技能実習生の給与は、地域別最低賃金以上であることに加えて、同じ仕事をする日本人と同等額以上であることが技能実習計画の認定要件です(技能実習法9条9号)。給与から差し引く寮費・食費・水道光熱費にも上限があり、技能実習制度運用要領(2026年4月版)は、借上げ寮なら家賃を入居人数で割った額以内、光熱費なら実際にかかった額を同居人数で割った額以内と具体的に定めています。これらは計画認定の申請書類「技能実習生の報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書」(参考様式第1-16号)で数字として説明することになります。
技能実習生の給与の相場は月19万円前後
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、技能実習の一般労働者の賃金(所定内給与額、残業代や賞与を除く月額)は190.3千円で、前年から4.2%増えました。同じ調査で特定技能は221.4千円、専門的・技術的分野(特定技能を除く)は313.2千円、外国人労働者全体では254.3千円です。技能実習の平均年齢は26.2歳、勤続年数は1.7年でした。
19万円という水準は、多くの地域の最低賃金でフルタイム勤務した場合の月額とほぼ重なります。たとえば福岡県の最低賃金は令和8年度に1,114円(2026年10月4日発効、現行1,057円)へ上がり、年間休日105日・1日8時間の会社なら月の所定労働時間は約173時間で、最低賃金の月額は約19.3万円です。統計上の平均が最低賃金と近いのは、技能実習生の給与の多くが最低賃金を基準に決められていることを示しています。
なお、令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円(前年度比56円増)となり、2026年10月1日から12月2日までの間に都道府県ごとに順次発効します。発効日を過ぎた勤務分から新しい額が適用されるので、給与計算の締め日をまたぐ月は日割りで確認が必要です。
技能実習生の給与を決める3つのルール
技能実習生の給与は、次の3つの基準を同時に満たす必要があります。それぞれ根拠となる法律が違います。
最低賃金法|技能実習生にも同じ額が適用される
技能実習生は実習実施者と雇用契約を結ぶ労働者なので、最低賃金法がそのまま適用されます。外国人技能実習機構も、最低賃金は技能実習生を含むすべての労働者に適用されると毎年の改定時に案内しています。
月給制の場合は、月給を月の所定労働時間で割った時間額が最低賃金以上かを確かめます。このとき、通勤手当、家族手当、精皆勤手当、時間外・休日・深夜の割増賃金、賞与は計算に入れません(最低賃金法施行規則1条)。「月給19万円だから大丈夫」と考えていても、その中に皆勤手当1万円が含まれていれば、最低賃金の計算に使えるのは18万円です。
技能実習法|日本人が従事する場合と同等額以上
技能実習法9条9号は、計画認定の基準として「技能実習生に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」を求めています。運用要領は、技能実習生であるという理由で報酬が不当に低くなってはならないとしたうえで、判断のしかたを2つに分けています。
- 同程度の技能等を持つ日本人労働者がいる場合:職務内容と責任の程度がその日本人と同等であることを説明し、その日本人の報酬額と同等以上であることを説明する
- 同程度の日本人がいない場合:賃金規程があれば規程に照らした報酬体系から、規程がなければ職務内容と責任の程度が最も近い日本人と比べてどう違うかから説明する
運用要領はさらに、技能検定の受検料や監理費がかかることを理由に報酬を低くすることは許されない、とも明記しています。「監理団体に毎月払っている分を給与で調整する」という発想は、ここで否定されています。
ここでいう報酬とは、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」を指し、通勤手当・扶養手当・住宅手当のような実費弁償の性格を持つもの(課税対象となるものを除く)は含みません。就労ビザの同等額報酬と考え方は共通しており、比べ方の詳細は就労ビザの「日本人と同等額以上の報酬」とはで扱っています。
パートタイム・有期雇用労働法|同一労働同一賃金
技能実習生の雇用契約は有期なので、パートタイム・有期雇用労働法の対象です。同じ会社の正社員との間で不合理な待遇差を設けることや、職務内容等が同じなのに差別的な取扱いをすることは禁止されています。運用要領もこの点を注記しています。基本給だけでなく、賞与や手当についても、日本人の有期社員に出しているものを技能実習生にだけ出さない、という設計は説明がつきません。
1号・2号・3号で給与はどう変えるか
運用要領と技能実習制度の基本方針は、第2号・第3号技能実習の賃金が前の段階より上回るなど、技能の習熟度に応じた賃金の格付けを行うことを求めています。参考様式第1-16号にも、2号・3号の計画では「第1号技能実習での報酬」「第2号技能実習での報酬」を書く欄があり、段階ごとの報酬の推移が審査で見える形になっています。
「必要」とされているのは格付けの考え方であって、昇給額の下限が決まっているわけではありません。ただ、最低賃金は毎年上がるので、3年目の給与が最低賃金の改定分しか上がっていなければ、実質的には格付けがないのと同じです。3号へ移行するときは、2号修了時の技能評価試験(専門級)に合格している前提なので、日本人の同じ経験年数の社員と比べた報酬を改めて確認することをお勧めします。
なお、給与を引き上げる変更は、機構への届出が不要とされています。一方、比較対象の日本人が変わった場合など、報酬額の根拠に変更がある場合は軽微変更届出の対象になります。届出の要否は技能実習計画の軽微変更と変更認定の違い|届出が必要な場面一覧で一覧にしています。
控除できる費用と上限|寮費・食費・水道光熱費
技能実習生の給与から差し引けるものは、法律上2種類に分かれます。1つは所得税・住民税・社会保険料・雇用保険料のように法令で控除が認められているもの。もう1つは寮費・食費・水道光熱費のように、労使協定(労働基準法24条1項ただし書)を結んだうえで控除するものです。後者について、技能実習法施行規則14条4号は、技能実習生が費用の対価となる食事や宿泊施設の内容を十分に理解したうえで合意しており、かつ額が「実費に相当する額その他の適正な額」であることを求めています。運用要領が示す上限は次のとおりです。
| 費目 | 提供の形 | 徴収できる額の上限 |
|---|---|---|
| 食費 | 食材・宅配弁当などの現物支給 | 購入に要した額以内 |
| 食費 | 社員食堂での提供 | 他の従業員から徴収する額以内 |
| 食費 | 調理して提供 | 材料費・水道光熱費・人件費等を提供を受ける人数で割った額以内 |
| 居住費 | 借上物件 | 借上げ費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料は含まない)を入居する実習生の人数で割った額以内 |
| 居住費 | 自己所有物件 | 建設・改築費(土地の費用を除く)、耐用年数、入居人数等から算出した合理的な額 |
| 水道光熱費 | 共通 | 実際に要した費用を同居者(実習実施者やその家族を含む)の人数で割った額以内 |
借上物件でも、貸主が実習実施者や監理団体の役員、同居の親族などで、実質的に実習実施者と同一視できる場合は自己所有物件とみなされます。社長個人が所有するアパートを社宅にしている会社は、家賃相場ではなく建設費と耐用年数から計算し直す必要があります。この論点は特定技能の寮費でも同じ構造で、特定技能の寮費・家賃の決め方でも解説しています。
控除できないものも明確です。監理団体に払う監理費は、直接にも間接にも技能実習生に負担させてはなりません(施行規則14条3号)。運用要領は、実習実施者や監理団体が負担すべき費用を監理費等の名目で報酬から控除できないことはもとより、食費・居住費の控除にも労使協定が必要で、不当な額の控除で生活に支障を生じさせてはならないとしています。
水道光熱費の値上がりを理由に負担額を変える場合は、あらかじめ技能実習生に説明し理解を得ておくことが望ましいとされています。金額が変わらなくても、食事の回数や宿泊施設が変わった場合には、技能実習生が同意して署名した意思確認書の提出が必要になります。
参考様式第1-16号「報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書」の書き方
計画認定の申請では、雇用契約書・雇用条件書(参考様式第1-14号)とあわせて、参考様式第1-16号を提出します。この書式は3つのパートに分かれています。
1つ目の「報酬等」では、技能実習生の氏名・経験年数、職務内容と責任の程度、報酬(月給または時間給)を書き、続けて比較対象となる日本人労働者の有無、その日本人の職務内容・年齢・経験年数・報酬、同等以上と考える理由を書きます。月給と時間給はどちらで書いてもよいものの、比較できるよう統一する必要があります。賃金規程がある場合は「有」にチェックし、規程を参考資料として添付します。
記入で差が出るのは「同等以上であると考える理由」の欄です。比較対象の日本人がいない場合は、最も近い職務を担う日本人の職務内容や責任の程度が、技能実習生とどう違うかを具体的に書くよう注意書きがあります。たとえば次のような書き方になります。
比較対象者は入社2年目の日本人社員(22歳、経験2年)で、溶接作業に加え、後工程の検査記録の作成を担当している。技能実習生は溶接作業のみを担当し、検査記録の作成は行わない。日本人社員の月給は205,000円、技能実習生は賃金規程の1等級に当たる195,000円で、等級は職務の範囲に応じて定めており、国籍による差は設けていない。
2つ目は入国後講習中の講習手当と、宿泊施設の概要・安全衛生の確認事項です。講習期間中に食費や居住費の自己負担がある場合は、それと同等以上の講習手当を支給する必要があります(施行規則14条2号)。寝室は1人当たり4.5㎡以上など、9項目の確認欄に「有・無」でチェックを付け、施設の見取り図を添付します。
3つ目の「徴収費用」では、1か月当たりの報酬の概算額(控除前)に続けて、食費・居住費・水道光熱費・その他の定期負担費用の額と、それが実費相当その他の適正な額であることの説明を書きます。居住費は「自己所有物件」「借上物件」のどちらかを選びます。筆者は、この説明欄に計算式をそのまま書くことを勧めています。「家賃60,000円(管理費込)÷入居3名=20,000円」と書いてあれば、審査する側も一目で上限内だと分かるからです。
手取りはいくらになるか|福岡県の最低賃金で試算
最後に、福岡県で最低賃金を基準に給与を決めた場合の手取りを試算します。以下は筆者の試算で、社会保険料率や住民税の有無は個別の条件で変わります。
- 基本給:1,114円×173時間=192,722円
- 社会保険料・雇用保険料(本人負担):概ね報酬の15%前後で約29,000円
- 所得税:月数千円程度
- 住民税:来日1年目は前年の日本での所得がないため原則かからない
- 居住費:家賃60,000円÷3名=20,000円
- 水道光熱費:実費18,000円÷3名=6,000円
この条件だと、手取りは13万円台前半になります。入管庁が2022年7月に公表した調査では、技能実習生が来日前に送出機関等へ支払った費用は平均542,311円で、約55%が借金をして来日していました。借金の返済と母国への送金を抱えた実習生にとって、控除額の数千円の違いは小さくありません。給与明細の控除項目を母国語で説明し、雇用条件書の手取り額と一致しているかを最初の給料日に一緒に確認する。この手間が、失踪や転籍の相談を減らす一番の近道だと筆者は考えています。
受入れ全体の費用は技能実習生の受け入れ費用はいくら?初期費用・監理費の内訳と3年間の総額試算、特定技能に移行した後の報酬の考え方は技能実習と特定技能の違いで比較しています。
よくある質問
技能実習生の給与は最低賃金でもよいのですか?
最低賃金を下回らないことは必須ですが、それだけでは足りません。同じ仕事をする日本人と同等額以上であることが計画認定の要件なので、日本人の同等の社員が最低賃金より高い給与を受けていれば、技能実習生も同じ水準にする必要があります。日本人の比較対象がいない場合は、賃金規程や最も近い職務の日本人との違いから説明します。
技能実習生の給与が低いのはなぜですか?
統計上、技能実習の平均賃金(190.3千円)が低いのは、平均年齢26.2歳・勤続1.7年と若く経験が浅いこと、最低賃金を基準に給与を決める実習実施者が多いことが背景にあります。技能実習生であることを理由に日本人より低くすることは、制度上認められていません。
技能実習3号の給与はどう決めますか?
2号より高くするなど、技能の習熟度に応じた格付けを行うことが求められています。昇給額の下限はありませんが、最低賃金の改定分だけの昇給では格付けの説明が難しくなります。3号は優良な実習実施者であることが前提になる段階なので、日本人の同じ経験年数の社員の給与と改めて比べておくとよいでしょう。
技能実習生の給与から税金は引かれますか?
日本の居住者として、所得税と社会保険料は1年目から控除されます。住民税は前年の所得に対して課税されるため、来日2年目の6月から控除が始まるのが通常です。出身国との租税条約で免税の対象になる場合があるかどうかは、国ごとに条文が違うため税務署に確認してください。
寮費はいくらまで取れますか?
借上物件なら、借上げ費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金等は除く)を入居する実習生の人数で割った額が上限です。家賃6万円の部屋に3人入居するなら、1人2万円までです。自己所有物件の場合は、建設費と耐用年数、入居人数から計算します。
給与は「説明できる数字」で決める
技能実習生の給与の決め方を突き詰めると、最低賃金、日本人との比較、控除の実費計算という3つの数字を、申請書類の上で説明できるかどうかに行き着きます。参考様式第1-16号は、その説明を求める書式です。
2027年4月1日に始まる育成就労制度でも、日本人と同等額以上の報酬という考え方は引き継がれます。育成就労では一定の条件で本人の意向による転籍が認められるため、給与と控除の設計は、審査のためだけでなく人材を引き留めるための条件にもなります。今の技能実習生の給与と控除の計算式を一度書き出し、日本人社員の給与表と並べて見直しておくことが、次の制度への準備にもつながります。判断に迷う個別の論点は、監理団体か専門家に確認してください。
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根拠資料
- 技能実習制度 運用要領(令和8年4月)(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 第9条(e-Gov法令検索)
- 技能実習法施行規則 第14条(e-Gov法令検索)
- 令和7年賃金構造基本統計調査の概況 (9) 在留資格区分別にみた賃金(厚生労働省)
- 全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました(厚生労働省・2026年9月3日)
- 令和7年度地域別最低賃金について(外国人技能実習機構)
- 技能実習生の支払い費用に関する実態調査(出入国在留管理庁・2022年7月26日)
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