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社会保険の扶養に外国人配偶者を入れる条件|海外在住の家族が対象外の理由と手続き

外国人社員の配偶者や子を健康保険(社会保険)の扶養に入れる条件は、日本人社員の家族と同じ「生計維持」と「収入要件」に、2020年4月1日から加わった「国内居住要件」を満たすことです。国内居住要件とは日本に住民票があることを指し、海外に住んだままの家族は、留学や海外赴任への同行といった5つの例外に当たらない限り扶養に入れられません。所得税の扶養控除では海外の家族も対象になり得るため、この違いが社内の手続きで混乱を招きやすいポイントになっています。

外国人配偶者を社会保険の扶養に入れる3つの条件

健康保険の被扶養者は、健康保険法3条7項で定められています。国籍による区別はなく、外国人社員の家族も日本人社員の家族と同じ基準で判断されます。整理すると、次の3つを満たす必要があります。

1つ目は、扶養に入れる人が被扶養者の範囲に入っていることです。配偶者(事実婚を含む)、子、孫、兄弟姉妹、父母などの直系尊属は、同居していなくても対象になります。それ以外の3親等内の親族は、被保険者と同じ世帯で暮らしていることが条件です。

2つ目は、被保険者の収入によって生計を維持されていることで、収入要件で判定します。年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、同居の場合は被保険者の年間収入の2分の1未満、別居の場合は被保険者からの仕送り額より少ないことが基準です。2025年10月1日以降の認定からは、配偶者を除く19歳以上23歳未満の家族について基準額が150万円未満に引き上げられました。年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定します。

3つ目が国内居住要件で、日本国内に住所を有していることです。日本年金機構と厚生労働省の通知は、住民票が日本国内にある人は原則としてこの要件を満たすとしています。

外国人社員の家族で問題になるのは、ほとんどが3つ目です。1つ目と2つ目は日本人社員と同じ感覚で判断できますが、国内居住要件は「どこに住んでいるか」という事実で機械的に決まるため、家族が母国にいるうちは、どれだけ仕送りをしていても扶養に入れません。

2020年4月1日の改正で、海外に住む家族は原則として対象外に

国内居住要件は、2019年5月に成立した「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」で新設され、2020年4月1日に施行されました。それまでは、海外に住む家族でも生計維持関係が認められれば被扶養者になれたため、日本で医療を受ける見込みのない家族まで扶養に入っている状態が生じていました。改正はこれを整理するもので、同じ日から国民年金の第3号被保険者にも国内居住要件が設けられています。

ここで重要なのは、国内居住の判定が住民票を基準にしているという点です。外国人の家族が日本に住民票を作れるのは、在留資格を得て中長期在留者として住居地を届け出た後です。短期滞在で来日している親は住民票が作られないため、日本に滞在している間でも扶養には入れません。

住民票があっても扶養に入れない在留資格がある

住民票があれば必ず対象になるわけでもありません。健康保険法3条7項ただし書と同法施行規則37条の3は、日本国籍を持たない人のうち、次の「特定活動」で在留している人を被扶養者から除いています。

  • 病院・診療所に入院して医療を受ける活動や、その前後に継続して医療を受ける活動を行う人と、その人の日常生活上の世話をする人(いわゆる医療滞在と付添い)
  • 1年を超えない期間滞在して、観光・保養などを行う人(いわゆるロングステイ)

日本の医療を受けることを目的に在留する人を保険の給付対象から外す趣旨です。外国人社員の家族が通常とる家族滞在や、高度専門職の親の帯同で使われる特定活動は、この除外には含まれていません。

海外にいても扶養に入れる5つの例外

健康保険法施行規則37条の2は、日本に住所がなくても日本に生活の基礎があると認められる人として、次の5つを例外に定めています。

例外の類型 主な確認書類
外国に留学する学生 査証、学生証、在学証明書・入学証明書の写し
外国に赴任する被保険者に同行する人 査証、海外赴任辞令、海外の公的機関の居住証明書の写し
観光・保養・ボランティアなど就労以外の目的で一時的に海外に渡航する人 査証、ボランティア派遣機関の証明などの写し
被保険者の海外赴任中に身分関係が生じた人(現地での結婚・出産など) 出生や婚姻を証明する書類の写し
上記以外で、渡航目的などから日本に生活の基礎があると認められる人 個別に判断

外国人社員にとって実際に使える例外は限られます。母国に残した配偶者や子は、もともと日本に住んだことがなければ「留学」や「一時的な渡航」には当たりません。日本で一緒に暮らしていた子が母国の大学に進学したケースは、留学の例外に当たる可能性があります。例外に当たる場合は、健康保険被扶養者(異動)届にその旨を記載し、外国語の書類には日本語訳を付けて提出します。

税金の扶養と社会保険の扶養は別の制度

社内の手続きで最も多い混乱は、年末調整の扶養控除と健康保険の扶養を同じものと考えてしまうことです。

所得税の扶養控除には国内居住の要件がなく、国外に住む親族でも、親族関係書類と送金関係書類をそろえれば控除の対象になり得ます(2023年分以降は30歳以上70歳未満の国外居住親族に追加要件があります)。一方、健康保険の扶養は住民票のない家族を原則として対象にしません。母国の両親について年末調整で扶養控除を受けている社員が、健康保険の扶養にも入れられると思い込んでいる、という場面はよく起こります。

収入の基準も違います。所得税は扶養親族の合計所得金額で判定し、令和8年分からは所得要件が62万円以下です(給与だけなら年収136万円以下が目安)。健康保険は「今後1年間の見込み収入」で判定し、基準は130万円未満です。同じ家族について、税では扶養に入り、社会保険では入らないということが普通に起こり得ます。国外居住親族の扶養控除の詳細は国外扶養親族の扶養控除要件|30歳以上70歳未満は38万円送金が必要【令和8年分】で扱っています。

家族滞在で呼び寄せる場合の手続きの順番

外国人社員が母国の配偶者や子を呼び寄せる場合、扶養に入れられるのは家族が日本に来て住民票ができた後です。会社として押さえておきたい順番は次のとおりです。

  1. 社員本人(扶養者)が、家族について在留資格認定証明書を申請する(家族滞在)。
  2. 交付後、家族が母国の日本大使館・領事館で査証を取り、来日する。空港で在留カードが交付される。
  3. 家族が住居地を定めてから14日以内に、市区町村へ住居地を届け出る。この時点で住民票ができる。
  4. 社員が会社に被扶養者の追加を申し出て、会社は事実発生から5日以内に健康保険被扶養者(異動)届を年金機構(または健康保険組合)へ提出する。配偶者が20歳以上60歳未満なら、国民年金第3号被保険者関係届も同時に出す。

添付書類は、続柄を確認する書類と収入を確認する書類です。被保険者と同じ世帯で、被保険者が世帯主の住民票に続柄が記載されていれば、マイナンバーの記載で住民票の添付を省略できる場合があります。続柄が確認できない場合は、母国の婚姻証明書・出生証明書とその日本語訳を求められることがあります。家族滞在の申請で入管に出した婚姻証明書や出生証明書は、原本をもう一通取っておくか、写しを社内で保管しておくと、この段階で慌てずに済みます。

収入の確認は、来日直後の家族には日本の課税証明書がありません。この場合は、来日前の収入がないことの申立書や、今後の収入見込みの申立てで判断されるのが一般的です。求められる書類は保険者によって違うため、協会けんぽ以外の健康保険組合に加入している会社は、組合の案内を確認してください。

家族滞在の申請手続き自体は家族滞在ビザ申請の必要書類|外国人社員の家族を海外から呼ぶ手順と在職証明書の書き方で、家族滞在の対象になる家族の範囲は家族滞在ビザとは?対象となる家族・扶養者の条件と呼べない在留資格で解説しています。

扶養に入った後の注意点

扶養に入った後で状況が変わるのは、主に次の3つの場面です。

家族が資格外活動許可を取って働き始めたときは、収入の見込みを確認し直します。家族滞在の資格外活動は原則として週28時間以内なので、時給によっては年間130万円を超えます。2026年4月1日からは、労働契約書などに記載された賃金から見込まれる年間収入で判定する取扱いが始まり、契約上の見込み額が基準未満であれば、結果として残業などで一時的に超えても直ちに扶養から外れない扱いになりました(給与収入のほかに収入がないことが前提)。勤務先の規模や労働時間によっては、家族自身が勤務先の社会保険に加入することになる点も確認が必要です。

家族が母国へ長期で帰る場合は、住民票の扱いがそのまま扶養の扱いにつながります。1年以上の予定で出国して転出届を出すと、5つの例外に当たらない限り被扶養者の資格を失います。みなし再入国許可で出国し、住民票を残したまま短期間で戻る一時帰国であれば、国内居住要件は引き続き満たします。ただし住民票が残っていても海外で就労していて日本での居住実態が明らかにない場合は、保険者が要件を満たさないと判断できると通知は定めています。

社員本人が帰国・退職するときは、社員の資格喪失と同時に家族の被扶養者資格もなくなります。家族が日本に残る場合は、国民健康保険への加入が必要です。

年金機構と協会けんぽは、毎年被扶養者の状況確認(被扶養者資格の再確認)を行っています。外国人社員の家族は来日・帰国の動きがあるため、この機会に住民票の所在と収入を確認する運用にしておくと、資格を失った後の保険証の使用(後で医療費の返還を求められる原因になります)を防げます。

よくある質問

外国人の妻を社会保険の扶養に入れることはできますか?

できます。日本に住民票があり、年間収入が130万円未満で、同居であれば社員の収入の2分の1未満であれば、日本人の配偶者と同じ扱いです。在留資格が家族滞在でも、日本人の配偶者等や永住者の配偶者等でも、条件は変わりません。母国に住んでいる間は扶養に入れず、来日して住民票ができた日以降が対象になります。

海外に住む外国人社員の両親を扶養に入れられますか?

健康保険の扶養には原則として入れられません。2020年4月1日以降、国内居住要件が加わったためです。所得税の扶養控除は、送金関係書類などの要件を満たせば対象になり得ますが、これは別の制度です。両親が短期滞在で来日している間も、住民票がないため対象外です。

外国人の扶養家族は何親等まで入れられますか?

健康保険の被扶養者は、配偶者・子・孫・兄弟姉妹・直系尊属であれば同居を問わず対象になり、それ以外の3親等内の親族は同一世帯であることが条件です。日本人社員と同じ範囲で、国籍による違いはありません。ただし、外国人社員の親や兄弟姉妹が日本で暮らすための在留資格は、家族滞在では認められていないため、実際に日本で扶養に入る場面は限られます。

日本で生まれた外国人社員の子どもはいつから扶養に入れますか?

出生日から対象になります。日本で出生した外国人の子は、出生から30日以内に在留資格取得の申請が必要で、60日以内に出国する場合を除き、在留資格を取得して日本に住み続けることになります。出生届で住民票に記載されるため、会社は出生日を事実発生日として被扶養者(異動)届を出します。

社内規程に「国内居住」を書き込んでおく

外国人社員の家族の扶養でトラブルになるのは、要件が難しいからではなく、税の扶養と社会保険の扶養が同じ言葉で呼ばれ、判断の基準がずれていることに気づかないまま手続きが進むからです。筆者は、外国人社員を複数雇用している会社であれば、入社時の説明資料に「健康保険の扶養は日本に住民票がある家族だけ」と一行書き、家族を呼び寄せる社員には、在留資格の申請、来日、住居地届出、被扶養者届という順番を最初に示しておくことを勧めます。

家族の在留資格の選び方と、社員本人の在留資格が家族の在留にどう影響するかは、高度専門職の配偶者の就労と親の帯同でも扱っています。社会保険の手続きの漏れが本人の在留資格の更新に影響する場面は、社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?を参照してください。

根拠資料


在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。