家族滞在の配偶者や子どもが永住申請するには、就労資格で働く扶養者と同時に申請するか、扶養者が永住許可を受けた後に「永住者の配偶者・子」として申請するかの、どちらかを選ぶのが現実的です。家族滞在の人が単独で申請すると、ガイドラインの「原則10年在留、うち就労資格又は居住資格で5年以上」という要件を満たしにくいからです。さらに2026年10月1日の受付分から永住許可の手数料は1人20万円(許可時に納付)になるため、家族4人なら80万円と、申請の組み立て方が費用にも直結するようになりました。
家族滞在の人が単独で永住申請しにくい理由
永住許可の要件は入管法22条2項の3つ(素行善良・独立生計・国益適合)で、国益適合の中身を具体化しているのが出入国在留管理庁の「永住許可に関するガイドライン」(現行は2026年2月24日改訂)です。ガイドラインは、原則として引き続き10年以上日本に在留し、そのうち就労資格(技能実習と特定技能1号を除く)又は居住資格で引き続き5年以上在留していることを求めています。
ここで問題になるのが「家族滞在」の位置づけです。家族滞在は、就労資格でも、定住者・日本人の配偶者等のような居住資格でもありません。家族滞在だけで10年暮らしても、「就労資格又は居住資格で5年以上」の部分を満たせないため、単独の申請では要件に届かないことになります。家族滞在の前に留学や就労資格で在留していた期間がある人は別ですが、来日以来ずっと家族滞在という配偶者・子どもは、別のルートを考える必要があります。
そのルートが、扶養者との同時申請と、扶養者の許可後の申請の2つです。
ルート1:扶養者と家族が同時に申請する
扶養者(技術・人文知識・国際業務などで働く夫や妻)が永住申請をするとき、家族滞在の配偶者と子どもも同じ時期に、同じ入管に申請する方法です。
公表されているガイドラインと提出書類の案内には、同時申請の家族をどう審査するかを定めた記載はありません。一方、実務では、扶養者が許可されることを前提に、家族を「永住者の配偶者」「永住者の実子」に準じて審査する取扱いがあると広く説明されています。ガイドラインは、永住者の配偶者について「実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること」、実子について「1年以上本邦に継続して在留していること」を原則10年の特例としています。同時申請の家族がこの特例に準じて扱われるなら、家族滞在で1年以上在留している子ども、婚姻3年以上・在留1年以上の配偶者は、10年に届いていなくても申請の対象になります。この取扱いの根拠となる入国・在留審査要領の記載は公開資料で確認できていません(公式資料では未確認)。
同時申請で押さえておくべき点は3つあります。
1つ目は、家族の結果は扶養者の結果に連動するということです。扶養者が不許可になれば、特例に準じて審査される前提が崩れるため、家族も不許可になると考えておくべきです。扶養者本人の要件(10年・5年、納税・年金の期限内納付、最長の在留期間)に不安がある場合は、家族を同時に申請しても結果は変わりません。
2つ目は、家族それぞれが自分の要件も満たしている必要があることです。配偶者の婚姻期間、子どもの在留期間、家族滞在の在留期間が「最長」であること(在留期間3年は2027年3月31日まで最長として扱われます)、本人の素行は、家族一人ひとりについて見られます。
3つ目は、生計が世帯で1つとして判断されることです。扶養者の収入で、同時に申請する家族全員の生活が成り立っていることを示す必要があります。収入の考え方は永住権の年収条件|300万円は目安?扶養家族の人数と2026年改定案で変わる基準で扱っています。
提出書類は、扶養者と家族のそれぞれが「永住許可申請3(就労資格・家族滞在)」などの区分で用意します。家族滞在の人は、戸籍謄本や出生証明書・婚姻証明書などの身分関係資料、世帯全員の住民票に加えて、「申請人を扶養する方」の直近5年分の住民税の課税・納税証明書、国税の納税証明書、直近2年分の年金・医療保険の納付資料を出します。扶養者と同時に申請する場合、同じ書類を重複して出さなくてよいとされる扱いもありますが、入管庁の公表一覧に明記はないため、窓口で確認してください。申請書・写真・理由書は一人ひとり必要です。
ルート2:扶養者の許可後に「永住者の配偶者・子」として申請する
扶養者だけが先に永住許可を受け、その後に配偶者・子どもが申請する方法です。この場合は、家族はガイドライン上の「永住者の配偶者」「永住者の実子」として、特例の条件で審査されます。
注意したいのは、扶養者が永住者になった時点で、家族の「家族滞在」の前提が崩れることです。家族滞在は、就労資格や留学など入管法別表第1の在留資格を持つ人の扶養を受ける配偶者・子の在留資格で、扶養者が「永住者」(別表第2)になると、家族は家族滞在の該当性を失います。出入国在留管理庁の案内でも、扶養者が永住許可を受けた家族は「永住者の配偶者等」への在留資格変更許可申請を速やかに行うよう求めています。
その結果、ルート2は「扶養者の許可 → 家族は永住者の配偶者等へ変更 → 更新で3年以上の在留期間を得る → 家族の永住申請」という順序になります。永住者の配偶者等に変更した直後の在留期間が1年だと、ガイドラインの「最長の在留期間」を満たすまでにさらに時間がかかります。永住者の配偶者等への変更の実務は永住者の配偶者等とは?家族滞在との違いと変更すべきタイミング、配偶者としての永住申請の特例は日本人の配偶者の永住権|実体婚3年・在留1年の特例と在留期間3年の壁で詳しく扱っています。
どちらのルートを選ぶか|判断の軸
判断の軸は、扶養者の審査に不安があるかどうかです。
扶養者の要件に不安がなく、家族も特例の期間(配偶者は婚姻3年・在留1年、子は在留1年)を満たしているなら、同時申請が手戻りの最も少ない方法です。家族滞在から永住者の配偶者等への変更を挟まずに、家族全員がそろって永住者になれます。
扶養者の年収が目安にぎりぎり届く程度、納付の遅れが過去にある、転職して間もない、といった事情がある場合は、扶養者だけを先に申請する選択肢があります。家族を同時に出しても、扶養者が不許可なら家族も不許可になり、2026年10月以降は不許可なら手数料はかかりませんが、申請にかかった準備の手間と審査期間(平均で300日を超える時期もあります)は戻りません。
費用も比較の材料になります。永住許可の手数料は、2026年9月30日までの受付分は1万円、10月1日の受付分からは20万円で、いずれも許可されたときに納付します。家族3人が同時に許可されれば60万円です。受付日で額が決まるため、2026年9月30日に申請が受け付けられた家族は、審査が翌年にかかっても1人1万円です。手数料改定の全体像は在留資格の手数料改定を参照してください。
子どもの永住申請|年齢と出国歴で分けて考える
子どもの申請は、年齢と日本での在留の連続性で、考えるべきことが変わります。
16歳未満の子ども
16歳未満の子どもは、申請書の作成・署名を親などの法定代理人が行います。2026年6月14日以降に交付される在留カードは1歳以上で顔写真が必要になったため、乳幼児でも申請時に写真を用意します。子どもの素行は通常問題になりにくいものの、世帯全体の審査の一部として見られます。
16歳以上の子ども(高校生・大学生)
16歳以上になると、本人の行動が審査に直接関わってきます。家族滞在の子どもがアルバイトをする場合、資格外活動許可の範囲(包括許可なら原則週28時間以内)を守っているかが確認されます。時間超過は資格外活動違反として本人の素行の問題になり、同時に申請している家族の審査にも影響するおそれがあります。高校生・大学生の子どもがいる家庭は、申請前に給与明細で勤務時間を確認してください。家族滞在の就労時間のルールは家族滞在ビザで働ける時間は?資格外活動許可と週28時間を超えた場合のリスクで解説しています。
海外の学校に通った期間がある子ども
ガイドラインの「引き続き」在留とは、在留が途切れていないことを指します。子どもが本国の学校に長期間通っていた、夏休みに長く帰国していた、という場合、再入国許可(みなし再入国許可を含む)の期限内に戻っていれば在留資格は継続していますが、日本での生活の実態が問われることがあります。1回の出国日数・年間の出国日数について公表された数値基準はありません(公式資料では未確認)。長期の出国があった子どもについては、出国の理由(本国の親族の看病、短期留学など)と帰国後の日本での通学状況を説明できるようにしておくと、審査で事情を伝えやすくなります。
再入国許可の期限を過ぎて在留資格を失った期間があると、「引き続き」の起算点が戻ります。子どもだけ本国に長く残していた家庭は、在留カードの有効期限と出入国の記録を事前に照合してください。
日本で生まれた子ども
扶養者がすでに永住者で、子どもが日本で生まれた場合は、出生から30日以内に在留資格取得の申請をします。この場面は家族滞在からの申請とは別の手続です。
2026年8月の改定案で変わる可能性があること
2026年8月4日、ガイドラインの改定案が公表され、9月4日まで意見募集が行われました。9月29日時点で結果は公示されていません。改定案の概要には、配偶者特例の期間を婚姻5年・在留3年に延ばすこと、日本語能力としてCEFR B1相当を求めること、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る収入、将来の年金受給見込額の考慮が盛り込まれています。改定案の本文では、日本語B1を求めない類型として、高度人材とその家族、初等中等教育を累計6年以上受けた人、一定の永住者の子が挙げられています。
家族で永住申請を考える家庭にとっては、配偶者の婚姻期間・在留期間の要件が延びる可能性、家族滞在の配偶者にも日本語B1が求められる可能性、世帯人数が多いほど収入の水準が上がる可能性の3点が影響します。改定の確定内容と適用時期は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。ルート2(扶養者の許可後に家族が申請)を選ぶ場合、家族の申請時期が改定後にずれ込むことを織り込んでおく必要があります。
よくある質問
家族が永住申請を同時に申請できますか?
できます。扶養者の申請と同じ時期に、家族それぞれが申請書・写真・理由書と、自分の区分の提出書類を用意して申請します。家族は扶養者の許可を前提に配偶者・実子の特例に準じて審査されると説明されることが多く、扶養者が不許可になれば家族も不許可になると考えておくべきです。個別の事情で判断が変わる部分があります。
家族滞在ビザから永住申請は可能か?
可能ですが、家族滞在だけで在留してきた人が単独で申請すると、「就労資格又は居住資格で5年以上」の要件を満たしにくいのが実情です。扶養者と同時に申請するか、扶養者の許可後に永住者の配偶者等へ変更してから配偶者・子として申請するのが一般的なルートです。
高度専門職の家族滞在ビザで永住申請するにはどうしたらいい?
高度専門職の扶養者が70点以上で3年、80点以上で1年の特例を使って申請する場合も、家族は扶養者と同時に申請するのが基本です。高度専門職の配偶者・子の在留資格は「家族滞在」または高度専門職の配偶者向けの「特定活動」で、どちらかにより提出書類の区分が変わります。高度専門職からの永住申請の条件は高度専門職から永住申請で解説しています。
子どもだけ先に永住申請できますか?
家族滞在の子どもだけが申請しても、特例の前提となる「永住者の実子」に当たらないため、原則の10年要件(うち就労資格又は居住資格で5年以上)で審査されることになり、家族滞在だけで在留してきた子どもが満たすのは困難です。子どもだけ先に申請するメリットは通常ありません。
家族の永住は「誰が先に、いつ出すか」を世帯で決める
家族滞在からの永住申請で結果を分けるのは、個々の書類より申請の組み立てです。扶養者の要件が固いなら同時申請、不安があるなら扶養者を先に、という判断を世帯単位で行い、そのうえで子どもの年齢・アルバイト・出国歴を一人ずつ点検する。この順番で考えると、申請すべき人と時期が決まります。
企業の人事担当者にとっては、外国人社員の永住申請は家族の定住と一体の問題です。社員本人の申請の相談を受けたら、家族が同時に申請するか、手数料を誰が負担するか、改定案の影響をどう見るかを一緒に確認しておくと、社員の定着の見通しが立てやすくなります。永住許可の要件の改定と企業の対応は永住許可の要件厳格化で何が変わる?にまとめています。
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根拠資料
- 永住許可に関するガイドライン(出入国在留管理庁、2026年2月24日改訂)
- 永住許可申請(出入国在留管理庁)
- 永住許可申請3(就労資格・家族滞在)提出書類(出入国在留管理庁)
- 在留資格「家族滞在」(出入国在留管理庁)
- 在留資格「永住者の配偶者等」(出入国在留管理庁)
- 「永住許可に関するガイドライン」の改定案に関する意見募集(e-Govパブリック・コメント、2026年8月4日〜9月4日)
- 出入国管理及び難民認定法(e-Gov法令検索)
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