証明書(CENOMAR)が基本で、日本先行なら在日フィリピン大使館のLCCMが加わります。日本人側は戸籍謄本と旅券・身分証明書です。18歳から25歳のフィリピン人は両親の同意書または承諾書、離婚歴のある人は外国離婚承認の審判書と確定証明書が必要です。
フィリピン人と国際結婚したら苗字はどうなりますか?
日本の戸籍では、外国人と結婚しても日本人の氏は当然には変わりません。日本人が配偶者の氏を名乗りたい場合は、婚姻の日から6か月以内であれば市区町村に届け出るだけで変更できます(戸籍法107条2項)。フィリピン人配偶者の旅券上の氏をどうするかはフィリピン側の手続になります。
フィリピン人の配偶者ビザは審査が厳しいのですか?
国籍そのものを理由に基準が変わるわけではなく、どの国籍でも婚姻の信ぴょう性と生計の安定性が審査されます。年齢差が大きい、交際期間が短い、会った回数が少ない、紹介の経緯が不明確といった事情があると、それを補う資料の提出を求められやすくなります。個別の事情で判断が変わるため、心配な点がある場合は申請前に専門家に相談してください。
最初に確かめる3つのこと
フィリピン人との結婚手続で後戻りが起きるのは、書類の不足よりも前提条件の見落としです。準備を始める前に、フィリピン人の交際相手に離婚歴があるか(あれば本国での外国離婚承認が済んでいるか)、PSAの出生証明書・CENOMARの氏名と生年月日が旅券と一致しているか、婚約者が日本にいる間に手続を進めるのかフィリピンで挙式するのか、の3点を確かめてください。この3点が決まれば、取るべき書類と順番は自然に決まります。
外国人社員としてフィリピン人を雇っている会社にとっては、社員が日本人と結婚して在留資格を「日本人の配偶者等」に変えた場合、就労制限がなくなる一方で、在留カードの在留資格欄と在留期限を改めて確認する必要が生じます。
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根拠資料
- 婚姻要件具備証明書(LCCM)(在日フィリピン共和国大使館)
- ja/00000281.html”>4.婚姻届:外国方式で婚姻した場合の報告的届出(在フィリピン日本国大使館・2026年4月17日更新)
- 在留資格「日本人の配偶者等」(出入国在留管理庁)
- 出入国審査・在留審査Q&A(出入国在留管理庁)
- 戸籍法(e-Gov法令検索)
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