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企業内転勤の「転勤」の範囲|親会社・子会社・孫会社・関連会社への異動

企業内転勤でいう「転勤」には、同じ会社の中の異動だけでなく、財務諸表等規則第8条にいう親会社・子会社・関連会社の間の出向等も含まれます。親会社と子会社、子会社同士、孫会社までの異動は広く対象になる一方、関連会社同士の異動と、親会社と「子会社の関連会社」の間の異動は対象外です。曾孫会社同士の異動も原則として外れます。

線を引いているのは、入管の内部基準である入国・在留審査要領の第12編第16節です。情報公開請求で開示された版には、財務諸表等規則第8条の抄録と、異動のパターンごとの図が載っています(16-6〜16-11)。グループ会社から社員を呼ぶ場合、最初に確認すべきは本人の経歴より先に、送り出す会社と受け入れる会社の資本関係です。

この記事でわかること

  • 審査要領が「転勤」をどう定義しているか
  • 親会社・子会社・関連会社を決める財務諸表等規則第8条の基準
  • 本店・支店、子会社間、孫会社、曾孫会社、関連会社の異動パターン別の可否
  • 資本関係を立証する資料と、範囲外だったときの選択肢

審査要領の「転勤」の定義

入管法別表第一の二の表は、企業内転勤を「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して」行う活動と定めています。条文だけを読むと、同じ機関の中での移動に限られるようにも見えます。審査要領はここを広げて読んでいます。

「「転勤」は、通常、同一会社内の異動であるが、系列企業内(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号)第8条にいう「親会社」、「子会社」及び「関連会社」を指す。…)の出向等も「転勤」に含まれる。」

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 16-1

ここでいう系列企業とは、会計上の連結・持分法の単位として使われる親会社・子会社・関連会社を指します。入管が独自に「グループ会社」を定義しているのではなく、会計のルールをそのまま借りている点が特徴です。審査の場面でも、申請書の「派遣元会社又は団体と勤務先との関係」欄と立証資料により、外国の事業所と日本の事業所の関係が所定の関係のいずれかに当たることが確認されます(16-4)。

親会社・子会社を決める基準

財務諸表等規則第8条第3項は、他の会社等の意思決定機関(株主総会その他これに準ずる機関)を支配している会社を「親会社」、支配されている側を「子会社」と定めています。ここでいう「会社等」には、会社、組合その他これらに準ずる事業体のほか、外国におけるこれらに相当するものも含まれます(16-6)。海外の現地法人も、この定義の中で判断されます。

どういう場合に「支配している」といえるかは、同条第4項が定めています。審査要領に抄録された条文を整理すると次のとおりです(16-7〜16-8)。

区分 議決権の所有 追加の要件
第4項第1号 自己の計算で過半数 なし
第4項第2号 自己の計算で40%以上50%以下 次のいずれか:イ 緊密な関係者・同意者と合わせて過半数、ロ 自社の役員・使用人等(元職を含む)が取締役会等の構成員の過半数、ハ 重要な財務・営業方針を支配する契約等、ニ 資金調達額の総額の過半を融資、ホ その他支配が推測される事実
第4項第3号 緊密な関係者・同意者と合わせて過半数(自己の所有がゼロの場合を含む) 上のロからホまでのいずれか

ただし書きとして、財務上または営業上・事業上の関係からみて支配していないことが明らかな会社は除かれます。また、再生手続・更生手続・破産手続の開始決定を受けた会社等で、有効な支配従属関係が存在しないと認められるものは、支配の対象から外れます(16-7)。

さらに、親会社と子会社、または子会社が他の会社等の意思決定機関を支配している場合、その会社等も親会社の子会社とみなされます(16-6〜16-7)。いわゆる孫会社が、ここで子会社として扱われることになります。

関連会社を決める基準

関連会社とは、子会社以外の他の会社等のうち、会社(子会社を含む)が財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができるものを指します。影響の経路は、出資、人事、資金、技術、取引等の関係です(財務諸表等規則第8条第5項、16-8)。同条第6項の基準は次のとおりです。

区分 議決権の所有 追加の要件
第6項第1号 自己の計算で20%以上 なし
第6項第2号 自己の計算で15%以上20%未満 次のいずれか:イ 自社の役員・使用人等(元職を含む)が代表取締役・取締役等に就任、ロ 重要な融資、ハ 重要な技術の提供、ニ 重要な販売・仕入れ等の取引、ホ その他重要な影響が推測される事実
第6項第3号 緊密な関係者・同意者と合わせて20%以上(自己の所有がゼロの場合を含む) 上のイからホまでのいずれか
第6項第4号 複数の独立した企業が契約等に基づいて共同で支配する企業(共同支配企業) ―

出資比率が15%から20%の間にある会社は、役員の派遣や取引関係の立証次第で関連会社にも、そうでない会社にもなります。この帯にある会社から社員を呼ぶときは、出資比率の資料だけでは足りず、役員の就任状況や取引の実績を示す資料が必要になります。

異動のパターンごとの可否

審査要領第2の2「「企業内転勤」の在留資格に該当する事業所の範囲」(16-9〜16-11)は、上の定義を前提に、どの会社の間の異動が対象になるかを図で示しています。図はOCRで崩れていますが、本文から次のように読めます。

異動のパターン 可否 審査要領
本店(本社)⇔支店(支社・営業所) 対象 16-9
親会社⇔子会社 対象 16-10
親会社⇔孫会社(みなし子会社) 対象 16-10
子会社⇔子会社 対象 16-10
孫会社⇔孫会社、子会社⇔孫会社 対象 16-10
曾孫会社との縦の位置関係の移動 対象 16-10
曾孫会社⇔曾孫会社 対象外(一貫して100%出資なら対象) 16-10
会社⇔自社の関連会社 対象 16-11
関連会社⇔関連会社 対象外 16-11
親会社⇔子会社の関連会社 対象外 16-11

子会社同士が対象になる理由

子会社同士は、資本の上では直接の親子関係にありません。それでも対象になるのは、審査要領が企業の分社化が進んでいる状況を考慮し、子会社同士を親会社と一体性を有するものとして扱っているからです(16-10)。事業部門ごとに法人を分けたグループでは、海外の販売子会社から日本の開発子会社へ、といった異動が日常的に起こります。審査要領はこれを同じ会社の中の異動と同視しています。

曾孫会社の扱い

ここで重要なのは、みなし子会社の範囲がどこで止まるかという論点です。孫会社は子会社とみなされるので、孫会社同士や子会社と孫会社の間は対象になります。曾孫会社について、審査要領は次のように書いています。

「縦の位置関係の移動については「企業内転勤」に該当することとなるが、曾孫会社間の異動は、「企業内転勤」の対象とはしない。(ただし、親会社が子、孫、曾孫会社まで一貫して100%出資している場合には、曾孫会社も子会社とみなすことができることから、曾孫会社間の異動及び孫会社と曾孫会社間の異動も「企業内転勤」の対象となる。)」

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 16-10

ここでいう「縦の位置関係」とは、親会社から曾孫会社まで一本の資本の系列でつながっている上下の関係を指します。曾孫会社から、その系列の上にある孫会社・子会社・親会社へ移る場合がこれに当たります。100%出資の場合に対象として追加される「孫会社と曾孫会社間の異動」は、自分の親ではない孫会社との間、つまり系列をまたいだ斜めの異動を指していると読めます。ただ、開示版の関係図はOCRで崩れており、斜めの異動をどこまで含むかは原本の図で確認する必要があります【要確認】。

海外で持株会社を何層も重ねているグループでは、日本法人と送り出し会社が「曾孫同士」の位置にあることは珍しくありません。出資がどこかの段階で100%を切っていれば、原則どおり対象外になります。

関連会社は「自社との間」だけ

関連会社への異動は対象になりますが、範囲は親子会社よりはっきり狭く設定されています。

「関連会社の間の異動、及び親会社と子会社の関連会社間の異動は、「企業内転勤」の対象とはしない。」

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 16-11

対象外になるのは、親会社から見て「子会社の関連会社」にあたる会社と親会社の間です。一方、子会社とその子会社自身の関連会社の間の異動が対象になるかについて、審査要領の本文は直接述べていません。図はOCRで崩れており、原本で確認が必要です【要確認】。合弁会社のように複数の出資者が20%ずつ持ち合っている会社では、どの出資者との間の異動なのかを一件ずつ確認してください。

資本関係をどう立証するか

入管庁が令和8年4月1日から運用している企業内転勤の提出書類一覧(カテゴリー3・4)には、「転勤前後の事業所の関係を示す資料」として支店の登記や出資関係・資本関係の資料が挙がっています。あわせて、転勤前に勤務していた外国の事業所の存在を明らかにする資料(公的機関の法人登記資料、または納税状況・取引実績・船荷証券・輸出入許可書・広告等)も求められます。

法人が異なる会社への出向の場合、活動内容の資料は、同一法人内の転勤で出す転勤命令書・辞令に代えて「労働条件明示書面」になります(同一覧)。子会社や関連会社への異動では、辞令だけを出しても書類はそろいません。

筆者は、出資比率が50%以下や20%未満の会社を経由する異動では、株主名簿や出資比率の資料に加えて、別の資料も最初から添付すべきと考えます。第8条第4項第2号・第6項第2号の要件に当たる事実(役員の兼任、融資、技術提供、取引)を示す資料です。審査官が関係を読み解けない構造図を出すと、資料提出通知で時間を失うことになります。

範囲外だったときの選択肢

資本関係が範囲外と分かっても、それで受入れができなくなるとは限りません。審査要領は、企業内転勤の基準に適合しない場合でも、業務内容が技人国にも該当し得ないときを除き、直ちに不交付とせずに技人国に当たるかを確認するよう定めています(16-3)。

ただし技人国で受け入れる場合は、「本邦の公私の機関との契約」が必要です。審査要領が新たな契約を不要としているのは同一法人の外国事業所から日本の事業所への転勤の場合で(16-11〜16-12)、別法人の日本の会社で働くなら、その会社との契約を用意することになります。本人にも、関連する科目を専攻した大学卒業などの学歴か、実務経験の要件が求められます。技人国への切替えの考え方は企業内転勤の1年要件|海外勤務1年未満の社員を日本に呼ぶ方法と技人国への切替えで扱っています。

もう一つ注意したいのが、「転勤」の範囲と、1年要件の期間を合算できる範囲は別の基準だという点です。1年要件でグループ会社での勤務を合算できるのは、同種の業務を行う子会社や関連会社で、人事異動等が一体的に行われることが可能な程度の関係がある場合に限られます(16-3)。資本関係が転勤の範囲に入っていても、合算まで当然に認められるわけではありません。

来日後の異動にも同じ線が引かれる

転勤の範囲は、来日のときだけの問題ではありません。審査要領は、企業内転勤を外国の事業所から日本の同一企業または同一企業グループ内の事業所に転勤することと位置づけ、日本国内で勤務先を変える場合の扱いを別に定めています(16-12)。日本に来た後でグループ内の別会社へ移すときは、転勤元の外国事業所がその命令に関与しているかが問われます。詳しくは企業内転勤中に日本国内の別の支店・グループ会社へ異動できるかで扱います。要件の全体像は企業内転勤ビザとは|審査要領で読む要件と技人国との違いにまとめています。

よくある質問

Q. 海外の子会社から日本の別の子会社への異動は企業内転勤になりますか?

なります。審査要領は、企業の分社化が進んでいる状況を考慮し、子会社同士の異動を親会社と一体性を有するものとして企業内転勤の対象にしています。孫会社同士、子会社と孫会社の間の異動も対象です。

Q. 出資比率が20%の関連会社から日本の親会社への異動は認められますか?

会社と自社の関連会社の間の異動は対象です。議決権の20%以上を所有していれば、財務諸表等規則第8条の関連会社に当たるのが原則です。ただし、関連会社同士の異動や、親会社と子会社の関連会社の間の異動は対象外とされています。

Q. 曾孫会社同士の異動はなぜ対象外なのですか?

曾孫会社はみなし子会社である孫会社の子会社であるため、縦の位置関係の移動は対象になりますが、曾孫会社同士の異動は対象外とされています。親会社が子会社・孫会社・曾孫会社まで一貫して100%出資している場合は、曾孫会社も子会社とみなせるため対象になります。

Q. 資本関係が範囲外だった場合、日本に呼ぶ方法はありませんか?

技人国の上陸許可基準に適合すれば、技人国で受け入れる道があります。その場合は日本側の受入れ機関との契約が必要になり、本人の学歴や実務経験の要件も満たさなければなりません。

最初にグループの資本系統図を描く

企業内転勤を検討するときは、申請書に手をつける前に、親会社から日本法人と送り出し会社までの資本系統図を1枚描いてください。各社の議決権比率を書き込み、送り出し会社と日本法人が親子・兄弟・孫・曾孫・関連会社のどの位置にあるかを確認します。15%から50%の帯に入る会社が途中にあれば、役員の兼任や取引関係の資料も集めておきます。

系統図で範囲外と分かった場合も、技人国での受入れを検討できます。どちらで進めるかを決めるのは、この1枚ができてからで十分です。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節「企業内転勤」16-1、16-3〜16-4(情報公開請求による開示版)
  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第16節 第2「応用・資料編」16-6〜16-12(財務諸表等規則第8条第3項〜第7項の抄録、事業所の範囲の図。図はOCR不鮮明)
  • 出入国在留管理庁「在留資格「企業内転勤」」・提出書類一覧(令和8年4月1日運用開始)https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/intracompanytransfee.html、https://www.moj.go.jp/isa/content/001457117.pdf
  • 出入国管理及び難民認定法 別表第一の二の表「企業内転勤」