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外国人雇用の助成金はいくら?72万円は旧制度、10月から最大25万円に

外国人を雇用した事業主が使える代表的な助成金は、厚生労働省の人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)で、就業規則の多言語化などの就労環境整備措置を導入し、外国人社員の離職率を15%以下に抑えた場合に、一度だけ支給されます。インターネットで広く見かける「最大72万円」は、2024年4月1日現在のガイドブックにあった旧制度の上限で、2026年4月1日現在は1制度20万円・上限80万円の定額方式、2026年10月1日からは最大25万円に改正されます。外国人を1人雇うごとに毎月お金が出る制度はなく、「外国人を雇うと儲かる」という話は制度の仕組みと合いません。

外国人雇用の助成金は「雇ったこと」ではなく「環境を整えたこと」に出る

外国人を雇用したという事実だけで支給される国の助成金はありません。ここで押さえておきたいのは、外国人労働者就労環境整備助成コースが、外国人社員の定着のための社内制度づくりに対する助成だという論点です。

厚生労働省のガイドブックは、制度の趣旨を「外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などの知識の不足や言語の違いなどから、労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にあります」と説明し、「外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主」に助成するとしています。雇用保険法に基づく助成金で、支給するのは都道府県労働局です。

国籍を問わず使える一般の助成金(キャリアアップ助成金、トライアル雇用助成金、人材開発支援助成金など)も、外国人社員を対象にして申請できます。これらは雇用形態や訓練の内容に着目した制度で、外国人であることは要件にも加算の理由にもなりません。

「72万円」はどこから来た数字か

検索では「外国人雇用 助成金 72万円」「72万円 なぜ」という語がよく調べられています。この数字の出どころは、2024年4月1日現在のガイドブックにあった次の支給額です。

時点 支給額の決め方 上限
2024年4月1日現在 賃金要件なし:支給対象経費の1/2 57万円
同上 賃金要件あり:支給対象経費の2/3 72万円
2026年4月1日現在 1制度導入につき20万円 80万円
2026年10月1日以降(予定) 改正後の支給要領による 25万円

旧制度の72万円は、外部の翻訳会社や社会保険労務士などに支払った経費の3分の2を補助する方式で、対象の外国人社員の賃金を5%以上引き上げた場合(賃金要件)に限って適用される上限でした。108万円以上の経費を実際に支払い、かつ賃上げをして初めて届く金額で、72万円がそのまま手元に入るわけではありません。「72000円」と検索する人もいますが、旧制度も含めて、月7万2千円を支給する仕組みではありません。

定額方式への切替えは、遅くとも2025年10月の時点で厚生労働省の案内に反映されています。切替えの正確な日付は、公表資料の範囲では確認できていません(公式資料では未確認)。

2026年4月1日現在の要件|イとロに加えてハ〜ホのいずれか

2026年4月1日現在のガイドブックでは、助成の対象となる就労環境整備措置は次の5つです。受給するには、イとロの両方に加えて、ハからホのいずれか1つ以上を導入・実施する必要があります。

  • イ 雇用労務責任者の選任:事業所ごとに責任者を選び、氏名を掲示などで周知する。計画期間中に外国人社員と1回以上面談し、結果を書面にする。労働基準監督署などの相談先を案内する
  • ロ 就業規則等の多言語化:就業規則、労働協約、労働条件通知書、雇用契約書のいずれかを、母国語または「やさしい日本語」で作成し周知する
  • ハ 苦情・相談体制の整備:就業規則等を変更して相談窓口などを新設する(特定技能外国人を雇用する事業所や監理団体の相談体制は対象外)
  • ニ 一時帰国のための休暇制度の整備:年次有給休暇とは別に、年1回以上、連続5日以上の有給休暇を取れる制度を就業規則等で新設する
  • ホ 社内マニュアル・標識類等の多言語化:安全衛生のマニュアル、ハラスメント防止の資料、寄宿舎規則などを多言語化する

雇用労務責任者は専任である必要がなく、人事課長などが兼任してかまいません。国籍や経験年数の基準もありません。特定技能外国人を雇っている会社がハを選べない点は、見落とされやすいところです。理由は示されていませんが、特定技能の受入れ機関には支援計画に基づく相談対応がもともと義務付けられており、その重複を避けたものと筆者は見ています。特定技能で使える自治体の補助金などは特定技能の補助金・助成金|国・福岡県・JACの制度と支援費用に使えるかで扱います。

支給額は1制度につき20万円で、上限は80万円です。イ・ロ・ハ・ニ・ホの5つすべてを導入しても、80万円で頭打ちになります。

離職率15%以下が支給の条件

措置を導入しただけでは支給されません。措置の実施日の翌日から6か月間を「外国人労働者離職率算定期間」とし、この期間の離職率が15%以下であることが要件です。算定期間の初日の外国人社員が2人以上10人以下の会社は、離職者が1人以下であることが求められます。あわせて、計画を提出した日から算定期間の末日まで継続して雇用されている外国人社員が1人以上いる必要があります。

外国人社員が3人の会社で1人が自己都合退職すると離職率は約33%ですが、2人以上10人以下の特例により、離職者1人以下なので要件は満たします。同じ会社で2人辞めれば不支給です。助成金の成否が社員の定着に直結する設計で、定着しない職場には出ない助成金だと理解しておくのが実態に近いと筆者は考えます。

申請の流れとスケジュール|計画は6か月前から1か月前までに提出

手続は、計画の認定、措置の導入・実施、支給申請の3段階です。

  1. 就労環境整備計画を作成し、計画期間の初日の6か月前の日から1か月前の日までに、本社所在地を管轄する都道府県労働局(またはハローワーク)に提出する。計画期間は3か月以上1年以内
  2. 認定された計画に基づき、措置を導入し、外国人社員に実施する
  3. 離職率算定期間(措置の実施日の翌日から6か月間)の終了後2か月以内に支給申請をする

ガイドブックの例では、2026年6月1日に計画を提出し、計画期間を2026年8月1日から2027年7月31日とした場合、支給申請期間は2028年1月1日から2月29日です。計画の提出から支給申請まで1年半以上かかり、支給決定はさらにその後になります。

外国人労働者雇用労務責任者講習を受講し、措置の実施日の前6か月間に外国人社員を解雇等していない場合は、措置の実施日の翌日から2か月以内に支給申請ができます。それでも支給決定は計画期間の末日以降です。

計画を提出する前に、翻訳会社などへの委託を始めたり費用の一部を支払ったりしていると、支給対象になりません。助成金を使うかどうかは、翻訳の発注より先に決める必要があります。

2026年10月1日の改正|最大25万円と経過措置

厚生労働省は、2026年10月1日から支給要領を一部改正すると告知しています。主な内容は次のとおりです。

  • 支給額を最大25万円に変更する
  • 苦情・相談体制の整備を廃止し、雇用労務責任者による対応に切り替えるなど、就労環境整備措置の要件を見直す
  • 外国人労働者雇用労務責任者講習の受講を要件とする

経過措置として、2026年9月30日までに就労環境整備計画を都道府県労働局に提出した事業主には、改正前の要件と支給額(1制度20万円・上限80万円)で支給するとされています。この記事の公開日(2026年9月29日)から見ると、旧制度で申請できる期限は目前です。郵送の場合は期限までに労働局に到達している必要があるため、今から旧制度を狙うなら窓口への持参が現実的です。改正後の25万円が定額なのか、措置の組合せで変わるのかは、改正後の支給要領の公表を待つ必要があります(公式資料では未確認)。

対象となる事業主と外国人社員

対象の事業主は、次の条件をすべて満たす必要があります。

  • 雇用保険の適用事業の事業主であること
  • 外国人雇用状況の届出を適正に行っていること
  • 過去にこのコースを受給している場合は、最後の支給決定日の翌日から3年が経過していること

対象の外国人社員は、雇用保険の被保険者である外国人で、特別永住者と在留資格「外交」「公用」の人は除かれます。個人事業主でも、雇用保険の適用事業所として外国人を雇っていれば対象になります。

外国人雇用状況の届出が要件に入っていることは、見落とされがちです。雇入れと離職の届出を出していない会社は、助成金の対象から外れます。届出が入管の審査でどう使われるかは外国人雇用状況の届出とは?で解説しています。

外国人社員にも使える他の助成金

上位の解説記事の多くは、外国人雇用の助成金として複数の制度を並べています。いずれも日本人社員と同じ条件で使える一般の制度で、外国人であることは要件になりません。代表的なものは次のとおりです。

  • キャリアアップ助成金(正社員化コース):有期雇用やパートの社員を正社員に転換した場合の助成
  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース):就職が困難な求職者をハローワーク等の紹介で試行的に雇用した場合の助成
  • 人材開発支援助成金:社員に職業訓練を受けさせた場合の経費と賃金の一部の助成。日本語研修が対象になるかは訓練の内容で判断されます
  • 業務改善助成金:事業場内の最低賃金を引き上げ、設備投資などをした中小企業への助成

支給額と要件は年度ごとに改正されるため、この記事では金額を載せていません。申請前に厚生労働省の各コースのページで、その年度の要領を確認してください。在留資格の側から見ると、正社員化や賃上げは更新審査での安定性の説明材料にもなります。

助成金を受け取る前に確認すべきリスク

この助成金は予算の範囲内で支給され、審査に時間がかかることがあると厚生労働省自身が明記しています。支給・不支給の決定は、行政不服審査法による不服申立ての対象になりません。

ガイドブックは「不正受給は犯罪です」と明記しています。実態のない措置や、実施していない面談の記録で受給すると、不支給・支給取消しと返還に加えて、事業主名などが原則として公表されます。「助成金で儲かる」と勧誘するコンサルタントの中には、書類だけを整えるよう勧める例もあり、会社として責任を負うのは申請した事業主自身です。申請書類の写しなどは、支給決定日の翌日から5年間保管する義務があります。

外国人社員の離職は助成金の不支給だけでなく、在留資格の手続にも影響します。退職時の届出は外国人社員が退職・解雇したら?を参照してください。

よくある質問

外国人雇用の助成金は毎月いくら支給されますか?

毎月支給される助成金はありません。外国人労働者就労環境整備助成コースは、計画期間が終わった後に一度だけ支給される制度です。2026年4月1日現在は1制度20万円・上限80万円、2026年10月1日以降は最大25万円(9月30日までに計画を提出した場合を除く)です。

外国人雇用の助成金はどこから出ますか?

国の雇用保険を財源とする助成金で、本社所在地を管轄する都道府県労働局が審査と支給をします。受け取るのは事業主で、外国人本人には支給されません。自治体が独自に補助金を設けている場合もあり、こちらは都道府県や市町村の予算から出ます。

個人事業主でも外国人雇用助成金は申請できますか?

できます。要件は法人・個人の別を問わず、雇用保険の適用事業の事業主であること、外国人雇用状況の届出を適正に行っていることなどです。雇用保険の被保険者となる外国人を雇っていることが前提になります。

外国人雇用の助成金は申請から支給まで何ヶ月かかりますか?

計画の提出から支給申請まで、原則として1年半前後かかります。計画期間(3か月以上1年以内)と離職率算定期間(6か月)を経てから支給申請をするためです。支給申請の後も審査に時間がかかることがあります。

外国人雇用の助成金は廃止されるのですか?

2026年9月29日時点で廃止の告知はありません。ただし2026年10月1日から支給額が最大25万円に縮小され、要件も見直されます。

助成金を目的にしない会社ほど、結果として受給できる

助成金の要件を並べると、どれも外国人社員に長く働いてもらうために会社がやるべきことと重なります。労働条件を母国語で説明し、相談できる担当者を決め、一時帰国の休暇を制度にする。こうした措置は、在留資格の更新で会社の雇用管理が問われる場面でも説明材料になります。

判断の軸としては、次の2点を確認することをお勧めします。1つは、就業規則や雇用契約書の多言語化がまだ済んでいないか。済んでいなければ、助成金の有無にかかわらず取り組む価値があります。2つ目は、外国人社員の定着に見通しがあるか。算定期間中に複数の離職が見込まれるなら、助成金は受給できません。2026年10月以降の最大25万円という金額は、翻訳や規程整備の費用の一部を補う程度のもので、採用コストを賄うものではありません。

外国人の採用そのものに関する手続や、福岡での相談先は福岡で外国人を採用したい企業へで整理しています。助成金の申請手続は社会保険労務士の業務です。個別の事情で判断が変わるため、計画の提出前に労働局か社会保険労務士に確認してください。

根拠資料


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