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企業内転勤中に日本国内の別の支店・グループ会社へ異動できるか

できます。ただし条件があり、その異動が海外の転勤元の最終的な判断による命令であることが必要です。日本の事業所だけの判断で別の支店やグループ会社に移すと、入管の内部基準である入国・在留審査要領のいう「更なる転勤」に当たり、原則として在留資格該当性を失います。

分かれ目は、転勤元の関与です。辞令が日本の事業所と転勤元の連名で出ている、あるいは転勤元の承認がある、という形であれば、帰国せずに直接移っても該当性は認められます。反対に、出向契約で人事権が日本側に移っている状態で日本側が異動を命じると、該当性を失います。以下では、情報公開請求で開示された審査要領第16節の「勤務先が変更になる場合の取扱い」(16-12)を中心に、異動の可否の線引きと、実務で残しておくべき書面を整理します。

この記事でわかること

  • 企業内転勤が「転勤した事業所」に結びついた在留資格である理由
  • 審査要領のいう「更なる転勤」の意味と、該当性を失う異動
  • 転勤元の関与があれば異動できる場合と、関与を示す書面
  • グループ会社への異動、海外の所属会社が変わる場合の扱い
  • 異動後の更新申請で確認されること

企業内転勤は「当該事業所」で働く資格

入管法別表第一の二の表は、企業内転勤の活動を、外国にある事業所の職員が日本にある事業所に期間を定めて転勤して「当該事業所において行う」技人国の活動と定めています。転勤先の事業所が、在留資格の定義そのものに組み込まれています。

審査要領第15節も、企業内転勤と技人国の違いとして、期間を定めて転勤することと、転勤した特定の事業所でしか活動できないことの二点を挙げています(15-4)。在留期間の更新時には、申請書の勤務先欄と立証資料で、申請時と同じ事業所で活動を続けていることが確認されます(16-4)。技人国であれば、契約機関の中で勤務地が変わっても在留資格の問題にはなりにくいのですが、企業内転勤では勤務地の変更がそのまま該当性の問題になります。

「更なる転勤」は原則として該当性を失う

審査要領は、日本国内で勤務先を変えることを「更なる転勤」と呼び、原則を次のように書いています。

「「企業内転勤」は、外国にある事業所から本邦にある同一企業又は同一企業グループ内(以下、単に「同一企業内」という。)の事業所(「当該事業所」)に転勤することであり、本邦内において勤務先を変更し、当初の事業所とは異なる事業所に勤務することとなった場合(以下、「更なる転勤」という。)は、「当該事業所」を離れることになり、原則として在留資格該当性が喪失することとなる。」

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 16-12

ここでいう在留資格該当性とは、日本で行う活動が入管法別表に定められた活動に当てはまることを指します。該当性を失えば、在留期間が残っていても、その在留資格で認められた活動をしていない状態になります。更新の時点で発覚すれば、不許可の理由になり得ます。

ただし、審査要領はこの原則に続けて、「更なる転勤」の範囲を絞り込んでいます。すべての国内異動が該当性を失わせるわけではありません。

転勤元が関与していれば異動できる

審査要領によれば、「更なる転勤」とは、転勤元の事業所が何ら関与することなく、転勤先である日本の事業所の単独での判断により、別の事業所へ転勤することを指します。単独判断の例として挙げられているのが、出向契約等で外国人の人事権が転勤元の外国事業所から日本の事業所に移っている場合です。そのうえで、外国の事業所の関与の下で、帰国させずに同一企業内の別の事業所に新たに転勤させることまで否定するものではない、としています(16-12)。

「転勤元事業所の最終的な判断による命令によって本邦にある同一企業内の別の事業所へ転勤する場合(転勤命令が本邦にある事業所と転勤元事業所の連名、あるいは転勤元事業所の承認があるなど、当該転勤命令への転勤元事業所の関与が確実である場合を含む。)は、それが帰国することなく直接異動するものであったとしても、その実質は転勤元事業所から転勤する場合と変わらないことから、「更なる転勤」には当たらず在留資格該当性を認められる。」

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 16-12

整理すると、次のとおりです。

異動の命令の出し方 在留資格該当性
転勤元の外国事業所の最終的な判断による命令 認められる(帰国せず直接異動しても可)
日本の事業所と転勤元の連名の転勤命令 認められる
日本の事業所の命令に転勤元の承認がある 認められる
日本の事業所の単独の命令(転勤元の関与なし) 「更なる転勤」として認められない
出向契約で人事権が日本側に移り、日本側が命令 「更なる転勤」として認められない

ここで重要なのは、審査要領が異動の形式ではなく、誰が異動を決めたかという実質で線を引いている点です。帰国して改めて転勤してくる手順を踏まなくても、転勤元が決めた異動であれば、転勤元から直接転勤してきた場合と同じに扱われます。

名目より実体を見るという考え方は、在留資格の判断で繰り返し現れます。身分系の判例ですが、最高裁平成14年10月17日判決は、婚姻が法律上存続していても実体を失い修復の見込みがなければ「日本人の配偶者等」の活動に当たらないとしました。考え方は共通しており、企業内転勤でも、辞令の名義を整えるだけでは足りず、転勤元が実際に異動の判断に関わっていることが問われると筆者は考えます。

グループ会社への異動

審査要領は、ここでいう「同一企業内」を「同一企業又は同一企業グループ内」と定義しています(16-12)。そのため、転勤元の関与の下であれば、同じ法人の別の支店だけでなく、グループ内の別の会社の事業所への異動も、「更なる転勤」に当たらない余地があります。

このとき、異動先の会社と海外の転勤元の関係が、企業内転勤の対象になる関係(本店・支店、親会社・子会社、子会社同士、関連会社など。16-9〜16-11)に入っていることは確認しておくべきです。審査要領16-12はこの点を明示していません。ただ、決定時の審査では外国の事業所と日本の事業所の関係が所定の関係のいずれかに当たることが確認事項とされています(16-4)。そのため筆者は、異動先についても同じ関係を立証できるようにしておくべきと考えます【要確認】。どの会社の間が対象になるかは企業内転勤の「転勤」の範囲|親会社・子会社・孫会社・関連会社への異動で整理しています。

異動先が別法人の場合、入管庁の提出書類一覧では、法人が異なる転勤の活動内容の資料として労働条件明示書面が挙げられています(令和8年4月1日運用開始の一覧)。同一法人内の支店間異動なら転勤命令書・辞令で足りますが、別会社への異動では労働条件の書面も用意することになります。

海外の所属会社が変わった場合

日本にいる間に、海外の所属会社そのものが変わることがあります。グループ内の別会社に籍を移し、それに伴って日本の勤務先も変わる、という場面です。形の上では、新しい外国の所属会社から日本の事業所への「新たな転勤関係」が生じているようにも見えます。

審査要領はこれを認めていません。転勤元の変更はすなわち転職であり、日本の事業所の変更は転職に伴う所属先の変更にすぎず、転職元である外国の事業所からの転勤とはいえないため、在留資格該当性は認められないとしています(16-12)。転勤元の変更と勤務先の変更が同時に起こる場合は、企業内転勤のままでは続けられないと考えてください。この場合の選択肢は企業内転勤ビザで転職はできる?転勤元の会社が変わった場合の扱いで扱います。

異動させるときに残しておく書面

国内異動を予定している会社が準備すべきものは、次のとおりです。

  • 転勤元の外国事業所と日本の事業所の連名の転勤命令書、または転勤元による承認の書面
  • 出向契約書(人事権がどちらにあるかを定めた条項を確認する)
  • 異動先が別法人の場合は、労働条件明示書面と、転勤元との資本関係を示す資料
  • 異動後の職務内容と、転勤期間の定めが分かる資料

見落とされやすいのが出向契約の人事権条項です。グループ内の出向では、出向先が人事権を持つ形の契約書式が使われていることがあります。その契約のまま日本側が辞令を出すと、審査要領が単独判断の例として挙げる形そのものになります。異動の前に契約書を読み直し、必要なら転勤元の承認を取る手順を社内規程に組み込んでください。

組織の中で本人がどこに位置し、誰の指揮命令を受けているかは、入管が実際に確認する事項でもあります。当事務所が扱った案件で、入管から指揮命令系統図の提出を求められたことがありました。組織内の位置づけと、他社の指揮命令下にないかを確認する趣旨の資料要求です。国内異動のあとに同じ確認を受けたとき、転勤元の関与と指揮命令の流れを一枚の図で示せるようにしておくと、説明が短くすみます。

※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。

日本側の所属機関が別の会社に変わる場合は、本人による所属機関に関する届出(入管法第19条の16、14日以内)も必要です。

異動後の更新で見られること

在留期間の更新時には、申請時と同じ事業所で活動を続けていること、報酬が日本人と同等額以上であることが確認されます。あわせて、住民税の課税証明書・納税証明書で、収入額が契約時の金額であり納税が行われていることも確認されます(16-4)。国内異動をしていれば、更新申請書の勤務先は異動後の事業所になり、申請時の事業所と一致しません。そのため、転勤元の関与の下での異動であることを、更新申請の段階で書面により示す必要があります。更新の全体の流れは企業内転勤の在留期間と更新|期間の定めと転勤計画の示し方を参照してください。

更新が不許可になった場合、在留期間更新の不許可には行政不服審査法の審査請求ができません(同法7条1項10号の適用除外。入管庁の手続ページも「不服申立方法 なし」と表示しています)。争うなら取消訴訟ですが、実務上は要件を整えたうえでの再申請が中心になります。不許可になってから書面をそろえるより、異動の時点で残しておくほうがはるかに負担は小さくすみます。

すでに転勤元の関与なしに異動させてしまった場合は、該当性を失っている可能性があります。本人の学歴・実務経験が技人国の上陸許可基準に適合するなら、技人国への在留資格変更を検討する余地がありますが、審査要領16-12はその扱いを書いていません【要確認】。早めに専門家に状況を見てもらってください。企業内転勤の要件の全体像は企業内転勤ビザとは|審査要領で読む要件と技人国との違いにまとめています。

よくある質問

Q. 東京支店に転勤してきた社員を大阪支店に異動させても大丈夫ですか?

転勤元である外国の事業所の最終的な判断による命令であれば、帰国せずに異動しても在留資格該当性は認められます。日本の事業所だけの判断で異動させると、審査要領のいう「更なる転勤」に当たり、原則として在留資格該当性を失います。

Q. 転勤元の関与は、どうやって示せばよいですか?

審査要領は、転勤命令が日本の事業所と転勤元事業所の連名で出されている場合や、転勤元事業所の承認がある場合など、関与が確実である場合を例に挙げています。連名の辞令か、転勤元による承認の書面を残しておくのが確実です。

Q. 出向契約で人事権が日本の会社に移っている場合はどうなりますか?

審査要領は、出向契約等で人事権が転勤元の外国事業所から日本の事業所に移っている場合を、日本の事業所の単独判断による異動の例として挙げています。この状態で日本側だけの判断で別の事業所に移すと「更なる転勤」に当たります。

Q. 海外の所属会社が変わり、同時に日本の勤務先も変わる場合は企業内転勤のままでよいですか?

認められません。審査要領は、転勤元の変更は転職であり、日本の勤務先の変更は転職に伴う所属先の変更にすぎないとして、在留資格該当性を認めていません。

辞令を出す前に確認すること

企業内転勤の社員を国内で異動させる予定があるなら、辞令を出す前に三つのことを確認してください。出向契約で人事権がどちらにあるか、転勤元の連名または承認の書面を用意できるか、異動先が別会社なら転勤元との資本関係が企業内転勤の範囲に入っているか。この三つがそろわない異動は、在留資格の面では先送りするか、技人国への変更を先に検討すべきです。

異動のたびに転勤元の承認を取る流れを社内の手続にしておけば、人事の都合と在留資格の要件が衝突することはほとんどなくなります。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節「企業内転勤」16-4、16-9〜16-12(情報公開請求による開示版)
  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節「技術・人文知識・国際業務」15-4
  • 出入国在留管理庁「在留資格「企業内転勤」」・提出書類一覧(令和8年4月1日運用開始)https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/intracompanytransfee.html、https://www.moj.go.jp/isa/content/001457117.pdf
  • 出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請」https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-3.html
  • 出入国管理及び難民認定法 別表第一の二の表「企業内転勤」、第19条の16/行政不服審査法7条1項10号
  • 最高裁判所平成14年10月17日判決