短期滞在の外国人には在留カードは交付されません。入管法19条の3が、在留カードを交付する「中長期在留者」から「短期滞在の在留資格が決定された者」をはっきり除いているためです。在留資格と在留期限は、パスポートに貼られる上陸許可の証印(シール)で確認します。在留カードがないと住民票も作られないため、住民登録を前提にした国民健康保険、マイナンバー、銀行口座の開設、携帯電話の長期契約といった手続は、短期滞在のままでは進められないか、大きく制限されます。
短期滞在に在留カードが交付されない理由
在留カードは、2012年7月に始まった在留管理制度で導入された身分証明書で、交付の対象は入管法19条の3が定める中長期在留者です。条文は、日本に在留資格をもって在留する外国人のうち、次に掲げる者「以外の者」を中長期在留者としています。
- 3月以下の在留期間が決定された者
- 短期滞在の在留資格が決定された者
- 外交または公用の在留資格が決定された者
- 前の3つに準ずる者として法務省令で定めるもの
短期滞在は2号でそのまま除かれています。短期滞在の在留期間は90日・30日・15日のいずれかで、2026年9月1日施行の施行規則改正(令和8年法務省令第48号)により90日を超えない範囲での日単位の指定もできるようになりましたが、どの期間でも在留カードの対象外であることに変わりはありません。
在留カードが交付されるのは、在留資格を中長期のものに変えた時点です。短期滞在から日本人の配偶者等などに在留資格変更が許可されると、地方出入国在留管理局で在留カードが交付され、住居地を市区町村に届け出ることで住民票が作られます。短期滞在からの変更は「やむを得ない特別の事情」が必要で、原則として認められない例外的な手続です(短期滞在から在留資格変更はできる?「やむを得ない特別の事情」と認定証明書交付後の扱い)。
上陸許可の証印(シール)の見方
上陸審査で入国が認められると、入国審査官はパスポートに上陸許可の証印をします(入管法9条1項)。このとき入国審査官は在留資格と在留期間を決定し、パスポートにその旨を明示しなければなりません(同条3項)。証印の様式は、入管法施行規則7条1項が別記第七号様式または第七号の二様式と定めています。現在の主要な空港・港では、この証印はパスポートに貼るシールの形で行われています。
シールで確認すべき項目は、次の4つです。
| 項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 上陸許可の日 | 入国した日。在留期間はこの日を1日目として数える |
| 在留資格 | 「短期滞在」(Temporary Visitor)と表示されているか |
| 在留期間 | 90日・30日・15日、または日単位で指定された日数 |
| 在留期限 | 滞在できる最終日(Until)。帰国便の日付がこの日以前か |
在留期限は自分で数えるより、シールに印字された日付で確認するのが確実です。たとえば2026年10月1日に90日の在留期間で上陸した人の在留期限は12月29日になります。数え方と繰り返し入国の注意は短期滞在ビザ90日と「年180日ルール」|日数の数え方と入国を断られる典型例にまとめています。
在留期間が30日以下の人は、在留期限の管理が特に重要です。入管法20条6項の特例期間は「三十日以下の在留期間を決定されている者」を除いているため、15日や30日で入国した人は、期限前に更新や変更の申請をしても、期限を過ぎれば審査中でも不法残留になります。
なお、事前に登録した特定登録者(トラスティド・トラベラー)が自動化ゲートで上陸する場合は、上陸許可の証印に代えて電子計算機に記録することができ、この場合はシールが貼られません(入管法9条4項)。シールがないパスポートでも適法に入国している人はいるため、在留期限は本人に入国時の記録を確認してもらう必要があります。
招へいする家族や受入れ企業の担当者は、入国直後にシールの写真を送ってもらい、在留資格と在留期限を記録しておくと、出国の予定や延長の要否を早めに判断できます。
住民票が作られない:住民基本台帳法の外国人住民
住民票に記載される外国人(外国人住民)は、住民基本台帳法30条の45が定める者で、中長期在留者、特別永住者、一時庇護許可者、仮滞在許可者、出生・国籍喪失による経過滞在者に限られます。短期滞在の人はここに含まれないため、日本に住所を持って暮らしていても住民票は作られません。板橋区のFAQも、短期滞在は在留管理制度の対象外で、在留カードも住民票も作成されないと案内しています。
住民票がないことで、実務上は次の手続に影響が出ます。
- 国民健康保険:国民健康保険法施行規則1条により、外国人住民以外の外国人は適用除外。短期滞在で来日した家族は加入できないため、民間の旅行保険の加入が前提になります
- マイナンバー:個人番号は住民票コードをもとに指定されるため、短期滞在の人には指定されません
- 印鑑登録:住民登録が前提のため、登録できません
- 転入手続全般:子の就学手続、児童手当など、住民票を前提にした行政手続は原則として利用できません
親を短期滞在で呼んで長く滞在してもらう場合、医療費が全額自己負担になる点は、招へい前に家族で話し合っておくべき事項です。
銀行口座・携帯電話の契約はできるか
銀行口座の開設で最初に問題になるのは、本人確認書類と住所です。犯罪収益移転防止法の本人確認では、氏名・住居・生年月日の確認が必要で、中長期在留者は在留カードで確認できますが、短期滞在の人には住居を示す公的書類がありません。
加えて、外為法上の居住性の問題があります。財務省の「外国為替法令の解釈及び運用について」では、外国人は原則として非居住者とされ、日本国内の事務所に勤務する人や日本に入国後6か月以上経過した人が居住者として扱われます。90日以内の短期滞在者は非居住者に当たるため、銀行が通常の居住者向け口座を開くことはまずありません。多くの銀行は口座開設の条件として在留カードの提示と在留期間の残りを求めており、短期滞在での開設は事実上できないと考えておくべきです。個々の銀行が非居住者向けの口座を扱っているかどうかは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
携帯電話は、契約者の本人確認が携帯電話不正利用防止法で義務づけられており、長期の通信契約には住所の確認が求められます。短期滞在の人が利用できるのは、旅行者向けのプリペイドSIMやeSIM、レンタルのモバイル端末が中心になります。パスポートだけで契約できる範囲は事業者によって異なり現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
これらの手続は、日本に住む家族が代わりに契約したものを使ってもらう形で乗り切る場面が多いと思われますが、名義を貸す形になる契約は、利用規約や法令上の問題が生じないかを事業者に確認してください。
会社が短期滞在の外国人を受け入れるとき
短期滞在は、観光、親族訪問、短期商用(会議、商談、契約の調印、工場の見学など)のための在留資格で、収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動はできません(入管法19条1項2号)。企業の実務で在留カードがないことが問題になるのは、主に次の2つの場面です。
1つは、採用面接で「在留カードを持っていない」と言われた場合です。短期滞在で来日している人は、在留カードがない以上、その場で雇用することはできません。就労資格の在留資格認定証明書を申請し、いったん出国して査証を取り、改めて入国してもらうのが原則の流れです。在留カードの確認を怠って就労させると、会社が不法就労助長罪に問われるおそれがあります(不法就労助長罪とは?)。
もう1つは、海外の関係会社の社員を短期商用で呼ぶ場合です。在留カードがないため、滞在中のホテル以外の宿泊先の確保、医療保険の手配、在留期限の管理は、招へいする会社が引き受けることになります。短期商用で謝金や日当を払う場合は、報酬に当たらないかを事前に確認してください。在留資格の選び方全体は外国人を採用できる在留資格の種類一覧で整理しています。
よくある質問
在留カードがなくても短期滞在の在留は可能ですか?
可能です。短期滞在の人には在留カードが交付されない仕組みで、パスポートに貼られた上陸許可の証印(シール)が適法に在留していることの証明になります。外出時にはパスポートを携帯する義務があります(入管法23条1項)。
短期滞在で住民票は作れますか?
作れません。住民票に記載される外国人住民は中長期在留者などに限られ、短期滞在は含まれていません。日本に住む家族と同じ家に滞在していても、住民票に記載されることはありません。
上陸許可のシールをなくしたらどうなりますか?
証印はパスポートに貼られたものなので、パスポートを紛失した場合は、在日の自国大使館・領事館で旅券を再発給してもらい、地方出入国在留管理局で上陸の記録を確認してもらう手続が必要になります。具体的な手続は管轄の地方出入国在留管理局に確認してください。
短期滞在でも銀行口座は開設できますか?
一般的な銀行口座の開設は、事実上できないと考えてください。本人確認で住居を示す書類がないことに加え、短期滞在者は外為法上の非居住者に当たるためです。滞在中の支払いは、本国の口座に紐づくクレジットカードやデビットカードで対応するのが現実的です。
在留カードが「ない」ことを前提に段取りを組む
短期滞在に在留カードがないことは、手続上の不便というより、日本での生活基盤を持たない滞在として法律が設計されていることの表れです。住民票、健康保険、口座、携帯電話のいずれもが、住所を持って暮らす人を前提にしているため、短期滞在のままではつながりません。
家族や取引先を短期滞在で呼ぶ側は、次の3点を招へい前に決めておくことをお勧めします。1つは、入国直後にシールの写真を共有してもらい、在留期限と帰国便の日付を照合すること。2つ目は、健康保険に入れない前提で、旅行保険と医療費の支払方法を用意すること。3つ目は、滞在中の通信手段と支払手段を、本人名義の契約に頼らない形で確保すること。滞在が90日を超えそうな事情が出てきたときは、個別の事情で判断が変わるため、在留期限の前に専門家か管轄の地方出入国在留管理局に相談してください。
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根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第9条・第19条の3・第20条・第23条(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 第7条・別表第二(e-Gov法令検索)
- 在留資格「短期滞在」(出入国在留管理庁)
- 私の在留資格は「短期滞在」です。「在留カード」は作成されますか。(板橋区・2021年1月8日更新)
- 住民基本台帳法 第30条の45(e-Gov法令検索)
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