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育成就労の日本語要件|入国時A1・1年目・転籍・特定技能移行時に必要なレベル

育成就労の日本語要件は、就労開始前に「日本語教育の参照枠」A1相当(JLPTのN5等)の試験に合格しているか、A1相当の講習を100時間以上受けること、育成就労の開始から1年以内にA1相当の試験を受けること、3年間でA2相当(N4等)の試験に合格することの3段階が基本です。これに加えて、本人の意向で転籍するにはA2.1相当以上の合格が必要になり、介護や鉄道の運輸係員のように、分野によっては最初からA2.2相当以上を求めるものがあります。入国時に合格していなくても入国はできますが、その場合は受入れ企業の側に講習の負担が生じます。

育成就労で求められる日本語レベルの全体像

ここでいう「日本語教育の参照枠」とは、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)を参考に文化庁(現在は文部科学省)がまとめた、日本語の熟達度をA1からC2までの6段階で示す枠組みを指します。育成就労制度の日本語要件は、すべてこの枠組みのレベルで書かれています。JLPT(日本語能力試験)のN5やN4という表記は、あくまで目安として併記されているものです。

出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)は、育成就労の各段階で求める日本語の水準を次のように整理しています。

段階 原則の水準 対応する試験の例 根拠・性格
就労開始前 A1相当以上の試験合格、またはそれに相当する日本語講習の受講 JFT-Basic、JLPTのN5等 在留資格・計画認定の前提
開始から1年経過時まで A1相当の試験の受験(分野により上乗せ) 分野別運用方針で指定 中間評価。受験させる義務
本人意向の転籍時 A2.1相当以上(分野により上乗せ) JFT-Basic 転籍の要件の一つ
育成終了時(3年) A2.2相当以上(分野により上乗せ) JFT-Basic、JLPTのN4等 育成就労の目標
特定技能1号へ移行 A2.2相当以上 JFT-Basic、JLPTのN4等 移行の要件(試験免除なし)
特定技能2号 B1相当以上(分野により異なる) JLPTのN3等 2号の要件

A2.1とA2.2は、育成就労の設計で新しく使われるようになった区分です。同資料は「A2.2」を参照枠のA2相当のレベル、「A2.1」を「A1に到達し、かつA2.2到達に向けて学習が進展しているレベル」と説明しています。A1とA2の中間に、転籍の要件として使うための目盛りを1つ足した、と読むとわかりやすいと思います。

特定技能1号の日本語水準と育成就労の終了時の水準は同じA2.2相当です。育成就労は、3年間で特定技能1号に移れる人材を育てる制度として作られているため、ゴールの目盛りが一致しています。

就労開始前|A1相当の試験合格か、100時間の講習

育成就労制度運用要領(第4章第2節)は、「就労開始前に育成就労外国人がA1相当の日本語能力を身に付けることを前提としています」と明記しています。ただし、A1相当の試験に合格していないと入国できない、という仕組みではありません。育成就労制度Q&A(Q67)も、合格していない場合は入国後講習などで認定日本語教育機関等によるA1相当以上の講習を受ければよく、合格しなければ入国できないということはないと答えています。

合格しているかどうかで変わるのは、入国後講習の時間数です。

育成就労計画の認定申請時点 入国後講習の総時間数 日本語科目の中身
A1相当の試験に合格している 220時間以上(入国前6か月以内に110時間以上の入国前講習を受けていれば110時間以上) 必要な時間数を個別に設定。認定日本語教育機関でなくてもよい
A1相当の試験に合格していない 320時間以上(入国前6か月以内に160時間以上の入国前講習を受けていれば160時間以上) 認定日本語教育機関の「就労のための課程」によるA1相当講習を100時間以上(必須)

検索で最も多い質問は「育成就労の日本語教育は100時間必要ですか」というものです。答えは、認定申請の時点でA1相当の試験に合格していない人については必要、合格している人については不要、です。この100時間は入国後講習の総時間数320時間の内数で、別枠で追加されるものではありません。A1相当講習は、入国前講習の中で行うこともできます。

合否の判定は、育成就労計画の認定申請の時点で行います。認定後、入国までの間に合格した場合は、A1相当講習を受ける必要がなくなり、軽微変更届出書を外国人育成就労機構の地方事務所に出して講習時間を220時間に変更できます。ただし、入国後講習の途中で合格しても、講習時間を220時間に短縮することは認められません。送出国での受験日程と、認定申請・入国の日程をどう組むかが、受入れ企業の費用に直接響く部分です。

認定日本語教育機関と登録日本語教員の経過措置

A1相当講習は、文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」で受けるのが原則です。ただし当分の間の経過措置として、登録日本語教員による講習でもよいとされています(育成就労法施行規則附則3条1項)。その場合の条件は、講習の目標がA1相当(分野でより高い水準があればその水準)であること、100時間以上であること、登録日本語教員1人に対して同時に受講する生徒が20人以下であること、対面以外で行う場合はオンラインで同時かつ双方向に行うことです。

認定日本語教育機関の課程を「特別の日本語教育課程」として実施する場合は、講習の全部をオンラインで受講することもできます。

開始から1年以内|A1相当の試験を受験させる義務

育成就労実施者は、育成就労の目標に向けた中間評価として、開始から1年以内に、目標として設定した技能試験と日本語試験の「一定水準の試験」を受験させる義務を負います(運用要領第4章第2節)。育成就労制度Q&A(Q63)によれば、日本語の1年目試験の水準はA1相当が基本です。

ここで押さえておきたいのは、1年目試験は「受験させる」義務で、合格までは求められていない点です。運用要領は、1年目の技能試験に一度不合格になった場合でも、転籍の要件を満たすために2回目を受験させる義務はないとしています。また、転籍制限期間までに、A1相当を超える転籍用の水準の日本語試験を受験させる義務もないとしています。

1年目試験の水準は、分野別運用方針で分野ごとに定められています。多くの分野は就労開始前と同じA1相当の試験ですが、介護は1年経過時までにA2.2相当以上の合格と「日本語学習プラン」の作成を求めています(B1相当以上に合格していれば学習プランは不要)。

本人意向の転籍|A2.1相当以上の合格が要件

育成就労では、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められます。その要件の一つが、分野別運用方針で定める技能と日本語の試験に合格していることです(育成就労制度Q&A Q48)。転籍時の日本語水準は、「育成就労制度の概要」の表では多くの分野でA2.1相当以上、介護と鉄道の運輸係員ではA2.2相当以上とされています。

受入れ企業の立場から見ると、この要件には2つの面があります。1つは、日本語の学習支援を手厚くするほど、本人が転籍の要件を満たしやすくなる、という面です。もう1つは、転籍の要件を満たしたうえで自社に残ってもらえる職場かどうかが問われる、という面です。筆者は、日本語支援を「転籍を防ぐために控える」発想は、次に述べるA2講習の提供義務や計画認定の取消しの問題に直結するため、取るべきでないと考えます。

転籍の要件と企業の対策は育成就労の転籍とは?で詳しく扱っています。

3年間の目標|A2相当の合格とA2目標講習100時間

育成就労の目標となる日本語水準は、3年間でA2相当(A2.2相当)の試験に合格することです。これを計画的に達成するため、育成就労実施者は、3年間の間に認定日本語教育機関の「就労のための課程」によるA2相当を目標とする講習(A2相当目標講習)を100時間以上受講する機会を提供しなければなりません(育成就労法施行規則13条2項8号)。

このA2相当目標講習について、運用要領と育成就労制度Q&Aは次の点を示しています。

  • 講習費用は、本人の希望に応じて受講させる場合、育成就労実施者が負担する(Q&A Q66は、育成就労実施者または監理支援機関が費用負担を含めて必要な措置を取るとしています)
  • 受講時間を労働時間として扱うことは義務ではなく、就労時間内に行う必要もない(Q&A Q69)
  • A2相当の試験に既に合格している場合、または入国前・入国後講習で所定の講習を終えている場合は、機会の提供義務はない
  • 登録日本語教員による講習も、当分の間、A1相当講習と同じ条件(100時間以上、生徒20人以下、同時双方向のオンライン等)で認められる(規則附則3条2項)

運用要領は、講習の機会を意図的に与えなかった場合は育成就労計画に基づく育成就労を行わせていないことになり、たとえば「単に業務に従事させ、日本語能力の試験の受験機会を与えるのみである場合等」は計画の認定取消しの対象となるおそれがある、とまで書いています。試験を受けさせるだけでは足りず、講習の選定・契約・費用負担・オンライン環境の用意まで含めた措置が求められているということです。

3年経過時に目標の試験に合格できなかった場合について、「育成就労制度の概要」は、特定技能1号の試験に不合格となった人に再受験のため最長1年の在留継続を認めるとしています。この点について基本方針(2025年3月11日閣議決定)は、「従前と同一の育成就労実施者が継続して育成就労を行わせること等の要件の下で、再受験に必要な範囲で最長1年の育成就労の継続」を認めるとしており、延長期間中も在留資格は育成就労のままと読めます。延長を受けるための申請手続や計画変更の具体的な中身は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。

特定技能1号への移行|A2.2相当以上の合格が必須

育成就労から特定技能1号に移るには、技能試験(技能検定3級等または特定技能1号評価試験)と、日本語試験(A2相当以上)の両方に合格する必要があります(育成就労制度Q&A Q75)。現在の技能実習2号良好修了者のような試験免除はありません。

技能実習と比べると、この点が最も大きな違いです。技能実習2号を良好に修了した人は、関連する分野の特定技能1号に移るとき、技能試験と日本語試験の両方が免除されていました。育成就労では、3年間の育成の成果を試験で示すことが移行の条件になります。なお、施行後も当分の間は、技能実習2号良好修了者は関連性があれば試験免除で特定技能1号へ移行できるとされています(同Q80)。技能実習からの移行の詳細は技能実習から特定技能への移行は可能?で扱っています。

特定技能1号の日本語要件(JFT-Basic A2.2相当以上またはJLPTのN4以上)そのものは、育成就労を経ずに海外で試験を受けて特定技能1号で入国する人と同じです。特定技能2号に進む場合は、2027年4月1日以降、多くの分野でB1相当以上(JLPTのN3等)が求められます。

分野別に上乗せされる日本語要件

分野別運用方針で原則より高い水準が定められている主な分野は次のとおりです(「育成就労制度の概要」令和8年7月改訂、分野別運用方針)。

分野・業務区分 就労開始前 1年経過時 本人意向の転籍 育成終了時
原則(工業製品製造業、建設、農業、外食業など多くの分野) A1相当以上 A1相当の試験 A2.1相当以上 A2.2相当以上
介護 A2.2相当以上 A2.2相当以上+日本語学習プラン(B1相当以上の合格者は不要) A2.2相当以上 A2.2相当以上+介護日本語評価試験
鉄道(運輸係員) A2.2相当以上 就労開始前と同じ試験 A2.2相当以上 B1相当以上

介護は、技能実習でも1号の段階からN4程度を求めていた職種で、育成就労でもその考え方が引き継がれています。介護分野では、就労開始前の段階でA1相当講習による代替はなく、A2.2相当以上の試験合格が入口の条件になります。鉄道の運輸係員は、駅での旅客対応など日本語での接客が業務の中心になるため、終了時にはB1相当が必要です。

自動車運送業分野(トラック・バス・タクシー)と航空分野は、令和8年7月時点で育成就労産業分野として設定されていません。バス・タクシー運転者のB1相当という要件は特定技能1号の要件で、育成就労の要件ではありません。育成就労の対象分野と業務区分の一覧は育成就労の分野一覧(17分野・業務区分)|技能実習の職種で対象外になる仕事で扱います。

分野別運用方針の日本語水準は、分野ごとに試験の種類(JFT-Basic、JLPT等)とあわせて定められています。A2.1相当を判定する試験の具体的な合格基準(JFT-Basicのどの判定を当てるか)は、2026年9月29日時点で筆者が一次資料で確認できていません(公式資料では未確認)。受験の計画を立てる際は、自社の分野の分野別運用方針と試験実施機関の案内を確認してください。

技能実習の日本語要件との違い

技能実習には、介護を除いて日本語の入口要件がありませんでした。入国後講習で日本語を教えることは求められていましたが、到達目標や外部の試験で測る仕組みはなく、講習の担い手にも資格の要件はありませんでした。

育成就労では、次の4点が変わります。

  1. 入口にA1相当という基準が置かれ、未達なら認定日本語教育機関等による100時間の講習が必須になった
  2. 1年以内に日本語試験を受験させる義務ができた
  3. 3年間でA2相当の合格が目標とされ、A2目標講習100時間の機会提供が義務になった
  4. 特定技能1号への移行で日本語試験の免除がなくなった

受入れ企業の費用として見ると、A1相当講習(未合格者のみ)とA2相当目標講習の費用、受験料、講習時間中の賃金の扱いが新たな検討事項になります。受入れ企業が負う費用の全体は、育成就労制度のデメリットとして整理した育成就労制度のデメリットとは?受入れ企業が負う費用と事務負担を運用要領で整理で扱っています。

よくある質問

育成就労の日本語教育は100時間必要ですか?

2種類の100時間があります。1つは入国後講習の中で受けるA1相当講習100時間で、育成就労計画の認定申請時点でA1相当の試験に合格していない人だけが対象です。もう1つは3年間の間に受けるA2相当目標講習100時間で、受入れ企業に受講機会の提供義務があります。A2相当の試験に既に合格している人には、提供義務はありません。

育成就労の日本語レベルはどれくらいですか?

入国時の目安はA1相当(JLPTのN5程度)、3年間の目標はA2相当(N4程度)です。本人の意向で転籍するにはその中間のA2.1相当以上が必要です。介護は入国時からA2.2相当以上、鉄道の運輸係員は入国時A2.2相当・終了時B1相当と、分野によって高い水準が定められています。

育成就労でJLPT(日本語能力試験)の合格は必須ですか?

JLPTでなければならないわけではありません。育成就労の日本語要件は「日本語教育の参照枠」のレベルで定められ、分野別運用方針が指定する試験(JFT-Basic、JLPT等)のいずれかで水準を示します。入国時にA1相当の試験に合格していなくても、A1相当講習を100時間以上受ければ入国できます。

A1相当の試験に落ちたら入国できませんか?

入国はできます。育成就労制度Q&A(Q67)は、A1相当の試験に合格していない場合は入国後講習等でA1相当以上の講習を受けることとしており、合格しなければ入国できないということはないと答えています。ただし介護分野は就労開始前にA2.2相当以上の合格が必要とされているため、この扱いは当てはまりません。

日本語講習の費用は誰が負担しますか?

育成就労制度Q&A(Q66)は、育成就労実施者または監理支援機関が、費用負担を含めて日本語能力向上のために必要な措置を取るとしています。講習の時間を労働時間として扱う義務はありませんが、講習の選定や契約、オンライン環境の整備まで受入れ側の措置として求められます。個別の事情で判断が変わる部分は、監理支援機関に確認してください。

受入れ企業が日本語要件から逆算して決めること

日本語要件を段階ごとに並べると、受入れ企業が決めるべきことは3つに絞られます。

1つ目は、送出国でA1相当の試験に合格させてから入国させるか、入国後講習で100時間を受けさせるかです。前者なら入国後講習は220時間で済み、後者なら320時間と認定日本語教育機関等の講習費用がかかります。候補者の受験日程と育成就労計画の認定申請の時期をそろえることが、コストを左右します。

2つ目は、3年間のA2相当目標講習をどの機関に、いつ、どの時間帯で受けさせるかです。就業時間外に受けさせる設計も許されていますが、本人の負担が大きければ合格は遠のき、特定技能1号への移行も難しくなります。

3つ目は、分野の上乗せ要件の確認です。介護や鉄道の運輸係員のように入口から高い水準が求められる分野では、採用の母集団そのものが変わります。

日本語要件は、転籍の条件であると同時に、特定技能1号として長く働いてもらうための条件でもあります。3年後に自社で特定技能1号に移ってもらう前提で逆算すれば、講習と受験の計画は育成就労計画の段階で決まっているはずです。制度全体の準備の流れは【2027年4月施行】育成就労制度とは?にまとめています。

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根拠資料


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