技術・人文知識・国際業務(技人国)の審査で、大学を卒業した人と日本の専門学校を卒業した人とでは、専攻と業務の関連性の見られ方がはっきり違います。入国・在留審査要領 第12編(開示版)15-10は、大卒者については「特段の事情がない限り」卒業していることをもって関連性を認めて差し支えないとしています。一方、専門学校卒については原則として「相当程度の関連性」を必要としています。
この差は、入管の運用上の好みから来ているのではありません。学校教育法が大学と専修学校に与えている設置目的の違いが、そのまま審査の物差しに移されています。したがって、専門学校卒の外国人を採用する会社は、学科の名前と職種の名前を並べるだけでは足りず、履修した科目のどこが業務に使われるのかを説明する準備が要ります。
一方で、大卒者なら何の仕事でもよいという意味でもありません。関連性の判断が緩やかになっても、業務そのものが「学術上の素養」を要する水準にあるかという別の要件は残ります。二つの要件を分けて読むことが、この論点を誤らないための前提です。
この記事でわかること
- 審査要領15-10が大卒と専門学校卒で関連性の基準を分けている理由
- 短大・高専・専門職大学・認定学科・日本語課程がどちらに近い扱いか
- 大卒でも許可されない「業務の水準」の問題
- 専門学校卒で関連性を説明するときに用意する資料
「専攻と業務の関連性」は基準省令の文言から来ている
技人国の許可には、活動の中身が在留資格に当たること(在留資格該当性)に加えて、上陸許可基準を定めた省令(基準省令)への適合が求められます。基準省令第1号は、自然科学・人文科学の分野の業務に就く人の経歴について、次のいずれかを求めています(15-8)。
- イ:業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと
- ロ:業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了したこと(告示の要件を満たすものに限る)
- ハ:10年以上の実務経験(関連科目を専攻した在学期間を含む)
イとロの両方に「関連する科目を専攻して」という文言が入っています。学歴要件は卒業証書があれば満たせるものと思われがちですが、条文上は専攻と業務の関連性まで含めて一つの要件です。ここでいう関連性とは、学校で修得した技術・知識が、日本で就く業務に使われるつながりを指します。
そのうえで審査要領は、関連性の程度を学校の種類で分けて判断することにしています。申請書の「最終学歴」「専攻・専門分野」欄と立証資料で基準適合性を確認する、というのが審査のポイントとして示された手順です(15-19)。
大卒者:「特段の事情がない限り」関連性を認めてよい
審査要領は前提として、専攻科目と業務は「一致していることまでは必要ではなく、関連していればよい」とし、その判断は実際に履修した科目等も確認して行うとしています。そのうえで、大学卒業者については次のように書いています。
審査要領ではこう書かれている(第12編 15-10)
「大学における専攻科目と従事しようとする業務の関連性については、比較的緩やかに判断されることとなる。」
「(注)特段の事情がない限り、大学を卒業していることをもって、自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務との関連性を認めて差し支えない。」
根拠として引かれているのは学校教育法第83条です。大学は学術の中心として広く知識を授け、深く専門の学芸を教授研究し、応用的能力を展開させることを目的としています。専攻した学部の枠を超えて幅広い知識を身につける教育課程である以上、卒業者の知識は専攻名より広く業務に応用できる、という考え方です。
専門職大学・専門職短期大学(同法第83条の2)についても、理論に裏付けられた実践力の育成や関連他分野への展開を特色としています。そのため、「大学と同様に関連性の判断については柔軟に判断して差し支えない」とされています(15-10)。短期大学士の学位を取った人は「大学を卒業」した者に含まれ(1-10)、出入国在留管理庁の公表資料も、大学(外国の大学を含む)と高等専門学校の卒業者は関連性を柔軟に判断すると明記しています。短大・高専・専門職大学の学歴の位置づけは短大・専門職大学・高専卒は「大学卒業」扱い?就労ビザの学歴要件で詳しく扱っています。
専門学校卒は、なぜ「相当程度の関連性」を求められるのか
同じ15-10の後半で、審査要領は専修学校について基準を切り替えています。
審査要領ではこう書かれている(第12編 15-10)
「専修学校は、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的とするとされており(同法第124条)、大学とは設置目的が異なることから、原則として専修学校における専攻科目と従事しようとする業務については、相当程度の関連性を必要とする。」
専修学校は特定の職業に必要な能力を育てる学校です。教育内容が職業に直結している分、修得した知識が使える業務の範囲も、学科が想定する職業の周辺に限られると考えられています。自動車整備の学科を出た人の知識は整備の周辺では強く評価されますが、たとえば貿易事務の業務に同じ知識が使えるとは言いにくい、という整理です。
専門学校卒の場合には、学歴要件そのものにも条件があります。告示(平成23年法務省告示第330号)により、本邦で専修学校の専門課程の教育を受け、専門士または高度専門士と称できる場合に限られます(15-13)。専門士は修業年限2年以上・授業時間数1,700時間以上などの要件を満たした人に付与される称号で、外国で通信教育などにより教育を受けた場合は当たりません(1-14)。
学校の種類ごとの扱いを並べると、次のとおりです。
| 最終学歴 | 関連性の判断 | 根拠 |
|---|---|---|
| 大学(外国の大学を含む)・短大 | 比較的緩やか。特段の事情がない限り卒業をもって関連性を認めてよい | 15-10、1-10 |
| 専門職大学・専門職短大 | 大学と同様に柔軟に判断してよい | 15-10 |
| 高等専門学校 | 柔軟に判断 | 公表資料(明確化等について) |
| 日本の専門学校(専門士・高度専門士) | 原則として相当程度の関連性が必要 | 15-10、15-13 |
| 文科省の認定学科(キャリア形成促進プログラム) | 専門学校卒の例外として柔軟に判断 | 15-10〜15-13 |
| 専門学校の日本語課程 | 専門士でも原則として技人国の学歴として評価されない | 15-13 |
認定学科の扱いは文科省認定学科(キャリア形成促進プログラム)修了者の技人国|関連性要件の緩和で扱っています。日本語課程の扱いは日本語学校を卒業して技人国は取れる?専修学校の日本語課程と審査要領の取扱いで個別に扱っています。
大卒でも通らない場面:関連性と「業務の水準」は別の要件
ここで重要なのは、関連性の判断が緩やかであることと、どんな業務でも許可されることは別だという論点です。15-10の(注)は、関連性を認める対象を「自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務」と書いています。業務がそもそもこの水準に達していなければ、関連性を議論する前に在留資格該当性で止まります。
この水準について、審査要領は「学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務」であるとしています。そのうえで、「単に経験を積んだことにより有している知識では足りず、学問的・体系的な知識を必要とするもの」でなければならないとしています(15-2)。判断の目安として、その学問が大学に課程として設置されているかどうかも挙げられています(15-9〜15-10)。出入国在留管理庁の公表資料はさらに具体的で、採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と書かれるような業務は対象になりません。学歴・実務経験の要件を満たさない日本人従業員が一般的に従事している業務も同じ扱いです。
「特段の事情」の中身を審査要領は例示していません。筆者は、業務の水準に疑問がある場合や、申請人の経歴と業務の組合せが不自然な場合に、卒業だけで関連性を推定する扱いが外れると読んでいます。大卒者の採用でも、職務内容の説明を省いてよいことにはなりません。
公表されている専門学校卒の不許可例
出入国在留管理庁の「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」別紙3には、専門学校卒の不許可例がいくつか載っています。
- 派遣先が小売店で、実際の業務が接客販売だったもの
- 工場で、技能実習生とほぼ同じ業務に従事するもの
- 菓子工場での洋菓子製造で、反復訓練で従事できる業務と判断されたもの
- 出席率が70%で、欠席中に資格外活動をしていたもの
並べてみると、専攻と業務の関連性だけで落ちた例は多くありません。業務が技人国の水準に届いていない例と、在学中の在留状況が問題になった例が中心です。専門学校卒は、学んだ内容が実践的である分、就職先の業務も現場作業に近くなりやすく、関連性と業務の水準の両方で説明を求められる構造にあります。専門学校卒の申請では、関連性の説明と、業務が現場作業でないことの説明を、別々に用意するのが筆者の実務上の進め方です。
関連性をどう示すか
関連性の判断は「実際に履修した科目等も確認して行う」とされています(15-10)。専門学校卒の申請では、学科名だけで判断されることを期待せず、成績証明書に記載された科目のうち、業務で使うものを特定して説明するのが基本です。たとえば情報処理系の学科を出た人をシステム開発に就かせる場合なら、プログラミングやデータベースの科目と、担当する開発工程を対応させて示します。
会社側が作る雇用理由書や職務内容の説明書も、関連性の立証の一部です。業務の中身が抽象的なままだと、専門性のある業務でも単純作業と受け取られるおそれがあります。
雇用理由書の書き方が原因で単純作業と誤認されたケース
当事務所が扱った案件で、業務そのものには専門性があったにもかかわらず、雇用理由書の書き方が原因で単純作業と誤認されたことがありました。業務の中身ではなく、説明の粒度が問題でした。
※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。
公表資料には、関連業務に3年程度従事した人については、その後の関連性を柔軟に判断するという記述もあります(「明確化等について」本文)。専門学校卒で入社し、関連業務の経験を積んだ社員が転職する場合には、学科だけでなく職歴も関連性の説明材料になります。
海外の専門学校は?
「専修学校の専門課程」の要件は、本邦の専修学校に限られています(15-8、1-14)。出入国在留管理庁のQ&A(Q35)も、日本の専門学校に当たる外国の教育機関を卒業しても基準に適合しないとしています。海外の学歴で申請する場合は、その学校が当該国の教育制度で高等教育機関に位置づけられているかという、大学と同等以上の教育の問題として検討することになります。
よくある質問
Q. 大学を卒業していれば、専攻と関係のない職種でも技人国は取れますか?
審査要領は、特段の事情がない限り、大学を卒業していることをもって業務との関連性を認めて差し支えないとしています(15-10)。ただし、業務そのものが学術上の素養を要する一定水準以上の業務であることは別の要件として残ります。関連性が緩やかになっても、単純作業に近い業務が許可されるわけではありません。
Q. 専門学校卒の場合、学科名と職種名が一致していないと不許可ですか?
一致までは求められていません。審査要領は、専攻科目と業務は関連していればよく、実際に履修した科目等も確認して判断するとしています。ただし専修学校卒は原則として相当程度の関連性が必要とされているため、履修科目のどの部分が業務に使われるのかを具体的に説明する必要があります。
Q. 短大卒や高専卒は、大卒と専門学校卒のどちらの基準で判断されますか?
短期大学士の学位を取得した人は「大学を卒業」した者に含まれます(1-10)。出入国在留管理庁の公表資料は、大学(外国の大学を含む)と高等専門学校の卒業者について、専攻と業務の関連性を柔軟に判断するとしています。専門職大学・専門職短期大学も、審査要領上、大学と同様に柔軟に判断してよいとされています。
Q. 海外の専門学校を卒業した場合は、日本の専門学校卒と同じ扱いですか?
同じ扱いにはなりません。専修学校の要件は本邦の専修学校の専門課程を修了し、専門士または高度専門士と称できる場合に限られます。出入国在留管理庁のQ&Aも、日本の専門学校に当たる外国の教育機関の卒業は基準に適合しないとしています。
内定を出す前に確認したいこと
専門学校卒の外国人に内定を出す段階で、成績証明書と学科のカリキュラムを取り寄せ、担当させる業務と科目の対応を一度書き出してみてください。対応する科目が少ない場合は、配属する業務を見直すか、別の学歴・職歴の根拠がないかを確認します。大卒者の場合も、業務の水準を説明できる職務内容書を先に作っておくと、審査で聞かれる点に先回りできます。
学歴・実務経験・報酬の要件の全体像は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?学歴・実務経験・給与条件をわかりやすく解説で確認できます。留学生の新卒採用の手順は留学から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ガイド|手順・必要書類・不許可対策で確認できます。科目と業務の対応づけに迷う場合は、申請書を作る前の段階でご相談ください。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節「技術・人文知識・国際業務」15-2、15-8〜15-10、15-13、15-19
- 同 第2章第1節第5「学歴」1-10、1-14
- 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html
- 同 別紙3(許可・不許可事例)https://www.moj.go.jp/isa/content/001413912.pdf
- 出入国在留管理庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」https://www.moj.go.jp/isa/content/001344550.pdf