ここでいう実務経験とは、就労ビザの基準で年数を数える対象になる「職業活動として従事した期間」を指し、それ以外の期間は数えません。大学や専門学校に在籍している間にアルバイト的に働いた期間は、どれだけ長くても含みません(夜間学部に在籍していた場合を除く)。この共通ルールは、入国・在留審査要領 第12編(開示版)の第1節第7「実務経験」(1-16)に書かれています。
一方で、学校で関連科目を専攻した期間を実務経験に足せる在留資格があります。技術・人文知識・国際業務(技人国)の10年、技能の調理師の10年などがそうで、基準省令に「専攻した期間を含む」と書かれているものに限られます。逆に、特定技能・技能実習で働いた期間は、原則として技人国などの実務経験には数えません。高度専門職のポイント計算では、専攻期間も数えないという別の物差しが使われます。
同じ「実務経験○年」でも、在留資格によって足せる期間と足せない期間が違います。インターンシップの扱いを含め、年数の数え方を在留資格ごとに整理します。
この記事でわかること
- 実務経験の共通ルール(職業活動として従事した期間、在学中のアルバイトの除外)
- 技人国10年・国際業務3年・技能10年などで、専攻期間を足せる場合
- インターンシップ・特定技能・技能実習の期間の扱い
- 高度専門職の職歴ポイントとの違いと、在職証明書の書き方
共通ルール:実務経験は「職業活動として従事した期間」
在留資格の基準の中には、学歴の代わりに、または学歴に加えて、一定年数の実務経験を求めるものがあります。この実務経験をどう数えるかについて、審査要領は全体に共通する定義を置いています。
審査要領ではこう書かれている(第12編 1-16)
「従事しようとする業務に関する実務経験は、職業活動として従事した期間を言い、教育機関(夜間学部を除く。)に所属している間にアルバイト的に従事した期間を含まない。」
続けて、上陸基準省令に教育機関で業務に係る科目を専攻した期間を含む旨の規定があるものは、その期間を含むとしています。
この一文には3つの要素があります。一つ目は、数えるのは「従事しようとする業務に関する」経験だという点です。日本で就く予定の業務と関係のない仕事の年数は、長くても足せません。二つ目は、「職業活動として」従事した期間であることです。三つ目は、学校に在籍している間のアルバイト的な就労を除くという点で、夜間学部に在籍していた場合だけが例外とされています。
そのうえで、専攻期間を足せるかどうかは在留資格ごとの基準省令の書き方で決まります。共通ルールは「足せない期間」を決め、各基準省令が「足せる期間」を追加する、という二段の構造です。
在留資格ごとの年数と、専攻期間を足せるか
主な就労系の在留資格について、求められる年数と、専攻期間などを足せるかどうかを一覧にすると次のとおりです。
| 在留資格・区分 | 求められる実務経験 | 足せる期間 | 審査要領 |
|---|---|---|---|
| 技人国(技術・人文知識) | 10年以上(学歴要件の代わり) | 大学、高専、高校、中等教育学校の後期課程、専修学校の専門課程で関連科目を専攻した期間 | 15-8〜15-9 |
| 技人国(国際業務) | 関連する業務で3年以上 | 記載なし。大卒者が翻訳・通訳・語学の指導に就く場合は不要 | 15-17〜15-18 |
| 技能(外国料理の調理師) | 10年以上 | 外国の教育機関で当該料理の調理等に係る科目を専攻した期間 | 18-2 |
| 技能(タイ料理人・日タイEPA) | 5年以上 | タイ労働省の技能水準証明書を取得するための教育期間 | 18-2、18-9 |
| 技能(外国特有の建築・土木) | 10年以上(10年以上の経験者の指揮監督下なら5年以上) | 教育機関で専攻した期間 | 18-3〜18-4 |
| 技能(スポーツ指導者) | 3年以上(国際競技会の出場歴等でも可) | 専攻した期間、プロ選手として報酬を受けていた期間 | 18-6 |
| 経営・管理 | 経営・管理の経験3年以上(学位の代わり) | 起業準備の「特定活動」の期間 | 10-7 |
| 高度専門職(職歴ポイント) | 3年以上から段階評価 | 専攻期間・研究期間は含まない | 9-9〜9-10 |
技能には、ほかにも外国特有製品の製造・修理、宝石・貴金属・毛皮の加工、動物の調教、石油・地熱の掘削調査などの区分があります。いずれも10年以上の実務経験(教育機関での専攻期間を含む)が基準です(18-4〜18-5)。ソムリエは5年以上の実務経験に加えてコンクールの成績等が必要で、航空機の操縦士は年数ではなく250時間以上の飛行経歴で判断されます(18-5〜18-8)。
技人国の10年と、国際業務の3年
技人国の実務経験要件は、学歴がない人のための入口です。基準省令第1号ハについて、審査要領は次のように書いています。
審査要領ではこう書かれている(第12編 15-9)
「10年以上の実務経験を有することを要する。この年数には、大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間を含むものとする。」
足せるのは「当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間」なので、在学期間ならどれでもよいわけではありません。たとえば工業高校の機械科で3年間学び、卒業後に機械設計の仕事を7年続けた人であれば、専攻期間3年と実務7年を合わせて10年と数える余地がある、と筆者は読んでいます。この場合、専攻の中身は成績証明書などで、実務の中身は在職証明書などで示すことになります。10年要件の詳しい使い方は技人国の実務経験10年要件|学歴がなくても申請できる場合と在学期間の算入で扱っています。
国際業務(翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発など)は、原則として3年以上の実務経験が必要です。審査要領は、この経験は「関連する業務について」のものであれば足り、日本で就く業務そのものの経験までは要らないとしています(15-18)。大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学の指導に就く場合は、3年の経験も要りません。広報・宣伝・海外取引などは、大卒でも3年が必要です。
在学中のアルバイトは職歴に入らない
共通ルールのとおり、学校に在籍している間にアルバイト的に働いた期間は実務経験に入りません。留学生として日本の専門学校に通いながら飲食店や通訳のアルバイトを4年続けた人でも、その4年は国際業務の3年にも技人国の10年にも足せません。例外は夜間学部に在籍していた場合です。
ここで重要なのは、アルバイト歴を職歴として書き込むことが、年数に数えられないだけでは済まない場合があるという論点です。留学生の資格外活動には時間の上限があります。出入国在留管理庁が公表している不許可事例には、留学中に1年以上、月200時間以上アルバイトをしていたことが判明して不許可になったものがあります。この事例は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(別紙3)に載っています。在学中の就労を実務経験として申告しようとすると、その就労時間そのものが審査の対象になることを念頭に置いてください。
インターンシップは職歴に入るか
審査要領の第1節第7には、インターンシップという言葉は出てきません。判断は共通ルールに当てはめて考えることになります。
在学中のインターンシップは、教育機関に所属している間の就労なので、算入は難しいと筆者は考えています。教育の一環として行う実習であれば、そもそも「職業活動として従事した期間」に当たりにくいからです。この読みを裏づける記述として、技能の動物調教の区分があります。審査要領は、特定の国では教育期間中にも調教に従事するのが通常である場合に、「総則の規定にかかわらず実務経験として差し支えない」と例外を認めています(18-4〜18-5)。わざわざ例外を書いていることから、原則として教育期間中の従事は数えないという前提があると読めます。
卒業後に企業と契約を結び、報酬を受けて業務に従事した期間は、名称がインターンシップであっても、職業活動として従事した期間かどうかで判断されると読めます。ただし、卒業後のインターンシップの扱いを直接書いた記述は審査要領にも公表資料にもありません【要確認】。年数がぎりぎりの場合は、インターン期間を除いても要件を満たすかを先に確認してください。
特定技能・技能実習の経験は原則として数えない
特定技能や技能実習で日本で働いた期間は、職業活動には違いありませんが、技人国の実務経験としては原則として評価されません。
審査要領ではこう書かれている(第12編 15-11)
「基本的には、特定技能等の活動によって得た経験は上陸基準省令に定める『実務経験』とは評価しない。」
審査要領は、その理由を二つ挙げています(15-11〜15-12)。一つは、特定技能外国人のキャリアアップは基本的に特定技能1号から2号への移行で行うこととされ、特定技能1号から技人国に変更してキャリアアップを図ることは「想定されていない」ことです。もう一つは、技人国の活動と特定技能・技能実習の活動は概念上交わらないことです。この考え方は国際業務の3年にも、「技能」など技人国以外の在留資格にも同様に当てはまるとされています。
「基本的には」と書かれているとおり、例外の余地を残した書き方です。ただし、この記述に続く部分は開示版では黒塗りとみられ、例外の有無や中身は読めません。特定技能から技人国への変更を検討する場合の考え方は特定技能から技人国へ変更できる?特定技能・技能実習の経験は実務経験に数えないで扱っています。
高度専門職の職歴ポイントとの違い
高度専門職のポイント計算にも「職歴」の項目がありますが、数え方は技人国と違います。審査要領第9節は、職歴ポイントの実務経験も職業活動として従事した期間で、在学中のアルバイト的な就労は含まないとしています。技人国などの基準は大学等での専攻期間を実務経験に含めていますが、職歴ポイントはこれと異なります。職歴ポイントには「これら教育機関における研究期間・専攻期間は含まれない」とされています(9-9〜9-10)。
理由として挙げられているのは、職歴ポイントは学歴か実務経験のどちらかを求める技人国の基準とは考え方が異なり、職業経験で培った能力を評価するものだという点です。同じ人でも、技人国の10年の計算と高度専門職の職歴の計算では、年数が変わることがあります。詳しくは高度専門職の職歴ポイント|実務経験の数え方と1号ロ・1号ハの違いで扱っています。
実務経験の立証:在職証明書に何を書くか
実務経験は、申請書の職歴欄の記載と立証資料で確認されます(技人国は15-19)。立証の中心は、過去に勤めていた会社が作成する在職証明書です。高度専門職の職歴ポイントでは「所属していた機関作成のもの」が求められ(9-41)、本人が作った履歴書だけでは足りません。
技能の調理師の場合、在職証明書は「所属機関の名称、所在地及び電話番号が記載されているものに限る」とされています(18-8〜18-9)。出入国在留管理庁の技能のページも同じ条件を示し、中華料理人については公的機関の証明書として戸口簿と職業資格証明書の写しを挙げています。在職証明書には、少なくとも次の事項が入っているかを確認してください。
- 勤務先の名称、所在地、電話番号
- 在職期間(開始と終了の年月日)
- 従事した業務の内容(日本で就く業務との関係が分かる程度の具体性)
- 作成者の氏名・役職と作成日
複数の勤務先の期間が重なっていたり、空白期間があったりする場合は、その理由を説明できるようにしておきます。職歴の記載に誤りがあると、年数の問題にとどまらず、経歴全体の信用性の問題になります。
経歴の誤りを隠さず説明して許可されたケース
経歴の記載に、詐称と受け取られても仕方がない誤りがあった案件を担当したことがあります。このときは誤りがあることを隠さず、経緯を説明したうえで申請し、許可を受けました。
※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。
企業内転勤の「1年」との関係
企業内転勤の基準にある「転勤の直前に外国の事業所で継続して1年以上」という要件は、実務経験の年数とは性格が違います。数えるのは転勤直前の継続勤務で、業務は技人国に当たる業務であれば足り、日本で就く業務と同じである必要はありません(16-3)。1年に満たない場合の選択肢は企業内転勤の1年要件|海外勤務1年未満の社員を日本に呼ぶ方法と技人国への切替えで扱っています。
よくある質問
Q. 留学中のアルバイト経験は、就労ビザの実務経験に数えられますか?
数えられません。審査要領は、実務経験を職業活動として従事した期間と定義し、教育機関に所属している間にアルバイト的に従事した期間は含まないとしています。例外は夜間学部に在籍していた場合です。
Q. 在学中のインターンシップは職歴に入りますか?
審査要領にインターンシップを直接扱った記述はありませんが、在学中の就労は教育機関に所属している間のものなので、算入は難しいと考えられます。卒業後に契約を結び報酬を受けて従事した期間は、名称にかかわらず職業活動かどうかで判断されると読めますが、直接の記述はないため個別の確認が必要です。
Q. 技人国の実務経験10年に、学校で学んだ期間を含めてもよいですか?
含められます。大学、高専、高校、中等教育学校の後期課程、専修学校の専門課程で、業務に必要な技術または知識に係る科目を専攻した期間は10年に算入できます。関連のない科目の在学期間は算入できません。
Q. 特定技能で5年働いた経験は、技人国の実務経験になりますか?
原則としてなりません。審査要領は、基本的には特定技能・技能実習の活動で得た経験を上陸基準省令の実務経験とは評価しないとしています。国際業務の3年や技能の実務経験でも同様です。例外に関する記述は開示版では黒塗りとみられ、読むことができません。
Q. 高度専門職の職歴ポイントも、技人国と同じ数え方ですか?
違います。高度専門職の職歴ポイントでは、在学中のアルバイトに加えて、大学等での研究期間・専攻期間も含まれません。職業経験で培った能力を評価する項目だからです。
年数を数える前にそろえておくもの
実務経験で要件を満たそうとする場合は、年数を足し算する前に、どの在留資格のどの基準を使うかを決めてください。技人国の10年なのか、国際業務の3年なのか、技能の10年なのかで、足せる期間が変わるからです。そのうえで、過去の勤務先ごとに在職証明書を取り寄せ、期間と業務内容が申請書の職歴欄と一致しているかを確認します。在学期間を足す場合は、成績証明書で関連科目の専攻を示せるかも確認が必要です。
学歴・実務経験・報酬の要件全体は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?学歴・実務経験・給与条件をわかりやすく解説で確認できます。年数の数え方や在職証明書の内容に不安がある場合は、書類を取り寄せる前の段階でご相談ください。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節第7「実務経験」1-16
- 同 第15節「技術・人文知識・国際業務」15-8〜15-9、15-11〜15-12、15-17〜15-19
- 同 第18節「技能」18-2〜18-9
- 同 第10節「経営・管理」10-7、第9節「高度専門職」9-9〜9-10、9-41、第16節「企業内転勤」16-3
- 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」別紙3(許可・不許可事例)https://www.moj.go.jp/isa/content/001413912.pdf
- 出入国在留管理庁 在留資格「技能」ページ(調理師としての活動を行おうとする場合)https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/skilledlabor01.html