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企業内転勤ビザの給与は海外親会社払いでもよい?報酬要件と契約の考え方

企業内転勤の給与を海外の親会社が支払う形は、それだけで排除されるものではありません。上陸許可基準が求めるのは「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」です。ここでいう報酬とは、日本の事業所で行う仕事の対価として受ける給付を指し、支払う機関が国内にあるか国外にあるかを問いません。入国・在留審査要領の企業内転勤の節にも、支払者を日本の事業所に限る記述はありません(第12編(開示版)16-4)。

審査で問われるのは、誰が、いくらを、どういう根拠で支払うのかを書面で示せるかです。更新のときには、住民税の課税証明書と納税証明書で「収入額が契約時の金額であること」が確認されます(16-4)。海外払いの部分がこの確認にどう表れるかまで設計しておかないと、初回は許可されても更新で説明に困ります。契約についても、同一法人内の転勤なら日本で新たに雇用契約を結ぶ必要はないとされる一方、法人が異なる転勤では扱いが変わります。

この記事でわかること

  • 企業内転勤の報酬要件と、支払者についての審査要領の書き方
  • 海外払い・日本払い・併用の場合の立証のしかた
  • 報酬月額の計算方法と、報酬に含まれない手当
  • 同一法人内の転勤と、子会社・関連会社への出向の契約の違い
  • 海外給与のまま短期滞在で働かせることができない理由

報酬要件は「日本人と同等額以上」だけ

企業内転勤の上陸許可基準(基準省令)は二つの号でできています。第1号は転勤直前の外国の事業所での1年以上の継続勤務、第2号が報酬です。審査要領は第2号について、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることの要件を定めたもの」と説明し、第1節第2の「報酬」を参照するよう指示しています(16-4)。

審査のポイントとして挙げられているのも、申請書の給与・報酬欄と立証資料で、報酬が日本人と同等額以上かを確認することです(16-4)。ここに支払者の限定はありません。同等額以上かどうかは、「報酬額を基準として一律に判断することは適切ではない」とされ、その企業の賃金体系と他社の同種の職種の賃金を参考に判断されます。外国人が大卒ならその企業の日本人大卒者の賃金を参考にする、という比べ方です(1-3)。比べ方の詳細は就労ビザの「日本人と同等額以上の報酬」とは|審査要領に一律の金額基準がない理由と比べ方で扱っています。

海外から支払われても「報酬」に当たる

海外払いを考えるときの出発点は、審査要領第1節が「報酬を受ける活動」をどう定義しているかです。

審査要領ではこう書かれている

役務提供が本邦内で行われ、その対価として給付を受けている場合は、対価を支給する機関が本邦内にあるか否か、また、本邦内で支給するか否かにかかわらず、「報酬を受ける活動」となる。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第1節 第2「報酬」4(1)(1-4)

日本の事業所で働いた対価である限り、海外の親会社の口座から振り込まれても、日本での労働の対価として扱われます。高度専門職のポイント計算では、この考え方がさらに具体的に書かれています。年収は「今後1年間に所属機関から受ける報酬」をいい、申請人が外国の機関から転勤して受け入れられている場合は「当該外国の公私の機関から受ける報酬を含む」とされています(9-10〜9-11)。転勤者の報酬を、日本側と海外側の合計でみる発想は審査要領のなかに現にあります。

ただし、企業内転勤の報酬要件について、海外払い分を合算してよいと明記した箇所は、開示された審査要領には見当たりません。筆者は、第1節の定義と高度専門職の書きぶりから、日本での役務の対価であれば支払地を問わず報酬に数えるのが自然な読み方だと考えています。合算の扱いに不安が残る設計であれば、申請前に入管の窓口で確認してください【要確認】。

支払い方ごとの立証のしかた

実務で見かける支払い方は三つです。どれを選んでも、審査官が「日本での役務の対価として、総額でいくら受けるのか」を一つの数字で把握できるようにすることが求められます。

支払い方 示すべきこと 更新時に注意すること
日本の事業所が全額支払う 辞令・労働条件の書面に金額を明記 課税証明書の収入額が契約時の金額と一致するか
海外の転勤元が全額支払う 転勤元が発行する書面に、日本勤務中の報酬額・支払方法を明記 日本の課税証明書に収入がどう表れるか
日本と海外で分けて支払う それぞれの支払額と合計額を一覧にし、双方の書面をそろえる 合計額と課税証明書の収入額の対応を説明できるか

更新時の確認は、審査要領が「住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書により、収入額が契約時の金額であること及び納税が行われていることを確認する」と書いているとおりです(16-4)。海外で支払われた給与が日本でどのように課税されるかは税務の問題で、当事務所の判断の範囲を超えます。顧問税理士に確認したうえで、課税証明書の数字と申請時の報酬額の関係を説明できる状態にしておいてください。

外貨建てで支払う場合、筆者は、申請書の給与・報酬欄に円換算額を書き、換算に使った基準(時期・レート)を書面に残すよう勧めています。為替の動きで円換算額が下がり、日本人との比較で同等額を割り込むような設計は避けるべきです。

報酬月額の数え方と、含まれない手当

報酬の月額は、「賞与等を含めた1年間従事した場合に受ける報酬の総額の12分の1で計算する」とされています(1-3)。賞与を海外の転勤元が支払う設計でも、年額に含めて12で割ります。

報酬とは「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」をいい、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除く)は含まれません(1-3)。転勤者には海外赴任手当や住居の補助が付くことが多いのですが、名称で判断されるわけではありません。役務の対価として払われるのか、住居費などの実費を埋めるために払われるのかで分かれます。実費弁償の手当を積み上げて同等額に届かせる設計は、この定義のもとでは通りません。手当の扱いは通勤手当・住宅手当は報酬に入る?就労ビザの報酬月額の計算方法を参照してください。

契約の考え方:同一法人か、別法人か

ここで重要なのは、日本の事業所と外国人本人との間に、どのような契約関係が必要かという論点です。企業内転勤は、技人国と違い、「本邦の公私の機関との契約」が条文上の要件になっていません。そのうえで審査要領は、同一法人内の転勤について明確な整理をしています。

審査要領ではこう書かれている

同一の法人内で異動して「企業内転勤」の在留資格をもって在留する場合は、改めて雇用等の契約を結ぶ必要はない。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 第1の2(3)ア(16-2)

海外の本社から日本支店へ、というように同じ法人の中で動くのであれば、転勤前に外国企業に採用された時点の雇用契約がそのまま根拠になります。審査要領は、1年要件を満たさず技人国で入国する場合にも触れています。その場合でも、同一法人内の転勤であれば、転勤前の雇用契約をもって「本邦の公私の機関との契約」があるといえるため「新たな契約は不要である」としています(15-4、16-11〜16-12)。

子会社や関連会社への出向のように法人が異なる場合、審査要領のこの箇所は契約の要否を述べていません。入管庁の「企業内転勤」の提出書類一覧(令和8年4月1日運用開始)は、活動内容を示す資料として、同じ法人内の転勤なら転勤命令書・辞令、法人が異なる転勤なら労働条件を明示する書面を挙げています。別法人への出向では、日本側での労働条件(報酬、勤務時間、就業場所、期間)を書面で示すことになります。

出向契約書のように、外国の機関と日本の機関だけが当事者の書面で日本側との労働契約を示そうとする場合、審査要領第1節の6項目が参考になります。本人の特定、日本の使用者の特定、「労働契約を締結する」旨、労働条件の明示、労働基準法の遵守、そして「本邦の公私の機関が当該外国人に対し賃金を直接支払う旨」の明示です(1-2)。第1節は、法文上契約が要件でない在留資格で契約関係を判断する場合も同様に扱ってよいとしています。筆者は、海外払いを選んだ別法人間の出向でこの形式に頼ると、第6項目と食い違う点に注意が要ると考えます。その場合は出向契約書だけに頼らず、転勤元の書面と日本側の労働条件の書面を分けてそろえる方が説明しやすくなります。

日本側の書類で見られるのは、報酬だけではありません。当事務所で扱った案件では、入管から指揮命令系統図の提出を求められたことがあります。本人が組織のどこに位置し、誰の指揮命令のもとで働くのか、他社の指揮命令下に置かれていないかを確認する趣旨でした。給与が海外から出ている場合ほど、日本の事業所で誰の指示を受けて働くのかを図で示せるようにしておくべきです。

※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。

海外給与のまま短期滞在で働かせることはできない

「給与は本国から出ているので、短期滞在で来日して日本支店で働けばよい」という相談を受けることがあります。第1節の定義に照らすと、日本で役務を提供してその対価を受ける以上、支払う機関が国外でも「報酬を受ける活動」に当たります(1-4)。例外は、国外で行う主たる業務に関連して、従たる業務を短期間日本で行う場合で、輸出した機械の設置やメンテナンス、関連会社間の会議などが例に挙がっています。その「短期間」も、1回の滞在が短くても「中長期的にみて本邦に滞在する期間の割合が相当程度ある場合には該当しない」とされています(1-4)。日本支店で継続的に業務を担うのであれば、企業内転勤などの就労資格が必要です。

申請書類で報酬をどう示すか

入管庁の提出書類一覧は、「過去1年間の業務内容・地位・報酬を明示した転勤直前の外国機関の文書」を求めています。ここでの報酬は転勤前の実績で、日本で受ける報酬とは別に示します。日本で受ける報酬は、申請書の給与・報酬欄と、辞令または労働条件の書面で示します。支払者が複数なら、支払者ごとの金額と合計を一覧にした説明書を添えると、審査官が数字を追いやすくなります。企業内転勤の要件全体は企業内転勤ビザとは|審査要領で読む要件と技人国との違いで扱っています。転勤元と転勤先の関係の立証については、企業内転勤の「転勤」の範囲|親会社・子会社・孫会社・関連会社への異動で解説しています。

よくある質問

Q. 企業内転勤の給与を海外の親会社から支払ってもよいですか?

審査要領の企業内転勤の節には、報酬の支払者を日本の事業所に限る記述はありません。求められているのは、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることです。誰がいくらを支払うのかを書面で示し、その合計が基準を満たすことを立証します。

Q. 日本の子会社と外国人本人との間で、新しく雇用契約を結ぶ必要はありますか?

同一法人内の転勤であれば不要です。審査要領は、転勤前に外国企業に採用された時点の雇用契約をもって足りると整理しています。法人が異なる転勤では、入管庁の提出書類一覧が労働条件を明示する書面を求めています。

Q. 海外赴任手当や住宅手当は報酬に含まれますか?

通勤手当・扶養手当・住宅手当など実費弁償の性格を持つもの(課税対象となるものを除く)は、報酬に含まれません。名称で決まるのではなく、役務の対価か実費弁償かで判断されます。

Q. 給与が海外から出ているなら、短期滞在で日本に来て働かせてもよいですか?

できません。日本で役務を提供してその対価を受けるなら、支払う機関が国外にあっても「報酬を受ける活動」に当たります。例外は、国外の主たる業務に関連する従たる業務を短期間行う場合に限られます。

給与の支払い方を決める前に

最初に、日本で同じ業務をする日本人社員の報酬(賞与込みの年額)を確認し、転勤者の報酬がそれを下回らないかを見てください。次に、支払者を日本・海外・併用のどれにするかを決め、支払者ごとの金額を書面に落とします。そのうえで、更新時の課税証明書にその報酬がどう表れるかを税理士と確認してから申請に進むのが、筆者の勧める順序です。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 企業内転勤 第1の2(3)ア(16-2)、第1の3(2)・4(16-4)、第2の3(16-11〜16-12)
  • 同 第1節 第1「本邦の公私の機関との契約」(1-2〜1-3)、第2「報酬」1〜4(1-3〜1-4)
  • 同 第15節 技術・人文知識・国際業務 第1の2(3)キ(15-4)
  • 同 第9節 高度専門職 年収の項(9-10〜9-11)
  • 出入国在留管理庁 在留資格「企業内転勤」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/intracompanytransfee.html)/提出書類(https://www.moj.go.jp/isa/content/001457117.pdf)