家族滞在ビザ(在留資格「家族滞在」)で働けるのは、資格外活動許可を受けた場合に限られ、包括許可であれば1週28時間以内です。この28時間は勤務先ごとではなく、アルバイトを掛け持ちしている場合はすべての勤務先の時間を合算して数えます。28時間を超えて働くと、本人は在留期間の更新が不許可になるおそれがあり、程度によっては刑事罰や退去強制の対象になります。雇った会社も不法就労助長罪に問われるため、採用時と雇用中の両方で確認が必要です。
家族滞在ビザが原則として就労できない理由
家族滞在は、就労資格や留学などで日本に在留する外国人の扶養を受ける配偶者または子が、日常的な活動を行うための在留資格です。入管法別表第1の4の表は、その活動を「扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動」と定めています。
ここでいう「扶養を受ける」とは、配偶者であれば原則として同居したうえで扶養者に経済的に依存している状態、子であれば扶養者の監護・養育を受けている状態を指します。出入国在留管理庁の入国・在留審査要領も、経済的に独立して活動する配偶者や子は家族滞在に該当しないという考え方をとっています。家族滞在の在留カードの表面に「就労不可」と記載されているのは、この在留資格が本来、収入を得る活動を予定していないためです。
そのため、家族滞在の人が働くには、入管法19条2項の資格外活動許可を受ける必要があります。許可を受けても、働けるのは本来の活動(扶養を受けて生活すること)を妨げない範囲に限られます。週28時間という上限は、この「本来の活動を妨げない範囲」を時間で示したものです。家族滞在の対象となる家族や扶養者の条件は家族滞在ビザとは?対象となる家族・扶養者の条件と呼べない在留資格で扱います。
包括許可と個別許可の違い
出入国在留管理庁は、家族滞在の資格外活動許可を包括許可と個別許可に分けています。
包括許可は、「1週について28時間以内の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」について、勤務先や業務内容を特定せずに与えられる許可です。申請書だけで申請でき、許可を受けると在留カードの裏面の「資格外活動許可欄」に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と記載されます。コンビニ、飲食店、工場のアルバイトなど、家族滞在の人の就労の大半はこの包括許可で行われています。
個別許可は、包括許可の範囲外の活動について、勤務先や活動内容を特定して与えられる許可です。出入国在留管理庁は、個人事業主として活動する場合など客観的に稼働時間を確認することが困難な場合や、業務委託契約・請負契約などで標準的な労働時間が明確でない場合を、個別許可の対象として挙げています。個別許可には、従事する期間が決定されている在留期間の過半を超えないことなどの要件があり、活動内容、活動時間、報酬についての説明文書を提出します。
包括許可でも個別許可でも、風俗営業等(キャバレー、スナック、パチンコ店など、風営法の規制対象となる営業)に従事することは認められません。仕事の内容自体がホールの清掃や皿洗いであっても、店舗が風俗営業等に当たれば対象外になります。資格外活動許可の制度全体と申請の手順は資格外活動許可とは?包括許可・個別許可の違いと企業の確認点、申請書の書き方は資格外活動許可申請書の書き方と記入例|留学・家族滞在の違いと入手先で扱います。
週28時間の数え方
家族滞在の人を雇う企業が最も注意すべきなのは、28時間の数え方です。ここで重要なのは、次の3つの論点です。
複数の勤務先の時間を合算する
28時間は、本人が1週間に行うすべての資格外活動の合計です。A社で週20時間、B社で週15時間働いていれば、合計35時間となり、28時間を超えています。A社から見れば自社は20時間しか働かせていなくても、本人は許可の範囲を超えて働いていることになります。
入管法上、他の勤務先の労働時間を会社が調べる義務が定められているわけではありません。しかし、不法就労助長罪は、在留資格や許可の範囲を確認しなかったことに過失があれば「知らなかった」ことを理由に処罰を免れないとされています(入管法73条の2第2項)。雇い入れの時点で掛け持ちの有無と他の勤務先での時間を本人に確認し、書面で申告してもらうことが、会社として取れる現実的な対応です。
どの曜日から数えても28時間以内に収める
1週間の区切りは、会社の給与計算の週(月曜始まりなど)とは限りません。出入国在留管理庁が留学生について日本語教育機関に向けて示したQ&A(2026年5月19日現在)は、日々の資格外活動時間を把握し、どの曜日から起算しても週28時間以内に収まっていることを確認するよう求めています。家族滞在の包括許可も同じ「1週について28時間以内」という文言で許可されているため、筆者は同じ方法で管理するのが安全だと考えます。
たとえば、第1週の金・土・日に各7時間、第2週の月・火に各7時間働いたとします。月曜始まりで数えると第1週は21時間、第2週は14時間ですが、金曜日から翌週木曜日までの7日間では35時間になります。シフトを組む担当者は、直近7日間の合計が常に28時間以内になっているかを見る必要があります。
長期休暇の特例は家族滞在にはない
留学生には、学校の夏休みなど長期休業期間中は1日8時間以内まで働ける特例があります。家族滞在にはこの特例がありません。子どもの学校が夏休みであっても、家族滞在の人は年間を通じて週28時間以内です。留学生と家族滞在の人を同じシフト表で管理している職場では、この違いが見落とされやすくなります。
28時間を超えた場合に起こること
在留期間の更新が不許可になる
最も起こりやすいのは、在留期間の更新での不許可です。家族滞在の更新申請では、扶養者の住民税の課税証明書・納税証明書などを提出しますが、市区町村の課税情報には本人の給与収入も記録されています。
時給1,200円で週28時間を1年間(52週)働いた場合の年収は、約175万円です。本人の給与収入がこの水準を大きく超えていれば、28時間を超えて働いていたことが数字から推認されます。入管は、許可の範囲を超える就労があったことを在留状況の不良として評価し、更新を認めないことがあります。また、収入が扶養者と同程度かそれ以上になると、そもそも「扶養を受ける配偶者」に当たるのかという在留資格の該当性の問題にもなります。
在留期間の更新で見られる素行・在留状況の考え方は在留期間更新の「相当の理由」とはで解説しています。
資格外活動許可の取消し、在留資格の取消し
入管法19条3項は、資格外活動許可を受けた人が許可の条件に違反した場合などに、許可を取り消すことができると定めています。さらに、家族滞在の人が扶養を受ける配偶者としての活動を行わず、実質的にフルタイムの就労をしながら在留している場合は、在留資格の取消事由(入管法22条の4第1項5号の「本来の活動を行わずに他の活動を行い又は行おうとして在留している」場合)に当たるおそれがあります。
刑事罰と退去強制
許可の範囲を超えて報酬を受ける活動をした場合、入管法73条(資格外活動の罪)の対象になります。報酬を受ける活動を「専ら行っていると明らかに認められる」場合は、より重い入管法70条1項4号の罪と、退去強制事由(入管法24条4号イ)の対象になります。オーバーワークの発覚経路と処分の実際は資格外活動違反とは|オーバーワークの発覚経路・罰則・更新不許可で扱います。
家族全体への影響
家族滞在の人の違反は、本人だけの問題にとどまらないことがあります。扶養者の在留期間の更新や永住申請の審査で、世帯の在留状況として家族の違反歴が確認されることがあるためです。永住申請では、配偶者の資格外活動違反が申請人本人の素行の評価に影響する場合もあります。
雇う企業の確認方法
家族滞在の人を採用する企業が確認すべき点は、次のとおりです。
- 在留カードの表面で在留資格が「家族滞在」であること、在留期間の満了日が過ぎていないことを確認する
- 在留カードの裏面の資格外活動許可欄に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」の記載があることを確認する(記載がなければ、許可を受けるまで雇えない)
- 出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」で、カードが失効していないかを確認する
- 他に勤務先があるか、あればその週の労働時間を本人に書面で申告してもらう
- 雇入れ後は、直近7日間の合計が28時間以内になっているかをシフトごとに確認する
家族滞在の人を雇った場合も、ハローワークへの外国人雇用状況の届出が必要です。雇用保険の被保険者にならない場合でも、届出の義務は免除されません。届出の内容が入管の在留審査でどう使われるかは外国人雇用状況の届出とは?で解説しています。
週28時間以内でも雇用保険・社会保険の加入はある
週28時間以内のアルバイトだからといって、労働保険・社会保険の対象外になるわけではありません。雇用保険は、国籍や在留資格に関係なく、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用が見込まれれば被保険者になります。家族滞在の人を週20時間以上28時間以内で雇う場合は、雇用保険の資格取得届を出す必要があります。2024年の雇用保険法改正により、2028年10月1日からはこの基準が週10時間以上に広がる予定です。
健康保険・厚生年金も、勤務先が短時間労働者の適用対象となる事業所であれば、週20時間以上などの要件を満たす人は加入の対象になります。家族滞在の人は扶養者の健康保険の被扶養者になっていることが多いため、勤務先で加入すると被扶養者から外れる手続が必要になります。年収が130万円以上になる見込みの場合も、被扶養者の認定から外れるのが原則です。こうした手続の中で、本人の就労時間や収入が勤務先以外の機関にも記録されていく、という点は本人にも説明しておくべき事項です。
不法就労助長罪の法定刑は、現行法で3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(またはその併科)で、2024年の入管法改正により、2027年4月1日から5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金に引き上げられます。企業の責任と防止策は不法就労助長罪とは?で整理しています。
よくある質問
家族滞在ビザで週20時間の就労は違法ですか?
資格外活動許可(包括許可)を受けていれば、週20時間の就労は違法ではありません。上限は1週28時間で、20時間はその範囲内です。ただし、他の勤務先の時間と合算して28時間を超えていれば違反になります。資格外活動許可を受けていない場合は、1時間でも働けば違反です。
家族滞在の在留資格で就労できないのはなぜですか?
家族滞在は、就労資格などで在留する家族の扶養を受けて生活するための在留資格であり、収入を得る活動を本来の目的としていないためです。在留カードに「就労不可」と記載されているのはこのためで、働くには資格外活動許可を別に受ける必要があります。
家族滞在で28時間を超えて働いてしまったらどうなりますか?
発覚した場合、在留期間の更新が不許可になるおそれがあり、資格外活動許可の取消しや、程度によっては刑事罰・退去強制の対象になります。一度の短期間の超過か、長期にわたる恒常的な超過かで評価は大きく変わり、個別の事情で判断が変わります。超過に気づいた時点で勤務時間を直ちに28時間以内に戻し、更新申請の前に専門家に相談してください。
家族滞在ビザから就労ビザに変更することはできますか?
できます。大学などを卒業していて、専攻と関連する業務に就く場合は技術・人文知識・国際業務へ、技能試験と日本語試験に合格すれば特定技能1号への変更が考えられます。変更後は時間の制限なく働けますが、過去のオーバーワークは変更申請でも不利に評価されます。変更の条件は公式案内をご確認ください。
家族滞在の人を正社員として雇うことはできますか?
家族滞在のままでは、フルタイムの正社員として雇うことはできません。正社員として雇うには、技術・人文知識・国際業務などの就労資格への変更許可を受ける必要があります。変更許可が出るまでは、週28時間以内のアルバイトとして働いてもらうことになります。
採用の前に決めておきたい「時間の管理方法」
家族滞在の人の就労で問題が起きるのは、本人に悪意がある場合よりも、掛け持ちや曜日の区切りを誰も管理していなかった場合のほうが多いと筆者は考えます。本人は勤務先ごとに28時間以内なら問題ないと思い込み、会社は自社の時間しか見ていない、という状態で数か月が過ぎ、次の更新申請で課税証明書の収入額から問題が表に出る、という流れです。
採用の段階で、他の勤務先の有無と時間を書面で申告してもらい、変更があれば申し出る約束をしておくこと。シフトは給与計算の週でなく直近7日間で確認すること。この2点を社内のルールにしておけば、会社の過失を問われる余地も、本人の更新が不許可になるリスクも、大きく減らせます。本人がより長く働きたいと希望する場合は、週28時間の中で調整を続けるより、就労資格への変更を一緒に検討するほうが、本人と会社の双方にとって安定した選択になります。
根拠資料
- 「家族滞在」の在留資格に係る資格外活動許可について(出入国在留管理庁)
- 資格外活動許可について(出入国在留管理庁)
- 出入国審査・在留審査Q&A(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法 第19条・第22条の4・第24条・第70条・第73条・第73条の2(e-Gov法令検索)
- 在留カード等番号失効情報照会(出入国在留管理庁)
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