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入社後の現場研修は技人国でできる?審査要領が認める「採用当初の実務研修」の条件

入社後の現場研修は、技術・人文知識・国際業務(技人国)のままでも行えます。条件は二つで、日本人の大卒社員等にも同じように行う研修の一環であること、そして研修が技人国で在留する予定の期間全体の大半を占めないことです。店舗での接客、小売店での販売、工場のラインといった、それだけを見れば技人国に当たらない業務でも、この条件を満たせば相当性を判断したうえで認められます。

「在留期間の大半」の分母は、1回の許可で決まる1年や3年ではありません。雇用契約書や研修計画から想定される、技人国で在留する期間の全体です。そのため、期間の定めのない雇用なら最初の1年間がすべて研修でもありえますが、3年契約で更新予定もないのに2年間研修する、といった申請は認められません。研修期間がある場合は、原則として在留期間1年が決定され、研修を終えて技人国の業務に移ったかどうかが次の更新で確認されます。

この記事でわかること

  • 審査要領が採用当初の実務研修を認める理屈と条件
  • 「在留期間の大半」を判断する分母の考え方と、1年を超える研修の扱い
  • 外国人社員だけの研修が認められない理由
  • 研修期間がある場合の在留期間(原則1年)と更新での確認
  • 飲食・小売・ホテル・派遣で研修を組むときの注意点

審査要領が実務研修を認める理屈

技人国で在留するには、技人国に該当する活動に従事していなければなりません。日本で行う活動が入管法別表の活動に当たるかどうかを在留資格該当性と呼び、技人国では学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務が求められます(15-2)。店舗での接客やラインでの組立作業は、それだけを取り出せばこの水準に届きません。

一方で、企業は採用した社員に現場を経験させてから専門の部署に配属することがよくあります。審査要領は、この実務と在留資格該当性の関係を、応用・資料編で次のように整理しています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 15-23)

「当該実務研修期間に行う活動のみを捉えれば『技術・人文知識・国際業務』の在留資格に該当しないように見えるとしても、それが日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であって、在留期間の大半を占めるようなものではないようなときは、相当性を判断した上で当該活動を許容する。」

ここでいう相当性とは、その活動を在留資格の枠内で認めることが適当かどうかの判断を指します。研修中の活動は、在留資格該当性の要件を正面から満たすものではありません。それでも、在留期間中の活動を全体として見れば技人国の業務に従事するための準備にあたるため、一定の条件のもとで許容する、という組み立てです。

出入国在留管理庁の公表資料も同じ立場です。「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」は、活動は在留期間中の全体で判断するとし、入社当初の研修で日本人も同じ研修を受けるものは許容するとしています。就労資格のQ&A(令和8年7月、Q36)も、採用後1年間のOJTは一般的には必要な研修として認められる、ただし在留期間の大半を占めるなら認めない、と答えています。

「在留期間の大半」の分母は在留予定の全体

研修が長すぎるかどうかは、何に対する割合で見るのか。審査要領はこの点を明確にしています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 15-23)

「ここでいう『在留期間中』とは、一回の許可毎に決定される『在留期間』を意味するものではなく、雇用契約書や研修計画に係る企業側の説明資料等の記載から、申請人が今後本邦で活動することが想定される『技術・人文知識・国際業務』の在留資格をもって在留する期間全体を意味する。」

この定義から、研修期間の長さそのものに一律の上限はなく、雇用の見込み期間との比較で決まることがわかります。審査要領が挙げる例と、公表資料の事例を並べると次のとおりです。

雇用の見込みと研修 扱い 出典
今後相当期間、技人国の業務に従事する予定で、在留期間1年が決定された 1年間すべて研修も想定し得る 15-23
雇用契約は3年間のみで更新予定なし、採用から2年間研修 認められない 15-23
採用から1年を超えて研修 研修計画の提出を求め、期間の合理性を審査 15-23
文学部卒・総合職で無期雇用、採用当初2年間スーパーの店舗で研修(日本人大卒者と同じキャリアプラン) 許可 別紙3 許可例(7)

2年間の店舗研修が許可された例があることは、長さだけで線を引かれるわけではないことを示しています。この例で決め手になっているのは、無期雇用であることと、日本人の大卒者と同じキャリアプランであることの二点です。逆に、有期契約で研修の割合が高くなる計画は、研修期間が同じでも認められにくくなります。1年を超える研修を予定するなら、研修計画を最初から用意しておくのが実務の基本です。

日本人社員と同じ研修かどうか

ここで重要なのは、研修の内容より先に、日本人社員との比較が問われるという論点です。審査要領は、必要に応じて、日本人社員を含めた入社後のキャリアステップと各段階の具体的な職務内容を示す資料の提出を企業に求め、そのうえで研修に従事することの相当性を判断するとしています(15-23)。

そして、次の二つの場合は、合理的な理由がない限り相当性を認めないとしています(15-23〜15-24)。

  • 実務研修が外国人社員だけにしか設定されていない場合
  • 日本人社員との差異が設けられている場合

合理的な理由の例として挙げられているのは、日本語研修を目的としたもの等です。外国人社員に日本語の研修を上乗せすることは差異にあたりますが、理由が説明できるため相当性は否定されません。これに対し、日本人の新卒は本社で企画の研修を受けるのに、外国人の新卒だけが店舗に配属されるといった設計は、研修という名目でも認められません。

審査要領は、採用当初だけでなく、キャリアステップの一環として契約期間の途中で行う実務研修も同様に扱ってよいとしています(15-24)。昇格前に一定期間現場を経験させる制度がある会社は、日本人社員にも同じ制度が適用されていることを示せれば、同じ考え方で説明できます。

研修の相当性を説明する資料としては、日本人社員にも適用される研修制度の規程や計画、研修後の配属先と職務内容、同期の日本人社員の配属の実績などが考えられます。単純作業に見える業務をどこまで任せてよいかの全体像は技術・人文知識・国際業務でやらせてはいけない業務とは?就労制限と企業のリスクを解説で整理しています。

研修期間がある場合、在留期間は原則1年

審査要領は、実務研修期間が設けられている場合について、研修を適切に修了した後、適切に技人国の業務に移行していることを確認する必要があるとしています。そのため、在留資格の決定時等には原則として在留期間「1年」を決定するという扱いです(15-24、在留期間の表の注5〈15-22〉も同旨)。通常は、1年後に確認すべき具体的な事情がなければ3年が決定される運用なので(15-21)、研修期間があることは1年になる代表的な理由の一つです。

つまり、最初の更新は研修の結果を確認する場になります。別紙1は、予定を超えて研修を続けると更新が不許可になりうるとしています。別紙3の不許可例にも、ホテルで過去に採用した外国人が研修予定を大幅に超えて研修を続けていたことが問題にされた例が挙がっています。飲食チェーンの「管理者候補」として技人国の業務への従事が確約されず、期間の決まらない店舗での接客・調理が続く計画だった例も同様です。

更新の際には、研修を終えて専門の業務に移ったことを、配属の辞令や職務内容の資料で示せるようにしておくべきです。入管は、専門業務が実際にどれだけの比重を占めているかを具体的に確認することがあります。

1日のタイムスケジュールの提出を求められたケース
入管から、対象者の1日の業務内容を時間単位で示すよう求められた案件がありました。専門業務が実際に主たる業務になっているかを確認するための資料要求で、どの粒度で業務を書き出せば審査官に伝わるかが結果を左右しました。

※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。

在留期間の決まり方の全体は技人国の在留期間5年・3年・1年はどう決まる?カテゴリーと審査要領の基準で扱っています。

飲食・小売・ホテルで研修を組むとき

別紙1は、飲食店での接客、小売店での販売、工場のライン等の業務であっても、日本人の大卒社員等にも同じように行う研修の一環で、在留期間の大半を占めないものは認めるとしています。業種によって研修が禁止されるわけではありません。

ホテル・旅館については別紙5が補足しています。採用当初の研修として技人国に当たらない業務に就くことは許容され、フロント業務の最中に団体客の荷物を運ぶなど、一時的に技人国に当たらない業務を行っても直ちに問題とはされません。ただし、それが主たる活動になっていれば、更新不許可等の可能性があるとされています。

飲食業では、研修の後に何をするのかが最も厳しく見られます。技人国で認められるのは複数店舗の管理・経営・企画といった業務で、研修後も1店舗で接客と調理を続ける計画では許可は見込めません。飲食店での扱いは技術・人文知識・国際業務ビザで飲食店に就労可能?【2026年審査厳格化】店舗管理のNGラインを解説で詳しく説明しています。

派遣会社が研修後に派遣先を決める場合

派遣形態の技人国は、申請時点で派遣先が確定していることが原則です。出入国在留管理庁の「在留資格『技術・人文知識・国際業務』をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて」(令和8年7月)は、その唯一の例外を挙げています。新規採用者に研修をした後でなければ派遣先が決まらない場合です。この場合は、研修内容を示す資料、派遣先で予定する業務範囲を具体的に書いた労働条件通知書、派遣元の誓約書を出します。派遣先が決まった後、派遣先の誓約書と労働者派遣個別契約書は派遣元が保管し、次回の更新時に提出します。合理的な理由なく出せない場合は、今後の審査で消極的な事情として扱われます。

内定者研修(留学中)

留学生の内定者を入社前の研修に呼ぶ場合、就労資格のQ&A(Q17)は、入社式や報酬の出ない研修には参加してよいとしています。報酬を支払う研修は就労にあたるため、留学の在留資格と資格外活動許可の範囲で行えるかを確認する必要があります。また、卒業して学籍がなくなった後はアルバイトができなくなります(Q15)。卒業から入社までの期間の過ごし方は留学から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ガイド|手順・必要書類・不許可対策で確認してください。

よくある質問

Q. 技人国の新入社員に、最初の1年間店舗で接客をさせても大丈夫ですか?

日本人の大卒社員等にも同じように行う研修の一環で、技人国で在留する予定の期間全体の大半を占めないものであれば、相当性を判断したうえで認められます。就労資格のQ&Aも、採用後1年間のOJTは一般的には必要な研修として認められるとしています。外国人社員だけの研修や、研修の後に技人国の業務へ移る予定が示せない場合は認められません。

Q. 研修期間は最長で何年まで認められますか?

年数の上限は決められていません。審査要領は、技人国で在留する予定の期間全体に対して研修が大半を占めないかで判断するとしています。期間の定めのない雇用であれば1年間すべて研修もありえ、公表事例には採用当初2年間の店舗研修が許可された例もあります。一方、3年契約で更新予定がないのに2年間研修する申請は認められません。1年を超える研修は研修計画の提出を求められます。

Q. 研修期間があると、在留期間はどうなりますか?

研修を適切に修了して技人国の業務に移行したことを確認する必要があるため、在留資格の決定時等には原則として在留期間1年が決定されます。予定を超えて研修を続けると、更新が不許可になる可能性があります。

Q. 内定中の留学生を入社前の研修に参加させてもよいですか?

就労資格のQ&Aは、入社式や報酬の出ない研修には参加してよいとしています。報酬を支払う研修は就労に当たるため、在留資格と資格外活動の範囲を確認する必要があります。卒業して学籍がなくなった後は、アルバイトはできません。

研修を組み込んだ採用計画を作るときは

研修を予定しているなら、申請の前に三つを文書にしておいてください。一つ目は、日本人の大卒社員にも同じ研修が適用されていることを示す研修制度の資料です。二つ目は、研修の期間と、研修後に配属する部署・職務内容を書いたキャリアステップの資料で、研修が1年を超える場合は研修計画として整えます。三つ目は、雇用契約の期間と更新の見込みで、研修期間が在留予定の全体の大半にならないことを確認します。

そして最初の更新では、研修を予定どおり終えて専門の業務に移ったことを示す必要があります。研修の設計や雇用理由書の書き方で迷う場合は、採用計画の段階でご相談ください。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節第2「応用・資料編」1「採用当初に行われる実務研修に係る取扱いについて」15-23〜15-24
  • 同 第15節第1の2(2)「用語の意義」15-2、6「在留期間」15-20〜15-22(注5)
  • 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」(令和8年4月改定)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html
  • 同 別紙1「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格で許容される実務研修について」https://www.moj.go.jp/isa/content/001413640.pdf
  • 同 別紙3(許可・不許可事例)https://www.moj.go.jp/isa/content/001413912.pdf
  • 同 別紙5「ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について」https://www.moj.go.jp/isa/content/001413644.pdf
  • 出入国在留管理庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」(令和8年7月)https://www.moj.go.jp/isa/content/001344550.pdf
  • 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて」(令和8年7月)https://www.moj.go.jp/isa/content/001457164.pdf