育成就労の外部監査人とは、監理支援機関が受入れ企業への監査をきちんと行っているかを、法人の外から3か月に1回以上確認する人(または法人)で、監理支援機関の許可を受けるための必須要件です(育成就労法25条1項5号、同法施行規則47条)。技能実習では「外部役員を置く」か「外部監査を受ける」かを監理団体が選べましたが、育成就労では外部監査人の一本になり、しかも弁護士・社会保険労務士・行政書士などに限られます。技能実習で外部監査人を務めてきた人がそのまま続けられるとは限らない、という点が移行期の実務でいちばん見落とされやすいところです。
外部監査人は監理支援機関の「外からのチェック役」
ここでいう外部監査人とは、監理支援機関が選任し、監理支援機関の業務(特に受入れ企業=育成就労実施者への監査)が適正に行われているかを、法人の外部から監査する者を指します。個人でも法人でもなれます(育成就労制度運用要領 第5章第5)。
なぜこの仕組みがあるのか。運用要領は理由をはっきり書いています。監理支援機関は事業協同組合などの非営利法人で、組合員である受入れ企業を監理する立場にあります。身内を監理する構造である以上、中立的な運営が難しい面があることを制度側も認めており、外部の視点を法律上義務付けることで中立性を担保しようとしているわけです。
監理支援機関の許可申請書(省令様式第15号)には外部監査人の氏名又は名称を書く欄があり、添付書類として「外部監査人の概要書並びに就任承諾書及び誓約書」(参考様式第2-5号)と講習の受講証明書の写しを出します。つまり、外部監査人が決まっていなければ許可申請そのものが整いません。監理団体が監理支援機関へ移るための施行日前申請は2026年4月15日から受付が始まっており、2027年4月1日から事業を始めるなら2026年9月30日までの申請が目安とされています(外国人技能実習機構FAQ 1-2)。外部監査人の確保は、申請書づくりの最初の工程に置くべき作業です。
技能実習の外部役員・外部監査人との違い
技能実習法25条1項5号は、監理団体に「イ 役員構成の措置(指定外部役員)」か「ロ 外部監査の措置」のいずれかを求めていました。育成就労法の同じ号は、外部監査の措置だけを定めています。違いを表にすると次のとおりです。
| 項目 | 技能実習(監理団体) | 育成就労(監理支援機関) |
|---|---|---|
| 措置の選択 | 指定外部役員か外部監査人のいずれか | 外部監査人のみ(必須) |
| 根拠 | 技能実習法25条1項5号、同規則30条 | 育成就労法25条1項5号、同規則47条 |
| 資格 | 講習修了と欠格非該当で足りる(士業資格は不要) | 弁護士・社労士・行政書士(各法人を含む)その他育成就労に関する知見を有する者 |
| 講習 | 過去3年以内に監理責任者等講習を修了 | 過去3年以内に外部監査人講習を修了(当分の間、技能実習の監理責任者等講習修了者も可) |
| 氏名の公表 | 規定なし | 機構ホームページでの公表に同意が必要 |
| 監査の頻度 | 事業所ごとに3か月に1回以上の確認、1年に1回以上の監査同行 | 同じ |
監査のやり方そのもの(3か月に1回以上の確認と年1回以上の同行)は技能実習とほとんど同じです。変わったのは「誰がなれるか」です。技能実習の規則30条5項には士業資格の要件がなく、監理責任者等講習を修了し欠格事由に当たらなければ、会社員や民間法人でも外部監査人になれました。育成就労の規則47条2項2号は、弁護士・弁護士法人、社会保険労務士・社会保険労務士法人、行政書士・行政書士法人その他育成就労に関する知見を有する者に限っています。
機構のFAQ(監理支援機関の許可申請関係)は、技能実習制度が始まった7年前から法人として外部監査人を務めてきたが士業資格のない職員でもなれるか、という質問に対し、過去に技能実習の外部監査人を務めたことだけでは要件を満たさないと答えています。技能実習時代の外部監査人がそのまま移行できるかは、資格の有無でまず判定されることになります。
指定外部役員を置いていた監理団体にとっては、育成就労への移行で外部監査人を新たに探す必要が生じます。この点について規則附則5条は経過措置を置いています。施行日前に監理団体の非常勤の指定外部役員だった人は、監理事業の業務(定期監査など)に従事していなかったことを条件に、「監理支援機関の役職員又は過去5年以内にこれらの者であった者」という欠格から外れます。指定外部役員だった士業が、辞任後5年を待たずに同じ団体の外部監査人になれる道を残した規定です。
外部監査人の要件は施行規則47条の3つ
育成就労の外部監査人の要件は、施行規則47条が「受入れ企業との関係」(1項)と「本人の資格・外部性」(2項)の2段で定めています。運用要領の整理に沿うと、次の3つに集約できます。
受入れ企業と密接な関係がないこと
規則47条1項により、次の人は外部監査人になれません。
- 監理支援を行う受入れ企業(過去5年以内に監理支援した企業を含む)、その役員・職員、または過去5年以内にそうだった人
- その人たちの配偶者または二親等以内の親族
- 社会生活において密接な関係を有する者で、外部監査の公正が害されるおそれがあると認められる人
3つ目の具体例として、運用要領は「監理支援機関が監理支援を行う育成就労実施者と顧問契約を結んでいる弁護士」「監理支援を行う育成就労実施者から定期又は臨時に会費の支払いを受けている法人」を挙げています。受入れ企業の顧問をしている士業は、その企業を監理する監理支援機関の外部監査人にはなれません。
外部性があり、欠格事由に当たらないこと
規則47条2項3号は、監理支援機関側との関係でも外部性を求めています。運用要領の番号に沿って並べると、次の人はなれません。
- 監理支援機関の役職員、または過去5年以内にそうだった人
- 監理支援機関の構成員のうち、監理支援する分野の事業を営む者、その役職員、または過去5年以内にそうだった人
- 監理支援の対象でない他の受入れ企業、その役職員
- 他の監理支援機関、その役職員
- 取次ぎを受ける外国の送出機関、その役職員、または過去5年以内にそうだった人
- 監理支援機関の許可の欠格事由(法26条)に当たる者
- 監理支援機関やその役職員・構成員と社会生活において密接な関係がある人、過去に育成就労に関して不正や著しく不当な行為をした人など
最後の項目について、機構FAQは具体的な線を引いています。監理支援機関の代表者の配偶者や二親等以内の親族は「社会生活において密接な関係を有する者」に当たるためなれません。監理支援機関の監事は役員なので、行政書士であっても、員外監事であってもなれません。一方、監理支援機関から入国後講習の法的保護科目の講師を有償で頼まれている社労士や、監理支援機関の事務所を貸している行政書士は、他の要件を満たせばなれるとされています。
他の監理支援機関の役職員は、規則47条2項3号ニにより外部監査人になれません。FAQ 7-8も、特定の監理支援機関の役職員になっている人は他の監理支援機関の外部監査人になれないと答えています。技能実習の指定外部役員には「専門的な知識と経験を有する役員」なら他団体の役員でもよいという例外がありましたが、外部監査人にはその例外がなく、育成就労では外部役員の仕組み自体がなくなったため、この例外に頼る余地もなくなりました。
資格・能力と講習修了
規則47条2項1号・2号により、過去3年以内に告示された外部監査人講習を修了していること、弁護士・社労士・行政書士(各法人を含む)その他育成就労に関する知見を有する者であることが必要です。
「その他育成就労に関する知見を有する者」は、運用要領上2つしかありません。1つは出入国又は労働に関する法令について高度な知識・経験を有する者で、例として「出入国又は労働に関する法令を研究している大学教授」が挙がっています。もう1つは外部監査人の講習実施機関として告示されている機関で、直近2事業年度のいずれかの年に講習を20回以上実施し、営利を目的としない法人であるものです。公認会計士・税理士・司法書士は、FAQ 7-6で「『士』であることのみをもって外部監査人になることはできません」とされ、上の2つのどちらかに当たる必要があります。
加えて、外部監査人の氏名(法人なら法人名)を機構がインターネットで公表することへの同意が要件になっています(規則47条2項4号)。これは技能実習にはなかった要件です。
外部監査人講習は「3年以内」と経過措置で考える
外部監査人は、選任時点で過去3年以内に養成講習を修了している必要があり、選任後も3年ごとに受講し直さなければなりません(運用要領 第8章)。法人が外部監査人になる場合は、実地で監査を指揮する「監査実施責任者」が講習を修了している必要があり、概要書の「④監査実施責任者の氏名」欄にその人を書きます。監査実施責任者は法人の役職員から複数選ぶこともできます。
育成就労の外部監査人講習そのものについて、機構FAQ 7-17は「改めて、育成就労制度運用要領などにおいてお知らせします」としています。そのため当面は、規則附則4条3項の経過措置が実務の中心になります。技能実習法施行規則30条5項1号の講習、つまり技能実習の監理責任者等講習を修了した人は、育成就労の外部監査人講習を修了した者とみなされます。
技能実習の監理責任者等講習は、技能実習制度運用要領(令和8年4月)第8章によると合計6.0時間で、技能実習法1.5時間、入管法1.0時間、労働関係法令1.5時間などの講義のあと、○×式20問の理解度テストがあり、正答率80%(16問)以上で受講証明書が交付されます。不合格なら受講証明書は出ません。講習機関は出入国在留管理庁と厚生労働省のページに地域別の一覧があります。
実務上の注意は「過去3年以内」の起算です。監理支援機関の許可申請時点で3年以内である必要があるため、2023年以前に受講した修了証しか持っていない人は、就任前に受け直す必要があります。育成就労の講習がいつから始まるか、始まった後に技能実習の講習修了者をいつまでみなすかは、現時点で公表資料から確認できていません(公式資料では未確認)。
外部監査人がする仕事|3か月ごとの確認と年1回の同行
規則47条3項が定める外部監査の方法は2つです。
1つ目は、監理支援事業を行う事業所ごとに3か月に1回以上、責任役員と監理支援責任者から報告を受け、事業所の設備を確認し、帳簿書類などを閲覧して、結果を書面で監理支援機関に提出することです。帳簿書類が電磁的記録なら事前に電子で出してもらって確認してよいものの、備付けの状況や実態との一致は実地で確かめる必要があります。
2つ目は、監理支援機関が受入れ企業に対して行う監査(規則67条1号・2号)に、事業所ごとに1年に1回以上同行して確認し、結果を書面で提出することです。「1年に1回以上」の数え方は運用要領に例があり、初回の同行監査を5月10日に行ったなら、2回目は翌年5月10日までに行う必要があります。FAQ 7-16によると、傘下のすべての受入れ企業に同行する必要はありません。
外部監査の結果を記載した書類は、法41条の帳簿書類として事業所に備え付けます。監理支援機関には外部監査に協力し、指摘を受けた点を改善することが求められます。運用要領はさらに、外部監査人が育成就労外国人の外部通報窓口の役割を担うことも「望まれる」と書いています。義務ではありませんが、転籍や人権侵害の相談が監理支援機関を経由せずに届く窓口として、外部監査人に期待がかかっていることは読み取れます。
報酬の水準について、法令・運用要領に基準はありません。報酬は監理支援機関と外部監査人の契約で決まり、事業所の数、傘下企業の数、同行監査の移動距離で作業量が大きく変わります。筆者は、金額より先に「3か月ごとの確認を実地で何時間行うか」「同行監査をどの企業にいつ入れるか」を契約書に書けるかどうかで比べることをお勧めします。
行政書士が外部監査人に就任するときの注意
行政書士は規則47条2項2号に名前が挙がっており、講習を修了していれば資格面の要件は満たします。そのうえで、行政書士ならではの注意点が3つあります。
受入れ企業の顧問・申請代理との関係
もっとも問題になりやすいのは、行政書士が受入れ企業の在留資格申請や許認可を日常的に扱っている場合です。運用要領は、監理支援を受ける受入れ企業と顧問契約を結んでいる士業を「社会生活において密接な関係」の例に挙げています。FAQ 7-3も、顧問先の構成員が監理支援の対象となる受入れ企業であれば、その行政書士は外部監査人になれないとしています。
顧問契約でなくても、特定の受入れ企業から継続的に申請業務を受任し報酬を得ている場合、実質は顧問に近いと評価される余地があります。スポットの受任がどこから「密接な関係」になるかの基準は公表されていないため、就任前に受入れ企業のリストと自分の依頼者を突き合わせ、重なる企業があれば機構に照会してから決めるのが安全です。個別の関係の評価は事情で判断が変わります。
逆に、監理支援機関そのものと顧問契約を結んでいる行政書士は、要件を満たせば外部監査人になれます(FAQ 7-2)。監理支援機関の許可申請書類の作成を受任した行政書士が、同じ機関の外部監査人を兼ねることも、この整理からは直ちに排除されません。ただし、自分が作った業務運営規程や監査体制を自分で監査する形になるため、監査の独立性が外から疑われない運用を心がける必要があります。
構成員・他機関の役職員との兼ね合い
行政書士法人や行政書士が監理支援機関の構成員(組合員・会員)になっている場合、構成員とその役職員は外部監査人になれません(FAQ 7-9)。監理支援機関の業務に関わるために組合員になっている行政書士は、外部監査人との二役を担えないことになります。
また、行政書士が別の監理支援機関の役員や職員を兼ねている場合も、他の監理支援機関の外部監査人にはなれません。複数の監理支援機関の外部監査人を兼任することは、要件を満たせば可能です(FAQ 7-6)。
氏名公表と監査責任
外部監査人の氏名は機構のサイトで公表されます。運用要領は、監理支援機関が許可を取り消された場合に、その機関に対する外部監査人の監査が適正に行われていたときはその旨を機構が公示するとしています。裏返せば、名前を出して監査を引き受ける以上、報告書に何を書いたか、改善指摘をどう追ったかが後から確かめられることになります。3か月ごとの報告書は、指摘事項と改善の確認を翌回の報告書で閉じる形にしておくと、監査の実態を示す記録として機能します。
よくある質問
育成就労の外部監査人になるには?
弁護士・社会保険労務士・行政書士(各法人を含む)であるか、出入国・労働法令の高度な知識を持つ大学教授などに当たること、過去3年以内に外部監査人講習(当面は技能実習の監理責任者等講習)を修了していること、受入れ企業や監理支援機関と密接な関係がないこと、氏名の公表に同意していることが必要です。そのうえで監理支援機関から選任を受け、就任承諾書・誓約書・概要書を許可申請に添付します。
行政書士は外部監査人になれるのか?
なれます。施行規則47条2項2号に行政書士と行政書士法人が明記されています。ただし、監理支援を受ける受入れ企業の顧問をしている、監理支援機関の構成員になっている、他の監理支援機関の役職員を兼ねている、といった場合はなれません。
監理団体の外部監査人の報酬はいくらですか?
法令・運用要領・機構FAQのいずれにも報酬の基準はなく、監理支援機関と外部監査人の契約で決まります。事業所数と傘下企業の数、同行監査の移動の有無で作業量が変わるため、月額の金額だけでなく、確認の回数・時間と同行監査の範囲を契約書に明記して比較してください。
技能実習の外部監査人は、育成就労でもそのまま続けられますか?
資格次第です。技能実習の外部監査人には士業資格の要件がありませんでしたが、育成就労では弁護士・社労士・行政書士等に限られます。機構FAQは、技能実習で外部監査人を務めた実績だけでは要件を満たさないとしています。士業であれば、技能実習の監理責任者等講習の修了証(3年以内)を経過措置として使えます。
監理支援機関の許可後に外部監査人が辞めたらどうなりますか?
外部監査人の要件は、申請時点から許可を受けている間を通じて満たす必要があります(運用要領 第5章第5)。外部監査人の氏名又は名称は許可申請書の記載事項なので、後任を選任したら変更の日から1か月以内に変更届出書(省令様式第20号)を機構本部の審査課へ出します(運用要領 第5章第9節)。後任が決まるまでの空白期間をどう扱うかは運用要領に明記がないため、辞任の申出があった時点で機構に相談してください(公式資料では未確認)。
外部監査人選びは「誰が関係者でないか」の確認から始まる
育成就労の外部監査人の要件は、資格と講習という形式面より、関係性の面で落ちるケースが多い作りになっています。受入れ企業の顧問、監理支援機関の監事や構成員、代表者の親族、他の監理支援機関の職員と、技能実習時代には問題にならなかった人が次々と対象から外れます。
監理支援機関の側がすべきことは、傘下の受入れ企業の一覧(過去5年分を含む)を候補者に渡し、顧問契約・申請業務の受任・会費の受領・親族関係の有無を書面で確認してもらうことです。候補者の側は、その一覧と自分の依頼者名簿を突き合わせ、講習修了日が申請時点で3年以内かを確かめます。この2つが終われば、残るのは報酬と監査日程の契約だけです。
受入れ企業の担当者にとっても無関係ではありません。自社の監理支援機関の外部監査人が誰かは機構のサイトで公表されますし、同行監査では外部監査人が自社に来ることもあります。育成就労制度全体の準備は育成就労制度とは?技能実習からの移行で企業がやるべき準備で、監理支援機関の許可要件は育成就労の監理支援機関とは?監理団体との違いと許可要件・手数料で整理しています。技能実習との制度比較は技能実習と特定技能の違いも参考にしてください。
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