本文へ移動
保利国際法務事務所 外国人採用・就労ビザ相談室
保利国際法務事務所の外国人採用・就労ビザLPへ 電話で無料相談 050-5526-5506 いますぐ無料相談フォームへ
保利国際法務事務所 外国人採用・就労ビザ相談室

永住権の年収条件|300万円は目安?扶養家族の人数と2026年改定案で変わる基準

永住権の年収条件に、法律上の金額はありません。入管法22条2項は「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」と定めるだけで、出入国在留管理庁の「永住許可に関するガイドライン」(2026年2月24日改訂)も金額を示していません。よく言われる「年収300万円」は、単身者を想定した実務上の目安で、扶養家族の人数が増えれば必要な水準は上がります。さらに2026年8月4日公表の改定案は、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準を求める方向を示しており、従来の目安そのものが通用しなくなる可能性があります。

永住権の年収条件は法律にもガイドラインにも書かれていない

入管法22条2項2号は、独立生計要件を「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」と定めています。現行のガイドラインは、これを「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること」と説明しています。

この説明から読み取れる審査の視点は2つです。1つは「公共の負担にならない」こと、つまり生活保護などの公的扶助に頼らずに暮らせているかです。もう1つは「将来において安定した生活が見込まれる」こと、つまり今の収入が続く見込みがあるかです。どちらも金額そのものより、生活が成り立っているかと、それが続くかを見る基準になっています。

もう1つ押さえておくべきなのは、日本人・永住者・特別永住者の配偶者又は子は、入管法22条2項ただし書によって独立生計要件への適合を要しないとされている点です。ただし、これは法律上の要件として免除されているという整理で、配偶者ビザからの申請で年収がまったく見られないわけではありません(後述)。

年収300万円はどこから来た目安か

年収300万円という数字は、出入国在留管理庁の公表資料には出てきません。民間の解説では、単身の就労資格者について300万円前後を一つの目安とし、扶養家族が1人増えるごとに数十万円ずつ上乗せして考える説明が広く使われています。

筆者は、この目安を「審査で自動的に使われる線」と考えるより、「この水準を下回ると、生活が成り立っていることを別の資料で説明する負担が重くなる線」として扱うほうが実態に合うと考えます。独立生計要件は相対的な基準で、同じ年収でも、住んでいる地域、扶養家族の人数、資産の有無、収入の推移によって評価が変わるからです。

参考までに、他の制度で「年収300万円」が法令上の数字として登場するのは、高度専門職のポイント制です。高度専門職(1号ロ・ハ)は年収300万円未満だとポイントの合計にかかわらず対象になりません。永住の目安と混同されやすいのですが、制度も根拠も別物です。高度専門職の年収の数え方は高度専門職の年収ポイント|残業代・見込み年収と年収300万円要件で解説しています。

審査は世帯単位|扶養家族の人数で変わる考え方

独立生計要件は、申請者と生計を一にする世帯全体で判断するとされています。共働きの夫婦なら、配偶者の収入を合わせて世帯の生計が成り立っているかが見られます。

世帯単位で見るということは、扶養家族が増えるほど、同じ年収でも1人当たりの生活費の余裕が小さくなるということです。現行の審査で扶養家族の人数を把握する材料になるのが、住民税の課税証明書に記載される扶養の人数と、永住許可申請書の家族欄です。

海外の親族を扶養に入れている場合

ここで問題になりやすいのが、本国の両親や兄弟を税法上の扶養親族にしているケースです。課税証明書上の扶養人数が多いと、その人数を養っている世帯として年収が評価されることになります。年収が目安に届いていても、扶養人数が多いために生計が厳しいと見られる可能性がある、と筆者は考えます。

国外居住の親族を扶養控除の対象にするには、国税庁の要件に沿った親族関係書類と送金関係書類が必要で、30歳以上70歳未満の親族は原則として年38万円以上の送金が必要です。実際には送金していないのに扶養控除を受けていた場合は、税の申告の問題として、公的義務の履行(納税)の評価にも及びます。国外扶養の要件は国外扶養親族の扶養控除要件|30歳以上70歳未満は38万円送金が必要【令和8年分】で整理しています。永住申請の前に、扶養に入れている親族が実際に扶養の実態を伴っているかを確認し、実態がないなら修正申告を済ませておくのが筋です。

家族全員で申請する場合

夫婦と子が同時に永住申請する場合、扶養者の収入で家族全員の生計が成り立っていることを示すことになります。同時に申請する配偶者と子の審査は、扶養者の審査結果に強く左右されます。扶養者の年収が目安に届かない場合、扶養者だけ先に申請し、許可後に配偶者・子が永住者の配偶者・実子の特例(婚姻3年・在留1年、実子は在留1年)を使って申請する順序も選択肢になります。どちらが適切かは、家族それぞれの在留年数と在留期間によります。

2026年8月の改定案|日本人世帯の平均収入が基準になる方向

2026年8月4日、出入国在留管理庁は永住許可に関するガイドラインの改定案を公表し、e-Govで意見募集を行いました(案件番号315000140、2026年9月4日締切)。改定案の概要は、独立生計要件について次の方向を示しています。

  • 現在及び将来において、日本人と同等水準以上の経済条件を求める
  • 世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に、継続して達していることを求める
  • 将来受給できる年金の見込額が、日本人世帯の平均収入を上回る年収水準で30年間厚生年金に加入した場合の見込額に達しているかを評価し、不足する場合は申請時の年齢に応じた補填資産で補えるかを見る

改定案には、平均収入としてどの統計を使うのか、具体的な金額はいくらかが書かれていません(公式資料では未確認)。そこで、参考として厚生労働省「2025(令和7)年国民生活基礎調査の概況」(2024年の所得)の数字を並べると、次のようになります。

世帯の種類 1世帯当たり平均所得金額
全世帯 575.2万円
高齢者世帯以外の世帯 700.7万円
児童のいる世帯 857.3万円

同じ調査で、有業人員1人当たりの平均稼働所得金額は356.1万円です。改定案が使う統計がこれと同じとは限りませんが、世帯の平均収入を基準にするなら、従来の「単身300万円」とは桁の違う水準になり得ることが分かります。とくに子のいる世帯は、平均所得金額が857.3万円という統計が存在する以上、共働きでなければ届きにくい水準が設定される可能性があります。

適用時期について、改定案の概要は「令和9年4月から(収入に関する要素は本年10月施行)」としており、改定案本文は、収入に関する部分を改定日から6か月前の日以降の申請であって改定日に申請中の案件にも適用するとしています。改定日が2026年10月1日であれば、2026年4月1日以降に申請して審査中の人にも新しい基準が及ぶことになります。2026年9月29日時点で確定版は公表されておらず、適用範囲は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。改定案の全体像は永住権の条件とは?素行善良・独立生計・国益の3要件と原則10年在留、企業への影響は【2026年10月改定】永住許可の要件厳格化で何が変わる?で扱っています。

年収以上に見られる「安定性」と「推移」

現行の審査で年収と並んで見られるのが、収入の安定性です。就労資格から永住申請する場合、住民税の課税(又は非課税)証明書と納税証明書を直近5年分提出します。審査官は、申請直前の1年の年収だけでなく、5年間の推移を見ることになります。

筆者は、5年間ほぼ横ばいで目安を上回っている人のほうが、直近1年だけ高い人より評価されやすいと考えます。直近の年収が高くても、その前の年が大きく下回っていれば、「将来において安定した生活が見込まれる」かどうかに疑問が出るからです。

転職直後の説明方法

転職直後は、新しい勤務先での収入実績が課税証明書に反映されていません。この場合に出す資料は、在職証明書、新しい雇用契約書又は労働条件通知書、直近数か月の給与明細です。これに、転職の理由と、職種・業界が以前と連続していることを理由書で説明します。同じ職種で年収が上がる転職は、安定性の説明がしやすい類型です。反対に、職種が変わった、試用期間中である、雇用形態が有期に変わった、といった事情がある場合は、試用期間が明けて数か月の給与実績ができてから申請するほうが無理がありません。

転職は所属機関に関する届出(14日以内)の対象です。届出を出していないと、公的義務の不履行として別の問題になります。

残業が減って年収が下がった場合

年収の変動が残業代によるものなら、基本給が維持されていることを示すのが説明の中心になります。雇用契約書や給与規程で基本給を示し、源泉徴収票の総額が下がった理由(繁忙期の終了、部署異動、会社全体の労働時間短縮など)を理由書に書きます。会社に働き方改革で残業を減らした経緯がある場合は、その事情を人事部に一筆書いてもらうと説得力が増します。

育休・産休で年収が下がった場合

育児休業給付金は雇用保険法12条により非課税のため、育休を取った年は、課税証明書上の所得が大きく下がります。収入が途絶えたわけでなく、非課税の給付に置き換わっただけです。育児休業給付金の支給決定通知書と、復職予定日の分かる勤務先の証明書を添えて、所得の減少の理由を説明します。

日本人の配偶者なら年収は関係ないのか

日本人・永住者・特別永住者の配偶者は、入管法22条2項ただし書により独立生計要件に適合することを要しません。とはいえ、提出書類では夫婦双方の住民税の課税・納税証明書(直近3年分)が求められます。国益要件の公的義務の履行と、生活保護の受給状況などは引き続き審査の対象です。

改定案は、独立生計要件が不要とされる類型でも、公共の負担となるおそれが現実的であれば消極的に評価する方向を示しています。配偶者特例の年数(婚姻3年・在留1年)を5年・3年に伸ばす案も含まれており、配偶者からの申請でも収入が無関係とは言い切れなくなりつつあります。

よくある質問

年収300万円で永住権は取れますか?

年収300万円を満たしているかどうかで許否が決まるわけではありません。現行の審査では、世帯の人数、収入の推移、公的義務の履行状況を合わせて判断されます。単身で5年間安定して300万円前後を得ており、税・年金・保険料を期限内に納めていれば、年収が理由で不許可になる可能性は高くないと筆者は考えますが、改定案が確定すれば基準が上がる可能性があります。

年収300万円以下でも永住許可はもらえますか?

可能性はありますが、生活が成り立っていることを資産や世帯の収入で補足して説明する必要があります。預貯金の残高証明書、配偶者の収入、不動産などの資産は、独立生計要件の判断材料になります。

配偶者が永住者になるには年収はいくら必要ですか?

日本人・永住者の配偶者には、法律上の独立生計要件は適用されません。ただし夫婦双方の課税・納税証明書が審査され、公的扶助への依存や納付の遅れは消極的に評価されます。

扶養家族がいると必要な年収は増えますか?

増えます。審査は世帯単位なので、同じ年収でも扶養人数が多いほど生計の余裕は小さく評価されます。海外の親族を扶養控除に入れている人は、扶養の実態と送金の記録を確認しておいてください。

年収がいくら以下だと永住不許可になりますか?

公表された下限はありません。個別の事情で判断が変わるため、金額だけで結論は出せません。ただし改定案では、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準が求められる方向で、確定すればその水準が事実上の下限になります。

年収の数字より先に、5年間の「説明できる推移」を作る

永住の年収条件を考えるときに重要なのは、申請の年の年収をどう上げるかではなく、課税証明書5年分に表れる推移を説明できる状態にしておくことです。転職、残業の増減、育休、扶養親族の追加は、いずれも課税証明書の数字を動かします。動いた理由を資料で説明できれば、年収が一時的に下がっていても評価の材料は揃います。

そのうえで、2026年10月以降に申請する人は、改定案の収入基準が自分の世帯にどう当てはまるかを確定版で確認する必要があります。手数料も2026年10月1日受付分から20万円に上がるため(在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?)、基準に届くかどうかを見極めてから申請する意味は以前より大きくなっています。

根拠資料


在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。