経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)の経営者が現場作業をすることは、経営の一環である限り認められます。審査要領は、経営者が経営の活動のほかに「その一環として行う現業に従事する活動」は、経営・管理の活動に含まれるとしています。そのうえで、「主たる活動が現業に従事するものと認められる場合は、「経営・管理」の在留資格に該当しない」と書いています(入国・在留審査要領 第12編(開示版)10-15)。問われるのは、現場に立つかどうかより、仕事の中心がどちらにあるかです。
業種の制限はありません。日本で適法に行われる業務であれば、飲食、貿易、IT、不動産、非営利の事業でも経営・管理の対象になります(10-15)。ただし、営業許可や免許が必要な業種では、その許認可を取得していなければ在留資格に該当する活動とは認められません(10-21)。
この記事でわかること
- 経営者の現業が認められる範囲と、「主たる活動」の判断
- 業種に制限がないことの意味と、許認可が必要な業種
- 許認可を在留許可の後にしか取れない場合の在留期間「4月」
- 現場を従業員に任せるときに注意すること
- 現業が中心になる場合に検討する別の在留資格
10-15の4つの文を読む
経営者の現業と業種について、審査要領の記述は10-15にまとまっています。
審査要領ではこう書かれている(第12編 10-15)
「経営又は管理に従事する者が、純粋な経営又は管理に当たる活動のほかに、その一環として行う現業に従事する活動は、「経営・管理」の在留資格の活動に含まれる。ただし、主たる活動が現業に従事するものと認められる場合は、「経営・管理」の在留資格に該当しない。」
ここでいう現業とは、接客、調理、製造、配送、施工のように、事業の商品やサービスを直接つくり、提供する作業を指します。10-15は、この現業のほかに、次のことを定めています。
- 日本で適法に行われる業務であれば、その活動の業種に制限はない(10-15(1))
- 外国人や外国法人が投資している事業に限らず、日本人や日本法人だけが投資している事業でも該当する(10-15(2))
- 営利を目的としない事業や、外国政府・外国の地方公共団体の機関の事業として行われるものでも差し支えない(10-15(4))
(1)の文には続きがあり、一部が黒塗りになった後、日々の活動内容を詳細に確認し、業務委託等により経営判断を伴わない場合は活動の実態がないものとして扱う、という記述が続きます。業種の自由と、経営者としての実態の確認は、同じ項目の中で組になっています。
「主たる活動」はどこで分かれるか
審査要領は、現業が何割までなら許されるかという数字を示していません。判断の手がかりは、経営に従事する活動の定義にあります。10-2は、経営の活動を「事業の運営に関する重要事項の決定、業務の執行、監査の業務等」に従事する役員としての活動としています。申請人がこれらに実質的に参画しているかは、「実際に行う業務の内容を確認して判断する」とされています。
ここで重要なのは、現場作業の量と、経営の業務の中身を分けて考えるという論点です。開店直後の飲食店で経営者がランチの時間帯に厨房を手伝っていても、仕入先との交渉、価格とメニューの決定、採用と人員配置、資金繰りを本人が担っていれば、経営の一環としての現業と説明できます。反対に、1日の大半を調理に費やし、経営判断に当たる業務がほとんど見えない場合は、主たる活動が現業と評価されるおそれがあります。
2025年10月の改正で常勤職員1人以上の雇用が必須になり、現場は職員、経営は本人という分担を示すことが以前より求められる構造になりました。常勤職員を雇っているのに経営者が現場の中心にいる、という体制は説明が難しくなります。
1日の業務内容で示す
当事務所では、経営・管理とは別の就労系の在留資格の案件で、入管から対象者の1日のタイムスケジュールの提出を求められたことがあります。業務全体の中で、在留資格に当たる業務がどれだけの比重を占めているかを確認する趣旨でした。経営・管理でも、経営者が現場に入ることが多い業種では、同じ観点から1日の業務の配分を説明できるようにしておくと、主たる活動がどちらにあるかを具体的に示せます。
※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。
更新の審査も、同じ点を後から確かめます。カテゴリー3・4の更新では、在留資格決定時等に提出した事業計画書に基づく活動を在留期間中に着実に行っていたことを具体的に説明する資料が求められます(10-12)。計画書に経営者の役割として書いた内容と、実際の働き方が大きく離れていれば、その理由を説明しなければなりません。
反対側の極端:現場も経営も外に出す形
現業を避けようとして、業務のほとんどを外部に任せる形にも問題があります。入管庁の改正ページQ&A(問19)は、業務の大半を外部に委託している場合や、経営者として把握すべき情報を把握していない場合は、経営者としての活動実態を認めないとしています。現場から離れること自体が評価されるわけではなく、経営判断を本人が担っていることが評価の軸です。この点は名ばかり経営者と資金の出所|経営管理ビザで「実質的に経営に従事」と認められる条件で詳しく扱っています。
業種に制限はないが、許認可は要る
業種が自由であることと、どの事業でもすぐに始められることは別の話です。審査要領は、業種によって許認可の取得や届出が必要な場合があり、取得していなければ事業を適法に営むことができず、在留資格に該当する活動を行うものとは認められないとしています(10-21)。確認の資料は、申請に当たっての説明書(参考様式)と、営業許可証など許認可の取得を証する文書です。
審査要領には、許認可が必要な業種の例が表で載っています。OCRで崩れている部分を除き、読み取れる主なものは次のとおりです。
| 業種 | 許認可 | 窓口 | 根拠法令 |
|---|---|---|---|
| 宅地建物取引業 | 免許 | 都道府県 | 宅地建物取引業法 |
| 古物営業 | 許可 | 公安委員会 | 古物営業法 |
| 風俗営業 | 許可 | 公安委員会 | 風営適正化法 |
| 飲食業・食料品製造業 | 許可等 | 保健所 | 食品衛生法 |
| 建設業 | 許可 | 都道府県 | 建設業法 |
| 労働者派遣事業・有料職業紹介事業 | 許可 | 労働局 | 労働者派遣法、職業安定法 |
| 一般旅客・一般貨物自動車運送事業 | 許可 | 運輸局 | 道路運送法、貨物自動車運送事業法 |
| 産業廃棄物処理業 | 許可 | 都道府県 | 廃棄物処理法 |
表の後半には電気工事業、動物取扱業なども載っていますが、OCRの崩れが大きく、許認可の区分や有効期間は原本で確認が必要です。表はあくまで「例」とされているので、ここにない業種でも許認可や届出が要らないとは限りません。
許認可が在留許可の後にしか取れない場合
飲食店の営業許可のように、在留資格がないと取得の手続を進めにくい許認可もあります。審査要領は、在留資格決定時の扱いを定めています。在留許可を受けてからでないと許認可を取得できない合理的な事情が認められ、ほかの要件を満たしている場合は、在留期間「4月」を決定します。そして、次回の更新時に許認可の取得状況を確認するとしています(10-21、10-14)。改正ページQ&A(問28)も、理由書を出せば次回の更新時に確認するとしています。前回の申請で取得を確認済みで、事業内容に変更がなければ、改めて確認する必要はないとされています(10-21)。4月の在留期間の全体は在留期間4月の経営管理ビザとは|会社設立前の申請と許認可で扱っています。
現場を任せる従業員の在留資格
経営者が現場から離れるほど、現場を担う従業員の在留資格が重要になります。入管庁が公表している不許可事例には、経営・管理で4回の更新を受けた後に、不法就労助長罪で罰金30万円の処分を受けた例があります。この例では、飲食店経営での更新が不許可になりました(「在留期間の更新許可申請及び在留資格の変更許可申請に係る不許可事例について」事例1)。判断は、在留状況、在留の必要性、相当性等を総合的に勘案して行われたとされています。
外国人を現場に雇う場合は、その人の在留資格で現場の仕事ができるかを、採用の前に在留カードで確かめる必要があります。確認の方法は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法を解説で扱っています。
現業が中心になるなら、別の在留資格
本人が現場の仕事を中心に続けたい場合は、経営・管理にこだわらず、仕事の内容に合う在留資格を検討するほうが筋が通ると筆者は考えています。外国料理の調理が仕事の中心であれば、在留資格「技能」が候補です。技能は「日本人で代替できない産業上の特殊な分野に属する熟練した技能」を持つ外国人のための在留資格です(第12編 18-1)。中国料理、フランス料理、インド料理などの調理師やパティシエは、原則として10年以上の実務経験(外国の教育機関で関連科目を専攻した期間を含む)が必要です(18-2)。調理師の要件は外国料理の調理師(コック)の技能ビザ|実務経験10年の立証と在職証明書で扱っています。
よくある質問
Q. 経営管理ビザの経営者が、自分の店で接客や調理をしてもよいですか?
経営の一環として行う範囲であれば認められます。審査要領は、経営者が純粋な経営の活動のほかにその一環として行う現業の活動は経営・管理の活動に含まれるとしています。ただし、主たる活動が現業に従事するものと認められる場合は経営・管理に該当しないとされているため、接客や調理が仕事の中心になっている状態は避ける必要があります。
Q. 経営管理ビザで経営できない業種はありますか?
日本で適法に行われる業務であれば、業種に制限はないとされています。営利を目的としない事業でも差し支えありません。ただし、飲食業、古物営業、宅地建物取引業、建設業、労働者派遣事業など、許認可が必要な業種では、その許認可を取得していなければ在留資格に該当する活動とは認められません。
Q. 営業許可は在留資格がないと取れません。どうすればよいですか?
在留許可を受けてからでないと許認可を取得できない合理的な事情があり、ほかの要件を満たしている場合は、在留期間「4月」が決定され、次回の更新時に許認可の取得状況が確認されます。入管庁のQ&Aも、理由書を出せば次回の更新時に確認するとしています。
Q. 現場の仕事が中心になりそうな場合、どの在留資格を検討すべきですか?
仕事の内容によって変わります。たとえば外国料理の調理が仕事の中心であれば、在留資格「技能」(調理師)が対象になりえます。技能の調理師は、原則として10年以上の実務経験(外国の教育機関で関連科目を専攻した期間を含む)が必要です。
開業前に決めておくこと
申請の前に、開業後1週間の業務を、経営者本人と常勤職員に分けて書き出してください。仕入れ、価格の決定、採用、資金繰り、取引先との交渉が本人の欄に入り、接客や調理などの現業の多くが職員の欄に入っていれば、経営の一環としての現業と説明できます。本人の欄が現業で埋まるようなら、人員の計画か、選ぶ在留資格を見直す段階です。
あわせて、事業に必要な許認可を洗い出し、在留許可の前に取れるものと後にしか取れないものを分けておきます。後者がある場合は、理由書と取得までの予定を事業計画書に組み込んでください。業種と働き方の組み立てに迷う場合は、物件の契約前にご相談ください。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第10節「経営・管理」10-2(経営の活動の定義、実質的な従事)、10-12(更新時の事業計画書に基づく活動の説明)、10-14(在留期間「4月」)、10-15(業種、現業、非営利事業)、10-21〜10-22(許認可の確認と許認可の例)
- 同 第18節「技能」18-1〜18-2(技能の趣旨、調理師の実務経験)
- 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A 令和8年6月26日更新)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
- 出入国在留管理庁「在留期間の更新許可申請及び在留資格の変更許可申請に係る不許可事例について」(令和2年9月)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan66.html