在留期間の更新は、今の在留資格の活動を続けていることに加えて、「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるときに限って許可されます(入管法21条3項)。この相当の理由の中身を具体化しているのが、入管庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」の8つの考慮事項です。素行、納税、社会保険料の納付は、そのうちの代表的な要素として並んでいます。ここでいう相当の理由とは、こうした考慮事項を総合的に評価して、更新を認めるのが適当と判断できる事情を指します。
押さえておくべきは、これらの考慮事項をすべて満たしても不許可になり得る、とガイドライン自身が書いている点です。更新の許否は法務大臣の広い裁量に委ねられており、相当の理由の判断は総合評価です。令和8年6月の改正では、関係機関から提供を受けた納税義務等の履行状況の情報を踏まえて判断する場合がある、という注書きも加わりました。内部基準である審査要領には、国税庁から入管へ情報が渡る仕組みと、その後の扱いが書かれています。
ここでは更新の個別事例や書類には立ち入らず、相当の理由という審査の枠組みを、ガイドラインと審査要領の記述から組み立て直します。
この記事でわかること
- 入管法21条3項の「相当の理由」が審査の中で果たす役割
- ガイドラインの8つの考慮事項と、それぞれの重み
- 素行・納税・社会保険について審査要領と公表資料が書いていること
- 令和8年10月の手数料改定が示す、在留期間と在留状況の関係
「相当の理由」は何を判断する基準か
入管庁の在留期間更新許可申請の手続ページは、審査基準として、申請に係る活動が法律の別表の活動に該当すること、そして「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があること」を挙げています。前者は、活動が在留資格の定める活動に当てはまるかという、いわば入口の要件です。これを在留資格該当性と呼びます。後者は、その活動を前提に、さらに在留を続けさせることが適当かを判断するもので、実務では相当性とも呼ばれます。
相当性の判断材料として、ガイドラインは8つの事項を示しています。
| 考慮事項 | 位置づけ |
|---|---|
| 1 在留資格該当性 | 許可の必要要件 |
| 2 上陸許可基準への適合 | 別表第一の二・四の表の在留資格は、変更・更新でも原則として適合が必要 |
| 3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと | 代表的な考慮要素 |
| 4 素行が不良でないこと | 代表的な考慮要素 |
| 5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能(世帯単位で足りる) | 代表的な考慮要素 |
| 6 雇用・労働条件が適正であること | 代表的な考慮要素 |
| 7 納税義務等を履行していること | 代表的な考慮要素 |
| 8 入管法上の届出義務を履行していること | 代表的な考慮要素 |
3から8は、満たしていれば許可されるという要件の形をとっていません。すべてに該当する場合でも不許可となることがある、とガイドラインは明記しています。ここで重要なのは、相当の理由は「要件の充足」を確認する作業というより、在留状況の全体を見て在留の継続が適当かを評価する作業だ、という論点です。
この構造の背景には、マクリーン事件の最高裁大法廷昭和53年10月4日判決(民集32巻7号1223頁)があります。最高裁は、更新の許否を法務大臣の広い裁量に委ね、外国人には更新を受ける権利が保障されていないとしました。判決の詳細はマクリーン事件とは?在留期間更新の裁量をわかりやすく解説|今の入管審査への影響で扱っています。
素行:罰金刑でも更新は止まる
ガイドラインは、退去強制事由に準ずる刑事処分を受けた場合や、不法就労をあっせんした場合などは「たとえ初犯であったとしても素行が不良」と評価するとしています。懲役刑に限らず、罰金刑でも更新の結論が変わることは、入管庁が公表している不許可事例(令和2年9月)から分かります。
| 事例 | 在留資格と経緯 | 結果 |
|---|---|---|
| 事例1 | 経営・管理で4回更新を受けた後、不法就労助長罪で罰金30万円 | 飲食店経営での更新を不許可 |
| 事例2 | 留学から技人国に変更し3回更新した後、児童買春・児童ポルノ法違反で罰金50万円 | プログラム作成業務での更新を不許可 |
どちらも、それまで何度も更新を受けてきた人です。更新の回数や勤務先での評価は、素行の問題を打ち消す材料にはなっていません。公表資料は、いずれも在留状況、在留の必要性、相当性等を総合的に勘案した結果としています。
資格外活動の超過も素行の評価に入ります。技人国の明確化資料は、変更の際の考慮例として、資格外活動で恒常的に週28時間を超えるアルバイトをしていた場合は素行善良とみなさない、としています。留学生時代の働き方が、就職後の在留にまで影響する場面です。
納税:内部基準に書かれた情報の流れ
ガイドラインの7番目「納税義務等の履行」には、令和8年6月の改正で注書きが加わりました。「当庁からの求めに応じ、関係機関から提供を受けた納税義務等の履行状況に関する情報を踏まえ、許否判断を行う場合があります」。申請書に添付した証明書だけでなく、入管が別の経路で得た情報も判断に使う、ということです。
その経路の一つが、審査要領の「国税庁との情報連携」に書かれています。
審査要領ではこう書かれている(入国・在留審査要領 第12編(開示版) 1-23〜1-24)
国税庁は、入管法別表第一又は別表第二の在留資格を有する外国人が経営又は管理に関与する法人・個人事業主等において、納税の義務に関する悪質な違反があった場合に入管へ情報を提供し、入管は当該情報を活用して慎重な審査を行い、その結果を国税庁に通知する。経営・管理の外国人が運営する企業等が消費税の不正還付に関して重加算税の賦課決定処分を受けた場合(処分が確定している場合)は、「原則として在留期間更新許可申請を不許可とする」。
同じ箇所は、引き続き在留を認めるに足りる相当の理由がある場合は意見を付して本庁へ請訓するとしながら、消費税の不正還付は「国庫からの詐取ともいうべき特に悪質な事実」だとしています。その後に続く部分は黒塗りで読めません。永住者など別表第二の在留資格で経営者として活動している人についても、在留を許可する場合の在留期間は原則「1年」とし、納税状況を確認したうえで伸長を検討する、と書かれています。この仕組みは消費税の不正還付と在留資格|国税庁との情報連携で更新が原則不許可になる仕組みで詳しく扱っています。
会社員として働く人の納税は、もっと日常的な形で確認されます。技人国の更新では、給与・報酬欄で日本人と同等額以上の報酬であることを確認するとされています。あわせて、住民税の課税(又は非課税)証明書と納税証明書で「収入額が契約時の金額であること及び納税が行われていること」を確認します(15-18〜15-20)。申請時に示した給与と実際の収入が大きく違えば、それ自体が説明を求められる点になります。
情報の突き合わせは税に限りません。雇用主がハローワークに出す外国人雇用状況の届出についても、入管は厚生労働省に情報の提供を求め、申請内容と突き合わせることができます(1-20〜1-23)。勤務先や居住地に疑義がある事案が照会の対象とされています。
社会保険:国民健康保険料の未納は税と同じ扱い
ガイドラインは、国民健康保険料等の高額・長期の未納で悪質なものは、税の未納と同じように扱うとしています。社会保険料の納付は、7番目の「納税義務等」に含めて評価されるということです。
健康保険証の提示については、令和6年12月2日以降、マイナポータルの資格情報画面、「資格情報のお知らせ」、「資格確認書」でもよいとされています。提示できないことを理由に不許可にはしない、とガイドラインは書いています。確認の対象は保険証という書類ではなく、加入と納付の実態です。
審査要領の中で、社会保険料の確認をもっとも細かく書いているのは特定技能の箇所です。
審査要領ではこう書かれている(入国・在留審査要領 第12編(開示版) 18の3-185〜188)
国民健康保険・国民年金の加入義務がある者については、資格情報等の写し、国民健康保険料(税)の納付証明書、被保険者記録照会回答票、申請月の前々月までの24か月分の国民年金保険料領収書などで加入と納付を確認する。未納があれば納付を指導し、分納計画に従って納付している場合などは誓約書の提出で不履行と扱わないが、「次回更新時に完納されていない場合には不許可とする」。
この基準は特定技能のものですが、社会保険料の未納をどう評価するかの考え方がよく表れています。未納があった事実だけで直ちに不許可とするのでなく、是正の機会を与え、その約束が守られたかを次の更新で確かめる、という段階的な構造です。経営・管理でも、公租公課の不履行が疑われる場合は2週間を目安に是正状況の確認書を求めるとされています(10-20)。社会保険料の滞納と更新の関係は社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?企業が確認すべきポイントを解説で企業の確認事項として整理しています。
手数料と処理期間:在留期間の長さに映る「在留状況」
更新申請の標準処理期間は2週間〜1か月とされています(手続ページ)。実際の処理日数の平均は、令和8年7月許可分で、技人国40.8日、経営・管理43.9日、特定技能1号41.0日です。許可された案件の平均であり、追加の確認が入れば長くなります。
令和8年10月1日からは、更新の手数料が、許可される在留期間によって変わります。窓口で納める場合、1年は33,000円、1年超3年未満は48,000円、3年以上5年未満は64,000円、5年以上は75,000円です。オンラインは、3月以下の10,000円から5年以上の65,000円までです。令和8年9月30日までに受け付けた申請は、許可が10月1日以降でも旧手数料(窓口6,000円・オンライン5,500円)です。
興味深いのは、入管庁のQ&A(問5)が在留期間ごとに額を変える理由として、長期の在留期間を受ける者は「一般的に在留状況が良好」であり、1年あたりの負担が低くなるよう設定したと説明している点です。在留期間の長さそのものが、在留状況の評価を反映しているという整理です。審査要領でも、技人国の在留期間は、届出義務の履行や所属機関のカテゴリーなどを基準に決めるとされ、公的義務の不履行や刑事処分は期間の検討材料になります(15-20〜15-22)。手数料の詳細は【2026年10月確定】在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?永住20万円・企業負担を解説を参照してください。
よくある質問
Q. 在留期間更新の「相当の理由」とは何ですか?
入管法21条3項が定める更新の許可基準で、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可する、というものです。中身は法律に書かれておらず、入管庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」が8つの考慮事項を示し、内部基準である審査要領が運用を定めています。
Q. ガイドラインの要件をすべて満たしていれば、更新は必ず許可されますか?
必ずではありません。ガイドラインは、素行や納税などの考慮事項は代表的なものであり、すべてに該当する場合でも不許可となることがあると書いています。更新の許否は法務大臣の広い裁量に委ねられているとするのが、マクリーン事件の最高裁判決です。
Q. 罰金刑を受けただけでも、更新は不許可になりますか?
なり得ます。入管庁が公表している不許可事例には、不法就労助長罪で罰金30万円、児童買春・児童ポルノ法違反で罰金50万円となった人の更新が不許可になった例があります。ガイドラインも、不法就労のあっせんなどは初犯であっても素行が不良と評価するとしています。
Q. 国民健康保険料の未納も更新に影響しますか?
影響します。ガイドラインは、国民健康保険料等の高額・長期の未納で悪質なものは、税の未納と同じように扱うとしています。令和8年6月の改正で、関係機関から提供を受けた納税義務等の履行状況の情報を踏まえて許否を判断する場合がある、とも明記されました。
更新の3か月前に確認しておくこと
まず、本人の住民税の課税証明書と納税証明書を取り、申請時の給与と実際の収入に差がないか、未納がないかを確認してください。国民健康保険・国民年金に加入している人は、納付の記録も確かめます。未納が見つかったら、更新申請の前に納付するか、少なくとも分納の手続きを済ませ、その資料を添えられるようにしておきます。
次に、在留期間中の刑事処分や交通違反、資格外活動の状況、長期の出国の有無を本人に確認します。相当の理由は総合評価なので、不利な事情があれば、それを上回る事情と説明を準備することになります。判断に迷う事情があるときは、申請前にご相談ください。不許可になる典型的な理由と対処は在留資格の更新が不許可になる理由とは?事例と対処法・企業の注意点を解説にまとめています。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版) 第2章第1節第9「労働施策総合推進法に基づく雇用状況の届出」1-20〜1-23、第10「国税庁との情報連携」1-23〜1-25(一部黒塗り)
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版) 第15節第1の3(4)「第3号」・4「審査のポイント」15-18〜15-20、第1の6「在留期間」15-20〜15-22
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版) 第10節「経営・管理」10-20、第18節の3「特定技能」18の3-185〜188
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html
- 出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請」https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-3.html
- 出入国在留管理庁「在留期間の更新許可申請及び在留資格の変更許可申請に係る不許可事例について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan66.html
- 出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html
- 出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」https://www.moj.go.jp/isa/01_00644.html、Q&A https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/01_00650.html
- 出入国在留管理庁「在留審査処理期間(令和8年7月許可分)」https://www.moj.go.jp/isa/content/001470530.pdf
- 最高裁大法廷昭和53年10月4日判決(マクリーン事件、民集32巻7号1223頁)