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技人国の実務経験10年要件|学歴がなくても申請できる場合と在学期間の算入

大学や専門学校を卒業していない外国人でも、従事する業務に関連する10年以上の実務経験があれば、技術・人文知識・国際業務(技人国)の基準を満たします。ここでいう10年要件とは、大学や専門学校の卒業の代わりに、業務に関連する10年以上の実務経験を求める基準省令第1号ハの定めを指します。この10年には、高校・高専・大学・専門学校などで関連科目を専攻した期間を含めることができます(入国・在留審査要領 第12編(開示版)15-8〜15-9)。

一方で、10年に数えられない期間もはっきり決まっています。学校に在籍しながらアルバイト的に働いた期間、日本で特定技能・技能実習として働いた期間、就く予定の業務と関係のない仕事の期間です。また、10年の経験があっても、日本で就く業務が技人国の水準に達していなければ許可されません。

この要件で申請する場合の勝負どころは、年数を足し算することより、各期間の中身を書類で示すことにあります。基準の全体像は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?学歴・実務経験・給与条件をわかりやすく解説にまとめているので、ここでは10年要件の数え方と立証に絞って整理します。

この記事でわかること

  • 基準省令第1号ハ(10年以上の実務経験)の条文と位置づけ
  • 10年に算入できる在学期間と、算入できない期間
  • 10年の経験があっても許可されない「業務の水準」の問題
  • 在職証明書などで実務経験を立証するときの注意点

基準省令第1号ハ:学歴の代わりになる10年

技人国の上陸許可基準を定めた省令(基準省令)の第1号は、自然科学・人文科学の分野の業務に就く人の経歴要件です。イ(大学卒業またはこれと同等以上の教育)、ロ(本邦の専修学校の専門課程の修了)、ハ(実務経験)のいずれかに該当すればよく、ハは次のように定められています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 15-8、基準省令第1号ハの引用)

「十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間を含む。)を有すること。」

審査要領は、イからハの要件の意味を「一定の学歴要件を有し又は一定年数以上の実務経験を有していることにより、従事しようとする業務に必要な技術又は知識を修得していることが必要」と説明しています(15-8)。学歴と実務経験は、業務に必要な知識を身につけた経路の違いとして並べられているということです。

10年の要件が使えるのは、技術・人文知識の業務(第1号)です。翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務などの国際業務(第2号)では、関連する業務の3年以上の実務経験が原則です。ただし、大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学の指導に就く場合は実務経験も要りません(15-17〜15-18)。担当させる業務がどちらに当たるかで、必要な年数が大きく変わります。出入国在留管理庁の「在留資格『技術・人文知識・国際業務』と『特定技能』の違いについて」も、技人国の要件を大卒程度または実務10年以上(国際業務は3年以上)と整理しています。

10年に数えられる期間、数えられない期間

実務経験の定義は、審査要領の総則にあります。実務経験は「職業活動として従事した期間」をいい、教育機関(夜間学部を除く)に所属している間にアルバイト的に従事した期間は含みません(1-16)。数える対象は「従事しようとする業務に関する」経験です。これに第1号ハの在学期間の算入と、特定技能等の扱い(15-11〜15-12)を重ねると、次のように整理できます。

期間の種類 10年への算入 根拠
就く予定の業務に関連する仕事に、職業活動として従事した期間(国内・国外) 算入できる 1-16、15-8
大学・高専・高校・中等教育学校の後期課程・専修学校の専門課程で、関連科目を専攻した期間 算入できる 15-8〜15-9
学校に在籍しながらアルバイト的に従事した期間 算入できない(夜間学部を除く) 1-16
日本で特定技能・技能実習として従事した期間 基本的には算入できない 15-11〜15-12
就く予定の業務と関係のない仕事の期間 算入できない 1-16

特定技能・技能実習の期間について、審査要領は「基本的には、特定技能等の活動によって得た経験は上陸基準省令に定める『実務経験』とは評価しない」としています(15-11)。「基本的には」に続く部分は開示版では黒塗りとみられ、例外の有無は読めません。詳しくは特定技能から技人国へ変更できる?特定技能・技能実習の経験は実務経験に数えないで扱っています。

在学期間はどこまで足せるか

算入できる在学期間は、列挙された5種類の学校で「当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間」に限られます。在学していた期間なら何でも足せるわけではありません。たとえば工業高校の機械科で3年間学び、卒業後に機械設計の仕事を7年続けた人であれば、専攻期間3年と実務7年を合わせて10年と数える余地があります。同じ高校でも、普通科で過ごした3年は、機械設計に係る科目を専攻した期間とは言いにくいと筆者は考えます。

列挙に中学校は入っていません。専修学校も「専門課程」に限られています。算入の可否は、学校の種類と、その課程で何を専攻したかの二段で判断されることになります。

判断が分かれそうなのは、大学や専門学校を中退した場合です。条文は「専攻した期間を含む」と書いており、卒業を条件にしていません。このため、中退した学校で関連科目を専攻した期間も算入の余地があると筆者は読んでいますが、審査要領に直接の記述はありません【要確認】。中退期間を足してようやく10年に届く場合は、その期間を除いても説明が成り立つかを先に検討してください。

10年あっても許可されない場合:業務の水準

ここで重要なのは、10年の実務経験は業務の水準を下げる規定ではないという論点です。技人国の業務について、審査要領は次のように定めています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 15-2)

「単に経験を積んだことにより有している知識では足りず、学問的・体系的な知識を必要とするもの」

「自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務」の意味として、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であることを求める記述です。

実務経験で申請する人にとって、この一文は矛盾して見えるかもしれません。筆者は次のように読んでいます。10年の実務経験は、本人がその知識を「どうやって身につけたか」の代替の証明です。日本で就く業務が、経験を積めば誰でもできる業務であってよいという意味ではありません。実務経験10年で申請する場合も、業務そのものが学問的・体系的な知識を要することを、学歴で申請する場合と同じ水準で説明する必要があります。

出入国在留管理庁の公表資料も、採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と書かれるような業務は対象にならないとしています。学歴・実務経験の要件を満たさない日本人従業員が一般的に従事している業務も同様です(「明確化等について」)。長年現場で働いてきた人を現場の作業員として迎える計画であれば、年数が何年あっても技人国の対象にはなりません。

10年の立証:審査で確認されること

審査要領は、基準適合性について、申請書の「最終学歴及び専攻・専門分野又は実務経験年数」欄の記載と立証資料により、基準省令第1号に適合することを確認するとしています(15-19)。実務経験で申請する場合、申請書の職歴欄と、期間ごとの立証資料が一致していることが出発点です。

立証資料の中心は、過去の勤務先ごとの在職証明書と、在学期間を足す場合の卒業証明書・成績証明書です。筆者が在職証明書で確認している事項は次のとおりです。

  • 勤務先の名称、所在地、電話番号
  • 在職期間(開始と終了の年月日)
  • 従事した業務の内容(日本で就く業務との関連が分かる程度の具体性)
  • 作成者の氏名・役職と作成日

在学期間を足す場合は、成績証明書で、業務に係る科目を専攻していたことが読み取れるかを確認します。学校の名称だけでは、どの科目を専攻したかは伝わりません。

海外の書類については、真偽の確認が行われることがあります。審査要領は、卒業証明書等の信ぴょう性に疑義がある場合に、学校の名称・所在地・電話番号などを明記して在外公館経由で外務省に照会する手順を定めています(1-13〜1-14)。在職証明書について同じ手順の記述はありませんが、職歴が10年に及ぶ申請では勤務先も学校も複数になりやすく、どれか一つの記載の誤りが経歴全体の信用性に響きます。

経歴の誤りを隠さず説明して許可されたケース
経歴の記載に、詐称と受け取られても仕方がない誤りがあった案件を担当したことがあります。このときは誤りを隠さず、経緯を説明したうえで申請し、許可を受けました。

※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。

勤務先が倒産していて在職証明書が取れない、勤務先の間に空白期間がある、といった事情も珍しくありません。その場合は、代わりに出せる資料と、空白の理由を申請前に整理しておきます。年数の数え方の共通ルールは就労ビザの実務経験年数の数え方|アルバイト・インターンは職歴に入るかで詳しく書いています。

10年に届かないときの選択肢

情報処理の業務に就く場合は、法務大臣が告示で定める情報処理技術の試験に合格しているか資格を持っていれば、第1号の学歴・実務経験の要件を満たすことを要しません(15-9)。対象の試験は情報処理技術者試験(IT告示)で学歴要件を満たす|対象試験と中国資格の有効期限で扱っています。業務が国際業務に当たるなら、関連業務の3年で足ります。

外国料理の調理師など、熟練した技能を要する業務であれば、技人国ではなく在留資格「技能」の対象です。技能にも10年などの実務経験の基準があり、技人国とは要件の組み立てが違います。違いは技能ビザとは?対象職種・実務経験10年の要件と技人国との違いを審査要領で解説で確認できます。

よくある質問

Q. 大学も専門学校も出ていなくても、技人国は取れますか?

取れる場合があります。基準省令第1号ハにより、従事する業務に関連する10年以上の実務経験があれば、学歴要件の代わりになります。ただし、業務そのものが学問的・体系的な知識を要する技人国の水準の業務であることは変わらず求められます。

Q. 高校で学んだ期間も10年に含められますか?

含められます。大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程、専修学校の専門課程で、業務に必要な技術または知識に係る科目を専攻した期間は10年に算入できます。普通科など業務と関係のない課程で過ごした期間は、専攻した期間に当たらないと考えられます。

Q. 日本で技能実習や特定技能として働いた期間は10年に含まれますか?

基本的には含まれません。審査要領は、特定技能・技能実習の活動で得た経験は上陸基準省令の実務経験とは評価しないとしています。例外に関する部分は開示版では黒塗りとみられ、確認できません。

Q. 通訳や海外取引の仕事でも10年の実務経験が必要ですか?

国際業務に当たる翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務などは、基準省令第2号により、関連する業務の3年以上の実務経験で足ります。大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学の指導に就く場合は、実務経験も要りません。

申請の前に作っておきたい一覧表

実務経験10年で申請を考えるなら、最初に、本人の学歴と職歴を時系列の一覧表にしてください。期間ごとに、学校名と専攻、または勤務先名と業務内容を書き、日本で就く業務に関連するものに印をつけます。関連する期間の合計が10年に届くか、在学中のアルバイトや特定技能・技能実習の期間が混じっていないかを確かめたうえで、各期間の在職証明書と成績証明書を取り寄せます。一覧表と証明書の期間が一致しない箇所は、申請前に理由を確認しておきます。

一覧表を作った段階で年数が足りるか判断に迷う場合や、証明書が取れない期間がある場合は、書類を取り寄せる前にご相談ください。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節「技術・人文知識・国際業務」15-2、15-8〜15-9、15-11〜15-12、15-17〜15-19
  • 同 第2章第1節第5「学歴」1-13〜1-14、第7「実務経験」1-16
  • 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html
  • 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』と『特定技能』の違いについて」https://www.moj.go.jp/isa/content/001452975.pdf