特定技能の外国人を雇ったことを理由に支給される国の補助金は、2026年9月29日時点でありません。国の制度で使えるのは、外国人社員全般を対象にした厚生労働省の人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)が中心で、就業規則の多言語化などの措置を導入し、定着の実績を出した会社に一度だけ支給されます。特定技能に絞った補助は、都道府県や市町村、分野別の団体が独自に設けているもので、福岡県では介護分野の家賃・生活用品や多言語化の補助、建設分野では建設技能人材機構(JAC)の奨励金があります。受入れ企業が最も知りたい登録支援機関の委託費を直接補助する制度は、国・福岡県とも見当たりません。
特定技能の補助金は「3つの層」で探す
特定技能で使える可能性のある制度は、出どころで分けると次の3つになります。
| 層 | 主な制度 | 特定技能に限るか |
|---|---|---|
| 国(厚生労働省) | 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金など | 限らない(外国人社員全般、または国籍を問わない) |
| 都道府県・市町村 | 福岡県の外国人介護人材の受入れ環境整備・多言語化の補助、他県・他市の特定技能雇用補助など | 分野や在留資格を限る制度が多い |
| 分野別の団体 | JACの資格取得等奨励金・一時帰国支援など | その分野の特定技能外国人に限る |
ここでいう助成金とは、主に厚生労働省が雇用保険を財源に出すもので、要件を満たせば原則として支給される制度を指します。補助金は、自治体などが年度の予算の範囲で募集するもので、受付期間が短く、予算に達すると締め切られます。どちらも会社に支給され、外国人本人は受け取れません。
国の制度|外国人労働者就労環境整備助成コース
国の制度の中心は、人材確保等支援助成金の外国人労働者就労環境整備助成コースです。雇用労務責任者の選任、就業規則等の多言語化、一時帰国のための休暇制度の整備、社内マニュアル・標識類の多言語化といった措置を計画に沿って導入し、その後6か月間の外国人社員の離職率を15%以下に抑えた場合に支給されます。
支給額は、2026年4月1日現在の制度で1制度の導入につき20万円、上限80万円です。厚生労働省は2026年10月1日から支給要領を改正し、支給額を最大25万円に変えると告知しています。9月30日までに就労環境整備計画を都道府県労働局に提出した事業主には、改正前の要件と支給額が適用されます。この記事の公開日から見れば、改正前の制度で申請できるのは実質的に翌日の提出分までです。
特定技能の受入れ機関にとって注意が要るのは、措置の選び方です。2026年4月1日現在のガイドブックでは、苦情・相談体制の整備について、特定技能外国人を雇用する事業所の相談体制は対象外とされています。特定技能の受入れ機関は、支援計画に基づく相談・苦情への対応がもともと義務付けられているためと考えられます。10月の改正では、この苦情・相談体制の整備そのものが廃止され、雇用労務責任者による対応に切り替わる予定です。
支給額の決め方にも変化があります。以前の制度は、翻訳会社や社会保険労務士に支払った経費の2分の1または3分の2を補助する方式でしたが、現在は措置ごとの定額です。支払った経費を補填する仕組みではないため、登録支援機関への委託費や通訳費をこの助成金でまかなうという発想は成り立ちません。要件の詳細と「72万円」という旧制度の数字の読み方は外国人雇用の助成金はいくら?72万円は旧制度、10月から最大25万円にで扱っています。
その他の国の助成金
国籍を問わない一般の助成金も、特定技能外国人に使える場合があります。有期の特定技能雇用契約で雇った人を正社員(期間の定めのない雇用)に転換すればキャリアアップ助成金(正社員化コース)の対象になりうるほか、社員に職業訓練を受けさせる人材開発支援助成金もあります。どちらも外国人であることは要件にならず、日本人社員と同じ条件で審査されます。特定技能の雇用契約はフルタイムが前提で、農業・漁業以外の分野は直接雇用に限られるため、契約形態が助成金の要件と合うかを事前に確かめる必要があります。金額と要件は年度ごとに変わるので、申請前に厚生労働省の各コースのページで、その年度の支給要領を確認してください。
福岡県の制度|介護分野の2つの補助金
福岡県が特定技能を含む外国人材の受入れで設けている補助は、介護分野に集中しています。福岡県の「外国人介護人材関係補助金」のページ(2026年7月10日更新)に掲載されている、介護事業所向けの2つの制度は次のとおりです。
| 制度 | 主な対象経費 | 補助率・上限 | 令和8年度の申請期限 |
|---|---|---|---|
| 福岡県外国人介護人材受入れ施設等環境整備事業費補助金 | 外国人介護職員が使う自転車・電子レンジ・洗濯機・冷蔵庫の購入、雇用開始から1年以内の職員が入居する住居の家賃(共益費・管理費を含む) | 3分の2、1施設20万円 | 2026年8月31日17時 |
| 福岡県介護サービス事業所多言語対応支援費補助金 | 翻訳機・多言語対応ソフトの導入、マニュアル作成、eラーニング、日本語学習支援、異文化理解研修、交流会 | 4分の3、1施設22万5千円 | 2026年8月31日17時 |
どちらも対象は介護事業所で、在留資格は特定技能に限られず、技能実習やEPAなど介護分野の外国人職員全般が含まれます。令和8年度分は2026年8月31日で申請期限を過ぎているため、次に使えるのは令和9年度の募集です。例年の募集時期から逆算すると、来年度に使いたい介護事業所は、春から夏にかけての県の告知を待つ必要があります。
家賃の補助は、特定技能の住居確保の支援と重なる部分があります。特定技能の受入れ機関は、社宅を用意する場合でも、本人から徴収できる額に制限があります。その考え方は特定技能の寮費・家賃の決め方で解説しています。補助を受けた家賃分を本人の負担として徴収すれば、補助の趣旨とも、特定技能の費用負担のルールとも合わなくなる点に注意してください。
介護以外の分野で、福岡県が特定技能の受入れを直接補助する制度は、2026年9月29日時点で確認できていません。トラック・バスなど運転手の確保に関する県の助成事業や、県内の市町村が独自に設けている外国人材の受入れ補助は、年度ごとに内容と受付状況が変わります。対象に特定技能が含まれるか、受付中かは、所在地の市町村の商工・介護担当課に直接確認するのが確実です(公式資料では未確認)。
建設分野|JACの奨励金と一時帰国支援
建設分野では、受入れ企業が加入する建設技能人材機構(JAC)が、受入負担金を財源にした支援制度を設けています。国や自治体の補助金ではありませんが、検索で「JAC 特定技能 補助金」と調べられているのはこの制度です。
1つ目は資格取得等奨励金制度です。雇用する外国人が建設分野特定技能2号評価試験、建設関係の技能検定1級、または技能検定の単一等級に合格して特定技能2号に移行した場合に、受入れ企業に支給されます。支給額は2026年6月1日以降1回5万円で、5月末までは2号評価試験・技能検定1級の合格で各10万円でした。条件は、その企業に所属するすべての特定技能1号外国人の受入負担金を支払っていることです。
2つ目は一時帰国支援です。建設分野の1号特定技能外国人が就労開始後に母国へ一時帰国し、同じ企業で就労を続けている場合などに、1人1回5万円(累計2回まで)が支給されます。2026年5月末までに再入国した分は旧制度(1人8万円)の対象です。申請は帰国後に限られ、航空券の半券などを添付します。特定技能の受入れ機関には一時帰国の休暇に配慮する義務があり、その取扱いは特定技能で一時帰国はできる?で扱っています。
JACはこのほか、CCUS(建設キャリアアップシステム)の手数料支援、無料の日本語講座や技能講習も案内しています。受入負担金は毎月支払う固定費なので、こうした支援を使わない手はありません。
登録支援機関の委託費は補助の対象になるか
受入れ企業からいちばん多く聞かれるのは、登録支援機関に払う毎月の委託費に使える補助金があるかどうかです。2026年9月29日時点で、国の助成金と福岡県の補助金に、この委託費を対象経費として明示した制度は見当たりません。
他県には、この委託費を対象にする市の制度があります。たとえば横浜市の特定技能外国人雇用促進支援補助金は、登録支援機関への委託料、在留資格の取得費用、渡航費などを対象経費とし、3分の1以内・1社20万円(1社1回・1人分まで)を補助しています(令和8年度の受付は2026年6月12日〜2027年2月26日、予算に達し次第終了)。ただし、対象は市内に1年以上事業所がある中小企業などに限られ、福岡県内の会社は使えません。福岡県内の市町村で同様の制度があるかは、所在地の市町村に確認してください。
支援費用の扱いで補助金より先に確認すべきなのは、本人に負担させてはいけない費用の範囲です。特定技能の運用要領は、登録支援機関への委託費を含む支援の費用を、直接・間接を問わず外国人本人に負担させてはならないとしています。補助金がないからといって給与から差し引けば、受入れ機関の基準に反します。費用の線引きは特定技能の費用で本人負担にできないもの|支援費用・保証金・送出手数料の線引きで整理しています。
補助金を使うときの手順と注意点
補助金・助成金は、申請の順番を誤ると受け取れなくなります。特定技能の受入れと並行して使う場合の手順は次のとおりです。
- 所在地の都道府県・市町村と、分野の団体(JACなど)の制度を確認する
- 国の助成金は、翻訳の発注や規程の変更より先に、計画を労働局に提出する
- 自治体の補助金は、交付申請の前に購入・契約した経費が対象外になることが多いため、募集要項で対象期間を確認する
- 支給・交付の決定後も、領収書や実施記録を保管する
国の助成金は、計画の提出から支給決定まで1年半前後かかります。自治体の補助金は、年度内に事業を終えて実績報告を出す必要があります。どちらも、特定技能の在留資格の審査期間(在留資格変更で2か月前後)とは別の時間軸で動くため、採用の予定と補助金の締切を1枚の予定表に並べて管理すると漏れを防げます。
不正受給に対する処分は厳しく、国の助成金は不支給・返還に加えて事業主名が原則として公表されます。「助成金で費用がまかなえる」と勧誘するコンサルタントの話は、制度の公式ページで裏を取ってから判断してください。
よくある質問
特定技能外国人の受け入れに補助金はありますか?
特定技能に限った国の補助金はありません。国の制度では外国人労働者就労環境整備助成コースが使え、自治体や分野の団体が独自の補助を設けている場合があります。福岡県では介護分野の家賃・生活用品と多言語化の補助がありますが、令和8年度分の申請期限(2026年8月31日)は過ぎています。
特定技能2号に合格すると補助金はもらえるの?
建設分野では、JACの資格取得等奨励金により、2号評価試験や技能検定1級などに合格して特定技能2号に移行した外国人の受入れ企業に5万円(2026年6月1日以降)が支給されます。支給先は企業で、本人ではありません。建設以外の分野で、2号合格に対する国の補助金はありません。
特定技能の一時帰国の補助金はいくらですか?
建設分野のJACの一時帰国支援では、1人1回5万円、累計2回までです。2026年5月末までに再入国した分は1人8万円でした。他の分野には同様の全国的な制度はなく、一時帰国の旅費は、受入れ機関と本人の取決めによります。
補助金は外国人本人が受け取れますか?
国の助成金、福岡県の補助金、JACの奨励金はいずれも受入れ企業に支給されます。本人が受け取る制度ではありません。
補助金は「採用の後押し」ではなく「定着の費用」
特定技能の補助金を探すと、多くの会社は採用の費用を減らせないかと考えます。しかし実際にある制度は、多言語化、住まい、一時帰国、資格取得といった、採用した後の定着にかかる費用を対象にしたものがほとんどです。国の助成金も、離職率15%以下という定着の結果を支給の条件にしています。
そう考えると、補助金の活用は採用計画ではなく、受入れ後の1年目の支援計画の中で検討するのが自然です。就業規則の多言語化や住居の手配は、特定技能の支援計画でもともと必要になる作業で、そこに国の助成金や自治体の補助を重ねられるかを確認する、という順番です。福岡で相談先を探す場合は福岡で外国人を採用したい企業へを参照してください。助成金の申請は社会保険労務士の業務で、個別の事情で判断が変わるため、計画の提出前に労働局か社会保険労務士に確認してください。
根拠資料
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)(厚生労働省)
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック(令和8年4月1日現在)(厚生労働省)
- 外国人介護人材関係補助金(福岡県・2026年7月10日更新)
- 資格取得等奨励金制度(建設技能人材機構・2026年6月1日制度変更)
- 一時帰国支援(建設技能人材機構)
- 横浜市特定技能外国人雇用促進支援補助金(横浜市)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(出入国在留管理庁・令和8年8月)
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