中国籍の人が日本に帰化するための条件は、ほかの国籍の人と同じ国籍法5条の要件です。中国人ならではの違いは本国側にあり、中国国籍法9条が「外国に定住する中国公民が自らの意思で外国籍を取得したときは、自動的に中国国籍を失う」と定めているため、帰化の許可前に中国の国籍離脱手続をする必要がありません。そのかわり、出生・親族関係・婚姻を中国の公証処で証明する「公証書」を何通もそろえることになり、ここが準備期間の大半を占めます。
中国籍の帰化許可者は2025年に3,533人で国籍別の最多
法務省民事局の統計によると、2025年(令和7年)の帰化許可者は全体で9,258人、そのうち中国籍は3,533人でした。2024年の3,122人、2023年の2,651人から毎年増えており、2024年に韓国・朝鮮籍を抜いて国籍別の1位になっています。2025年の韓国・朝鮮籍は2,017人、3位のネパール籍は695人です。同じ年の帰化許可申請者は14,103人、不許可は666人でした。
この数字は、中国籍の人の帰化が珍しい手続ではなくなっていることを示しています。法務局の窓口でも中国籍の人向けの添付書類の案内が個別に用意されており、東京法務局は「帰化許可申請書に添付する書類(中国の方)」のページ(2026年9月4日更新)で、国籍証明書と公証書の種類を具体的に示しています。
中国人の帰化条件|国籍法5条と2026年4月からの運用
帰化の条件は、国籍法5条1項の次の6つと、法務局が審査で確認する日本語能力です。
- 引き続き5年以上日本に住所を有すること(住所条件)
- 18歳以上で本国法によって行為能力を有すること(能力条件)
- 素行が善良であること(素行条件)
- 自己または生計を一つにする配偶者その他の親族の資産または技能によって生計を営めること(生計条件)
- 国籍を有しないか、日本国籍の取得によってその国籍を失うべきこと(重国籍防止条件)
- 日本国憲法や政府を暴力で破壊することを企てる団体に加入していないこと(憲法遵守条件)
条文の住所条件は今も「5年以上」ですが、法務大臣は2026年3月27日の閣議後記者会見で、同年4月1日から審査の運用として原則10年以上の在留と日本社会への融和を求め、税金・社会保険料の納付状況を確認する期間を延ばすと説明しました。東京法務局の添付書類の案内では、住民税の課税・納税証明書は直近5年分、社会保険料の納付証明書は直近2年分になっています。条件の全体像は帰化の条件とは?国籍法5条の7要件と2026年4月からの居住10年の運用、2026年4月の運用変更の詳細は帰化の厳格化|2026年4月から何が変わった?居住10年・納税5年確認と申請中の扱いで解説しています。
日本人の配偶者である中国人は、国籍法7条の簡易帰化の対象になり、日本に引き続き3年以上住所または居所がある場合(または婚姻から3年以上たち、1年以上日本に住所がある場合)は、住所条件と能力条件が緩和されます。
中国籍の人に特有の論点は、5つ目の重国籍防止条件です。次の節で説明します。
中国国籍は帰化と同時に自動で失われる|国籍法9条
中国国籍法(中华人民共和国国籍法)は、二重国籍について次の3つの条文を置いています。
- 3条:中国は、中国公民が二重国籍を持つことを認めない
- 9条:外国に定住する中国公民が、自らの意思で外国籍に加入し、または取得したときは、自動的に中国国籍を失う(原文「定居外国的中国公民,自愿加入或取得外国国籍的,即自动丧失中国国籍。」)
- 10条・11条:国籍の離脱(退籍)を申請し、許可されたときに中国国籍を失う
日本に住んで帰化する中国人は「外国に定住する中国公民」に当たるので、9条によって、日本国籍を取得した時点で中国国籍を自動的に失います。つまり日本の国籍法5条1項5号の「日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと」を、本国の法律がそのまま満たしてくれる形です。
ここで重要なのは、帰化の許可前に中国国籍を離脱する必要がないという点です。国によっては、帰化の許可が出る前に本国の国籍離脱の手続を終えるよう法務局から求められ、離脱してから許可を待つ間は無国籍になる、という順序をとります。中国籍の人はこの手続がないため、許可が出るまで中国国籍と中国のパスポートを持ったまま生活できます。許可前に海外出張や一時帰国が必要な人にとっては、実務上の負担が小さい国籍といえます。
一方で、日本国籍を取得した後は中国国籍が残らないため、中国に入国するときは日本のパスポートで入国することになります。中国に不動産や銀行口座、戸籍(戸口)がある人は、帰化後にそれらの手続で「中国国籍を失ったこと」の証明を求められることがあります。中国国内の戸口の抹消の要否や手順は地域ごとに扱いが異なるとされ、この記事では一次資料で確認できていません。(公式資料では未確認)
国籍証明書は中国大使館・総領事館の領事証明
帰化申請では、申請者の国籍を証明する書類が必要です。中国籍の人の場合、東京法務局は「在日中国大使館または領事館で取得した領事証明書」を相談時に持参するよう案内しています。
中国大使館と在福岡総領事館は、日本国籍の取得により中国国籍を自動喪失する人向けの「自动丧失中国国籍领事证明」(中国国籍の自動喪失に関する領事証明)の案内を出しています。在福岡中国総領事館の案内では、成人の必要書類は有効な中国パスポートの原本と写真ページの写し、有効な在留カードの原本と表裏の写し、申請表で、手数料は無料、事前にメールでの予約が必要とされています。代理人が申請する場合は公証を受けた委任状が必要です。有効なパスポートと在留カードが求められていることからも分かるとおり、この証明は帰化の前、中国籍のうちに取得する書類です。
未成年の子どもを一緒に帰化させる場合は、親子関係を示す書類(出生届の受理証明書など)、子と両親のパスポート、子の在留カードが加わります。両親が中国で離婚している場合は離婚証や判決書も必要です。
九州では、福岡県・大分県・熊本県・宮崎県・鹿児島県などに住む人は在福岡中国総領事館、長崎県・佐賀県に住む人は在長崎中国総領事館が窓口になるのが一般的です。管轄は総領事館のウェブサイトで最新の区分を確認してください。(公式資料では未確認)
パスポートについて、法務局は有効期限が切れたものを含めてすべてのパスポートの写し(使用済みの全ページ)を求めています。古いパスポートを中国で更新したときに返却されていない場合は、出入国在留管理庁に出入国記録の開示請求をして出入国歴を補うことになります。
中国で取り寄せる公証書の種類と取り方
中国籍の人の帰化申請で最も時間がかかるのが、身分関係を証明する公証書です。東京法務局が示す書類を、誰についての書類かで整理すると次のようになります。
| 対象 | 必要になる書類 |
|---|---|
| 申請者本人 | 出生公証書、親族関係公証書(父母・本人・兄弟姉妹全員の関係が分かるもの)、婚姻歴がある場合は結婚公証書または結婚証、離婚歴がある場合は離婚公証書または離婚証 |
| 申請者の父母 | 結婚公証書または結婚証、離婚している場合は離婚公証書または離婚証(両親の離婚・死亡により発行されない場合がある) |
| 申請者の子 | 出生公証書 |
| 日本側 | 配偶者・子・父母が日本国民の場合、または申請者が元日本国籍の場合は戸籍謄本 |
公証書は、戸籍所在地などを管轄する中国国内の公証処で発行されます。本人が中国に帰れない場合は、中国国内の親族に委任して取得する方法が一般的です。この場合、委任状の認証方法(在日中国大使館での認証が必要か、公証処が何を求めるか)は公証処ごとに扱いが違うため、依頼する前に親族を通じて公証処に確認しておくと、取り直しを避けられます。
親族関係公証書は、兄弟姉妹全員が記載されている必要があります。一人っ子政策の時期に生まれた人でも、異父・異母の兄弟姉妹がいれば記載の対象になります。筆者は、公証処に依頼する前に、両親・兄弟姉妹の氏名・生年月日・存命かどうかを一覧にして親族と共有することを勧めています。帰化許可申請書の「親族の概要」欄と公証書の記載が食い違うと、補正を求められる原因になるからです。
日本の役所に婚姻届を出して結婚した場合は、中国の結婚公証書が発行されないことがあり、日本の婚姻届受理証明書などで代えることになります。どの書類で代えるかは、相談の段階で法務局の指示を受けてください。
外国語の書類には、A4判の翻訳文を付け、翻訳者の住所・氏名と翻訳年月日を記載します。部分訳は認められません。翻訳者は申請者本人を含め、正確に翻訳できる人であれば誰でもかまいませんが、人名は簡体字のままにせず、カタカナ・ひらがな・日本の漢字で書く必要があります。原本とあわせてA4判の写し(副本)も1部必要です。
相談から許可後の手続まで
中国籍の人の帰化申請も、流れはほかの国籍の人と同じです。住所地を管轄する法務局・地方法務局に予約して相談し、書類を集め、申請書を作成して本人が出頭して申請します。申請から2〜3か月後に面接があり、許可・不許可の結果が出るまでは、相談から最短でも約1年半かかるのが目安です。
許可されると官報に告示され、日本国籍の効力は告示の日から生じます(国籍法10条)。その後に必要な手続は次のとおりです。
- 帰化届:告示の日から1か月以内に、市区町村役場へ提出する(戸籍法102条の2)
- 在留カードの返納:日本国籍の取得で中長期在留者でなくなるため、14日以内に返納する(入管法19条の15第1項)
- 日本のパスポートの申請:戸籍ができてから申請する
- 中国のパスポート:中国国籍を失っているため、以後は使えない。返納や失効の扱いは中国大使館・総領事館に確認する(公式資料では未確認)
- 勤務先への届出:氏名が変わる場合は、社会保険・給与・銀行口座の氏名変更
帰化後の名前は、日本の戸籍で使える漢字で決めることになります。中国の姓をそのまま使うか日本風の氏にするかで迷う人が多く、質問検索でも「帰化した中国人に多い苗字」は上位にあります。名前の決め方は公式案内をご確認くださいを参照してください。
よくある質問
中国人は日本に帰化できますか?
できます。帰化の条件は国籍に関係なく国籍法5条で共通です。2025年には3,533人の中国籍の人が帰化の許可を受けており、国籍別で最も多くなっています。
中国人が帰化したら二重国籍になりますか?
なりません。中国国籍法3条は二重国籍を認めず、9条により、外国に定住する中国公民が自らの意思で外国籍を取得したときは自動的に中国国籍を失います。日本の帰化許可の告示の日に日本国籍を取得すると同時に、中国国籍は失われます。
中国人の帰化申請にはどのくらいの期間がかかりますか?
相談から許可まで最短で約1年半が目安です。中国籍の人の場合、公証書の取り寄せに数か月かかることがあり、書類の準備期間が全体の長さを左右します。2026年4月からは審査で原則10年以上の在留が求められているため、在留年数が足りているかも先に確認が必要です。
中国人が帰化するメリットは何ですか?
日本国籍を取得すると、在留期間の更新や在留カードの携帯が不要になり、選挙権を持ち、日本のパスポートで渡航できます。永住者と違って、2027年4月1日に施行される永住許可の取消事由の対象にもなりません。永住と比べた場合の違いは、永住許可の要件厳格化や在留資格の取消しの記事も参考にしてください。逆に、中国国籍を失うことで、中国での居住や財産の手続が外国人としての扱いになります。
中国人の帰化申請の費用はいくらですか?
法務局への申請手数料はかかりません。実費は公証書の取得費用、翻訳費用、日本の証明書の手数料などです。行政書士に依頼する場合の報酬の考え方は行政書士に依頼する費用の相場を参照してください。
中国人の帰化は「中国側の書類」から逆算して計画する
中国籍の人の帰化は、国籍離脱の手続がないぶん、ほかの国籍の人より手続が軽く見えます。実際に時間がかかるのは、中国国内の公証処で親族関係の公証書をそろえる段階で、親族の協力と、委任状の認証方法の確認が必要になります。
帰化を考え始めたら、最初にすることは2つです。1つは、在留年数と直近5年の住民税・直近2年の社会保険料の納付状況を確かめること。もう1つは、中国の親族に連絡して、兄弟姉妹を含む家族の情報をそろえ、公証処で何が取れるかを確認することです。この2つの見通しが立てば、法務局の相談予約を入れる時期が決まります。個別の事情で必要書類や審査の見通しが変わるため、迷うときは相談の前に専門家に確認してください。
根拠資料
- 帰化許可申請書に添付する書類(中国の方)(東京法務局・2026年9月4日更新)
- 国籍法 第5条・第7条・第10条(e-Gov法令検索)
- 国籍別帰化許可者数(法務省民事局)
- 中华人民共和国国籍法(中国国家移民管理局)
- 办理自动丧失中国国籍领事证明须知(中華人民共和国駐福岡総領事館)
- 法務大臣閣議後記者会見の概要(法務省・2026年3月27日)
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