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技人国の社員が役員・管理職に昇進したら|経営・管理への変更は期限満了時でよい

技人国(技術・人文知識・国際業務)で働く社員が部長や取締役に昇進しても、その時点で在留資格を「経営・管理」に変える必要はありません。入国・在留審査要領 第12編(開示版)15-3は、昇進等で経営者や管理者になった場合について「直ちに『経営・管理』の在留資格に変更することまでは要しない」としています。今持っている技人国の在留期限が来たときに経営・管理を決定すれば足りるという整理です。

ただし、期限満了時の変更には、2025年10月16日に施行された経営・管理の新しい基準がそのままかかります。管理者として従事する場合も資本金等3,000万円以上が求められるため(出入国在留管理庁「経営・管理」改正Q&A 問10)、会社の規模によっては変更そのものが基準を満たしません。昇進の辞令を出す段階で、次の在留期限に何を申請するかまで決めておく必要があります。

ここで扱うのは、会社に雇われている技人国の社員が、同じ会社の中で役員や管理職になる場面です。社員が退職して自分の会社を立ち上げる場合は論点が違うため、技人国から経営管理ビザへの変更|独立・起業するときの要件とタイミングで整理しています。

この記事でわかること

  • 昇進した時点で変更申請が要らない根拠(審査要領15-3・10-3)
  • 「経営・管理」に当たる昇進と、技人国のまま続く昇進の分かれ目
  • 期限満了時の変更で満たす必要がある新基準(3,000万円・常勤職員・日本語・経歴・報酬)
  • 新基準に届かない会社で昇進させるときの考え方
  • 変更申請の時期と、公表されている審査期間の実績

審査要領は昇進をどう扱っているか

技人国と経営・管理は、仕事の中身が一部重なります。企業の経営や管理の仕事にも、法律学や経済学、経営学といった人文科学の知識を使う場面が多いからです。入管法は、技人国に当たる活動が同時に経営・管理にも当たるときは経営・管理を優先すると定めており、審査要領も、重複する場合は経営・管理を決定すると書いています(第15節 15-3、第10節 10-3)。

この優先関係をそのまま当てはめると、社員が役員に昇進した瞬間に、今の技人国では活動を説明できなくなるようにも見えます。審査要領はこの点に手当てをしていて、同じ会社の中で昇進した場合に限り、変更の時期を在留期限の満了まで待ってよいとしています。

なお、企業の職員として「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で在留していた外国人が、昇進等により当該企業の経営者や管理者となったときは、直ちに「経営・管理」の在留資格に変更することまでは要しないこととし、現に有する「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の在留期限の満了に併せて「経営・管理」の在留資格を決定しても差し支えない。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節 15-3(第10節 10-3にも同じ記述)

読み取れる要件は3つです。第一に、もともと「企業の職員」として技人国で在留していたこと。第二に、昇進によって「当該企業の」経営者や管理者になったこと。第三に、変更の時期は「現に有する」技人国の在留期限の満了に合わせることです。別の会社に役員として移る場合や、自分で会社を設立する場合は、この取扱いの文言に当たりません。

この記述は技人国の節(15-3)と経営・管理の節(10-3)の両方に同じ文言で置かれており、どちらの審査でも同じ結論になります。審査要領は情報公開請求で開示された内部基準で一部に黒塗りがありますが、この箇所に黒塗りはありません。

どこからが「経営者・管理者になった」といえるのか

課長への昇進と取締役への選任とでは、在留資格の見え方が違います。ここでいう経営に従事する活動とは、事業の運営に関する重要事項の決定、業務の執行、監査などに当たる代表取締役、取締役、監査役等の役員としての活動を指します。管理に従事する活動とは、「事業の管理の業務に従事する部長、工場長、支店長等の管理者としての活動」を指します(第10節 10-2)。

ここで重要なのは、肩書きより実際の業務で判断されるという論点です。審査要領は、申請人が経営や管理の業務に実質的に参画・従事していることを求め、実際に行う業務の内容を確認して判断するとしています(10-2)。部長の肩書きがあっても、実際には自分で設計や開発の仕事を続け、数名の部下の進捗を見ている程度であれば、事業の管理が主な仕事になったとはいえません。

また、申請人の業務内容に一部企業の経営活動や管理活動が含まれているが、「経営・管理」の活動には該当しない場合は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の該当性の有無について留意する。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節 15-3

つまり、管理的な仕事が一部に含まれるだけなら、引き続き技人国の在留資格該当性(その在留資格に当たる活動をしているかどうか)の問題として審査されます。昇進の種類ごとに筆者の整理を示すと、次のとおりです。

昇進の内容 在留資格の見方(筆者の整理)
チームリーダー・課長(自分も専門業務を担う) 管理業務は一部にとどまるため、技人国のまま。専門業務が主であることを説明できるかが論点
部長・工場長・支店長(事業の管理が主な仕事) 審査要領10-2の「管理者」に当たりうる。期限満了時に経営・管理への変更を検討
取締役・代表取締役・監査役 審査要領10-2の「役員」に当たる。期限満了時に経営・管理への変更を検討
高度専門職1号ロの社員が取締役に昇進 1号ハへの変更は不要(高度人材ポイント制Q&A 問24)

表の2行目と3行目は、昇進した社員の仕事の中心が経営や管理に移っていることが前提です。取締役に選任されても業務の大半が従来どおりの専門業務という会社では、業務の比重を資料で示したうえで判断されます。

比較的小規模な会社では、もう一つ見られる点があります。審査要領は、既存の事業に経営者や管理者として招かれる場合の注意点も挙げています。事業が小規模で申請人のほかにも経営や管理に当たる人がいるときは、投資の割合や業務内容をそれらの人と比較することも必要としています(10-2)。社長のほかに外国人の取締役が一人増える、という構図の会社では、その人が経営に当たる必要性と役割の違いを説明できるようにしておくべきです。

期限満了時の変更にかかる新しい基準

変更の時期を先延ばしにできても、基準が緩くなるわけではありません。技人国から経営・管理への変更は在留資格の新たな決定なので、2025年10月16日施行の上陸基準省令改正後の基準で審査されます。上陸許可基準適合性、すなわち省令が定める学歴・規模・報酬などの条件を満たしているかという観点で、管理者として従事する場合にかかる基準を整理すると次のようになります。

基準 内容 昇進した社員の場面での注意点
事業所 本邦に事業所が存在すること(第1号) 既存の会社であれば通常は問題になりにくい
常勤職員 常勤職員1人以上が従事すること(第2号イ) 数えられるのは日本人・特別永住者・永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者だけ。技人国などの外国人社員は数えない
資本金等 払込済資本の額または出資の総額が3,000万円以上(第2号ロ) 管理者にもかかる(改正Q&A 問10)。資本準備金・利益剰余金は含めず、複数の会社の合算も不可
日本語 申請者か常勤職員のどちらかがB2相当(第3号) JLPT N2以上、BJT 400点以上、日本の大学卒業などで証明。この項目の常勤職員には外国人社員も含まれる
経歴 経営管理分野等の博士・修士・専門職学位、または経営・管理の経験3年以上(第4号) 学士だけで管理の経験が短い社員は満たせない場合がある
報酬 事業の管理に従事する場合は日本人と同等額以上(第5号) 役員は定款または株主総会議事録、雇用される管理者は労働条件通知書で確認(10-11)

この中で昇進の場面に特有の難しさがあるのは、資本金等と経歴の2つです。技人国で雇っていた時点では、会社の資本金の額は審査の対象になっていませんでした。資本金が1,000万円の会社で社員を部長に昇進させ、期限満了時に経営・管理へ変更しようとすると、会社の規模が基準に届かないことが初めて問題になります。

経歴の要件は、学位か3年以上の経験のどちらかで足ります。経験年数には、本邦外での経歴と本邦での経営・管理の活動期間を含めるとされています(10-10)。一方、技人国の在留資格のまま管理者として働いた期間を、この3年の経験に数えられるかは、審査要領にも公表資料にも明示がありません【要確認】。昇進から在留期限までが1年ほどしかない社員は、学位の要件で満たせるかを先に確認しておくべきです。

事業計画書の専門家確認にも触れておきます。改正後の基準では、在留資格の決定時に出す新規事業計画について、中小企業診断士・公認会計士・税理士による確認が求められています(上場企業相当規模の場合等を除く。改正概要)。既存の会社で社員が昇進する場面にこの確認がどこまで求められるかは、公表資料の文言からは読み切れません【要確認】。

経過措置との関係も誤解が多い点です。改正には、施行から3年(令和10年10月16日)までの更新であれば新基準を満たさないことだけを理由に不許可にしない、という経過措置があります(改正Q&A 問1)。これは、すでに経営・管理で在留している人の「更新」についての措置です。技人国から経営・管理への変更は更新に当たらないため、筆者は経過措置の対象外と読んでいます。新基準の全体と経過措置の範囲は【2025年10月16日施行】経営管理ビザ厳格化の新基準と経過措置|資本金3,000万円・常勤職員・日本語要件で詳しく扱っています。

新基準に届かない会社で昇進させるとき

資本金等が3,000万円に届かない会社で、技人国の社員を取締役や部長に昇進させたい。中小企業からはこの相談が多く寄せられます。この場面では、在留資格該当性と上陸許可基準適合性を分けて考える必要があります。

昇進後の仕事が経営・管理の活動に当たる場合、その活動は技人国の括弧書きで除かれるため、技人国では説明できなくなります。そのうえで経営・管理の基準を満たさなければ、期限満了時にどちらの在留資格も決定されない、という事態が起こりえます。筆者はこの点を、昇進の人事で見落とされやすい最大のリスクと考えています。

実務上の選択肢は、大きく3つに分かれます。

  • 会社の資本金等を3,000万円以上にし、常勤職員・日本語・経歴の基準もそろえたうえで、期限満了時に経営・管理へ変更する
  • 肩書きは付与しても、業務の中心は専門業務のまま据え置き、管理業務は一部にとどめる形で技人国を続ける(15-3の「一部企業の経営活動や管理活動が含まれているが…該当しない場合」として説明する)
  • 本人が高度専門職1号ロの要件を満たす場合は、1号ロのまま取締役に就く(高度人材ポイント制Q&A 問24)

2つ目の選択肢は、実態と書類が一致していることが大前提です。取締役として重要事項の決定に日常的に関わっているのに、技人国の更新申請書には「システム開発」とだけ書く、という申請は、職務内容の説明として事実に反します。業務の比重を1日の時間配分や職務分掌で示せるかどうかが分かれ目になります。どこまでが技人国の範囲として認められるかは個別の審査によるため、この選択肢をとる場合は更新前に業務内容の整理を済ませておくべきです【要確認】。

3つ目の高度専門職については、Q&Aが1号ロから1号ハへの変更を「受けることはできますが、受ける必要はありません」としている点が根拠です(問24)。1号ハは会社の規模や役員であることが要件ではなく、部相当以上の管理職も該当しうるとされています(問26)。高度専門職の社員が別の会社に移る場合の手続は高度専門職1号ロで転職したら?在留資格変更許可が必要な理由と指定書・14日以内の届出を参照してください。

変更申請の時期と審査期間

期限満了時に変更すればよいといっても、期限の直前に申請するのは避けるべきです。出入国在留管理庁が公表している在留審査処理期間(令和8年7月許可分、許可に至った案件の平均)では、経営・管理への変更の告知までが194.5日、技人国の更新が40.8日でした。変更許可申請の標準処理期間は1〜2か月とされていますが、経営・管理への変更の実績はそれを大きく上回っています。

申請の種類 平均処理日数(令和8年7月許可分)
技術・人文知識・国際業務の更新 40.8日
技術・人文知識・国際業務への変更 72.9日
経営・管理への変更 194.5日
経営・管理の更新 43.9日

令和8年10月1日からは、変更・更新の手数料が許可される在留期間に応じて決まるようになりました(在留期間1年なら窓口33,000円、3年以上5年未満なら窓口64,000円)。

会社側の書類にも影響があります。令和8年4月15日以降、カテゴリー3・4の会社が技人国などの申請をするときは「所属機関の代表者に関する申告書」を出します。昇進した外国人社員が代表取締役になれば、ほかの外国人社員の申請で、この申告書に代表者の氏名(英字表記)と在留カード番号を書くことになります。

期限と標準処理期間の関係は在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?申請期限と標準処理期間を解説にまとめています。

当事務所で求められた資料から

昇進後の在留資格の審査では、組織の中で本人がどこに位置し、誰の指揮命令のもとで働くのかが問われます。この点に関わる資料要求を、当事務所は実際に受けています。

ケース:指揮命令系統図の提出を求められた
技人国の申請で、入管から本人の組織内の位置づけと指揮命令の流れを示す資料を求められた事案がありました。他社から実質的に指揮命令を受けていないかを確認する趣旨です。昇進後に経営・管理へ変更する場面でも、役員会や部門の組織図、職務分掌規程、決裁権限の範囲を示す資料で、本人が実際に事業の管理を担っていることを説明できるよう準備しておくことをおすすめします。

※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。

部長・支店長といった管理者として経営・管理を取る場合は、報酬や「事業の管理」の立証が論点になります。詳しくは部長・支店長として経営管理ビザを取る|管理者の報酬要件と「事業の管理」で扱っています。

よくある質問

Q. 昇進したら、すぐに入管へ何か申請しなければなりませんか?

同じ会社の中で経営者や管理者に昇進しただけであれば、その時点で「経営・管理」への変更申請をする必要はありません。入国・在留審査要領 第12編(開示版)15-3は「直ちに『経営・管理』の在留資格に変更することまでは要しない」とし、今の技人国の在留期限の満了に合わせて経営・管理を決定してよいとしています。なお、雇用契約が役員の委任契約に切り替わる場合に所属機関に関する届出が必要になるかは、契約の中身によるため個別に確認してください【要確認】。

Q. 昇進後、いったん技人国で更新してから経営・管理に変えてもよいですか?

審査要領が認めているのは、技人国の在留期限の満了に「併せて」経営・管理を決定する扱いです。技人国の更新では、申請書の職務上の地位と職務内容から技人国の活動を続けているかが確認されます(15-19〜15-20)。役員や部長として事業の経営・管理が主な仕事になっているなら、期限が来た時点で経営・管理への変更を申請するのが審査要領の想定に沿った進め方です。

Q. 会社の資本金が3,000万円未満でも、昇進した社員を経営・管理に変更できますか?

法人の場合は払込済資本の額または出資の総額が3,000万円以上であることが基準で、管理者として従事する場合にもこの要件がかかります(出入国在留管理庁「経営・管理」改正Q&A 問10)。資本準備金や利益剰余金は含めず、複数の会社の資本金を合算することもできません。3,000万円に届かない会社では、経営・管理への変更は基準を満たさないことになります。

Q. 高度専門職1号ロの社員が取締役になったら、1号ハへの変更が必要ですか?

必要ありません。出入国在留管理庁の高度人材ポイント制Q&A(問24)は、1号ロの人が同じ企業で取締役に昇進した場合、1号ハへの変更は「受けることはできますが、受ける必要はありません」としています。

昇進の辞令を出す前に確認すること

最初にやるべきことは、昇進させる社員の在留カードで在留期限を確認し、昇進後の業務が「事業の管理が主な仕事」になるのか「専門業務が主で管理は一部」なのかを社内で決めることです。前者であれば、会社の資本金等、常勤職員(日本人等)の有無、日本語と経歴の要件を一覧にし、期限までにそろうかを確かめてください。そろわない場合は、業務の設計を見直すか、高度専門職の要件を満たすかを検討する段階に進みます。

昇進を決める人事の場に、在留資格の確認を一項目として入れておくことをおすすめします。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節「技術・人文知識・国際業務」15-2〜15-3(他の在留資格との関係)、15-19〜15-20(審査のポイント)
  • 同 第10節「経営・管理」10-2〜10-3(該当性・他の在留資格との関係)、10-7(第4号・第5号)、10-10〜10-11(審査のポイント)
  • 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A 問1・問10ほか)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
  • 出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について」改正概要 https://www.moj.go.jp/isa/content/001448231.pdf
  • 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制Q&A」(問24・問26)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_qa.html
  • 出入国在留管理庁「在留審査処理期間(令和8年7月許可分)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00140.html
  • 出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」https://www.moj.go.jp/isa/01_00644.html
  • 出入国在留管理庁「所属機関の代表者に関する申告書(参考様式)」https://www.moj.go.jp/isa/content/001460262.pdf
  • 出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」手続ページ https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-2.html