海外の学歴は、その国の教育制度の中で「高等教育機関」に位置づけられている学校を卒業したかどうかで評価されます。ここでいう高等教育機関とは、文部科学省編「諸外国の学校教育」でその国の高等教育機関とされている機関を指します。審査要領は、文部科学省編「諸外国の学校教育」で高等教育機関とされている機関の卒業者を、就労ビザの学歴要件でいう「大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受け」た者として扱うとしています。中国については、大学の本科・専科、専科学校、短期職業大学の卒業者と、学位を与えられる成人教育機関で学位を取った人が、これに当たると明記されています。
一方で、学歴の書類は審査の中で確かめられる対象です。卒業証明書の信ぴょう性に疑いがあれば、入管は本庁を通じて外務省に照会を依頼し、在外公館を通じた確認が行われます。照会を依頼する文書には、大学の名称・所在地・電話番号まで書くことになっています。
以下、入国・在留審査要領 第12編(開示版)第1節第5「学歴」(1-10〜1-14)の記述をもとに、海外の学歴がどう評価され、どう確認されるのかを順に整理します。
この記事でわかること
- 海外の学歴を評価する物差し(「諸外国の学校教育」と学校教育法施行規則第155条)
- 中国の本科・専科・専科学校・成人教育機関の扱いと、「研究」での違い
- 外国の専門学校にあたる学校が学歴要件を満たさない理由
- 学歴照会の仕組みと、書類に誤りや疑義があったときの対応
物差しは「その国で高等教育機関かどうか」
技術・人文知識・国際業務(技人国)などの基準省令は、学歴要件として「大学を卒業」または「これと同等以上の教育を受け」たことを求めています。海外の学校の卒業者は、日本の大学と制度が違うため、多くの場合この「同等以上の教育」に当たるかどうかで判断されます。
審査要領ではこう書かれている(第12編 1-13)
「文部科学省編『諸外国の学校教育』において、高等教育機関として位置づけられている機関を卒業した者は、『大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受け』た者に該当するものとして取り扱う。」
ここで重要なのは、学校名や学位の英語表記ではなく、その国の学校制度の中での位置づけが問われるという論点です。「College」「Institute」という名前の学校でも、その国で高等教育機関とされていれば該当しえます。逆に「University」を名乗っていても、制度上の位置づけが確認できなければ評価は難しくなります。
審査要領は、このほかに学校教育法施行規則第155条の規定を参考として掲げています(1-10〜1-12)。大学院などへの入学資格を定めた規定で、海外の学歴に関係するのは次のような項目です。
| 区分 | 海外の学歴に関係する主な項目 | 審査要領 |
|---|---|---|
| 大卒と同等以上 | 外国で学校教育における16年の課程を修了した者 | 1-11(第155条第1項) |
| 大卒と同等以上 | 外国の大学等で修業年限3年以上の課程を修了し、学士の学位に相当する学位を授与された者(その国の認証を受けた評価を受けた学校等に限る) | 1-11(第155条第1項) |
| 短大卒と同等以上 | 外国で学校教育における14年の課程を修了した者 | 1-12(第155条第2項) |
| 文部科学大臣の指定 | 文部科学大臣が告示で指定する外国の教育機関の卒業者 | 1-13 |
最後の文部科学大臣の指定については、審査要領は「入管WAN参照」とだけ書いており、指定機関の一覧は開示版に載っていません。個別の学校が指定を受けているかどうかは、開示資料からは確認できないということです。
中国の学歴:本科・専科・専科学校・成人教育機関
中国の学歴については、審査要領に独立した参考の記述があります。国名を挙げて学校の種類ごとに扱いを書いているのは、第1節第5では中国だけです。
審査要領ではこう書かれている(第12編 1-13)
「大学院、大学(又は学院、うち本科・専科を含む。)、専科学校、短期職業大学を卒業した者及び学位を与えることができる成人教育機関を卒業して学位を取得した者は、『大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受け』た者に該当するものとして取り扱う。」
| 学校の種類 | 技人国などの学歴要件 | 「研究」の学歴要件(1-13②) |
|---|---|---|
| 大学・学院の本科(4年制・5年制) | 該当 | 該当 |
| 大学・学院の専科 | 該当 | 該当しない |
| 専科学校、短期職業大学 | 該当 | 該当しない |
| 成人教育機関(学位を取得) | 該当 | 4年以上のコースを卒業し学位を取得した場合のみ該当 |
| 成人教育機関(学位なし) | 該当しない | 該当しない |
| 大学院 | 該当 | 審査要領に個別の記載なし |
専科の卒業者は、技人国の学歴要件は満たします。専科だから学歴が足りない、という扱いにはなりません。差が出るのは「研究」の在留資格です。こちらの基準は「大学(短期大学を除く。)」の卒業を求めています。そのため、4年または5年制の本科を卒業した人と、学位を与えられる成人教育機関で4年以上のコースを卒業して学位を取った人だけが該当するとされています。
成人教育機関については、学位を取得したかどうかが分かれ目です。卒業していても学位を得ていなければ、この参考の記述には当たりません。
もう一点、参考の記述には注があり、「『大学を卒業した者』とは、大学、専科学校又は短期職業大学のみが該当する」とされています。成人教育機関で学位を取った人は「同等以上の教育を受け」た者ではあっても、「大学を卒業した者」には入らないという整理です。技人国の国際業務には、大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学の指導に就く場合は3年の実務経験が要らないという特例があります(15-18)。そのため筆者は、成人教育機関の学位取得者はこの特例の対象外になる可能性があると読んでいます【要確認】。
外国の「専門学校」を卒業した場合
出入国在留管理庁の就労資格Q&A(令和8年7月)は、日本の専門学校にあたる外国の教育機関を卒業しても、基準には適合しないと答えています。専門学校の卒業で学歴要件を満たせるのは、「本邦の」専修学校の専門課程で専門士・高度専門士の称号を得た場合に限られるからです(1-14)。海外の職業訓練校や専門学校を出た人は、その学校がその国で高等教育機関に位置づけられていない限り、学歴要件以外の道(実務経験10年など)を検討することになります。
日本国内の短大・高専・専門学校との比較は短大・専門職大学・高専卒は「大学卒業」扱い?就労ビザの学歴要件で整理しています。
学歴の代わりになる資格:IT告示とインドのDOEACC
情報処理の業務に就く場合は、法務大臣が告示で定める情報処理技術の試験に合格しているか、資格を持っていれば足ります。その場合は学歴がなくても、学歴・実務経験の要件を満たさなくてよいとされています(平成25年法務省告示第437号、15-9)。中国の資格では「系統分析員」「高級程序員」「程序員」が告示に掲げられており、2004年の制度変更で3年の有効期限が設けられた後も、審査要領は「一度取得した資格は有効なものとみなし」て扱うとしています。一方、2004年秋に「程序員」に統合された「初級程序員」は、自動的に格上げされたものではないため告示の対象外です。詳しくは情報処理技術者試験(IT告示)で学歴要件を満たす|対象試験と中国資格の有効期限で扱っています。
インドについては、DOEACC(現NIELIT)の資格のうちレベルA、B、Cを持つ人が「これと同等以上の教育を受けたこと」に適合するとされています(15-24)。レベルOは対象に含まれていません。
審査要領が定める「各国教育制度に関する照会」
海外の学歴が要件に当たるかどうかは、審査官が「諸外国の学校教育」の各国の教育制度を吟味して判断します。それでも判断がつかない場合や、書類そのものに疑いがある場合の手順も、審査要領に書かれています。
審査要領ではこう書かれている(第12編 1-13〜1-14)
「卒業証明書等の信ぴょう性に疑義がもたれることから、在外公館に照会する必要があると判断するときは、次の点を明記した上で関係記録とともに本庁に外務省あて照会方文書で依頼する。」
明記する事項として、(1)申請人の身分事項、(2)照会するに至った理由(疑義の詳細)、(3)大学等の名称、所在地及び電話番号、(4)照会事項が挙げられています。
この記述から読み取れることは2つあります。一つは、在留資格該当性に問題がなくても、書類の信ぴょう性に疑いがあれば照会の対象になるという点です。仕事の内容が申請どおりで要件を満たしていても、卒業証明書が本物かどうかは別に確認されます。もう一つは、照会が地方局から本庁、外務省、在外公館へと段階を踏むため、審査期間が延びる要因になるという点です。
照会事項に大学の所在地と電話番号が含まれていることは、実務上の意味を持ちます。申請書や履歴書に書いた学校名・所在地が卒業証明書と一致していない、学校が移転や統合で名称を変えているといった事情は、照会の過程で食い違いとして表に出ます。技能ビザの調理師の職歴証明について審査要領が「所属機関の名称、所在地及び電話番号が記載されているものに限る」(18-8〜18-9)としているのも、同じく確認を想定した書式の指定と読めます。
書類に誤りや疑義があったときの対応
偽りその他不正の手段で上陸許可や在留資格の変更・更新を受けた場合は、在留資格の取消しの対象になります(入管法第22条の4)。学歴の偽造はこの典型で、許可が出た後に発覚しても責任は消えません。出入国在留管理庁も、提出書類の省略を受けるために事実と異なる説明をすれば虚偽申請と判断される可能性がある、と注意を促しています(「留学」から就労資格への変更申請を予定されている皆様へ)。
問題になりやすいのは、偽造そのものより、意図しない誤りが偽造と区別できない形で残っている場合です。卒業年月の記載違い、学校の旧名称と新名称の混在、本人の氏名のつづりの違いなどは、説明がなければ疑義として扱われます。
経歴の誤りを隠さず説明して許可されたケース
経歴の記載に、詐称と受け取られても仕方がない誤りがあった案件を担当したことがあります。このときは誤りがあることを隠さず、経緯を説明したうえで申請し、許可を受けました。筆者は、誤りが審査の途中で見つかる場合と、申請の時点で自ら説明している場合とでは、審査官の受け止め方が大きく変わると考えています。
※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。
学歴書類に気になる点があるときは、申請前に一覧にして、誤りの原因と正しい事実を示す資料をそろえておくのが基本です。不交付や不許可になってからの立て直しは在留資格認定証明書が不交付になる理由とは?原因と再申請の進め方を解説で扱っています。
中国語の学歴書類を扱う実務
中国語の卒業証明書に訳文を付けるときは、原本の記載と一字一句対応させることが基本です。学校名や学位名を意訳して日本の学校種に寄せた表記にすると、原本との照合で食い違いが生じ、照会の理由になりかねません。
当事務所には元・入管審査監理官が在籍しており、中国の卒業証明書や学位証明書を原文のまま読むことができます。学校の種類(本科・専科・専科学校・成人教育機関)と学位の有無を確認したうえで、訳文と申請書の記載をそろえます。専科と本科の区別は、「研究」を申請するかどうかで結論が変わる部分なので、原文での確認が欠かせません。
よくある質問
Q. 中国の専科を卒業した人は、技人国の学歴要件を満たしますか?
満たします。審査要領は、中国の大学(又は学院)の本科・専科、専科学校、短期職業大学の卒業者を「大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受け」た者として扱うとしています。ただし「研究」の在留資格では、4年または5年制の本科の卒業者などに限られるため、専科の卒業者は該当しません。
Q. 中国の成人教育機関の卒業でも学歴として認められますか?
学位を与えることができる成人教育機関を卒業して、学位を取得している場合は認められます。学位を取得していない場合は、審査要領の参考の記述には当たりません。「研究」では、4年以上のコースを卒業して学位を取得した場合に限られます。
Q. 海外の専門学校を卒業した場合、日本の専門学校卒と同じ扱いになりますか?
なりません。専門学校の卒業で学歴要件を満たせるのは、日本の専修学校の専門課程で専門士または高度専門士の称号を得た場合に限られます。出入国在留管理庁のQ&Aも、日本の専門学校にあたる外国の教育機関の卒業は基準に適合しないと答えています。その国で高等教育機関に位置づけられている学校かどうかを確認する必要があります。
Q. 卒業証明書が本物かどうか、入管はどうやって確認するのですか?
審査要領では、卒業証明書等の信ぴょう性に疑義があるときは、申請人の身分事項、照会の理由、大学等の名称・所在地・電話番号、照会事項を明記して、本庁を通じて外務省に照会を依頼するとされています。在外公館を通じた確認になるため、審査期間が延びる要因にもなります。
採用前に確認しておくこと
海外の学歴を持つ人を採用するときは、内定の前に3つのことを確認してください。一つ目は、卒業した学校がその国の制度で高等教育機関に当たるか、中国であれば本科・専科・専科学校・成人教育機関のどれに当たるかです。二つ目は、学位を取得しているかどうかで、特に成人教育機関の卒業者は学位の有無で結論が変わります。三つ目は、卒業証明書、履歴書、申請書の学校名・所在地・卒業年月が一致しているかです。
学歴要件と並んで、専攻と業務の関連性も審査されます。要件の全体像は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?学歴・実務経験・給与条件をわかりやすく解説で確認できます。中国語の学歴書類の読み取りや、書類の食い違いの説明で迷う場合は、申請書を作り始める前にご相談ください。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節第5「学歴」1-10〜1-14(2「これと同等以上の教育」、3「諸外国の学校教育」、参考「中国の教育機関卒業者の取扱い」、5「各国教育制度に関する照会」)
- 同 第15節「技術・人文知識・国際業務」15-9(IT告示)、15-18(国際業務の大卒特例)、15-24(インドのDOEACC制度)
- 同 第18節「技能」18-8〜18-9(職歴の立証資料)
- 出入国在留管理庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」(令和8年7月)https://www.moj.go.jp/isa/content/001344550.pdf
- 出入国在留管理庁「在留資格『留学』から就労資格への変更申請を予定されている皆様へ」https://www.moj.go.jp/isa/10_00240.html