日本の永住権(在留資格「永住者」)の条件は、入管法22条2項が定める「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」の3つです。3つ目の国益要件の中身を具体化しているのが出入国在留管理庁の「永住許可に関するガイドライン」(最新は2026年2月24日改訂)で、原則10年の在留、税金・年金・医療保険料の期限内納付、現在の在留資格で最長の在留期間を持っていることなどが、ここで要求されています。法律の条文だけを読んでも「10年」という数字は出てこない、という点が永住の条件を理解する出発点になります。
永住権の条件は入管法22条2項の3つ
永住許可の根拠は入管法22条です。同条2項は、法務大臣は申請者が次の1号・2号のいずれにも適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、永住を許可することができると定めています。
- 素行が善良であること(1号)
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(2号)
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(柱書)
同項ただし書により、日本人・永住者・特別永住者の配偶者または子は、1号と2号に適合することを要しません。また、国際連合難民高等弁務官事務所などが保護の必要性を認めた一定の人は、2号が免除されます。どちらの場合も、3つ目の国益要件は免除されない点に注意が必要です。
条文が「許可することができる」という形をとっている以上、3要件を満たしても必ず許可されるわけではありません。永住許可は法務大臣の広い裁量に委ねられた処分で、ガイドラインはその裁量の使い方を外部に示したものという位置づけです。そのため、同じ年数・同じ年収でも、納付の履歴や素行の内容によって結論が分かれます。
素行善良要件|「住民として社会的に非難されることのない生活」
ガイドラインは素行善良要件を「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること」と説明しています。ここでいう素行とは、刑罰を受けていないことだけを指すのではなく、日常生活の送り方まで含む概念です。
実務で問題になりやすいのは次のような場面です。
- 罰金刑以上の刑事処分を受けたことがある
- 交通違反を短期間に繰り返している(反則金で済む違反も回数によっては問題になる)
- 資格外活動の時間超過など、入管法上の義務違反がある
- 住居地の届出や所属機関の届出を期限内に出していない
ガイドラインは国益要件の中でも「罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと」を求めており、刑事処分は素行と国益の両方の要件で消極的に評価されることになります。交通違反は、反則金の納付で手続が終わっていても、違反の記録そのものは残ります。回数と時期によって評価が変わるため、違反歴がある人は申請の時期を慎重に選ぶ必要があります。
独立生計要件|公共の負担にならず、将来も安定した生活が見込めること
ガイドラインは独立生計要件を「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること」と説明しています。
この要件で見られるのは、生活保護などの公的扶助に頼っていないかと、収入の安定性です。入管の審査では、申請者本人の収入だけでなく、配偶者などと一緒に営む世帯全体で見て判断するとされています。共働き世帯であれば配偶者の収入を合算して考えることができます。
年収の目安について、出入国在留管理庁は具体的な金額を公表していません。実務では年収300万円前後が一つの目安として語られることが多いものの、これは扶養家族の人数や地域の生活水準によって変わる相対的な基準です。扶養家族が多ければ、同じ年収でも評価は厳しくなります。審査では直近5年分の課税証明書で収入の推移も見られるため、申請直前の1年だけ年収が高い状態より、数年にわたって一定の水準を保っていることのほうが評価されやすいと筆者は考えます。
なお、2026年8月4日に公表されたガイドライン改定案では、独立生計要件について「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準」を求める方向と、将来受給できる年金の見込額を考慮要素に加える方向が示されました。改定案の確定内容と適用時期は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください(後述)。
国益要件|ガイドラインが定める5つの中身
3つの要件のうち、実際の審査で最も具体的な基準があるのが国益要件です。2026年2月24日改訂のガイドラインは、次のアからオを挙げています。
| 項目 | ガイドラインの内容 |
|---|---|
| ア 在留年数 | 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。このうち就労資格または居住資格で引き続き5年以上在留していること |
| イ 刑罰・公的義務 | 罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと。納税、公的年金・公的医療保険の保険料の納付、入管法上の届出等の公的義務を適正に履行していること |
| ウ 在留期間 | 現に有している在留資格について、入管法施行規則別表第2に規定する最長の在留期間をもって在留していること |
| エ 基準適合 | 現に有している在留資格について、法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること |
| オ 公衆衛生 | 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと |
ア 原則10年在留と「就労資格又は居住資格で5年」
「引き続き」とは、途中で在留が途切れていないことを意味します。再入国許可(みなし再入国許可を含む)を受けずに出国して在留資格を失った場合は、そこで在留歴がリセットされます。出国が多い人の扱いについて出入国在留管理庁は日数の基準を公表していませんが、長期の出国が続くと「引き続き」在留しているとは評価されにくくなります。長期出張や一時帰国との関係は再入国許可とみなし再入国許可の違いで解説しています。
10年のうち5年以上は、就労資格または居住資格で在留している必要があります。留学生として来日し、卒業後に技術・人文知識・国際業務で就職した人であれば、留学の期間は10年に数えられますが、就労資格での5年には数えられません。ガイドラインの注記では、就労資格から「技能実習」と「特定技能1号」は除かれています。技能実習や特定技能1号の期間だけでは「就労資格で5年」を満たせないということです。
イ 公的義務は「期限内に」納めたかが問われる
ガイドラインは公的義務について、申請時点で納付済みであっても、当初の納付期限内に履行されていない場合は原則として消極的に評価されると明記しています。永住申請の直前に滞納分をまとめて納めても、それだけでは足りないということです。
提出書類では、住民税の課税・納税証明書(直近5年分)や、公的年金の納付状況が分かる資料(直近2年分)などが求められます。会社員であれば住民税と厚生年金は給与天引きのため問題になりにくい一方、転職の合間に国民年金・国民健康保険に切り替えた期間や、個人事業主の期間に未納・遅延が生じやすくなります。年金の納付状況は、日本年金機構の「ねんきんネット」や年金事務所で取得できる被保険者記録照会回答票で確認できます。
ウ 最長の在留期間|2027年3月31日までは「3年」でも可
入管法施行規則別表第2で最長の在留期間が5年とされている在留資格(技術・人文知識・国際業務、日本人の配偶者等など)について、ガイドラインは経過措置を置いています。2027年3月31日までの間は、在留期間「3年」を持っていれば「最長の在留期間をもって在留している」ものとして扱われます。
さらに、2027年3月31日の時点で在留期間「3年」を持っている人は、その在留期間内に処分を受ける場合に限り、初回だけ「最長の在留期間」として扱われます。2027年4月1日以降は原則として在留期間「5年」が必要になるため、現在「3年」の人は、次の更新で5年が出るのを待つか、経過措置の範囲内で申請するかの判断を迫られます。在留期間「5年」は、所属機関のカテゴリーや本人の納税・届出の状況などを踏まえて決まるため、本人の努力だけでは左右できない部分があります。
エ 上陸許可基準等への適合
2026年2月24日改訂のガイドラインには、現に有している在留資格について上陸許可基準等に適合していることが明記されています。技術・人文知識・国際業務の人なら、現在の仕事が学歴・職歴と関連し、日本人と同等額以上の報酬を受けていることなど、その在留資格の基準を今も満たしていることが前提になるという意味です。永住申請の直前に職務内容が大きく変わった人は、この点を説明できるようにしておく必要があります。
原則10年の特例|配偶者・定住者・高度人材は短くなる
ガイドラインは、原則10年在留の要件を短縮する特例を8つ定めています。
- 日本人・永住者・特別永住者の配偶者:実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ引き続き1年以上本邦に在留していること。実子等は引き続き1年以上の在留
- 定住者:「定住者」の在留資格で5年以上継続して在留していること
- 難民・補完的保護対象者:認定後5年以上継続して在留していること
- 我が国への貢献が認められる人:5年以上本邦に在留していること
- 地域再生計画の区域内で特定活動を行い貢献が認められる人:3年以上継続して在留していること
- 高度専門職ポイント70点以上:70点以上を維持して3年以上継続して在留していること
- 高度専門職ポイント80点以上:80点以上を維持して1年以上継続して在留していること
- 特別高度人材(J-Skip):特別高度人材として1年以上継続して在留していること、または申請日の1年前の時点で基準に該当すること
特例は在留年数の要件を短縮するだけで、公的義務の履行や最長の在留期間といった他の要件は免除されません。高度人材の特例は、ポイントの基準時点の考え方に注意が必要です。詳細は高度専門職から永住申請|70点で3年・80点で1年の条件とポイントの基準時点で解説しています。
2026年から2027年にかけての見直し
永住の条件は、2026年から2027年にかけて段階的に見直されています。本記事は基本要件の整理に絞り、改定の詳細は別の記事に譲りますが、時系列だけ押さえておきます。
- 2026年2月24日:ガイドライン改訂(上陸許可基準等への適合の明記など)
- 2026年8月4日:法務大臣が記者会見でガイドライン改定案を公表。独立生計要件への「日本人世帯の平均収入を上回る水準」の導入、年金見込額の考慮、永住許可の取消しの運用を示すガイドラインの新設などが示され、同日から9月上旬まで意見募集が行われました
- 2026年10月1日:在留手続の手数料改定。永住許可の手数料は現行の1万円から大幅に引き上げられます
- 2027年3月31日:最長の在留期間に関する経過措置の期限
- 2027年4月1日:改定ガイドラインの運用開始(予定)
法務大臣会見の概要によれば、改定ガイドラインは2027年4月1日から運用する一方、収入に関する要件は2026年10月1日から適用し、その6か月前以降の申請も対象とする方針が示されています。ただし、2026年9月29日時点で改定の確定版は確認できておらず、適用時期と対象となる申請の範囲は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。改定の内容と企業への影響は【2026年10月改定】永住許可の要件厳格化で何が変わる?、手数料の金額は在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?で扱っています。
永住許可を受けた後の取消しの仕組みも、2024年の入管法改正で変わりました。故意に公租公課を納めない場合などが新たな取消事由に加わっており、施行時期と対象者は永住権の取り消しはいつから?2027年4月施行の新取消事由と対象者で取り上げます。
よくある質問
永住権の申請条件は、日本に10年住めば満たせますか?
10年の在留は国益要件の一部にすぎません。10年のうち就労資格または居住資格で5年以上在留していること、税金・年金・医療保険料を期限内に納めていること、現在の在留資格で最長の在留期間(2027年3月31日までは3年でも可)を持っていることなど、他の条件も同時に満たす必要があります。
日本人の配偶者の永住権の条件は?
実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ引き続き1年以上日本に在留していれば、原則10年の在留は求められません。入管法22条2項ただし書により、素行善良要件と独立生計要件も法律上は免除されます。ただし国益要件は免除されないため、公的義務の履行と最長の在留期間の要件は満たす必要があります。2026年8月の改定案ではこの特例の年数を延ばす方向も報じられており、確定内容は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
永住権の条件に年収はありますか?
法律にもガイドラインにも、年収の金額は書かれていません。独立生計要件の判断材料として、世帯の収入と扶養家族の人数、収入の安定性が見られます。2026年8月4日公表の改定案では「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準」という基準が示されており、確定すれば従来の目安より高い水準が求められる可能性があります。
高度人材の永住権の条件は?
高度専門職のポイント計算で70点以上を3年以上継続して維持していれば3年、80点以上を1年以上継続して維持していれば1年の在留で申請できます。在留資格が「高度専門職」でなくても、技術・人文知識・国際業務などで在留しながら、過去の時点でポイントを満たしていたことを立証できれば、この特例を使えます。
日本の永住権が失効・取り消しになる条件は?
永住者でも、再入国許可を受けずに出国した場合や、再入国許可の有効期間内に戻らなかった場合は、永住者の在留資格を失います。また、入管法22条の4の在留資格取消事由に当たる場合や、退去強制事由に当たる場合も永住権を失います。2024年改正で追加された取消事由については永住権の取り消しはいつから?2027年4月施行の新取消事由と対象者で解説します。
申請前に「10年」より先に確認すべきこと
永住申請を考えている人が最初に数えるのは在留年数ですが、実際に不許可の原因になりやすいのは、年金や住民税の納付遅延、在留期間が最長になっていないこと、転職直後で収入の安定性を示せないことです。年数は数えれば分かりますが、納付の履歴や在留期間は後から取り返せません。
判断の順番としては、次の3点を先に確認することをお勧めします。1つは、直近5年の住民税と直近2年の年金・医療保険料が、すべて納付期限内に納められているか。2つ目は、現在の在留期間が3年以上か、2027年4月以降に申請するなら5年か。3つ目は、改定案で示された収入の水準に対して、世帯の収入がどの位置にあるか。この3点に問題がなければ、在留年数と特例の有無を確認する段階に進めます。
外国人社員の永住申請を会社として支援する場合は、在職証明書の発行や、転職・部署異動のタイミングの調整が会社側でできる支援になります。個別の事情で判断が変わるため、申請の時期に迷うときは、申請前に専門家に相談してください。
根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第22条(e-Gov法令検索)
- 永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)(出入国在留管理庁)
- 永住許可申請(出入国在留管理庁)
- 法務大臣閣議後記者会見の概要(法務省・2026年8月4日)
- 永住許可に関するガイドライン改定(案)(概要)(e-Govパブリック・コメント・2026年8月)
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