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名ばかり経営者と資金の出所|経営管理ビザで「実質的に経営に従事」と認められる条件

経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)で「実質的に経営に従事」と認められるには、申請人自身が事業の重要事項を決め、業務を執行している実態が必要です。代表取締役として登記され、3,000万円の資本金が払い込まれていても、それだけでは足りません。審査要領は、新規事業の場合に申請人が名ばかりの経営者でないかを判断するとしています(入国・在留審査要領 第12編(開示版)10-2)。判断材料は、事業内容の具体性や「申請人が取得した株式や事業に投下している資金の出所等」です。

許可の後も同じ目で見られます。審査要領は、経営者の日々の活動内容を詳細に確認し、業務委託等により経営判断を伴わない場合は「経営・管理」の活動の実態がないものとして扱うとしています(10-15)。経営管理ビザの不許可理由として資本金や事務所が話題になりがちですが、その手前に、この人が本当に経営者かという問いが置かれています。

この記事でわかること

  • 審査要領が「実質的に経営に従事」をどう定義しているか
  • 資金の出所が審査される理由と、借入金を資本金にできない理由
  • 他に経営者がいる場合、業務を外部に委託している場合の判断
  • 最高裁平成14年10月17日判決に見る「名目より実体」の考え方
  • 申請時と更新時に、経営の実態をどう示すか

「実質的に経営に従事する」の定義

審査要領は、経営・管理の該当性の留意事項として、最初に「事業の経営又は管理に実質的に従事するものであること」を挙げています(10-2)。経営に従事する活動とは、事業の運営に関する重要事項の決定、業務の執行、監査の業務等に従事する代表取締役、取締役、監査役等の役員としての活動を指します。管理に従事する活動は、部長、工場長、支店長等の管理者としての活動です。

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-2)

「申請人は、これらの経営や管理の業務に実質的に参画し、又は従事するものでなければならず、実際に行う業務の内容を確認して判断する。」

ここでいう名ばかりの経営者とは、役員の肩書きや出資者の地位はあっても、重要事項の決定や業務の執行に実際には関わっていない人を指します。登記簿の役員欄は、誰が経営しているかを示す資料の一つにすぎません。審査が見ているのは「実際に行う業務の内容」です。

新規事業では「開始に至る経緯全般」を見る

これから事業を始める人は、申請の時点ではまだ経営の業務に参画していません。実際の業務内容を確認できないため、審査要領は別の材料で判断するとしています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-2)

「開始するとする事業の内容の具体性や、申請人が取得した株式や事業に投下している資金の出所等の事業の開始に至る経緯全般から、申請人が単に名ばかりの経営者ではなく、実質的に当該事業の経営を行う者であるかどうかを判断する。」

材料は2つに分けて読めます。1つは事業の内容の具体性で、何を、誰に、どこで、いくらで売るのかが詰められているかです。2025年10月の改正で、在留資格決定時に出す事業計画書は、中小企業診断士・公認会計士・税理士の確認を受けることが義務づけられました(改正ページ、改正ガイドライン)。もう1つが資金の出所で、申請人がどういう経緯で株式を取得し、事業に投下する資金をどこから用意したかです。

資金の出所が問われる理由

ここで重要なのは、資金の出所が「誰が経営者か」を推し量る材料として使われているという論点です。事業の資金を実質的に出した人が別にいて、申請人は名前を貸しているだけではないか。審査要領の書き方は、この疑いを確かめる趣旨だと筆者は読んでいます。資金を親族や知人から得ること自体を禁じる記述はありません。問われるのは、その資金で申請人が株式を取得し、申請人が経営を担う理由を筋道立てて説明できるかです。

どの資料で出所を示すかは、審査要領の開示部分に列挙がありません【要確認】。筆者は、資金を形成した経緯(預金の履歴、送金の記録、贈与や出資の契約書など)を、事業計画書とあわせて一貫した説明にしておくべきだと考えています。

借入金は資本金にできない

資金の出所で明確に線が引かれているのが、借入金の扱いです。審査要領は「返済義務のある借入金を資本金とすることは違法とされている」と書き、払込みを仮装した場合の発起人の責任を定める会社法52条の2を参考に掲げています(10-5)。法人の場合、3,000万円は貸借対照表の「資本金」で判断し、登記事項証明書で実際に事業へ投下されていることを確認します(10-8)。一時的に借りたお金で払込みの形を作り、すぐに返す、という組み立ては通りません。資本金の数え方は経営管理ビザの資本金3,000万円はどう数える?出資金・借入金・新株予約権の扱い【2025年10月改正】で扱っています。

事業を始めた後も、資金の流れは見られます。審査要領は、債務超過が続くような場合は資金の借入先を確認するなどして、「事業の実態、本人の活動実態に虚偽性がないか確認する」としています(10-17)。

他に経営者がいるとき、投資割合と業務内容を比べる

既に営まれている事業に経営者や管理者として招かれる場合も、同じ判断をするとされています。そのうえで審査要領は、比較的小規模の事業で申請人の他に経営や管理に従事する者がいるときは、「投資の割合や業務内容をそれらの者と比較することも必要である」としています(10-2)。

小さな会社に経営者が複数いれば、申請人が主に経営を担っているのか、名前だけ加わっているのかが問われやすくなります。出資の比率がごく小さく、担当業務もあいまいであれば、実質的な経営者は別の人だと見られるおそれがあります。複数人で経営する場合の条件は共同経営者2人で経営管理ビザは取れる?複数役員の在留と報酬で整理しています。

業務委託で経営判断を手放していないか

許可を受けた後の実態について、審査要領は10-15で踏み込んだ書き方をしています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-15)

「管理者としての日々の活動内容を詳細に確認し、業務委託等により経営判断を伴わない場合など、経営者等としての具体的活動内容に欠ける場合は、本邦における「経営・管理」の活動の実態がないものとして取り扱う。」

この段落の冒頭の一部と、直後の段落は黒塗りです。

入管庁の改正ページQ&A(問19)も、業務の大半を外部に委託している場合や、経営者として把握すべき情報を把握していない場合は、経営者としての活動実態を認めないとしています。会計を税理士に、営業を代理店に、運営を管理会社に任せ、経営者本人は売上も取引先も把握していない。この形は、委託の一つひとつが適法でも、全体として経営判断が申請人の手元に残っていないと評価されます。

外部の専門家を使うこと自体は、どの会社でも普通に行われています。分かれ目は、委託先を選び、報告を受け、次の打ち手を決めているのが申請人本人かどうかです。筆者は、取引先との契約の決裁、価格の決定、採用の判断を誰が行っているかを、申請人が具体的に説明できる状態にしておくことを勧めています。

名目より実体を見る考え方:最高裁平成14年10月17日判決

在留資格の該当性を名目でなく実体で判断する考え方は、最高裁平成14年10月17日判決に表れています。この判決は、婚姻が法律上は存続していても、実体を失い修復の見込みがなければ「日本人の配偶者等」の活動には当たらないとしたものです。身分系の在留資格についての判例ですが、在留資格に当たる活動かどうかを、書類上の地位でなく活動の実体で判断するという考え方は、経営・管理の審査と共通します。

登記簿上の代表取締役は、戸籍上の婚姻と同じく、法律上の地位を示すにすぎません。審査要領10-2が「実際に行う業務の内容を確認して判断する」と書き、10-15が日々の活動内容を詳細に確認するとしているのは、同じ方向を向いた運用だと筆者は理解しています。判決の内容は最判平成14年10月17日と「活動の実体」|在留資格は名目でなく実態で判断されるで詳しく扱っています。

経営の実態を示す資料

申請時と更新時で、経営の実態を示す資料は次のように変わります。

場面 見られる点 資料の例
新規の申請 事業内容の具体性、株式・資金の出所(10-2) 専門家の確認を受けた事業計画書、登記事項証明書(登記前は定款等)、資金の経緯の説明
役員報酬 経営の対価として報酬が決まっているか 役員報酬を定める定款、または決議した株主総会議事録(10-11)
更新 事業計画書に基づく活動を着実に行ったか(10-12) 活動を具体的に説明する資料。計画と異なる場合はその理由と説明資料

更新時の資料は、名ばかり経営者かどうかを事後に確かめる仕組みとして働きます。当初の事業計画書に書いた取組を、申請人が自ら進めてきたことを具体的に示せなければ、計画書そのものの信用が揺らぎます。

組織の中で申請人がどこに位置し、誰の指示を受けているかも、実態を示す材料になります。当事務所では、経営・管理とは別の就労系の在留資格の案件で、入管から指揮命令系統図の提出を求められたことがあります。組織内の位置づけと、他社の指揮命令下にないかを確認する趣旨でした。経営者として申請する場合も、申請人が誰からも指揮命令を受けずに判断している構造を、組織図や決裁の流れで示せるようにしておくと説明が通りやすくなります。

※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。

よくある質問

Q. 経営管理ビザでいう「名ばかりの経営者」とは何ですか?

役員の肩書きや出資者としての地位はあっても、事業の重要事項の決定や業務の執行に実際には関わっていない人を指します。審査要領は、申請人が経営の業務に実質的に参画していることを求め、新規事業では事業内容の具体性や投下資金の出所など、事業の開始に至る経緯全般から、単に名ばかりの経営者でないかを判断するとしています。

Q. 資本金を親族から出してもらった場合、経営管理ビザは不許可になりますか?

それだけで不許可になるとは審査要領に書かれていません。審査要領は、株式や投下資金の出所を、申請人が実質的に経営を行う者かどうかを判断する材料の一つとしています。資金をどういう経緯で用意し、なぜ申請人が経営を担うのかを説明できるかが問われます。なお、返済義務のある借入金を資本金とすることは違法とされています。

Q. 業務の多くを外部に委託していても経営管理ビザは取れますか?

委託の程度によります。審査要領は、業務委託等により経営判断を伴わない場合など、経営者としての具体的な活動内容に欠ける場合は、経営・管理の活動の実態がないものとして扱うとしています。入管庁のQ&Aも、業務の大半を外部に委託している場合や、経営者として把握すべき情報を把握していない場合は、経営者としての活動実態を認めないとしています。

Q. 許可を受けた後にも、経営の実態は確認されますか?

確認されます。カテゴリー3・4の更新では、在留資格決定時等に提出した事業計画書に基づく活動を在留期間中に着実に行っていたことを具体的に説明する資料が求められます。計画と異なる活動をしている場合は、その理由と具体的な説明資料が必要です。

申請前に書き出しておくこと

申請の準備に入る前に、2つのことを紙に書き出してください。1つは、事業資金3,000万円の出所と、それが申請人の出資になるまでの流れです。もう1つは、事業が始まった後に申請人が自分で決める事項の一覧で、価格、取引先、採用、資金繰りのうち何を誰が決めるかを具体的に書きます。どちらかに説明しにくい部分があれば、そこが審査で問われる箇所です。

不交付や不許可の通知を受けてから理由を探すより、この段階で弱い部分を埋めるほうが確実です。不交付になった後の進め方は在留資格認定証明書が不交付になる理由とは?原因と再申請の進め方を解説で扱っています。資金の経緯や経営体制の説明に不安がある場合は、事業計画書を固める前にご相談ください。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第10節「経営・管理」10-2(実質的な従事、事業開始に至る経緯、投資割合の比較)、10-5(借入金と資本金)、10-8(資本金の確認)、10-11(役員報酬の確認資料)、10-12(更新時の事業計画書に基づく活動の説明)、10-15(業務委託等と活動実態)、10-17(債務超過と借入先の確認)
  • 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A 令和8年6月26日更新)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
  • 出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について」(令和7年10月10日公表、同月30日更新)https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf
  • 出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」(令和8年6月改訂)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html
  • 最高裁判所平成14年10月17日判決