育成就労の入国後講習は、育成就労計画の認定申請の時点でA1相当の日本語試験に合格していない人は320時間以上、合格している人は220時間以上です。320時間のうち100時間は、認定日本語教育機関の「就労のための課程」によるA1相当講習でなければなりません。入国前6か月以内に一定時間の入国前講習を受けていれば、それぞれ160時間・110時間まで短くでき、日本語講習の費用は育成就労実施者か監理支援機関が負担する仕組みです。2027年4月1日の施行に向けて受入れ企業が決めるべきなのは、送出国での受験と入国前講習をどう組み合わせ、来日から配属までの期間と費用をどこまで圧縮するかです。
入国後講習は「配属前に日本で働く準備を整える期間」
ここでいう入国後講習とは、育成就労外国人が日本に入国したあと、受入れ企業の現場で業務に就く前に受ける座学中心の講習を指します。技能実習の第1号技能実習にあった入国後講習を引き継いだ仕組みで、科目は次の4つです。
- 日本語
- 日本での生活一般に関する知識
- 出入国や労働に関する法令、相談先など、本人の法的保護に必要な情報
- 日本での円滑な技能等の修得に資する知識
監理型の育成就労では、入国後講習の期間中に受入れ企業の業務に従事させることはできません。「講習の合間に少しだけ現場を手伝ってもらう」という運用は、講習の時間数を満たしていても認められない点に注意が必要です。講習期間中に食費や居住費を本人に負担させる場合は、その額と同等以上の講習手当を支給します。
法的保護の科目は、技能実習では専門的な知識を持つ外部の講師(弁護士、社会保険労務士、行政書士など)が担当することとされていました。育成就労でも同様の講師要件が設けられていると考えられますが、育成就労制度運用要領の該当箇所を2026年9月29日時点で原文確認できていません(公式資料では未確認)。
育成就労の入国後講習が技能実習と大きく変わるのは、時間数の決め方です。技能実習では第1号技能実習の総時間数の6分の1以上(要件を満たす入国前講習があれば12分の1以上)という割合で決まっていましたが、育成就労では日本語能力に応じた固定の時間数になりました。日本語の到達度によって講習の長さが変わる設計に改められたわけです。
時間数はA1相当の試験に合格しているかどうかで決まる
育成就労制度運用要領(第4章第2節)は、「就労開始前に育成就労外国人がA1相当の日本語能力を身に付けることを前提としています」と明記しています。そのうえで、入国後講習の総時間数を次のように定めています。
| 育成就労計画の認定申請時点 | 入国後講習の総時間数 | 入国前講習を受けた場合 | 日本語科目の中身 |
|---|---|---|---|
| A1相当の試験に合格していない | 320時間以上 | 入国前6か月以内に160時間以上受けていれば160時間以上 | 認定日本語教育機関の「就労のための課程」によるA1相当講習を100時間以上(必須) |
| A1相当の試験に合格している | 220時間以上 | 入国前6か月以内に110時間以上受けていれば110時間以上 | 必要な時間数を個別に設定。認定日本語教育機関でなくてもよい |
A1相当の試験とは、日本語教育の参照枠でA1に当たる水準を測る試験で、JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)でA1相当の判定を受けることや、日本語能力試験N5に合格することなどが該当します。
表を読むと、A1相当に合格しているかどうかで総時間数に100時間の差があることがわかります。この100時間がそのままA1相当講習の時間に当たり、320時間はA1相当講習100時間を内数として含む時間数です。「育成就労の日本語教育は100時間必要ですか」という質問が最も多く検索されていますが、答えは、認定申請の時点でA1相当に合格していない人には必要、合格している人には不要、です。
育成就労の日本語要件を入国時から特定技能への移行時まで段階的に整理した内容は育成就労の日本語要件|入国時A1・1年目・転籍・特定技能移行時に必要なレベルで扱っています。
入国前講習で短縮する条件と、合否判定のタイミング
入国後講習を短くする方法は二つあります。一つは入国前講習を受けること、もう一つは認定申請の前にA1相当の試験に合格しておくことです。
入国前講習による短縮の条件は、入国前6か月以内に、A1未合格者なら160時間以上、A1合格者なら110時間以上の入国前講習を受けていることです。これで入国後講習はそれぞれ160時間以上、110時間以上まで縮みます。A1相当講習(100時間)は入国前講習の中で行うこともできます。入国前講習を誰がどの施設で実施すれば短縮の対象になるか、科目の構成をどう求めるかといった細部は、運用要領の該当箇所で確認が必要です(公式資料では未確認)(技能実習では、監理団体が自ら又は外部に委託して行う講習や、外国の公的機関・教育機関が行う講習が対象とされていた)。
合否の判定は、育成就労計画の認定申請の時点で行います。ここが日程を組むうえでの要点です。
認定申請の時点でA1に合格していなかった人が、認定後、入国までの間に合格した場合は、A1相当講習を受ける必要がなくなり、外国人育成就労機構の地方事務所に軽微変更届出書を出して講習時間を220時間に変更できます。一方、入国後講習の途中で合格しても、講習時間を220時間に短縮することは認められません(育成就労制度Q&A)。
受入れ企業から見ると、選択肢は次の3通りに整理できます。
- 送出国で認定申請前にA1相当に合格してもらう。入国後講習は220時間、入国前講習を110時間以上行えば110時間まで短縮できる
- 認定申請の時点では未合格でも、入国前に合格してもらう。軽微変更届出で220時間に切り替える
- 未合格のまま入国する。入国後講習は320時間で、日本国内で認定日本語教育機関のA1相当講習を100時間受ける
1日8時間・週5日で計算すると、320時間は8週間、220時間は5.5週間、110時間は約3週間に当たります。入国から配属までの期間が最大で2か月近く変わり、その間の講習手当、宿泊費、講習費が企業の負担として積み上がります。筆者は、送出機関と契約する段階で、面接からA1受験、認定申請、入国前講習までの日程表を送出機関に出させ、A1合格を認定申請の前に置く設計を標準にすることを勧めます。
A1相当講習100時間と認定日本語教育機関
A1相当講習は、文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」で受けるのが原則です。認定日本語教育機関とは、2024年4月1日に施行された日本語教育機関認定法に基づき、教育課程や教員、施設などの基準を満たすとして文部科学大臣の認定を受けた日本語教育機関を指します。認定の対象となる課程には「留学」「就労」「生活」の3種類があり、育成就労で使えるのは「就労のための課程」です。
ただし、認定日本語教育機関の数がすぐには揃わないことを踏まえ、当分の間の経過措置として、登録日本語教員による講習でもよいとされています(育成就労法施行規則附則3条1項)。登録日本語教員とは、日本語教員試験に合格し実践研修を修了して、国家資格として登録された日本語教師を指します。経過措置を使う場合の条件は次の4つです。
- 講習の目標がA1相当であること(分野でより高い水準が定められていればその水準)
- 100時間以上であること
- 登録日本語教員1人に対して、同時に受講する生徒が20人以下であること
- 対面以外で行う場合は、オンラインで同時かつ双方向に行うこと
オンライン受講について、育成就労制度Q&A(Q65)は「双方向で同時にコミュニケーションを取れるもの」など一定の要件を満たせば可能としています。認定日本語教育機関の課程を「特別の日本語教育課程」として実施する場合は、講習の全部をオンラインで受講することもできます。地方の受入れ企業にとっては、講習施設の近くに認定日本語教育機関がなくても、オンラインの就労課程と組み合わせて対応できる余地があるということです。
監理支援機関が自前の講習施設で入国後講習を行う場合でも、A1相当講習の100時間だけは認定日本語教育機関に委託するか、登録日本語教員を講師に確保する必要があります。監理支援機関を選ぶときは、どの認定日本語教育機関と提携しているか、登録日本語教員を何人確保しているかを確認しておくべきです。
講習の費用は誰が負担するか
入国後講習の費用は、受入れ企業が負担するのが基本構造です。監理支援機関が受入れ企業から徴収できる監理支援費は、職業紹介費、講習費、監査指導費、その他諸経費の4種類に限られ、いずれも実費を超えない額とされています。入国後講習の施設使用料、講師への謝金、教材費、講習手当は、講習費として監理支援機関を経由して受入れ企業が負担することになります。運用要領は、監理支援費を直接にも間接にも本人に負担させてはならないとしています。
日本語講習の費用について、育成就労制度Q&A(Q66)は、「育成就労実施者又は監理支援機関において、費用の負担を含め日本語能力向上のために必要な措置を取る」と答えています。認定日本語教育機関のA1相当講習を使う場合、その受講料は受入れ企業か監理支援機関が負担し、本人に請求することはできません。
注意したいのは、入国前講習の費用です。送出国で行う入国前講習の費用を、本人が「講習費」として送出機関に支払う形にすると、監理支援費の間接的な負担に当たるおそれがあると運用要領は例示しています。育成就労では、本人が送出機関に支払う費用の上限が月給の2か月分と定められたこともあり、入国前講習の費用の流れは、送出機関との契約書で明確にしておく必要があります。費用負担の全体像は育成就労制度のデメリットとは?受入れ企業が負う費用と事務負担を運用要領で整理でも整理しています。
講習期間中の雇用保険や社会保険の扱いは、講習が雇用契約に基づくかどうかで変わります。技能実習では、入国当初の雇用契約に基づかない講習の期間中は雇用保険の被保険者にならないとされていました。育成就労の入国後講習期間中の扱いは、運用の確定を待って確認が必要です(公式資料では未確認)。
入国後講習のあとに続く日本語教育の義務
入国後講習は日本語教育の入口にすぎません。育成就労の目標となる日本語水準は、3年間でA2相当の試験に合格することです。これを計画的に達成するため、育成就労実施者は3年間の間に、認定日本語教育機関の「就労のための課程」によるA2相当を目標とする講習(A2目標講習)を100時間以上受講する機会を提供しなければなりません(育成就労法施行規則13条2項8号)。
この100時間についても、費用は受入れ企業側が負担します。一方で、受講時間を労働時間として扱うことは義務付けられていません(育成就労制度Q&A Q69)。勤務時間外の受講でも制度上は問題ありませんが、機会を与えなかった場合は育成就労計画の認定取消しのおそれがあります。いつ、どの形で受講させるかを最初から計画に入れておくのが現実的です。
加えて、開始から1年以内にA1相当の試験を受験させる義務があります(合格までは求められていません)。本人意向の転籍にはA2.1相当以上の合格が必要とされるため、日本語教育を手厚くすることは転籍の可能性も高めます。それでも、日本語支援を控えることは講習の提供義務と計画認定の問題に直結するため、取るべき選択肢ではありません。転籍への備えは育成就労の転籍とは?で扱っています。
介護分野は上乗せがあり、就労開始前にA2.2相当が求められます。介護で育成就労を使う場合は、入国前の日本語教育の比重がほかの分野より大きくなります。
よくある質問
育成就労の日本語教育は100時間必要ですか?
育成就労計画の認定申請の時点でA1相当の日本語試験に合格していない人については、認定日本語教育機関の就労のための課程によるA1相当講習を100時間以上受ける必要があります。合格している人には不要です。これとは別に、3年間でA2目標講習を100時間以上受講する機会を提供する義務があり、こちらは全員が対象です。
育成就労制度で日本語講習を受けるにはどうすればよいですか?
受講の手配をするのは受入れ企業と監理支援機関です。入国後講習の中で認定日本語教育機関の就労のための課程を受講させるか、経過措置として登録日本語教員による講習を行います。一定の要件を満たせばオンラインでの受講も認められています。
入国前に日本語講習を受けていれば、入国後講習は短くなりますか?
入国前6か月以内に、A1未合格者は160時間以上、A1合格者は110時間以上の入国前講習を受けていれば、入国後講習をそれぞれ160時間以上、110時間以上に短縮できます。入国後講習の途中でA1に合格しても、講習時間を短縮することはできません。
入国後講習の期間中に現場で働いてもらうことはできますか?
監理型の育成就労では、入国後講習の期間中に受入れ企業の業務に従事させることはできません。講習期間中に食費や居住費を負担させる場合は、それと同等以上の講習手当を支給します。
育成就労で日本語を教えるのに資格は必要ですか?
A1相当講習とA2目標講習は、認定日本語教育機関の就労のための課程で行うのが原則で、経過措置として登録日本語教員による講習も認められています。どちらも使わずに社内の日本人社員が教えた時間は、A1相当講習やA2目標講習の時間には数えられません。
配属日から逆算して、講習の時間数を「選ぶ」
育成就労の入国後講習は、技能実習のように総時間数から機械的に決まる仕組みから離れ、送出国でのA1受験と入国前講習の組み方によって、110時間から320時間まで幅を持つようになりました。時間数のかなりの部分は、受入れ企業が日程の設計で選べる、というのが筆者の読み方です。
最初に決めるべきなのは、現場に配属したい日です。そこから逆算して、入国後講習の時間数、入国日、入国前講習の期間、A1の受験日、育成就労計画の認定申請日を順に置いていくと、送出機関と監理支援機関に何をいつまでに求めるべきかがはっきりします。制度全体の準備は育成就労制度とは?を参照してください。個別の事情で判断が変わるため、日程と費用の見積もりは監理支援機関と早めにすり合わせておくことを勧めます。
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根拠資料
- 運用要領(育成就労制度運用要領・特定の分野に係る育成就労制度運用要領)(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)(出入国在留管理庁)
- 技能実習制度 運用要領(令和8年4月・出入国在留管理庁・厚生労働省)
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