外国人労働者の給料は、最低賃金以上であることが法律上の最低線です。ただ、それで足りるかどうかは在留資格によって違います。技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習では、同じ仕事をする日本人と同等額以上の報酬が在留資格の要件になっており、日本人に最低賃金より高い給料を払っている職場で外国人だけを最低賃金にすれば、在留資格の許可が出ない、あるいは更新で問題になります。永住者や日本人の配偶者等には在留資格上の報酬要件はありませんが、労働基準法3条が国籍を理由とする賃金差別を禁じています。
外国人にも最低賃金は適用される|国籍・在留資格による例外はない
最低賃金法4条1項は、使用者は最低賃金の適用を受ける労働者に対し、最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないと定めています。最低賃金の適用を受ける労働者に国籍や在留資格による区別はなく、日本国内で雇用される限り、外国人労働者にも同じ最低賃金が適用されます。技能実習生、特定技能外国人、資格外活動許可でアルバイトをする留学生も例外ではありません。
最低賃金を下回る賃金を定めた労働契約は、その部分が無効になり、最低賃金と同じ額を定めたものとみなされます(同条2項)。本人が「最低賃金より安くてもいいから働きたい」と同意していても、契約上の賃金は自動的に最低賃金まで引き上げられ、差額は未払賃金になります。地域別最低賃金を下回る支払いには、50万円以下の罰金が科されます(同法40条)。
最低賃金には減額の特例がありますが(同法7条)、対象は障害により著しく労働能力の低い人、試用期間中の人、一定の職業訓練を受ける人などで、都道府県労働局長の許可が必要です。「日本語ができない」「外国人だから」という理由で減額できる制度はありません。
2026年度の最低賃金|全国加重平均1,177円、福岡は10月4日から1,114円
厚生労働省がまとめた令和8年度の地域別最低賃金の答申状況によると、全国加重平均は1,177円で、前年度の1,121円から56円引き上げられます。発効日は都道府県ごとに違い、10月1日から12月2日にかけて順に切り替わります。
九州・沖縄の答申額と発効日(予定)は次のとおりです。
| 県 | 改定後(改定前) | 発効日(予定) |
|---|---|---|
| 福岡 | 1,114円(1,057円) | 2026年10月4日 |
| 佐賀 | 1,095円(1,030円) | 2026年11月15日 |
| 長崎 | 1,087円(1,031円) | 2026年11月2日 |
| 熊本 | 1,092円(1,034円) | 2026年12月1日 |
| 大分 | 1,096円(1,035円) | 2026年11月1日 |
| 宮崎 | 1,085円(1,023円) | 2026年10月24日 |
| 鹿児島 | 1,090円(1,026円) | 2026年10月25日 |
| 沖縄 | 1,086円(1,023円) | 2026年12月2日 |
月給制の社員は、月給を1か月平均の所定労働時間で割って時給に直し、最低賃金と比べます。福岡県で月平均所定労働時間が173時間の会社なら、1,114円×173時間=19万2,722円が、10月4日以降の月給の下限です。これまで月給19万円で雇っていた社員は、時給換算で約1,098円となり、10月の給与から最低賃金を下回ります。発効日をまたぐ給与計算期間では、発効日以後の労働時間に新しい額が適用される点にも注意が必要です。
最低賃金に含めない手当
最低賃金と比べる賃金からは、次のものを除きます(最低賃金法4条3項、同法施行規則1条)。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)と、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 時間外労働・休日労働に対する賃金
- 深夜労働の割増部分
- 精皆勤手当・通勤手当・家族手当(地域別最低賃金の決定で算入しないとされているもの)
外国人社員の給与では、「住宅手当」「生活手当」などの名目で基本給を低く抑え、総支給額で最低賃金を満たしているように見せる例があります。住宅手当は上の除外項目に含まれないため最低賃金の計算に算入できますが、家族手当や通勤手当で水増しした総額は、最低賃金の判定には使えません。
労働基準法3条|国籍を理由とする賃金差別の禁止
労働基準法3条は、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定めています。違反には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます(同法119条1号)。
ここで重要なのは、禁じられているのは「国籍を理由とする」差だという論点です。職務の内容、責任の程度、能力、経験年数、勤続年数の違いによって賃金に差があること自体は、3条の問題にはなりません。日本人社員と同じ賃金規程・等級制度を外国人社員にも当てはめ、その結果として差が出るのであれば、それは国籍による差ではないからです。
逆に、同じ職務・同じ等級なのに「外国人枠」の別テーブルを作って低い基本給を当てはめる、外国人社員にだけ賞与を支給しない、といった扱いは、国籍を理由とする差別的取扱いに当たるおそれがあります。有期雇用やパートタイムの外国人社員については、パートタイム・有期雇用労働法8条・9条の不合理な待遇差の禁止も同じ場面で問題になります。
在留資格の報酬要件は最低賃金より上に線を引く
入管法の側では、在留資格ごとに報酬の要件が定められています。代表的なものを整理すると次のとおりです。
| 在留資格 | 報酬の要件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上 | 上陸基準省令 |
| 特定技能 | 日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上。外国人であることを理由とする差別的取扱いの禁止 | 特定技能基準省令1条1項3号・4号 |
| 技能実習 | 日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上 | 技能実習法9条9号 |
| 永住者・日本人の配偶者等・定住者など | 在留資格上の報酬要件なし(活動制限なし) | 入管法別表第二 |
特定技能基準省令1条1項は、柱書で「労働基準法その他の労働に関する法令の規定に適合していること」を求めたうえで、3号で報酬の同等以上、4号で「外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと」を定めています。労働法上の差別禁止が、そのまま在留資格の基準に取り込まれている形です。最低賃金を割っている、割増賃金を払っていないといった労働法違反は、特定技能では「労働に関する法令への適合」を欠くことになり、受入れそのものの基準に響きます。
同等額以上は「同じ会社の日本人」と比べる
同等額以上の比較対象は、世間の相場や最低賃金とは別物で、原則としてその会社で同じ業務に従事する日本人です。日本人の新卒に月給22万円を払っている会社が、同じ職務の外国人新卒に月給20万円を提示すれば、20万円が最低賃金を大きく上回っていても、同等額以上の要件を満たしません。
比較する日本人がいない場合は、賃金規程や近い職務の日本人との比較で説明することになります。技術・人文知識・国際業務の比べ方は就労ビザの「日本人と同等額以上の報酬」とは、特定技能の考え方は特定技能外国人の給料はどう決める?、技能実習の報酬と控除の上限は技能実習生の給与の決め方|最低賃金・日本人同等報酬と寮費・食費の控除上限で扱っています。
身分系の在留資格は「報酬要件がない」だけで、労働法は同じ
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は、就労の制限がなく、入管の審査で雇用契約の報酬額が問われることもありません。ただし、報酬要件がないことは、日本人より安く雇ってよいことを意味しません。最低賃金法も労働基準法3条もそのまま適用されます。在留資格上の審査がない分、差別的な賃金設定が見過ごされやすい層でもあります。
寮費・食費の天引きで最低賃金を割り込ませない
外国人社員、とくに技能実習生や特定技能外国人の給与では、寮費・食費・水道光熱費を天引きする例が多く見られます。労働基準法24条1項は賃金の全額払いを原則とし、法令に定めのある税金・社会保険料以外を控除するには、労働者の過半数代表者などとの書面による協定(いわゆる24協定)が必要です。
最低賃金との関係では、控除前の賃金が最低賃金以上であれば、天引き後の手取りが最低賃金を下回っても直ちに最低賃金法違反にはなりません。ただし、実費を超える寮費を差し引いて手取りを実質的に減らす運用は、特定技能では「外国人であることを理由とする差別的取扱い」や支援計画の基準、技能実習では徴収費用の上限(運用要領)の問題になります。控除額は実費の範囲に収め、入社時に本人の母語で内訳を説明しておくことが、後の紛争を防ぎます。
2027年4月からの育成就労も同じ構造
2027年4月1日に技能実習制度は育成就労制度に移行します。育成就労でも、育成就労計画の認定基準として日本人と同等以上の報酬が求められ、最低賃金の適用も変わりません。制度の全体像は【2027年4月施行】育成就労制度とは?で扱っています。報酬要件を定める条文番号と、育成就労の運用要領での比較方法の具体的な書きぶりは、施行前の公表資料で確認してください(公式資料では未確認)。
外国人労働者の賃金はいくらか|2025年の統計
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(2025年6月分の所定内給与額)によると、外国人労働者の賃金は平均25万4,300円で、在留資格区分別には次のとおりです。
| 在留資格区分 | 賃金 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
|---|---|---|---|
| 外国人労働者計 | 254.3千円 | 32.5歳 | 3.3年 |
| 専門的・技術的分野(特定技能を除く) | 313.2千円 | 32.4歳 | 3.2年 |
| 特定技能 | 221.4千円 | 29.5歳 | 2.4年 |
| 身分に基づくもの | 311.1千円 | 45.0歳 | 6.5年 |
| 技能実習 | 190.3千円 | 26.2歳 | 1.7年 |
同じ調査の一般労働者全体(男女計)の賃金は34万600円、平均年齢44.4歳、平均勤続年数12.7年です。
賃金格差の理由は、年齢・勤続年数・職種の違いが大きい
平均値だけを並べると、外国人労働者は一般労働者より約8.6万円低く見えます。ただし、外国人労働者の平均年齢は約12歳若く、勤続年数は4分の1程度です。日本の賃金は年齢と勤続で上がる構造を持っているため、平均の差の相当部分はこの違いで説明できます。
筆者が同じ調査の年齢階級別の数字と比べてみると、専門的・技術的分野(平均32.4歳)の31万3,200円は、一般労働者の30〜34歳の31万2,300円とほぼ同じ水準です。一方、特定技能(平均29.5歳)の22万1,400円は、一般労働者の25〜29歳の27万9,400円を約5.8万円下回ります。特定技能や技能実習は製造・建設・介護・外食などの現場職種が中心で、職種構成の違いも影響しているため、この比較だけで差別の有無を判断することはできません。それでも、「外国人だから安い」というより、若く勤続が短く、賃金水準の低い職種に集中していることが格差の主な理由だと読むのが統計に沿った見方です。
言い換えれば、会社ごとに見たときに、同じ職種・同じ年次の日本人と比べて差が出ているかどうかが、法的に問われる点です。平均賃金の統計は、自社の水準が市場とどの程度ずれているかを見る材料として使ってください。
最低賃金の改定で外国人雇用に起きること
最低賃金の改定は、外国人雇用ではさらに2つの影響を持ちます。
1つは、最低賃金ぎりぎりで雇っている外国人社員の契約の見直しです。最低賃金を下回った部分の契約は無効となり、自動的に最低賃金まで引き上がりますが、給与計算を直さなければ未払いが発生します。特定技能では、報酬額の変更が雇用契約の変更として届出の対象になるかどうかを、運用要領の届出一覧で確認しておく必要があります(公式資料では未確認)。
もう1つは、日本人社員とのバランスです。最低賃金の改定で日本人のパート・新卒の給与を引き上げたのに、同じ職務の外国人社員の給与を据え置けば、同等額以上の要件を下回ることがあります。改定時は、日本人と外国人を同じ賃金テーブルで一緒に見直すのが安全です。
厚生労働省が2025年9月26日に公表した令和6年の監督指導の結果では、技能実習生を使用する事業場1万1,355か所のうち8,310か所(73.2%)、特定技能外国人を使用する事業場5,750か所のうち4,395か所(76.4%)で労働基準関係法令の違反が見つかりました。主な違反事項は、機械等の安全基準に次いで割増賃金の支払いでした。労働基準監督機関と出入国在留管理庁・外国人技能実習機構の間には相互通報の仕組みがあり、最低賃金や割増賃金の違反は受入れの継続にも影響します。
よくある質問
外国人労働者の給料は日本人と同じでなければいけませんか?
同じ職務・責任・能力の日本人がいる場合は、国籍を理由に低くすることはできません(労働基準法3条)。技術・人文知識・国際業務や特定技能などは、日本人と同等額以上であることが在留資格の要件にもなっています。職務や経験年数の違いによる差は認められます。
留学生のアルバイトにも最低賃金は適用されますか?
適用されます。資格外活動許可で働く留学生も、日本人のアルバイトと同じ地域別最低賃金以上の時給が必要です。週28時間以内という時間の上限は入管法上の制限で、最低賃金とは別に守る必要があります。
外国人労働者の給料未払いは、本人が帰国すれば問題になりませんか?
問題は消えません。賃金の未払いは労働基準法24条違反で、本人が帰国した後でも請求できます。最低賃金を下回る部分の差額も未払賃金です。特定技能や技能実習では、賃金の未払いが受入れ機関としての基準不適合につながり、他の外国人社員の在留にも影響します。
特定技能の外国人労働者の給料はいくらですか?
2025年の賃金構造基本統計調査では、特定技能の平均賃金(所定内給与額)は22万1,400円です。ただし在留資格の要件は平均額ではなく、自社で同じ業務に従事する日本人と同等以上かどうかで判断されます。
なぜ外国人労働者の給料は安いのでしょうか?
統計上は、外国人労働者の平均年齢が32.5歳と若く、平均勤続年数が3.3年と短いこと、賃金水準が比較的低い現場職種に集中していることが主な理由です。専門的・技術的分野の在留資格では、同年代の一般労働者とほぼ同じ水準になっています。
「最低賃金以上」と「日本人と同等以上」を分けて確認する
外国人社員の給料を決めるとき、会社が確認すべき線は2本あります。1本目は最低賃金で、在留資格を問わず全員に適用され、10月から12月にかけて毎年上がります。2本目は同じ職務の日本人の賃金で、就労系の在留資格ではこれが許可の要件になり、身分系の在留資格でも労働基準法3条の判断基準になります。
筆者は、外国人社員専用の給与テーブルを作らず、日本人と同じ賃金規程に載せることを勧めます。等級と職務で説明できる賃金であれば、入管の審査でも労働基準監督署の調査でも同じ資料で説明ができ、最低賃金の改定時の見直しも一度で済みます。雇用契約書に報酬の内訳をどう書くかは外国人の雇用契約書の作り方|多言語の労働条件通知書と在留資格の停止条件で扱っています。個別の賃金設定が要件を満たすかは、職務内容と比較対象の日本人の状況で判断が変わるため、申請前に確認してください。
根拠資料
- 最低賃金法(e-Gov法令検索)4条・7条・40条
- 最低賃金法施行規則(e-Gov法令検索)1条
- 労働基準法(e-Gov法令検索)3条・24条・119条
- 特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(e-Gov法令検索)1条
- 令和8年度 地域別最低賃金 答申状況(厚生労働省)
- 令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況(厚生労働省)
- 外国人技能実習生又は特定技能外国人を使用する事業場に対して行った令和6年の監督指導、送検等の状況(厚生労働省・2025年9月26日)
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