介護分野の育成就労は、2027年4月1日から、令和8年厚生労働省告示第156号(2026年3月31日)が定める介護固有の基準に沿って運用されます。他の分野より日本語要件が高く、就労開始前の時点でA2.2相当(日本語能力試験N4相当)が必要です。受入れ事業所は開設後3年以上、指導員は外国人5名につき1名以上(うち1名以上は介護福祉士等)、人数枠は事業所ごとの常勤介護職員数で決まり、本人意向の転籍は2年間制限されます。骨格は技能実習「介護」の固有要件を引き継いでいますが、日本語の物差しと転籍の仕組みが変わりました。
介護分野の育成就労は「告示156号」で上乗せ要件が決まっている
育成就労では、法律と施行規則が全分野共通の基準を定め、分野ごとに特有の事情がある場合は所管省庁が告示で上乗せします。介護分野の上乗せが、令和8年厚生労働省告示第156号「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則の規定に基づき介護分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準等」です。2026年3月31日に告示され、2027年4月1日から適用されます。
告示の構成は、育成就労の内容(日本語・入国後講習)、指導体制、事業所の設備、外国人の数(人数枠)、監理支援機関の要件の順です。厚生労働省は「介護分野の育成就労における固有要件について」という1枚ものの資料で要点をまとめており、あわせて介護分野の分野別運用方針(2026年1月23日閣議決定の運用方針の別紙)が、主たる技能を「身体介護等」とし、転籍制限期間を2年と定めています。
受入れ見込数は、令和9年度から2年間で3万3,800人です(分野別運用方針)。育成就労全体の42万6,200人のうち、建設・工業製品製造業・飲食料品製造業に次ぐ規模になります。
日本語要件は入口からA2.2|他分野より一段高い
育成就労の日本語要件は、国際基準の「日本語教育の参照枠」で書かれています。全分野共通では、就労開始前にA1相当(日本語能力試験N5、JFT-Basicの該当レベル等)に合格するか相当の講習を受け、育成就労の終了時(特定技能1号への移行時)にA2.2相当(N4相当)を求めます。介護分野は、入口の時点で終了時と同じA2.2を求める点が最大の違いです。
| 段階 | 全分野共通 | 介護分野 |
|---|---|---|
| 就労開始前 | A1相当(N5等)の合格または相当講習 | A2.2相当(N4相当) |
| 1年経過時 | A1相当の試験を受験させる | A2.2相当+日本語学習プランの作成(B1以上合格者は不要) |
| 転籍時 | 原則A2.1相当 | A2.2相当 |
| 終了時 | A2.2相当(N4等) | A2.2相当+介護特定技能評価試験(日本語) |
(出典:育成就労制度の概要 令和8年7月改訂、介護分野の育成就労における固有要件について、告示156号)
1年経過時の「日本語学習プラン」は、介護現場で求められる日本語をB1に向けて伸ばすための計画を指します。B1相当以上に合格している人はプラン不要です。終了時の「介護特定技能評価試験(日本語)」は、現行の特定技能で「介護日本語評価試験」と呼ばれている試験に当たります。名称の切替え時期は、公表資料からは確認できていません(公式資料では未確認)。
なぜ介護だけ入口が高いのか。介護は利用者と言葉でやり取りしながら身体に触れる仕事で、指示の聞き違いが事故に直結します。技能実習「介護」も、他職種にない入国時N4程度の要件を置いていました。育成就労はこの考え方をそのまま引き継ぎ、物差しを日本語能力試験から参照枠に置き換えたと読めます。
入国後講習も介護用の時間数があります。告示156号の別表で、日本語科目は総時間240時間以上(自立して日本語を使える水準=B1相当の人は80時間以上)、介護の技能・知識の科目は42時間です。技能実習「介護」の入国後講習(日本語240時間、介護導入講習42時間)と同じ時間数です。
受入れ事業所の要件|開設3年・指導員・夜勤・訪問系
開設後3年以上の事業所
告示156号3条は、受入れ事業所を「介護等の業務が現に行われている事業所」とし、次のいずれかを求めます。
- 事業所を開設してから3年以上経過している
- 同じ法人の他の介護事業所が開設後3年以上経過している
- 同じ法人によるサポート体制があるなど告示の要件を満たす
新設の事業所でも、法人に3年以上運営している事業所があれば受け入れられる余地があります。単独の新設法人は受け入れられません。
指導員は5名に1名、うち1名以上は介護福祉士等
育成就労指導員は、育成就労外国人の数を5で割った数以上を置き、そのうち1名以上を介護福祉士またはこれと同等以上の専門的知識・技術を持つ人にする必要があります(告示156号2条)。外国人が6人なら指導員は2人以上です。技能実習「介護」の技能実習指導員と同じ構造です。
夜勤は禁止ではないが「安全確保の措置」が条件
夜勤について告示は「利用者の安全の確保等のために必要な措置を講ずることとしていること」を求めています。育成就労外国人の夜勤を一律に禁止してはいませんが、1人夜勤に入れる場合の指導体制や緊急時の連絡体制を、計画の段階で説明できるようにしておく必要があります。具体的にどの配置なら足りるかの数値基準は告示にありません。
訪問系サービスは初任者研修と実務経験が条件
訪問介護などの訪問系サービスに従事させられるのは、介護職員初任者研修課程等を修了し、実務経験等を有する育成就労外国人に限られます。さらに、従事し始めてから1人で適切にサービス提供できると認められるまでの一定期間、サービス提供責任者等が同行することが求められます(告示156号3条)。特定技能では2025年4月21日の告示等改正で、初任者研修修了と原則1年以上の実務経験を条件に訪問系サービスへの従事が認められており、育成就労でもこれと同じ考え方が取られています。育成就労での「実務経験等」の年数の目安は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
人数枠は「事業所単位」で数える
介護分野の人数枠は、法人全体の常勤職員数ではなく、事業所ごとの常勤介護職員数で決まります(告示156号4条)。ここでいう常勤介護職員には、育成就労外国人とEPA介護福祉士候補者は含めません。監理型の基本の上限は、常勤介護職員10人以下で3人、11〜20人で6人、21〜30人で9人、31〜40人で12人、41〜50人で15人、51〜100人で18人、101〜200人で30人、201〜300人で45人、301人以上は20分の3です。優良な実施者は2倍、優良な実施者・優良な監理支援機関・指定区域の条件が重なると3倍になります。
どの場合も、育成就労外国人の総数は事業所の常勤介護職員の総数を超えられません。特定技能「介護」も、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を上限としており、両制度で同じ上限の考え方が取られています。人数枠全体の数え方は育成就労の人数枠|常勤職員数別の上限表と優良・地方枠、介護の事業所単位で整理しています。
技能実習「介護」との違い
介護固有の要件の多くは、2017年11月に技能実習の対象職種に介護が加わったときの固有要件(平成29年厚生労働省告示第320号)を下敷きにしています。告示156号の適用に伴い、この技能実習の介護告示は廃止される扱いです。違いは次の4点に集約されます。
| 項目 | 技能実習「介護」 | 育成就労「介護」 |
|---|---|---|
| 入国時の日本語 | N4程度 | A2.2相当(N4相当) |
| 2年目以降の日本語 | 2号移行時にN3程度(日本語学習の継続を条件に未達でも移行可) | 1年経過時にA2.2+日本語学習プラン(B1合格者は不要) |
| 修了・移行時 | 3号移行にN3程度 | A2.2+介護特定技能評価試験(日本語)、技能は介護育成就労評価試験(専門級) |
| 転籍 | やむを得ない場合のみ | 本人意向の転籍は2年経過後から |
| 事業所・指導員・講習時間 | 開設3年、指導員5名に1名、日本語240時間・導入講習42時間 | 同じ |
1つ目は日本語の物差しです。技能実習は日本語能力試験のN4・N3で段階を刻んでいましたが、育成就労は参照枠のA2.2とB1で刻みます。水準はほぼ同じでも、使える試験の種類と証明方法が変わります。
2つ目は3年間のゴールです。技能実習は3年目(2号修了)で帰国するか3号・特定技能へ進む制度でしたが、育成就労は3年で特定技能1号の水準に育てることが制度目的そのものです。終了時の技能評価は「介護育成就労評価試験(専門級)」と定められ、日本語と合わせて特定技能1号への移行の関門になります。
3つ目は転籍です。技能実習では、実習先の倒産や人権侵害などやむを得ない場合を除き転籍できませんでした。育成就労では、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められ、介護分野はその制限期間を2年に設定しています。分野別運用方針は理由として、継続したケアで利用者と信頼関係を築く必要があること、地方から都市部への過度な流出を防ぐことを挙げています。転籍制限は1年の分野と2年の分野に分かれており、介護は2年の側です。2年を過ぎれば、日本語A2.2を満たすなどの要件のもとで転籍が可能になります。転籍の全体像は育成就労の転籍とは?を参照してください。
4つ目は協議会です。育成就労で介護分野の外国人を受け入れる法人は、育成就労計画の認定申請や地方出入国在留管理局への在留申請の前に「介護分野における特定技能・育成就労協議会」の構成員となり、受入事業所情報が登録された入会証明書の発行を受ける必要があります(厚生労働省「介護分野における育成就労制度について」)。特定技能で協議会に入っている法人も、育成就労で受け入れる事業所の登録が必要かどうかを確認してください。
人員配置基準への算入も、施設側が気にする点です。技能実習生とEPA介護福祉士候補者は、就労開始から6か月を経過した場合(日本語能力試験N1・N2合格者は就労開始時から)介護報酬上の人員配置基準に算入できる扱いとされてきました。特定技能外国人は就労開始時から算入できます(いずれも厚生労働省の解釈通知による扱いで、本稿では通知の原文を照合できていません)。育成就労外国人をどの時点から算入できるかは、介護報酬の解釈通知の改正を待つ必要があり、現時点で公表資料から確認できていません(公式資料では未確認)。筆者は、配置基準に入れる前提で人員計画を組むのは通知が出てからにすべきだと考えます。
監理支援機関にも介護の専門職が要る
介護分野の育成就労を監理支援する機関には、告示156号6条の上乗せがあります。5年以上介護等の業務に従事した経験を持つ介護福祉士、またはこれと同等以上の専門的知識・技術を持つと認められる人を、監理支援の体制に置く必要があります。技能実習の介護職種でも監理団体に同様の要件がありましたが、監理団体が監理支援機関へ移るときに改めて確認されます。
受入れ事業所の側から見ると、今の監理団体が介護分野で監理支援機関の許可を申請しているか、介護福祉士の職員を確保しているかは、2027年4月以降の受入れ計画に直結します。施行日前申請の受付は2026年4月15日から始まっており、今の監理団体に申請状況を確認するのが先決です。
よくある質問
介護の育成就労の日本語要件は?
就労開始前にA2.2相当(日本語能力試験N4相当)が必要です。1年経過時はA2.2相当に加えて日本語学習プランの作成(B1以上合格者は不要)、転籍時はA2.2相当、終了時はA2.2相当と介護特定技能評価試験(日本語)の合格が求められます。全分野共通の入口(A1相当)より高い水準です。
育成就労の介護の人数枠は?
事業所ごとの常勤介護職員数(育成就労外国人とEPA介護福祉士候補者を除く)で決まります。監理型の基本は10人以下で3人、11〜20人で6人、21〜30人で9人、51〜100人で18人などで、どの場合も育成就労外国人の総数は事業所の常勤介護職員の総数を超えられません。優良認定などで2倍・3倍に拡大されます。
育成就労の介護の転籍制限は?
本人意向の転籍の制限期間は2年です。2年を過ぎ、日本語A2.2相当などの要件を満たせば、本人の意向で他の受入れ先へ移ることができます。倒産やハラスメントなどやむを得ない事情がある場合は、期間にかかわらず転籍が認められます。
技能実習「介護」で受け入れている実習生は、2027年4月以降どうなりますか?
施行日の時点で技能実習を行っている人は、経過措置により技能実習のまま修了まで続けられます。1号は2027年3月31日までに計画の認定申請をして6月30日までに開始する必要があるなど、期限が区切られています。修了後は特定技能「介護」への移行が主な進路で、要件は技能実習から特定技能への移行で解説しています。
介護の育成就労は「3年で特定技能に届くか」で設計する
介護分野の育成就労の要件は、入口の日本語、事業所の経験年数、指導員の資格と、どれも「利用者の安全」を担保するための条件として置かれています。他方で、制度の出口は特定技能1号への移行で、終了時には技能試験と2つの日本語試験の合格が必要です。入口でA2.2を満たして来日した人を、3年間で介護育成就労評価試験と介護の日本語試験に合格させられるかどうかが、受入れの成否を分けます。
受入れを検討する事業所がまず確認すべきは、法人に開設3年以上の介護事業所があるか、介護福祉士の指導員を5名に1名の割合で置けるか、事業所の常勤介護職員数から何人まで受け入れられるか、の3点です。そのうえで、特定技能「介護」で直接受け入れる道と比べてください。特定技能の要件は特定技能「介護」とは?にまとめています。
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根拠資料
- 外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則の規定に基づき介護分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準等(令和8年厚生労働省告示第156号、2026年3月31日)
- 介護分野の育成就労における固有要件について(厚生労働省)
- 介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(厚生労働省)
- 育成就労制度の概要(出入国在留管理庁、令和8年7月改訂)
- 介護分野における特定技能について(厚生労働省)
- 育成就労制度の施行に伴う技能実習制度の経過措置について(出入国在留管理庁・厚生労働省)
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