本文へ移動
保利国際法務事務所 外国人採用・就労ビザ相談室
保利国際法務事務所の外国人採用・就労ビザLPへ 電話で無料相談 050-5526-5506 いますぐ無料相談フォームへ
保利国際法務事務所 外国人採用・就労ビザ相談室

【2027年4月施行】育成就労制度とは?技能実習からの移行で企業がやるべき準備を解説

ここでいう育成就労制度とは、1993年から続いてきた技能実習制度を廃止し、2027年4月に新たに導入される受入れの枠組みを指します。制度の看板が変わるだけの話ではありません。目的そのものが「技能移転による国際貢献」から「人材育成と人材確保の両立」へと組み替えられる、という点が最大の変化です。施行はまだ先だと考えて後回しにしていると、直前になって受入れ体制を組み直す作業に追われることになります。

運用の細部はまだ固まりきっていません。それでも、制度の骨格と方向性はすでに公表されており、今の段階で押さえておく価値は十分にあります。骨格を知らないまま施行日を迎えると、既存の受入れ実務のどこを変えればいいのか、判断の起点そのものが持てなくなるからです。

この記事では、育成就労制度の概要、技能実習との違い、そして企業が今から準備しておくべきことを、行政書士の立場から整理します。

この記事でわかること

  • 育成就労制度の目的と全体像
  • 技能実習制度との具体的な違い
  • 転籍要件の緩和がもたらす影響
  • 企業が今から準備しておくべきこと
  • 特定技能・技能実習との位置づけの整理

育成就労制度とは何か

育成就労制度は、技能実習制度に代わる新しい在留の枠組みとして、2027年4月に施行される予定です。目的の転換が制度の核心にあります。技能実習は「技能移転による国際貢献」という建前で運用されてきましたが、実際には人手不足を補う労働力として機能している現場が多く、建前と実態のズレが長年指摘され続けてきました。

育成就労は、この建前を掲げ直すのではなく、「人材育成」に加えて「人材確保」を正面から制度目的に含める設計に変わります。外国人材を単なる実習生として扱うのではなく、将来的に特定技能人材として長く働いてもらうことを前提に育てる。この位置づけの転換が、制度の柱です。原則3年間で、特定技能1号の水準まで技能と日本語能力を育成することが目標として設定されています。

名称の変化も、この転換を映しています。「実習」という語が消え、「育成」と「就労」がそのまま名前に入っているのは、単なる言い換えではありません。育てながら働いてもらうという両立を、制度の建前としても正式に認めたということです。この転換によって、企業に求められる役割も「実習生を管理する」から「人材を育てて定着させる」へと明確に変わります。

技能実習との違い

技能実習と育成就労は、名称こそ似ていますが中身はかなり異なります。主な違いを整理します。

技能実習 育成就労(施行予定)
制度の目的 技能移転による国際貢献 人材育成と人材確保の両立
転籍 原則不可(やむを得ない事情がある場合のみ) 一定の要件のもとで早期・柔軟な転籍が可能になる方向
受入れ後の展望 実習終了後は原則帰国(特定活動等での在留はあった) 修了後は特定技能1号への移行を想定
監理団体 監理団体 監理支援機関(許可要件の厳格化が見込まれる)

企業実務への影響という観点で見ると、最も大きいのは転籍要件の緩和です。技能実習では、実習先を変えることは原則できませんでした。倒産や労働関係法令違反といったやむを得ない事情がある場合を除き、実習生は最初に配属された会社に留まるしかありませんでした。育成就労では、一定期間・一定要件を満たせば、本人の希望による転籍が認められる方向で制度設計が進んでいます。転籍の詳しい要件と、受入れ企業側が取るべき対策については育成就労の転籍とはで解説していますので、あわせて確認してください。

なぜ「人材確保」も目的に含まれるようになったのか

国際貢献という理念を掲げること自体は否定されるべきものではありません。しかし現場では「実習生がいないと工場が回らない」「実習生頼みで人繰りを組んでいる」という会社が少なくなかったのも事実です。建前と実態のずれを放置したまま制度を続ければ、しわ寄せは実習生本人に向かいます。低賃金・長時間労働・失踪といった問題が繰り返し報道されてきた背景には、この建前と実態のギャップがありました。

育成就労は、最初から「人材確保」を制度目的に組み込むことで、実態に即した設計に変えたものです。人材確保が正面から目的になったということは、裏を返せば「育てて、定着してもらう」ことが企業側に強く求められるようになる、ということでもあります。人手が足りないから安く使いたい、という発想のままでは、この制度のもとでは回らなくなる可能性が高いです。

なぜ今、この制度改正が必要とされたのか

技能実習制度は1993年に始まった、30年以上の歴史を持つ制度です。その間、失踪者数の多さや、実習実施先での賃金未払い・長時間労働といった問題が国内外から指摘され続けてきました。「国際貢献」という建前と、実際には人手不足を補う労働力になっているという実態のギャップが、制度自体の信頼性を損なう水準まで来ていた、というのが実情です。

もちろん、まっとうに実習生を受け入れ、きちんと育成している企業のほうが圧倒的に多いはずです。ただ、一部の悪質な事例が繰り返し報道されるたびに、業界全体、ひいては日本の外国人材受入れ全体のイメージが傷ついてきたことも事実です。政府としても、このままでは国際的な人材獲得競争で日本が選ばれ続けられない、という危機感があったと考えられます。建前を捨て、実態に合わせた制度に作り替える。それが今回の改正の出発点です。

少子高齢化のもとで外国人材を必要としているのは日本だけではありません。台湾や韓国、ヨーロッパの一部の国も、同じように働き手としての外国人材の獲得に力を入れています。「日本で働きたい」と思ってもらえる環境を整えられなければ、選ばれる側から選ぶ側への転換すらおぼつかなくなります。育成就労制度は、この危機感を制度設計に落とし込んだもの、と理解しておくと全体像がつかみやすくなります。

育成就労の対象分野と受入れの枠組み

育成就労の対象分野は、原則として特定技能1号の対象分野と一致する方向で検討が進められています。技能実習のように分野ごとにばらばらの制度設計をするのではなく、「育成就労で3年育てて、そのまま特定技能1号に移行する」という一本の道筋を作ろうとしています。受入れ人数の管理についても、分野別に受入れ見込数を設定し、政府が状況を継続的に確認する仕組みが想定されています。

受入れ機関(企業)にも、一定の基準を満たすことが求められる見込みです。育成就労計画の認定を受ける必要があるほか、支援体制についても技能実習より踏み込んだ基準が課される方向で議論されています。監理団体に相当する「監理支援機関」の許可要件も厳格化される見通しで、この点は登録支援機関の要件はどう変わるでも関連する動きを取り上げています。

育成就労計画の認定で見られるポイント(想定)

育成就労を受け入れるには、技能実習の技能実習計画にあたる「育成就労計画」の認定を受ける必要がある見込みです。現時点で確定した審査項目ではありませんが、これまでの検討内容から、少なくとも次のような観点は問われることになりそうです。

確認される観点(想定) 企業が準備しておくべきこと
育成の目標・段階が具体的か 3年間で何をどこまでできるようにするのか、業務ごとの到達目標を言語化しておく
日本語学習の支援体制があるか 日本語学習の機会(教材・研修時間の確保等)を制度として用意しておく
受入れ企業の経営基盤が安定しているか 決算状況や事業の継続性を説明できる資料を整えておく
過去に法令違反等がないか 労働関係法令の遵守状況、社会保険の加入状況を確認しておく

特に日本語学習の支援体制は、技能実習の時代よりも重視される可能性が高いです。育成就労が「特定技能1号の水準まで育てる」という制度目的を持っている以上、日本語能力の向上を後回しにする受入れ企業は、審査でも実務でも不利になりやすいと見ておくべきです。

企業が今から準備すべきこと

施行はまだ先ですが、準備は今から着手する価値があります。理由は明快で、制度の骨格が「人が定着する会社にしか人が来ない」という設計になっているからです。企業側で具体的にやっておきたいことを整理します。

①待遇・労働環境の点検
日本人従業員との待遇差、時間外労働の実態、寮や住環境の水準を今のうちに見直しておく。転籍が容易になるということは、待遇が見劣りする会社から人が抜けていく、ということでもあります。

②育成計画・キャリアパスの整理
「3年でどこまで育てるか」「特定技能への移行をどう支援するか」を、口頭ではなく計画として言語化しておく。育成就労計画の認定申請でも、この部分の具体性が問われることになる見込みです。

③監理支援機関・登録支援機関との関係の見直し
現在委託している監理団体・登録支援機関が、新制度の基準に対応できる体制かどうかを早めに確認しておく。基準の厳格化について詳しくは登録支援機関の要件はどう変わるで解説しています。

④社内の相談窓口・定着支援の整備
転籍を防ぐという発想ではなく、「転籍したいと思われない会社にする」という発想で、日本語学習支援や生活相談の窓口を整えておく。

優先度が最も高いのは①の待遇の見直しです。待遇を変えないまま制度だけを切り替えても、転籍要件が緩和された瞬間に人材が流出していくだけだからです。給与水準を急に大きく変えるのは容易ではありませんが、少なくとも「同業他社と比べてどうか」を今のうちに把握しておく必要はあります。当事務所の関連ブログ記事でも、育成就労と特定技能を見据えた採用戦略について詳しく解説しています。関連するコラム一覧

業種別に見る影響の大きさ

育成就労の対象になるのは、これまで技能実習で多く受け入れられてきた製造業・建設業・農業・食品加工業などの分野が中心になる見込みです。業種によって、影響の出方には違いがあります。

業種 想定される主な影響
製造業(金属加工・食品加工等) 技能実習からの移行企業が多く、育成計画の作り直しが必須になる。転籍による人材流出リスクも比較的高い
建設業 JAC(建設技能人材機構)との連携や、現場ごとの受入れ体制の見直しが必要になる見込み
農業 季節労働的な受入れが多く、育成計画の期間設計との整合をどう取るかが実務上の課題になりやすい
食品製造・水産加工 技能実習生への依存度が高い地域が多く、転籍による地域内での人材偏在が懸念されている

いずれの業種にも共通するのは、「これまで技能実習という枠組みに乗せておけば済んでいた受入れ実務」を、育成就労という新しい前提で組み直す必要がある、という点です。監理団体や送出機関との契約内容、育成計画の様式、社内の教育担当者の配置。どれも一度整理し直す作業が発生します。

施行までの準備スケジュールの目安

2027年4月の施行を見据えて、企業としてどのタイミングで何をすべきか、大まかな目安を示します。あくまで現時点の情報に基づく目安であり、正式な運用開始時期や手続きの詳細は今後の公表を待つ必要があります。

時期の目安 やっておきたいこと
2026年内 自社の待遇水準の棚卸し、監理団体・登録支援機関との情報交換の開始
2027年に入ってから(施行前) 育成就労計画の様式・要件の確定情報の収集、社内の育成担当者への説明
施行直前 新規受入れ分の申請準備、既存の技能実習生の経過措置の確認
施行後 育成就労での新規受入れ開始、定着支援の効果検証と改善

施行まで時間があるからと後回しにしがちですが、監理団体や送出機関側も同じタイミングで体制を組み替えている最中です。動きが遅い企業ほど、直前になって希望する人材が確保しにくくなる可能性があるため、情報収集だけでも早めに始めておく価値があります。

送出機関との関係も見直しが必要になる

受入れ企業が直接向き合うのは監理団体・登録支援機関だけではありません。海外側で人材を送り出す「送出機関」との関係も、育成就労では見直しが必要になる可能性があります。技能実習では、送出機関が実習生から不当に高額な手数料を徴収していたケースが問題視されてきました。育成就労では、こうした送出し段階での不透明な費用負担についても、二国間取決めの見直しなどを通じて是正が図られる方向で議論されています。

受入れ企業が送出機関を直接選ぶ立場にないことは多いものの、監理支援機関を通じて「どの送出機関を使っているか」「手数料の内訳は明確か」を確認しておくことには意味があります。入国後にトラブルが発覚してから対応するより、受入れ前の段階で健全な送出機関かどうかを見極めておくほうが、結果的に定着率にも良い影響が出ます。

現在の技能実習生はどうなるのか

すでに技能実習生を受け入れている企業からは、「今いる実習生はどうなるのか」という質問をよく受けます。施行時点で在留している技能実習生については、一定の経過措置が設けられる見込みで、全員が一斉に育成就労へ切り替わるわけではないとされています。新規の受入れについては、施行後は基本的に育成就労の枠組みで進めることになる見通しです。

「今のうちに技能実習として駆け込みで受け入れておこう」という判断もあり得ますが、そのために受入れ体制を急ごしらえにするのは本末転倒です。新制度への移行を見据えて、監理団体や送出機関との関係、社内の受入れフローを見直す機会にしたほうが、結果的に無駄が少なくなります。

監理団体から監理支援機関へ

技能実習では、実習実施者(受入れ企業)と実習生の間に「監理団体」が入り、受入れの適正化や実習生の相談対応を担ってきました。育成就労では、この役割を「監理支援機関」が引き継ぐ方向で検討が進んでいます。名称だけ見ると単なる呼び方の変更のようですが、中身はそう単純ではありません。

監理支援機関になるためには、これまでの監理団体の許可要件よりも踏み込んだ基準が課される見込みです。具体的には、外部監査人の設置状況や、受入れ企業との利害関係の有無、支援担当者の実務経験などが、より厳しく審査される方向で議論されています。これは特定技能の登録支援機関の要件見直しとも連動する動きで、こちらは登録支援機関の要件はどう変わるで詳しく解説しています。

企業側からすると、今委託している監理団体が、そのまま監理支援機関として存続できるのかどうかを気にする必要が出てきます。多くの監理団体は新基準への対応を進めているはずですが、「今の監理団体は大丈夫なのか」を一度確認しておく価値はあります。施行直前になって「移行できませんでした」となれば、受入れ自体がストップしかねません。

育成就労・特定技能・技能実習の位置づけの整理

ここで3つの制度の関係を整理しておきます。育成就労は「入口の育成段階」、特定技能は「育成後の就労段階」という縦の関係になる予定です。技能実習は廃止に向かうため、この2制度が新しい柱になっていきます。

育成就労 特定技能1号
位置づけ 育成段階(原則3年) 就労段階(通算5年、更新あり)
日本語・技能水準 段階的に特定技能1号水準を目指す 試験合格または育成就労修了で満たす
転籍 一定要件で可能になる方向 原則可能

特定技能そのものの制度内容については特定技能とはで詳しく解説しています。育成就労を検討している企業は、その先にある特定技能の受入れ体制もあわせてイメージしておくと、準備の抜け漏れが少なくなります。技能実習と特定技能の違いを整理し直したいという方は技能実習と特定技能の違いもご覧ください。

よくある質問

Q. 育成就労制度はいつから始まりますか?

2027年4月の施行が予定されています。詳細な運用ルールはまだ確定していない部分もあるため、正式決定次第、当事務所でも改めてご案内します。

Q. 今、技能実習生を受け入れている場合はどうなりますか?

施行時点で在籍している技能実習生については、一定の経過措置が設けられる見込みです。新規の受入れについては、施行後は育成就労制度に基づいて進めることになる見通しです。詳細は正式な省令・運用要領を待つ必要があります。

Q. 育成就労と特定技能はどう違うのですか?

育成就労は原則3年で特定技能1号の水準まで人材を育成することを目的とした制度で、特定技能は育成後に人手不足分野で就労する段階の制度です。育成就労を修了すると特定技能1号への移行を目指す設計になっています。

Q. 受入れ企業にとって一番の変化は何ですか?

最も大きいのは転籍要件の緩和です。技能実習より早期・柔軟な転籍が可能になる方向で制度設計されているため、待遇や職場環境が見劣りする企業は人材が定着しにくくなる可能性があります。

Q. 監理団体は育成就労でも同じように使えますか?

育成就労では監理団体に代わって「監理支援機関」という枠組みが新設される見込みで、許可要件も厳格化される方向です。現在の監理団体がそのまま移行できるかどうかは、事業者ごとに確認が必要です。

採用市場全体が「選ばれる企業」を競う時代へ

これまで技能実習は、いわば「受け入れさえすれば人が来る」制度でした。転籍がほぼできなかったため、いったん受け入れてしまえば実習期間中は人材の確保が保証されていたようなものです。育成就労になると、この前提が崩れます。転籍が現実的な選択肢になるということは、外国人材の側から見ても「どの会社で働くか」を選べる余地が広がる、ということです。

日本人の採用市場ですでに起きている「選ばれる企業になれるかどうか」という競争が、外国人材の受入れにも波及してきます。急に大幅な待遇改善をする必要はありませんが、少なくとも「他社と比べてどうか」を意識せずに受入れを続けることは、これからの時代にはリスクの大きい選択になります。

まとめ

育成就労制度は、技能実習の「建前と実態のずれ」を解消しようとする制度です。人材育成に加えて人材確保を正面から目的に据え、転籍要件も緩和される方向で進んでいます。企業側も「実習生だから逃げない」という前提を捨て、待遇と育成計画を見直しておく必要があります。施行は2027年4月予定ですが、準備に着手するのに早すぎるということはありません。

依頼するかどうかで迷っている方は在留資格の申請は行政書士に依頼すべきかと行政書士に依頼する費用の相場も参考にしてください。