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外国人労働者雇用労務責任者とは|10人以上で選任する理由と無料講習の受け方

外国人労働者雇用労務責任者とは、外国人労働者を常時10人以上雇用する事業主が、厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(以下「外国人雇用管理指針」)第六に基づいて、人事課長などから選任する外国人の雇用管理の責任者です。選任しないことへの罰則はありませんが、2026年10月1日以降は人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の要件に講習の受講が加わるなど、実務上の重みが増しています。厚生労働省の委託で行われている「外国人労働者雇用労務責任者講習」は無料で、令和8年度はすべてオンラインで開催されています。

外国人労働者雇用労務責任者は指針第六が定める役職

外国人雇用管理指針は、2007年8月3日に厚生労働省告示第276号として定められ、同年10月1日から適用されている告示です。根拠は、労働施策総合推進法(旧雇用対策法)7条の事業主の責務で、事業主は外国人がその能力を有効に発揮できるよう、雇用管理の改善に努めなければならないとされています。指針は、この努力義務の中身を具体的に示したものです。

雇用労務責任者について、指針第六は次のように定めています。

事業主は、外国人労働者を常時十人以上雇用するときは、この指針の第四に定める事項等を管理させるため、人事課長等を雇用労務責任者(外国人労働者の雇用管理に関する責任者をいう。)として選任すること。

ポイントは3つです。対象は外国人労働者を「常時10人以上」雇用する事業主であること。選ぶのは「人事課長等」、つまり人事管理について一定の権限を持つ人であること。そして担当させる職務が、指針第四に定める雇用管理の改善のための措置であることです。

「常時10人以上」の数え方について、指針は細かい基準を示していません。一時的に10人を超えた日があるかどうかで判断するのではなく、通常の状態で10人以上の外国人を雇用しているかどうかで見るのが自然な読み方です。雇用形態は問われていないため、パートタイムやアルバイトの留学生も外国人労働者に含めて数えることになります。技能実習生も、指針第三で外国人労働者に含まれると明記されています。

なお、特別永住者と、在留資格「外交」「公用」の人は、指針第三で外国人労働者の定義から除かれています。

雇用労務責任者が管理する「指針第四」の中身

雇用労務責任者に管理させる事項として指針第六が指す第四は、事業主が講ずべき措置を7つの柱で並べています。

  1. 外国人労働者の募集及び採用の適正化(労働条件の明示、在留資格の確認、公平な採用選考など)
  2. 適正な労働条件の確保(均等待遇、労働条件の明示、賃金の支払、労働時間の管理、公正な待遇の確保など)
  3. 安全衛生の確保(安全衛生教育、労働災害防止のための日本語教育、健康診断など)
  4. 労働・社会保険の適用等(雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険の適用手続、保険給付の請求の援助など)
  5. 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等(生活支援、苦情・相談体制の整備、帰国・在留資格の変更等の援助など)
  6. 解雇等の予防及び再就職の援助
  7. 労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項

範囲は採用から退職・帰国まで広く、労働法、社会保険、入管法のいずれにもまたがります。人事課長「等」とされているのは、こうした横断的な事項を社内で調整できる立場の人に任せる、という趣旨だと筆者は読んでいます。

請負を行う事業主については、指針第四の七の2で、外国人労働者の就業場所が注文主の事業所内にある場合、その事業所内で「第六で選任する雇用労務責任者等」に人事管理や生活支援の職務を行わせるよう求めています。構内請負で外国人を多く雇う会社では、現場に常駐する担当者を置く根拠にもなっています。

指針の全体像は公式案内をご確認くださいで詳しく扱っています。

選任は義務か|罰則はないが無視できない理由

選任しなかった場合の罰則はありません。指針は労働施策総合推進法に基づく告示ですが、同法には雇用労務責任者の選任違反を罰する規定がないためです。この点で、罰則付きの法的義務である外国人雇用状況の届出(同法28条、違反は40条の罰則)とは性格が違います。

それでも「10人以上なら選任すべき」と答えるのは、次の事情があるからです。

1つ目は、行政の助言・指導の物差しになることです。指針第八は、事業主が職業安定機関、労働基準監督機関その他の関係行政機関の援助と協力を得て、指針の事項を実施するよう定めています。ハローワークなどが外国人を雇う事業所に雇用管理の改善を働きかけるとき、基準になるのはこの指針です。

2つ目は、助成金の要件になったことです。厚生労働省は、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の支給要領を2026年10月1日から改正し、外国人労働者雇用労務責任者講習の受講を要件にすると告知しています。あわせて、苦情・相談体制の整備を廃止し、雇用労務責任者による対応に切り替える方向も示されています。2026年9月30日までに就労環境整備計画を提出した事業主は改正前の要件で扱われる経過措置があります。助成金の金額と手続は外国人雇用の助成金はいくら?72万円は旧制度、10月から最大25万円にで解説しています。

3つ目は、外国人雇用に関するトラブルの多くが、担当者不在から生じることです。在留期間の更新の失念、資格外活動の時間超過、社会保険の資格喪失手続の漏れは、いずれも誰かが管理していれば防げたものです。選任は、その「誰か」を社内で明確にする手続といえます。

外国人労働者雇用労務責任者講習の内容

外国人労働者雇用労務責任者講習は、厚生労働省の委託事業で、令和8年度は株式会社東京リーガルマインド(LEC)が事業を受託しています。受講料は無料です。

受講対象は、雇用労務責任者として選任されている人、選任される予定の人、外国人を雇用する(または雇用を予定している)事業所の事業主や人事・労務担当者です。講習サイトは、外国人労働者が常時10人に満たない事業所の人も受講できると明記しています。

講習は4つの講義で構成されています。

講義 内容 時間
講義1 はじめに(適正な外国人労働者雇用労務管理の必要性) 20分
講義2 外国人雇用のルール(在留管理制度の知識・手続と外国人雇用状況届出) 60分
講義3 外国人労働者の雇用労務管理(労働関係法令・社会保険関係法令等の知識と対応) 50分
講義4 異文化理解とコミュニケーション配慮 60分

案内とまとめを含めた受講時間は約3時間30分で、開催時間は4時間です。講義動画は一時停止のみでき、早送りと巻き戻しはできません。受講後に確認テストと受講後アンケートに回答すると、受講証明書をPDFでダウンロードできます。

令和8年度の日程と申込み方法

令和8年度の講習は2026年6月19日に申込受付が始まり、すべてオンラインで開催されています。過去の年度には会場での対面開催も行われていましたが、令和8年度は講習サイトに「全てオンライン開催です」と明記されており、福岡を含む九州の事業所もオンラインで受講することになります。

開催は1日2回で、午前の部が9時30分から13時30分、午後の部が13時30分から17時30分です。講習サイトに2026年9月4日時点で掲載されている日程は、9月が9日、10月が10日、11月が9日、12月が8日で、2027年1月以降は決まり次第公表されます。10月の開催日は1日・6日・8日・14日・15日・20日・21日・22日・27日・29日です。

申込みの流れは次のとおりです。

  1. 講習サイトで受講日を確認し、申込ページで必要事項を入力する。申込みは1人1件で、代表者による複数名の一括申込みはできない
  2. 学習サイトで会員登録をする。登録メールのURLには60分以内にアクセスする
  3. 顔写真を登録し、受講日時を予約する。顔写真は受講当日の本人確認に使われる
  4. 当日、本人が受講する。開催時間内に事前アンケート、テキストのダウンロード、講義動画の視聴、確認テスト、受講後アンケートを済ませる
  5. 受講証明書のPDFを開催時間内にダウンロードする

注意が必要なのは受講証明書です。開催時間内に動画の視聴、確認テスト、アンケートが終わっていないと証明書は発行されず、後日の再発行も受け付けていません。申込み時に入力した氏名と会社名がそのまま証明書に記載されるため、会社名は「株式会社」を略さずに入力するよう案内されています。助成金の申請で受講を証明する必要がある場合は、ダウンロードしたPDFを社内で確実に保管してください。キャンセルは無料で、申込完了メールに「キャンセル希望」と追記して事務局に転送します。

講習で学ぶ内容と、講習だけでは足りない部分

講義2の在留管理制度は、在留カードの確認や外国人雇用状況の届出の基礎です。講習を受けた担当者が最初に手を付けるべきなのは、社内の外国人社員全員について、在留資格、在留期間の満了日、就労制限の有無を一覧にすることでしょう。外国人雇用管理指針の第五は、在留カードで確認する場合、本人の同意を得たうえで出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリケーションでICチップの情報と券面を照合することが適切だとしています。雇用状況の届出と入管審査の関係は外国人雇用状況の届出とは?ハローワークへの届出が入管の在留審査でどう使われるかで解説しています。

一方で、講習は約3時間半の概説です。在留資格ごとの就労範囲の判断、転職者を受け入れるときの在留資格変更の要否、特定技能の支援計画のように、個別の事情で判断が変わる論点は、講習だけで身に付くものではありません。講習を「責任者として最低限知っておくべき地図」と位置づけ、個別の判断は入管法の専門家や社会保険労務士と分担するのが現実的です。

なお、民間団体が実施する「外国人雇用管理士」「外国人雇用管理主任者」などの資格は、指針が定める雇用労務責任者とは別のもので、取得しても選任の要件を満たすことにはなりません。反対に、雇用労務責任者になるために特定の資格が必要なわけでもありません。

よくある質問

外国人労働者雇用労務責任者講習の費用は?

無料です。厚生労働省の委託事業として実施されており、キャンセルにも費用はかかりません。オンライン講習のため、インターネットに接続できるパソコンと、事前登録用の顔写真が必要です。

外国人雇用労務責任者の選任は義務ですか?

外国人雇用管理指針第六は、外国人労働者を常時10人以上雇用する事業主に選任を求めています。ただし、指針に基づく措置で、選任しなかったことへの罰則はありません。10人未満の事業所は選任を求められていませんが、講習は受講できます。

外国人労働者雇用労務責任者に罰則はありますか?

選任しないこと自体に罰則はありません。ただし、雇用労務責任者が管理する事項の中には、外国人雇用状況の届出(労働施策総合推進法28条)のように届出をしないと罰則の対象になるものや、不法就労助長罪(入管法73条の2)のように会社が刑事責任を問われうるものが含まれています。後者の構成と防ぎ方は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法で解説しています。

雇用労務責任者には誰を選べばよいですか?

指針は「人事課長等」としています。外国人社員の採用、労働条件、社会保険の手続、在留期間の管理を把握し、必要に応じて社内の関係部署に指示できる立場の人が適任です。事業所が複数ある場合、指針は事業所ごとの選任までは明記していませんが、就業場所ごとに実務を担う担当者を決めておくほうが管理は行き届きます。

講習を受けると資格がもらえますか?

受講証明書が発行されますが、国家資格や公的な免許ではありません。助成金の申請などで受講を示す資料として使います。証明書は開催時間中にダウンロードする必要があり、再発行はできません。

10人を超えたら、まず名前を決める

外国人社員が10人を超える会社で起きやすいのは、在留期間の管理は総務、社会保険は経理、日々の相談は現場の班長、と担当が分散し、誰も全体を見ていない状態です。雇用労務責任者の選任は、この分散を1人の名前に集約する手続です。

講習の受講はその次の段階で、所要時間は半日です。2026年10月以降は助成金の要件にもなるため、選任を予定している人が年内の日程で受講しておくと、社内の体制と助成金の準備を同時に進められます。在留資格の判断や採用の手続で迷う案件が出てきたら、雇用労務責任者を窓口にして、福岡出入国在留管理局への申請取次を行う行政書士などの専門家に相談する流れを作っておくと、担当者の負担も軽くなります。

根拠資料


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