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外国人の親を日本に呼び寄せるには?老親扶養の特定活動と短期滞在の限界

外国人の親を日本に呼び寄せて一緒に暮らすための在留資格は、高度専門職の親を除いて用意されていません。出入国在留管理庁のQ&Aは「高度外国人材に対する優遇措置を除き、外国人の親であることを理由として付与される在留資格はありません」と明言しています。それでも実務には「老親扶養」と呼ばれる告示外の特定活動の許可例があり、親が高齢で本国に面倒を見る人がいない場合に、法務大臣の裁量で認められることがあります。本記事では、この2つの例外と、多くの人が最初に頼る短期滞在の限界を、条文とQ&Aから整理します。

外国人の親を長期で呼ぶ在留資格は原則ない

最初に、制度の骨格を確認します。入管庁の「出入国審査・在留審査Q&A」Q56は、母国の家族を呼び寄せられるかという質問に対して次のように答えています。

中長期在留者(例:「家族滞在」等)として呼び寄せることができるのは、原則として、日本に在留する方の扶養を受ける配偶者又は子に該当する方です。なお、高度外国人材に対する優遇措置(※)を除き、外国人の親であることを理由として付与される在留資格はありません。

家族滞在の対象は配偶者と子に限られ、親は含まれません。日本人の配偶者等・永住者の配偶者等も、配偶者と子のための在留資格です。定住者告示にも親を対象とする号はありません。親の呼び寄せが難しいと言われるのは、審査が厳しいからというより、そもそも受け皿となる在留資格の類型が法令上ないからです。

この構造は、呼び寄せる側が誰であっても変わりません。技術・人文知識・国際業務で働く会社員でも、永住者でも、帰化して日本国籍を取った人でも、親を扶養するための在留資格が別に用意されているわけではありません。「永住権を取れば親を呼べる」「帰化すれば呼べる」と考えている人は多いのですが、永住や帰化で有利になるのは、扶養能力や在留の安定性を説明しやすくなるという間接的な面にとどまります。

そのうえで、例外は2つあります。

区分 根拠 入り方 主な条件
高度専門職の親 特定活動告示34号 在留資格認定証明書で海外から呼べる 7歳未満の子の養育または妊娠中の介助、世帯年収800万円以上、同居、どちらか一方の親
老親扶養 告示外の特定活動(法務大臣の個別指定) 原則として短期滞在で入国後の変更申請 公表された基準なし。高齢、本国に扶養者がいない、日本の子に扶養能力がある等の人道的事情

高度専門職の親は告示34号で呼べる

高度専門職の在留資格を持つ人(高度外国人材)には、優遇措置の一つとして親の帯同が認められています。入管庁の優遇措置の説明によれば、高度外国人材またはその配偶者の7歳未満の子(養子を含む)を養育する場合と、妊娠中の配偶者または妊娠中の高度外国人材本人の介助等を行う場合に、高度外国人材またはその配偶者の親(養親を含む)の入国・在留が認められます。

主な要件は3つです。

  • 高度外国人材の世帯年収が800万円以上であること(本人と配偶者の年収の合算)
  • 高度外国人材と同居すること
  • 高度外国人材またはその配偶者のどちらかの親に限ること

特定活動告示34号の文言では、世帯年収800万円以上は「申請の時点において」判断するとされています。「どちらかの親」とは、本人の父母か配偶者の父母のどちらか一方の側という意味で、本人の両親と配偶者の両親を同時に呼ぶことはできません。

この類型は、目的が「子育てと妊娠中の支援」に限定されている点が老親扶養と根本的に違います。親を養うための制度ではなく、高度外国人材の家庭を支えてもらうための制度です。子が7歳に達して養育の必要がなくなれば、告示の前提を欠くことになります。また、告示の文言は「高度専門職外国人」の親としているため、本人が永住者に変わった後の扱いは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。更新や永住申請のタイミングを考えるときは、親の在留がどうなるかも一緒に確認しておく必要があります。詳しくは高度専門職の配偶者の就労と親の帯同で解説しています。

老親扶養は「告示外の特定活動」で、海外から直接は申請できない

ここでいう老親扶養とは、日本に住む子が、本国で暮らす高齢の親を引き取って扶養するために、法務大臣が個別に活動を指定して「特定活動」の在留を認める扱いを指します。法令にも告示にも「老親扶養」という言葉はなく、実務上の呼び名です。

なぜ短期滞在で入国してからの変更になるのか

特定活動には、告示であらかじめ定められた活動(告示特定活動)と、告示にはないが法務大臣が個々の外国人について指定する活動(告示外特定活動)があります。入管法7条1項2号は、上陸審査で特定活動に該当するのは「法務大臣があらかじめ告示をもつて定める活動」に限るとしています。そのため、告示に定めのない老親扶養は、在留資格認定証明書を取って海外から入国する経路が使えません。

残る経路は、親が短期滞在で来日し、日本国内で特定活動への在留資格変更許可を申請する方法です。ここで次の壁が出てきます。入管法20条3項ただし書は、短期滞在からの変更は「やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする」と定めています。老親扶養の申請は、告示外であることと、短期滞在からの変更であることの二重の意味で例外扱いになるわけです。短期滞在からの変更の考え方は短期滞在から在留資格変更はできる?「やむを得ない特別の事情」と認定証明書交付後の扱いで詳しく扱っています。

審査で見られる着眼点

入管庁は、老親扶養の許可基準を公表していません。入国・在留審査要領(入管の内部審査基準)の開示版でも、告示外特定活動の個別類型の判断基準は具体的に確認できず、ここから先は専門家が公表している許可例・不許可例から見える傾向です。整理すると、次の4点が繰り返し問われます。

1つ目は親の年齢です。実務では「おおむね70歳前後以上」が目安として語られていますが、入管庁が公表した数字ではありません(公式資料では未確認)。年齢そのものより、年齢に伴って一人で生活できない事情があるかが問われると考えたほうが実態に近いでしょう。

2つ目は、本国に親を扶養できる人がいないことです。配偶者(申請人の父または母の相手方)が亡くなっている、または離婚していて、本国に兄弟姉妹など扶養できる親族がいないことが典型です。本国に他の子が住んでいる場合、「その子が扶養すればよい」と評価されやすく、ここが不許可の最も大きな理由になります。

3つ目は、親の健康状態と介護の必要性です。持病があって日常生活に支援が必要であることを、本国の医師の診断書などで示します。ただし、日本の医療を受けること自体が目的に見えると、医療費の負担を日本の医療保険に移す目的と受け取られるおそれがあります。

4つ目は、日本の子の扶養能力と在留の安定性です。子の収入で親の生活費と医療費を賄えるか、子自身の在留資格と在留期間は安定しているか、住居に同居の余地があるかが見られます。子が永住者や日本国籍者であることは、この点で有利に働きます。

加えて、日本の子が本国に帰って親を扶養することができない事情も説明の対象になります。日本に配偶者と子がいて生活基盤がある、仕事を離れられないといった事情です。「親を呼ぶ」か「子が帰る」かの二択で、呼ぶほうに合理性があることを示す構造になります。

申請書類で準備するもの

老親扶養には入管庁が定めた提出書類の一覧がありません。一般の在留資格変更許可申請の書類(申請書、写真、旅券、在留カードに代わる資料)に加えて、上の着眼点を立証する資料を自分で組み立てることになります。一般に用意されるのは次のような資料です。

  • 申請理由書(親の生活状況、呼び寄せが必要な理由、日本の子が帰国できない理由)
  • 親子関係を示す出生証明書や親族関係公証書
  • 本国の親族構成を示す資料(他の兄弟姉妹の有無・居住地、配偶者の死亡証明書や離婚証明書)
  • 親の診断書と介護の必要性を示す資料
  • 日本の子の課税証明書・納税証明書、在職証明書、預貯金の資料
  • 住居の資料(賃貸借契約書や間取り)

外国語の書類には訳文を付けます。短期滞在の在留期間は90日・30日・15日のいずれかで、変更申請は在留期限内に出す必要があるため、来日前に書類をそろえておかないと間に合いません。

短期滞在で呼べるのは最長90日

親の長期滞在の道がほとんどないため、多くの家族は短期滞在(親族訪問)を繰り返すことになります。短期滞在の在留期間は90日・30日・15日のいずれかで、報酬を受ける活動はできません。孫の世話や出産の手伝いのための訪問は典型的な利用例です。査証が必要な国籍の場合、2026年7月1日から査証手数料は一次有効が約15,000円、数次有効が約30,000円に改定されています(外務省、2026年6月24日掲載)。申請書類と招へいの手順は親族訪問ビザの必要書類と申請の流れ|親・兄弟を日本に呼ぶ方法と招へい人の書類で整理しています。

短期滞在には、長期滞在の代わりとして使うときの限界がいくつかあります。

在留期間の更新は、病気で帰国できないなど特別な事情がある場合に限られます。入管庁の案内では、短期滞在中に急に入院した場合、90日以内なら短期滞在の更新、90日を超える治療が必要なら特定活動(医療滞在)への変更で対応するとされています。

来日を繰り返すことにも注意が必要です。短期滞在の上陸審査では、滞在目的が短期であることが確認されます。1年の大半を日本で過ごすような出入国を続けると、実質的に日本に住んでいると見られ、上陸審査で滞在目的を詳しく問われる可能性があります。年に何回までという公表基準はありませんが、90日の滞在を間隔をあけずに繰り返すのは避けたほうが安全です。

一定の条件を満たす人には数次査証が発給され、査証の手続を毎回やり直す負担は減ります。数次査証の要件は国籍ごとに違います。

親が日本で治療を受けること自体が目的なら、特定活動の医療滞在(特定活動告示25号・26号)という別の枠組みがあります。外務省の案内(2026年8月1日更新)によれば、滞在期間は90日以内・6か月・1年があり、同伴者も認められます。ただし医療滞在は治療のための在留で、扶養や同居を目的とするものではありません。国民健康保険にも加入できないため、医療費は全額自己負担になります(国民健康保険法施行規則1条)。

永住者・帰化した人が親を呼ぶ場合

「永住権を取れば親を呼べるか」「帰化すれば呼べるか」という疑問への答えも、ここまでの整理の延長にあります。

永住者の親に与えられる在留資格はありません。永住者の配偶者等は配偶者と子のための在留資格で、親は対象外です。帰化して日本人になった場合も、日本人の配偶者等は配偶者と子(実子・特別養子)のための在留資格なので、親は対象になりません。親を長期で呼ぶ経路は、どちらの場合も老親扶養の告示外特定活動だけです。

永住者や日本国籍者であることが意味を持つのは、審査の着眼点の4つ目、扶養能力と在留の安定性です。子の在留が安定していれば、親が日本で暮らし続ける前提が崩れにくいと評価されます。ただし本国に扶養できる兄弟姉妹がいる場合、子の在留資格が永住でも日本国籍でも、その点は補えません。

永住申請の前後で親の呼び寄せを考える場合、親の生活費を送金しているなら税の扶養控除の扱いも関係してきます。国外に住む親を扶養親族にするには、親族関係書類と送金関係書類の提出が必要で、年齢によっては年38万円以上の送金が求められます。

呼び寄せた後の生活と会社の関わり

老親扶養の特定活動が許可され、在留期間が3か月を超えれば、親は住民登録の対象になり、国民健康保険に加入する義務を負います。保険料は世帯主にかかり、高齢の親の医療費が一定程度公的保険で賄われる一方、世帯の保険料負担は増えます。親が会社員である子の被扶養者として健康保険に入れるかは、国内居住要件と収入要件で判断されます。

企業の人事担当者として関わるのは、主に在職証明書の発行と、外国人社員の収入や雇用の見通しを示す書類の協力です。親の呼び寄せが認められなかったことで社員が帰国を考えるケースもあります。制度の限界を早めに共有し、短期滞在の繰り返しで対応するのか、老親扶養の変更申請に挑むのかを社員と話しておくと、突然の退職の相談を避けやすくなります。

よくある質問

親の呼び寄せに成功するにはどうしたらいいですか?

公表された基準がない以上、確実な方法はありません。そのうえで、許可例に共通するのは「本国に扶養者がいないこと」と「日本の子に扶養能力があること」を客観的な資料で示せている点です。兄弟姉妹の居住地や、親の配偶者の死亡・離婚を証明する書類、親の診断書、子の課税証明書をそろえ、なぜ子が本国に戻れないのかを理由書で具体的に説明します。個別の事情で判断が変わるため、来日前に申請の見通しを専門家と確認することをお勧めします。

帰化したら親を呼び寄せられますか?

帰化しても、親を呼ぶための在留資格はありません。日本人の配偶者等は配偶者と子のための在留資格で、親は対象外です。長期で呼ぶ経路は老親扶養の告示外特定活動に限られ、帰化していることは扶養者の在留の安定性という面で有利に働くにとどまります。

介護が必要な親を呼び寄せるには?

介護の必要性は老親扶養の審査で重視される事情の一つです。本国の医師による診断書で、日常生活に支援が必要であることを示します。あわせて、本国に介護を担える親族がいないこと、日本で介護する体制(同居の住居、家族の時間的余裕)があることも説明します。短期滞在で来日し、在留期限内に特定活動への変更を申請する流れになります。

親の呼び寄せが失敗(不許可)になるのはどんな場合ですか?

典型的なのは、本国に兄弟姉妹など扶養できる親族がいる場合、親がまだ若く健康で一人で生活できる場合、子の収入が親の生活費や医療費を賄うには足りない場合です。日本で治療を受けること自体が目的に見える場合も、消極的に評価されやすくなります。短期滞在からの変更が不許可になった場合は、在留期限内に出国する準備が必要になるため、日程に余裕を持って申請します。

親族訪問ビザで呼び寄せられる範囲は?

短期滞在の親族訪問は、親に限らず兄弟姉妹やおじ・おばなども対象になります。ただし在留期間は最長90日で、長期の同居には使えません。査証が必要な国の場合、身元保証書や招へい理由書、親族関係を示す書類を用意します。

呼び寄せを考え始めたら、最初に「本国に誰がいるか」を確かめる

親の呼び寄せを考える人の多くは、自分の在留資格や年収から検討を始めます。けれども老親扶養の許否を最初に左右するのは、本国に親を扶養できる人がいるかどうかです。兄弟姉妹が本国にいるなら、日本の子の収入がいくら高くても、この点は埋まりません。反対に、本国に誰もいないことを書類で示せるなら、次に扶養能力と住居、親の健康状態の立証に進む価値があります。

判断の順番としては、まず呼び寄せる側が高度専門職で、7歳未満の子の養育か妊娠中の支援という目的に当てはまるかを確認します。当てはまれば告示34号で海外から呼べます。当てはまらなければ、本国の親族状況を確認し、老親扶養に挑むか、短期滞在や医療滞在で対応するかを決めます。短期滞在で来日してからの変更申請は、在留期限が短い中での勝負になるため、書類の準備は親が来日する前に終えておくのが原則です。

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