業務委託契約でも就労ビザは取れます。入国・在留審査要領は、技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)などで求められる「契約」について、「雇用のほか、委任、委託、嘱託等が含まれる」と明記しています(第12編(開示版)1-1)。雇用契約であることは要件ではありません。
ただし同じ箇所に、その契約は「特定の機関(複数でもよい。)との継続的なものでなければならない」とあります。決まった取引先と継続して結ぶ業務委託なら対象になり得ますが、不特定多数から単発で仕事を受けるフリーランスの働き方は対象外です。その場合、審査要領は個人事業主として「経営・管理」に当たる場合があるとしています。ただし、経営・管理は2025年10月16日の改正で資本金等3,000万円以上などの基準に変わっており、ハードルは高くなっています。
もう一つの例外が特定技能で、契約の形態は雇用契約に限られます。業務委託で外国人と働きたい企業と、フリーランスとして日本で働きたい外国人本人に向けて、どこまでが認められるかを審査要領の文言から整理します。
この記事でわかること
- 「本邦の公私の機関との契約」が要件になっている在留資格
- 業務委託・委任でも認められる根拠と、「特定の機関」「継続的」の意味
- 個人事業主や外国法人が契約相手になれるか
- 継続的な契約がない場合の「経営・管理」と、2025年10月改正後の基準
- 特定技能が雇用契約に限られる理由と偽装請負の審査
「本邦の公私の機関との契約」が求められる在留資格
審査要領は、高度専門職、研究、技人国、介護、技能、特定技能の6つの在留資格について、活動が「(外国人本人と)本邦の公私の機関との契約に基づいて」行われることを求めています(1-1)。ここでいう「本邦の公私の機関」とは、日本国内で事業を行う組織や人を指し、その範囲は想像より広く定められています。
審査要領ではこう書かれている
「本邦の公私の機関」には、国、地方公共団体、独立行政法人、会社、公益法人等の法人のほか、任意団体(ただし、契約当事者としての権利能力はない。)も含まれる。また、本邦に事務所、事業所等を有する外国の国、地方公共団体(地方政府を含む。)、外国の法人等も含まれる。さらに個人であっても、本邦で事務所、事業所等を有する場合は含まれる。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節第1「本邦の公私の機関との契約」1(1-1)
分かれ目は法人格の有無ではなく、日本に事務所・事業所等を持っているかどうかです。個人事業主も、日本に事務所を構えていれば契約の相手方になれます。外国の会社も、日本に事業所があれば含まれます。任意団体は「本邦の公私の機関」には含まれますが、契約当事者になる権利能力がないため、団体そのものとは契約を結べません。
業務委託・委任でも「契約」に当たる
審査要領ではこう書かれている
「契約」には、雇用のほか、委任、委託、嘱託等が含まれるが、特定の機関(複数でもよい。)との継続的なものでなければならない(「特定技能」の在留資格については、「契約」の形態は雇用契約に限る。)。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節第1「本邦の公私の機関との契約」2(1-1)
公表資料も同じ立場です。入管庁の「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」(令和8年7月)のQ37が、この点に答えています。「契約」には委任・委託・委嘱も含むが、特定の機関(複数でも可)と継続的な関係である必要がある、という回答です。
つまり、技人国のエンジニアや翻訳者が、ある会社と業務委託契約を結んでその会社の仕事をする形は、それだけで排除されるものではありません。審査されるのは契約の名前より、誰と、どれだけ継続して、どんな業務をするかです。業務の中身が技人国の範囲に入っているか、学歴・職歴との関連があるか、報酬が日本人と同等額以上か、という通常の要件は、雇用の場合と同じようにかかります。技人国の要件全体は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?学歴・実務経験・給与条件をわかりやすく解説で確認できます。
「特定の機関」と「継続的」をどう満たすか
ここで重要なのは、この二つの言葉が、フリーランスという働き方のどこに線を引いているかという論点です。「特定の機関」とは、契約の相手方が具体的に決まっていることを指し、「継続的」とは、その相手方との関係が一回きりでなく続くことを指します。「複数でもよい」とあるので、取引先が1社に限られるわけではありません。
審査要領はさらに、契約に基づく活動が「本邦において適法に行われるものであることを要する」こと、「在留活動が継続して行われることが見込まれることが必要である」ことも明記しています(1-1)。この文言を働き方に当てはめると、筆者は次のように整理しています。
| 働き方 | 審査要領の文言に照らした評価 |
|---|---|
| 日本の会社1社と、期間を定めた業務委託契約を結び、更新しながら継続して業務を行う | 特定の機関との継続的な契約として検討の対象になる |
| 日本の会社2〜3社と、それぞれ継続的な業務委託契約を結ぶ | 「複数でもよい」とされており、検討の対象になる |
| クラウドソーシング等で、不特定の依頼者から単発の案件を受ける | 特定の機関との継続的な契約とは言いにくく、「経営・管理」の検討対象になる |
| 契約書がなく、口頭の約束だけで仕事を受ける | 契約の相手方・期間・業務内容を立証できず、要件を示せない |
表の評価は審査要領の文言から筆者が整理したもので、個別の許否は契約の内容と立証資料しだいです。筆者が最初に確認するのは、契約期間、業務の範囲、報酬の額と支払方法が書面で特定されているかです。入管庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」は考慮事項の一つに独立生計を挙げているので、その契約で生計が成り立つ規模かも説明できるようにしておくべきです。
契約の当事者は誰になるか
業務委託の相手が会社の支店や営業所の場合、契約書に支店長が署名していることがあります。審査要領は、契約の当事者になれるのは自然人と法人格を持つ団体に限られるとし、支店長が法人を代理・代表して署名していれば、当事者は法人そのものだと整理しています。個人経営の事業者と契約する場合は、その経営者本人が当事者です(1-1)。
海外の会社を間に挟む契約もあります。たとえば外国の人材会社と日本の会社が契約し、外国人本人はその枠組みで日本で働く、という形です。審査要領は、外国の機関と日本の機関が外形上の当事者になっている契約書でも、次の6つが確認できれば「外国人本人と本邦の公私の機関との間に労働契約が成立している」と扱うとしています(1-2〜1-3)。
- 日本に入国する者として当該外国人が特定されていること
- 当該外国人の使用者である日本の機関が特定されていること
- 日本の機関が当該外国人と「労働契約を締結する」旨が明示されていること
- 労働条件として、労働基準法施行規則5条1項1号から4号の事項が明示されていること
- 日本の機関が日本の労働基準法を遵守する旨が明示されていること
- 日本の機関が当該外国人に賃金を直接支払う旨が明示されていること
1つでも欠けると、本人との契約があるとは認められません。とくに賃金の直接支払と労働基準法の遵守は、機関どうしの契約書では抜けやすい項目です。
継続的な契約がないなら「経営・管理」の検討になる
審査要領は、「特定の機関との継続的契約によらない場合には、個人事業主として『経営・管理』に該当する場合がある」と書いています(1-1)。自分で事業を営み、不特定の顧客から仕事を受けるのであれば、それは契約に基づいて働く活動より、事業を経営する活動に近いという整理です。
ところが、経営・管理の基準は2025年10月16日に大きく変わりました。入管庁の「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」によると、新基準は次のとおりです。
- 常勤職員1人以上の雇用(日本人・特別永住者・永住者等に限る)
- 資本金等3,000万円以上(個人事業主は、事業所の確保、職員の給与1年分、設備投資経費など、事業に投下されている総額)
- 申請者か常勤職員のどちらかが日本語B2相当
- 博士・修士・専門職学位、または経営・管理の経験3年以上
- 在留資格決定時の事業計画書について、専門家による確認
また、同じ公表資料のQ&A(問20)は、自宅を事業所と兼ねることを「原則として認められません」としています。自宅で一人で仕事を受けるフリーランスが、経営・管理で在留するのは現実的ではなくなったと筆者は考えます。個人事業主の投資額の数え方は個人事業主で経営管理ビザは取れる?3,000万円の「投資額」の判断で扱っています。
結局のところ、フリーランスとして日本で働き続けたい人にとっての現実的な道は、取引先を特定し、継続的な業務委託契約を書面で結んだうえで、技人国などの在留資格の要件を満たすことです。
特定技能は雇用契約に限られる
特定技能だけは、契約の形態が雇用契約に限られます(1-1)。審査要領の特定技能の節は、基本方針の「特定技能外国人の雇用形態については、原則として、フルタイムとした上で直接雇用とする」という規定を引いています。そのうえで、特定技能所属機関が外国人を直接指揮命令することを求めています(18の3-2〜18の3-3)。派遣が認められるのは農業と漁業の2分野だけです(18の3-41〜18の3-43)。
業務委託の形をとらなくても、実態が問われる場面があります。雇用条件書(参考様式第1-6号)では直接雇用としながら、就業場所が他の会社の事業所内とうかがわれる場合があります。その場合、審査要領は「いわゆる『偽装請負』を行っていることが疑われる」として、請負契約書・委託契約書等の提出を求め、具体的な指揮命令系統を確認するとしています(18の3-3)。特定技能制度の全体は特定技能とは?【2026年最新】1号・2号の違い・対象分野・受入れ手続きを完全解説を参照してください。
すでに技人国で働く人が業務委託を受ける場合
会社員として技人国で在留している人が、別の会社から業務委託で仕事を受けるケースもあります。審査要領が「複数でもよい」としている以上、技人国の範囲に入る業務を、特定の機関との継続的な契約に基づいて行う形は想定されています。一方、技人国の範囲に入らない仕事で報酬を受けるなら、資格外活動許可の問題になります。副業の扱いは技術・人文知識・国際業務の外国人はアルバイト・副業できる?資格外活動許可を解説で確認してください。
契約の相手方が変わったとき、終了したときは、入管法19条の16に基づき、14日以内に出入国在留管理庁長官への届出が必要です。業務委託の契約先も、この届出の対象となる契約機関に含まれます。派遣という形で第三者の現場に入る場合は、また別の取扱いがあり、派遣社員として外国人を雇うときの就労ビザ|2026年3月から派遣先の確定が必須にで扱っています。
更新で見られるのは「契約どおりに続いたか」
業務委託で許可を受けた場合、更新の審査では、その契約が実際に続いたかが確かめられます。技人国の審査のポイントは、更新時に勤務先・職務内容の欄と立証資料で、技人国の活動を継続していることを確認するとしています。さらに、住民税の課税(又は非課税)証明書と納税証明書で「収入額が契約時の金額であること及び納税が行われていること」を確認します(15-20)。業務委託の報酬について税の申告を怠ると、課税証明書に収入が正しく載らず、継続性も報酬も説明できなくなります。
よくある質問
Q. 業務委託契約でも技人国ビザは取れますか?
取れる場合があります。審査要領は「契約」に雇用のほか委任・委託・嘱託等が含まれるとしています。ただし特定の機関(複数でもよい)との継続的な契約であることが必要で、業務内容・学歴との関連・報酬などの通常の要件も満たす必要があります。
Q. 不特定の顧客から仕事を受けるフリーランスでも就労ビザは取れますか?
特定の機関との継続的な契約がない場合、技人国などの要件は満たしにくく、審査要領は個人事業主として「経営・管理」に当たる場合があるとしています。経営・管理は2025年10月16日の改正で資本金等3,000万円以上、常勤職員1人以上などの基準に変わっています。
Q. 個人事業主の会社と契約しても大丈夫ですか?
個人であっても日本に事務所・事業所等を有していれば「本邦の公私の機関」に含まれます。この場合、契約の当事者はその経営者本人です。
Q. 特定技能を業務委託契約で受け入れることはできますか?
できません。特定技能の「契約」は雇用契約に限られ、原則としてフルタイムの直接雇用が求められます。就業場所が他社の事業所内にある場合は偽装請負を疑われ、指揮命令系統の確認を受けます。
業務委託で申請する前に準備すること
まず、取引先ごとに業務委託契約書を作り、契約期間、業務の範囲、報酬の額と支払方法、更新の条件を書面で特定してください。取引先の会社については、日本に事務所・事業所があることを示す資料(登記事項証明書など)をそろえます。そのうえで、業務の中身が技人国などの範囲に入り、報酬が同じ業務をする日本人と同等額以上であることを説明できるかを確認します。取引先が定まらない段階であれば、契約の形を整えることを先に進めるべきです。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節第1「本邦の公私の機関との契約」1・2(1-1〜1-3)
- 同 第15節 技術・人文知識・国際業務 第1の4(2)(15-20)
- 同 第18節の3 特定技能 第1 2(18の3-2〜18の3-3)、第2 2(1)オ(18の3-41〜18の3-43)
- 出入国在留管理庁 就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)(https://www.moj.go.jp/isa/content/001344550.pdf)
- 出入国在留管理庁 在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)
- 出入国在留管理庁 在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html)