社員の永住申請で会社が発行を求められる書類は、原則として在職証明書1通だけです。出入国在留管理庁の提出書類の案内は、会社勤務の人の「職業を証明する資料」を「在職証明書 1通」とし、様式も記載事項も定めていません。ただし、住民税の特別徴収、厚生年金・健康保険の加入手続といった会社の日常の事務処理は、そのまま納税・年金の審査資料に表れます。会社の協力は証明書を1枚書くことより広い範囲に及ぶ、という前提で読み進めてください。
会社勤務の人が出す「職業を証明する資料」は在職証明書1通
出入国在留管理庁の「永住許可申請3」(就労関係の在留資格・家族滞在から申請する人の案内)は、職業を証明する資料として次のいずれかを求めています。
- 会社等に勤務している場合:在職証明書 1通
- 自営業等である場合:確定申告書控えの写し 1通、営業許可書の写し(ある場合)1通
- その他の場合:職業に係る説明書(書式自由)及びその立証資料 適宜
家族滞在の人が申請する場合は「申請人又は申請人を扶養する方」の職業が対象になるため、就労資格で働く配偶者の勤務先が在職証明書を求められることもあります。日本人・永住者の配偶者から申請する人(永住許可申請1)でも、働いている場合は同じく職業を証明する資料が必要です。
日本で発行される証明書は、発行日から3か月以内のものを出すよう案内されています。在職証明書もこの扱いにそろえておくのが安全で、社員が申請日を決める前に早々と発行すると、書類集めが長引いたときに作り直しになります。
提出書類の全体像は永住申請の必要書類一覧|就労ビザ・配偶者ビザ別の提出書類と取得先で在留資格別に整理しています。本記事は、その中で会社が関わる部分に絞って説明します。
在職証明書の記載事項|様式の指定はないが、申請書の記載と照合される
在職証明書には入管庁の指定様式がありません。会社の既存の書式で構いませんが、審査で何と照合されるかを考えると、書くべき項目はおのずと決まります。
照合の相手は、永住許可申請書(入管法施行規則の別記第34号様式)です。申請書には職業、勤務先の名称・所在地・電話番号、年収、そして16番の「経歴(今回の入国後の学歴・職歴)」の欄があります。在職証明書の入社日と、申請書の経歴欄に書いた入社年月が1か月ずれているだけでも、どちらが正しいのかを確かめる手間が生じます。
| 項目 | 書き方の注意 |
|---|---|
| 会社の名称・所在地・電話番号 | 登記上の本店と勤務地が違う場合は、勤務地も併記する |
| 代表者の役職・氏名と社印 | 発行者が会社であることが分かる形にする |
| 社員の氏名・生年月日・国籍 | 氏名は在留カードのローマ字表記とそろえる |
| 入社年月日 | 雇用契約の開始日。試用期間も含めて在籍期間として書く |
| 雇用形態 | 正社員、契約社員(契約期間)など |
| 所属部署・役職・職務内容 | 在留資格の活動と合っているかが読み取れる程度に具体的に |
| 発行日 | 3か月以内の証明書として扱われる起点になる |
年収は在職証明書の必須項目ではありません。収入は住民税の課税証明書で確認されるため、在職証明書に書く場合は課税証明書の給与収入と食い違わない数字にしてください。
職務内容の書き方には注意が必要です。技術・人文知識・国際業務で在留している社員であれば、「営業部にて海外取引先との商談・契約書の作成に従事」のように、在留資格の範囲の仕事をしていると読み取れる書き方にします。実態と違う職務を書くことは虚偽の書類になり得るので、実態が在留資格の範囲からはみ出している疑いがあるなら、証明書の文言を工夫する前に、配置そのものを見直すべきです。
源泉徴収票と給与明細は提出書類一覧にない
「永住申請 源泉徴収票」で調べる人は多いのですが、永住許可申請3の提出書類の案内には源泉徴収票という書類名は出てきません。収入と納税を示す資料として求められているのは、次の2つです。
- 直近5年分の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(就労資格・家族滞在の場合)
- 国税5税目(源泉所得税、申告所得税、消費税、相続税、贈与税。いずれも復興特別所得税・地方消費税を含む)の納税証明書(その3)
源泉徴収票が役に立つのは、社員が申請書の年収欄を書くときや、転職した年の収入を説明するときです。審査の途中で追加資料として給与明細や源泉徴収票の写しを求められることもあり得るので、社員から再発行を頼まれたら応じられるようにしておけば足ります。高度人材の区分で申請する人は、年収のポイントの立証に別の資料が必要になるため、高度専門職から永住申請|70点で3年・80点で1年の条件とポイントの基準時点を参照してください。
会社の事務処理が審査資料に表れる3つの場面
ここで重要なのは、会社が発行する書類より、会社がこれまでしてきた事務処理のほうが審査に効くという論点です。永住許可に関するガイドライン(2026年2月24日改訂)は、税金と公的年金・公的医療保険の保険料について、申請時に納付済みでも当初の納付期限内に納めていなければ原則として消極的に評価するとしています。社員本人の努力では取り返せない部分が、会社の処理に依存しています。
住民税の特別徴収
住民税を給与天引き(特別徴収)していた期間は、会社が期限内に市区町村へ納入していれば、本人の納付は期限内だったことになります。永住許可申請3では、直近5年間ずっと特別徴収だった人は、住民税を適正な時期に納めたことを証明する資料(通帳の写しや領収証書)が不要とされています。
逆に、入社直後の数か月を普通徴収のままにしていた、退職予定者の切替手続が遅れた、といった事情があると、その期間は社員が自分で納付書で払っていたことになり、領収証書の提出が必要になります。中途採用時に前職からの特別徴収の引継ぎをしていない会社は、少なくない社員に「普通徴収の期間」を作っている可能性があります。
厚生年金・健康保険の加入
厚生年金と健康保険の適用事業所であれば、会社が資格取得届を出し、保険料を給与から控除して納めている限り、社員の年金記録に未納は生じません。問題になるのは、入社から資格取得までに空白がある場合や、パート・アルバイトから正社員になった人の加入時期がずれている場合です。空白期間は国民年金・国民健康保険の期間になり、その期間の領収証書を社員が出すことになります。
申請人が社会保険の適用事業所の事業主本人である場合(経営・管理の在留資格の人など)は、本人の記録に加えて、事業所として健康保険・厚生年金保険料を納めた資料(領収証書の写し、社会保険料納入証明書など)を、直近2年間のうち事業主だった期間について出します。
所属機関に関する届出
社員側の義務ですが、転職や契約終了の際の所属機関に関する届出(入管法19条の16)を14日以内に出していないことは、入管法上の義務の不履行として素行の評価に響きます。会社側にも、中長期在留者の受入れ・受入れ終了の届出(19条の17、努力義務)と、ハローワークへの外国人雇用状況の届出(労働施策総合推進法28条)があります。これらの記録は入管が照合できる情報なので、届出の漏れがないかを申請前に一度確かめておくと安心です。
社員の永住申請を支援する社内フロー
会社として決めておくと混乱が少ないのは、次の順序です。
- 依頼の受付:人事の窓口を1つに決め、提出先(出入国在留管理局への永住許可申請)と必要部数を聞き取る
- 在籍情報の確認:入社日、雇用形態、職務内容を人事記録で確認し、社員が書く申請書の経歴欄と突き合わせる
- 発行:社印を押した在職証明書を渡す。発行日から3か月以内に申請できる時期かを社員に確認する
- 付随する依頼への対応:源泉徴収票の再発行、住民税の特別徴収の期間の確認、健康保険の資格取得年月日の確認に応じる
- 身元保証人の依頼:社長や上司が頼まれた場合は、会社としてではなく個人として引き受けるかを本人が判断する
身元保証人は提出書類の一部ですが、在職証明書とは性質が違います。身元保証書は保証人個人が署名するもので、会社の証明ではありません。引き受ける前に知っておくべき責任の範囲は永住申請の身元保証人|条件・責任の範囲と会社の社長に頼むときの注意で説明しています。
申請中の配置転換や転勤も、会社が考えておくべき論点です。了解書(2021年10月1日から提出が必要)により、申請人は審査中に転職・退職など就労状況に変化があれば速やかに入管へ連絡することを了解しています。同じ会社の中での異動は転職に当たりませんが、在留資格の範囲外の業務への配置は審査中に限らず避けるべきです。標準処理期間は4か月から6か月とされており、その間の人事は申請の事情も考慮に入れて決めるのが現実的です。
手数料の改定と、会社が費用を負担する場合
永住許可の手数料は、2026年10月1日以降に受け付けた申請から200,000円に改定されます(出入国在留管理庁リーフレット)。2026年9月30日までに受け付けた申請は10,000円のままです。
会社が福利厚生として手数料を負担するかどうかは、会社の判断です。負担する場合の給与課税の扱い(現物給与に当たるか)は、国税庁の公表資料で永住許可手数料に特化した取扱いを確認できていないため(公式資料では未確認)とし、顧問税理士に確認してください。手数料改定の全体像は在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?で整理しています。
よくある質問
入管の永住申請に必要な書類のうち、会社が用意するものは?
会社勤務の人の場合、会社が発行するのは在職証明書1通です。そのほかの住民税・国税の証明書は市区町村と税務署、年金の記録は年金事務所やねんきんネットで本人が取得します。会社は、源泉徴収票の再発行や健康保険の資格取得日の確認など、本人の書類集めを補う依頼に応じる立場です。
在職証明書に決まった書式はありますか?
入管庁の指定様式はありません。会社名・所在地・電話番号、代表者名と社印、社員の氏名・生年月日・国籍、入社年月日、雇用形態、職務内容、発行日を入れておけば、申請書の記載との照合に困ることはありません。
転職したばかりの社員の場合、前の会社の在職証明書も必要ですか?
提出書類の案内上は、現在の勤務先の在職証明書1通です。前職の経歴は申請書の経歴欄に書きます。ただし、転職直後は収入の安定性を説明しにくく、転職の時期そのものが審査に影響し得るので、申請時期は社員と相談して決めてください。
永住申請で源泉徴収票は必要ですか?
提出書類の案内には挙がっていません。収入は住民税の課税証明書、納税は国税の納税証明書(その3)で確認されます。審査中に追加資料を求められたときに備えて、会社は再発行に応じられるようにしておけば足ります。
社長が身元保証人を頼まれました。会社として引き受けるのですか?
身元保証書は保証人個人が署名する書類で、会社の名義で引き受けるものではありません。身元保証人の責任は法的な強制力を持たない道義的なものとされていますが、引き受けるかは社長個人の判断です。
永住申請の支援は「書類1枚」より前の段階で決まる
社員から在職証明書を頼まれた時点で、会社にできることの多くはすでに終わっています。特別徴収を入社月から始めていたか、社会保険の資格取得に空白がなかったか、職務内容が在留資格の範囲に収まっていたか。これらは数年分の事務処理の結果として、課税証明書や年金記録に記録されています。
外国人社員の定着を考える会社にとっての判断軸は、永住申請の依頼が来る前に、中途採用時の住民税の引継ぎと社会保険の加入日を点検しておくことです。在職証明書は、その記録と矛盾しない内容で書けば役目を果たします。許可されるかどうかは社員個人の事情で判断が変わるため、納付の記録や職務内容に不安がある場合は、申請の前に専門家へ相談してください。永住の要件が2026年にどう変わったかは、【2026年10月改定】永住許可の要件厳格化で何が変わる?で企業向けに解説しています。
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根拠資料
- 永住許可申請(出入国在留管理庁)
- 永住許可申請3(就労資格・家族滞在)(出入国在留管理庁)
- 永住許可申請にかかる提出書類一覧表(概要・就労資格)(出入国在留管理庁)
- 永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)(出入国在留管理庁)
- 2026年10月1日から外国人の在留手続に関する手数料が改定されます(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法(e-Gov法令検索)
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