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個人事業主で経営管理ビザは取れる?3,000万円の「投資額」の判断

個人事業主でも経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)は取れます。2025年10月の改正後も、3,000万円の要件は「事業主体が法人か個人かにかかわらず」かかります(入国・在留審査要領 第12編 10-4)。個人事業の場合は、資本金の代わりに投資額で判断します。ここでいう投資額とは、事業を営むために必要なものとして事業に投下されている総額を指します。数えるのは、事業所の確保にかかる経費、役員報酬と職員に1年間に支払う報酬、事務機器の購入費と事業所の維持費の3つです。

ここで押さえておきたいのは、口座に3,000万円があるだけでは足りないという点です。審査要領は「単なる預貯金については事業に投下される財産とは取り扱わず」と書き、契約書などで実際に事業へ投下される見込みを確認するとしています。常勤職員1人以上、日本語能力、経歴、独立した事業所、専門家の確認を受けた事業計画書が必要な点は、法人と変わりません。

この記事でわかること

  • 個人事業が経営・管理に当たる場合と、フリーランスとの境目
  • 3,000万円の「投資」に数える3つの経費と、その立証資料
  • 預貯金を数えない理由と、「投下の見込み」の示し方
  • 法人と個人事業で3,000万円の数え方がどう違うか
  • 登記がないことの扱い、在留期間、更新で見られる点

個人事業でも「経営・管理」に当たる

経営・管理は、日本で事業の経営を行い、または事業の管理に従事する活動のための在留資格です。事業の主体が会社である必要はなく、個人で営む事業でもかまいません。審査要領は、会社の設立を前提とせずに申請できることを、登記の扱いで明確にしています。

「「経営・管理」の在留資格の決定に当たっては、個人事業は登記が必要とはされておらず」、登記事項証明書の提出がないことだけを理由に不交付(不許可)としないよう留意する、という記述です(10-16)。飲食店や貿易業を個人で開業する形でも、要件を満たせば申請できます。

個人で仕事を請け負う外国人には、就労系の在留資格で働く道もあります。技術・人文知識・国際業務などは雇用契約に限らず委任や委託でもよいとされていますが、その契約は「特定の機関(複数でもよい。)との継続的なもの」でなければなりません(第12編 1-1)。審査要領は同じ箇所で、特定の機関との継続的な契約によらない場合には、個人事業主として経営・管理に該当する場合があるとしています。不特定多数から仕事を受ける形は経営・管理の検討対象になる、という線引きです。業務委託で就労系の在留資格を取る場合の考え方は業務委託・フリーランスで就労ビザは取れる?「本邦の公私の機関との契約」の継続性で扱っています。

3,000万円の「投資」は3つの経費で数える

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-5)

「この場合の3,000万円の投資とは、当該事業を営むために必要なものとして投下されている総額であり、次のaないしcの目的で行われるものがこれに当たる。」

a 事業所の確保、b 雇用する職員の給与等、c その他(事務機器購入経費・事業所維持経費)が続きます。

3つの経費の中身と、審査で求められる資料を整理すると次のとおりです。

区分 審査要領の記述(10-5) 示し方の例(10-8)
a 事業所の確保 当該事業を営むための事業所として使用する施設の確保に係る経費 賃貸借契約書、支払の領収書
b 職員の給与等 役員報酬及び常勤・非常勤を問わず、当該事業所において雇用する職員に対して1年間に支払われる報酬に係る経費 雇用契約書、賃金の支払記録
c その他 事業所に備え付けるための事務機器購入経費及び事業所維持に係る経費 設備投資に係る契約書の写し、領収書の写し

確認の方法は、法人と大きく違います。個人の場合は「貸借対照表」の「資産の部」の額から、事業に投下される財産が3,000万円以上であることを確認し、(現物投資の場合は)領収書の写しなどで実際に投下されたことを確かめます(10-8)。帳簿の上で事業に使った財産として形になっているかを見る、という組み立てです。

1年分の給与が投資額に入る

bの職員の給与等は、常勤・非常勤を問わず、1年間に支払う報酬が対象です。個人事業でも常勤職員1人以上の雇用は必須なので、その職員に払う1年分の給与は、要件を満たすために必ず発生する支出であり、そのまま3,000万円の計算に入ります。パートやアルバイトの給与も、常勤職員の要件には数えられませんが、投資額には含められます。

一方、aとcには金額の上限や目安は書かれていません。事務所の広さや設備が事業の内容に比べて過大であれば、「当該事業を営むために必要なもの」という条件から外れると筆者は考えています。3,000万円に届かせるために不要な設備を買う、という発想は通らないと見ておくべきです。

事業主本人の報酬はどうなるか【要確認】

審査要領のbには「役員報酬」という言葉が入っています。会社であれば役員に支払う報酬は明確ですが、個人事業では事業主本人が自分に報酬を払うという形がありません。事業主本人の生活費や、事業主と生計を一にする家族への支払を投資額に含められるかは、審査要領にも改正ページのQ&Aにも明示がなく、判断材料がありません。計画の段階で、職員に払う給与と事業主本人の取り分を分けて計算しておくのが安全です。

口座にある3,000万円は数えない

審査要領ではこう書かれている(第12編 10-8)

「単なる預貯金については事業に投下される財産とは取り扱わず、「設備投資に係る契約書の写し」や「雇用契約書」等により、当該預貯金が事業に実際に投下されることが見込まれることを確認する必要がある。」

個人事業では、事業用の資金と事業主の個人資産の境目が見えにくくなります。3,000万円の残高証明書を出しても、それは事業主が持っている財産の証明で、事業に投下された財産の証明にはなりません。ここで重要なのは、審査が求めているのが、使った実績(領収書、貸借対照表の資産の部)か、使うことが決まっている見込み(契約書)のどちらかだという論点です。

これから開業する人は、申請の時点では実績がほとんどありません。そのため、事務所の賃貸借契約、設備の購入契約、職員との雇用契約といった契約書を先にそろえ、1年間で何にいくら投下するかを事業計画書の数字と一致させておく必要があります。契約書の金額の合計が3,000万円に届かなければ、預貯金がいくらあっても基準には足りないことになります。

法人と個人事業で、3,000万円の数え方はどう違うか

同じ3,000万円でも、法人と個人では物差しが別です。法人は払い込まれた資本金の額で判断し、個人は事業に投下した経費の総額で判断します。違いを並べると次のとおりです。

項目 法人 個人事業
何で数えるか 資本金の額(出資の総額) 事業に投下した総額
給与・事務所費 資本金に合算できない(Q&A 問8) 1年分の給与、事業所の確保・維持費が投資額そのもの(10-5)
確認資料 貸借対照表の「資本金」と登記事項証明書(10-8) 貸借対照表の「資産の部」、領収書、契約書(10-8)
継続の要件 資本金の額で判断 「3,000万円以上の投資が継続して行われていることが必要」(10-5)
登記 必要(登記前は定款等で確認、在留期間4月) 不要(10-16)

個人事業では、3,000万円は一度満たせば終わりの数字になりません。審査要領は、引き続き行われている事業の場合は3,000万円以上の投資が継続して行われていることが必要で、これが確認される場合に基準に適合するものとして扱うとしています(10-5)。法人の資本金は登記に残り続けますが、個人事業の投資は年ごとの支出の積み上げです。事業が縮小して職員を減らせば、投資額も下がります。

3,000万円以外の要件は法人と同じ

改正後の基準は、事業主体が個人でも同じようにかかります。3,000万円の計算方法以外に、個人事業だからといって緩和される要件はありません。

  • 常勤職員1人以上:日本人、特別永住者、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者に限る。週5日以上かつ年217日以上・週30時間以上、雇用保険の被保険者であることなどで判断(10-5、Q&A 問3)
  • 日本語能力:事業主本人か常勤職員のどちらかがB2相当(JLPT N2、BJT400点以上など)(10-5〜10-6)
  • 経歴:経営管理分野などの修士等の学位、または3年以上の経営・管理経験(10-7)
  • 事業所:自宅兼事業所は「基本的に想定されず」(10-17)。バーチャルオフィスは不可
  • 事業計画書:中小企業診断士・公認会計士・税理士の確認を受けたもの(改正ページ・ガイドライン)

個人で店舗を開く場合に注意したいのが、現場の仕事との関係です。審査要領は、経営者が経営の一環として現業に従事することは認めつつ、「主たる活動が現業に従事するものと認められる場合は、「経営・管理」の在留資格に該当しない」(10-15)としています。常勤職員が必須になったことで、現場は職員、経営は事業主という分担を示しやすくなった面もあります。常勤職員として誰を数えられるかは経営管理ビザの「常勤職員」とは|週30時間・年217日と数えられない人(出向・派遣・就労資格者)で扱っています。

在留期間と、更新で見られること

在留期間は5年・3年・1年・4月・3月のいずれかです。審査要領の在留期間の表では、経営する機関が「カテゴリー4(カテゴリー1、2及び3のいずれにも該当しない団体・個人)」に該当する場合は1年とされています(10-14)。開業したばかりの個人事業は、この1年の区分に入ることが多いと筆者は見ています。在留期間「4月」は、法人を設立しようとして登記事項証明書の提出がない場合などに決定されるもので、登記の要らない個人事業には、この理由での4月は当てはまりません。

更新では、次の点が確認されます。

  • 3,000万円以上の投資が継続していること(10-5)
  • 在留資格決定時等に出した事業計画書に基づく活動を、在留期間中に着実に行っていたことを具体的に説明する資料。計画と異なる活動をしている場合は、その理由と説明資料(10-12)
  • 国税・地方税の納付。個人は申告所得税・相続税・贈与税等と地方税(住民税・事業税等)(10-12、Q&A 問26)
  • 労働保険の加入と保険料の納付、健康保険・厚生年金保険の適用事業所である場合はその手続(10-12〜10-13)

Q&Aは更新時の公租公課について「納付が義務づけられているものは全て提出が必要」(問26)としています。個人事業では、事業主本人の所得税と住民税が事業の納税と重なるため、申告の遅れがそのまま更新の審査に表れます。

よくある質問

Q. 個人事業主でも経営管理ビザは取れますか?

取れます。経営・管理の3,000万円の要件は、事業主体が法人か個人かにかかわらずかかり、個人事業の場合は事業に投下した総額で判断します。個人事業は登記が必要とされておらず、登記事項証明書がないことだけを理由に不許可にはしないとされています。常勤職員、日本語能力、経歴、事業所、専門家の確認を受けた事業計画書の要件は法人と同じです。

Q. 銀行口座に3,000万円あれば、個人事業の要件を満たしますか?

満たしません。審査要領は、単なる預貯金は事業に投下される財産として扱わないとしています。事業所の確保費、職員の1年分の給与、事務機器や事業所の維持費として実際に投下したことを領収書や貸借対照表で示すか、設備投資の契約書や雇用契約書で投下の見込みを示す必要があります。

Q. 常勤職員の給与は3,000万円に含められますか?

個人事業の場合は含められます。役員報酬と、常勤・非常勤を問わず雇用する職員に1年間に支払う報酬が投資額に入ります。法人の場合は、給与を資本金に合算することはできません。

Q. 既に個人事業で経営管理ビザを持っています。新基準への経過措置はありますか?

あります。施行から3年となる令和10年10月16日までの更新であれば、新基準を満たさないことだけを理由に不許可にはしないとされています。その後の最初の更新からは原則として新基準への適合が求められ、満たしていない場合は経営状況、納税状況、次回更新までに新基準を満たす見込みを踏まえて総合的に判断されます。

個人事業で申請する前に決めておくこと

個人事業で経営管理ビザを申請するなら、最初に1年間の投資の内訳表を作ってください。事務所の確保費、常勤職員を含む職員の1年分の給与、設備と事業所の維持費を積み上げ、それぞれを契約書や見積書で裏づけられるかを確認します。合計が3,000万円に届くか、届いた状態を2年目以降も続けられるかが、法人にするか個人で始めるかを決める材料になります。法人で始める場合の数え方は経営管理ビザの資本金3,000万円はどう数える?出資金・借入金・新株予約権の扱い【2025年10月改正】で比べてください。

投資の内訳が固まったら、常勤職員の採用、日本語要件を誰で満たすか、事業計画書の専門家確認の順に進めます。改正後の基準の全体像は【2025年10月16日施行】経営管理ビザ厳格化の新基準と経過措置|資本金3,000万円・常勤職員・日本語要件で整理しています。投資額の組み方に迷う場合は、契約を結ぶ前にご相談ください。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第1節第1「本邦の公私の機関との契約」1-1(契約の継続性と個人事業主)
  • 同 第10節「経営・管理」10-4〜10-5(第2号ロ、個人事業の投資)、10-6〜10-7(日本語・経歴)、10-8(規模の確認、預貯金の扱い)、10-12〜10-13(更新時の資料、公租公課)、10-14(在留期間)、10-15(現業との関係)、10-16(個人事業と登記)、10-17(事業所)
  • 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A 令和8年6月26日更新)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
  • 出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について」(令和7年10月10日公表、同月30日更新)https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf